転生した私がゾンビアポカリプスの世界でコロニーを作る 作:ソロモンは燃えている
制圧した旧高崎市から少し南下した場所。
ここは、東西に大きな道路が伸びていて、かつて物流の中枢だったことが伺える。
今は人間の姿が消え、感染者が彷徨く、車の残骸と骨が散らばるだけの灰色の帯となっている。
この地を押さえれば、王国の行動範囲を大きく広げることができる。
私はランナーが少なく、驚異度の低い場所に司令部を設置した。
すでにレンジャー部隊は、周辺のクリアリングを始めている。
鉄の鏃による投射強化の効果が出ているのか、ウォーカーの排除は順調に進んでいる。
「北は我ら王国の領域、南は山と川に突き当たる。
実質、感染者の侵入経路は東西に伸びる道路しかない」
司令部周辺の安全を確保した後に出てくるのは、どの方向に進軍するかという問題だ。
まず、南という選択肢はない。
かなりの広さがある上、小規模とはいえ廃墟も確認されている。
制圧するにはかなりの時間がかかる。
現状、そんな余裕はない。
事前の偵察で周辺に点在する感染者の群れを確認している。
この地にも感染者を統率する個体が存在している可能性が非常に高い。
襲撃に対処するための防衛陣地を構築するための土地を確保しなければならない。
「となれば、当面は東西に進軍ということになりますね」
「ああ、実際に群れが動き始めなければどの方角から襲撃されるか分からない。
どちらから来ても対処できるようにしなければならない」
南から流れてくる感染者を警戒しつつ、東西に領土を拡大していく。
ただでさえ少ない兵力を分散させなければならないのだ。
感染者の領域に侵入し、拠点を構築するために初動は少数にならざるを得ない。
新たな技術を得ても、この段階は綱渡りになることは変えられない。
アーティファクトを得たことでレンジャーの攻撃力を強化できて良かった。
この不安定な段階をより早く終わらせて、次の段階に進めるのだから。
6日目
東側の前線を押し上げていたレンジャー部隊から石場を確保できたと報告が入った。
「順調だな。
採石所を建設するためにも、もう少し前線を押し上げたい」
司令部周辺にはテントが立ち並び、製材所が作られ、近くの森から木材の切り出しが始まっている。
王国からの補給で全てを賄うことは出来ないため、現地で資源を収集することは不可欠。
だが人間が活動すれば、それだけ音が出る。
それは、感染者を引き寄せることに繋がってしまう。
設備を充実させるには、進軍し、より広い土地を確保しなければならないのだ。
10日目
王国からの補給と共にサムライ部隊が到着した。
「順調そうだな」
「やはり電気が使えるようになったのは大きいな。
すでに東西に防壁も建設中だ」
「……やはり、来ると思うか?」
「ああ、そろそろ最初の波が来るだろう」
まだ偵察隊からの報告はない。
それでも私は確信している。
これまで積み重ねてきた経験から、兆候を感じ取っていた。
日を追うごとに前線の感染者の数が増えている。
レンジャーが前線を押し上げているからだけではない。
南からも少数ながら感染者の接近が増えているからだ。
奴らは我々の存在に気付いている。
こちらの規模を探っているのだろう。
前回とは違う。
今度はこちらが先手を取る番だ。
奴らが総攻撃が必要と判断する前に戦力差を逆転させてみせる。
13日目
ついに偵察隊からの報告が入った。
感染者の群れの一つが動き出した。
襲撃の方向は…東からだった。
「来たか…」
防衛設備は完成している。
木の防壁とバリスタ2基。
建設速度が向上したおかげで余裕を持って完成させることができた。
後は、レンジャーとサムライを配置に着かせる。
群れの数は数十体。
やはり、小手調べの襲撃か。
しばらくすると群れが姿を現した。
「感染者の群れを視認。
変異体の兆候なし。
ランナーの群れです!」
恐れていた変異体の姿もない。
エリートならともかく、サムライから報告があった太った感染者(通称『デブ』)が混じっていれば戦法を変えなければならない。
報告通りなら、強化されたとはいえレンジャーの矢で仕留めるのは難しいだろうからな。
「大した数じゃない。
この程度なら問題ないな」
大した数じゃないか…
最初の作戦で、あれほど脅威を感じていたランナーの群れが、今では前座扱いになっている。
我々が成長している証でもあるが、奴らの数の脅威が増大していることでもある。
進めば進むほど、奴らの数は増していく。
だからこそ、こんなところで苦戦しているわけにはいかない。
「レンジャー、曲射開始!」
射程に入ったことで攻撃開始の指示を出す。
バリスタも射撃を始めている。
感染者達は、数を減らしながらも前進を続けるが、その前に立ち塞がるのはサムライ達だ。
「抜刀、構えろ!」
隊長の号令でサムライ達が刀を構える。
「いくぞ!」
迫り来る感染者の前に甲冑を鳴らしながら踏み出す。
一閃
刀の切れ味を遺憾なく発揮してランナーを真っ二つに切り裂いた。
サムライ達は一歩も引かず、感染者を次々と切り伏せていく。
「さすがだな。
やはり、あの殲滅力は頼りになる」
今さら数十体のランナーに苦戦するはずもなく、問題なく殲滅は完了した。
ここまでは順調。
だが油断してはいけない。
奴らの数は、いつだって脅威だ。
襲撃を乗り切った後、再び進軍を開始。
回を重ねるごとに数を増やし、苛烈になっていく襲撃に対処するには、今の防壁は拠点に近すぎる。
軍事力を強化するために拠点を拡張していけば手狭になってしまうため、いずれにせよ防壁の位置は前進させる必要がある。
襲撃後に一つ変化があった。
サムライが前線の押し上げに加わったことだ。
サムライは戦闘音が大きいため、前線での運用は考えてなかったがサムライ達もその辺りは理解している。
少数に別れて、レンジャーのチームに同行する形をとっていた。
確かに大規模な部隊でなければ、戦闘音はあまり大きな問題にはならない。
そして、サムライが前線に参加したことでレンジャーの弱みであった殲滅力と防御力が補強された。
サムライが前に出て、壁となることでレンジャーが下がることなく戦闘を継続できるようになったのだ。
サムライ自身の殲滅力も相まって感染者を排除する速度が飛躍的に向上、私の予想以上の速さで前線が押し上げられた。
現在は進軍を停止し、防壁を建設中だ。
ここが総攻撃を受け止めるための防御陣地になる。
これ以上進むと、今度は拠点からの距離が開きすぎて防衛戦に支障が出てしまう。
進軍を停止したからと兵士達が暇になったわけだはない。
彼らには、次の襲撃が始まるまでやるべき事がある。
西の防壁の近くにある廃墟の攻略だ。
市庁舎や病院と比べれば小さな廃墟だが襲撃時の戦闘音に反応されると厄介なことになる。
今のうちに片付けておきたい。
15日目、20日目の補給でレンジャー、サムライ共に戦力が増強された。
今の戦力なら、防壁に頼らずとも小さな廃墟くらいなら攻略できる。
そう判断して部隊を送り出した。
レンジャーとサムライの混成部隊が廃墟に近付くと周辺の感染者が反応し、戦闘となる。
その戦闘音に反応した廃墟からも感染者が続々と姿を現す。
こうなれば後戻りはできない。
感染者を殲滅し、廃墟の中を空にするまで戦闘は終わらない。
兵士達は、よく戦った。
前衛のサムライ、後衛のレンジャーという陣形を組み、感染者の圧力が強いと感じれば一旦後退して、廃墟から距離を取る。
そこで感染者の数を減らしてから、再び廃墟に接近、攻勢を掛ける。
繰り返されるたびに彼らの連携は研ぎ澄まされていく。
何度目かの攻勢を掛けた時、廃墟から新たな感染者の出現が止まった。
ついに廃墟が空になったのだ。
残った感染者を倒したことで戦闘は終結。
廃墟を相手に初めて肉弾戦で勝利することに成功した。
27日目
廃墟攻略から2日後、偵察隊から報告が入る。
感染者の群れが西から接近中!
規模は前回の2倍以上!
「廃墟を攻略しておいて良かった。
今回の襲撃に廃墟が反応していれば、防衛戦は厳しいものになっていた」
「まるで、襲撃が厳しくないように聞こえるぞ。
前回の2倍以上なら100は軽く超える。
決して侮れる数ではない」
「分かっている。
けれど、私はそれ以上に信じているんだ。
君達なら勝てると」
「ふっ、なら、その信頼に応えなければな…」
防衛戦の指揮を取るために前線へと移動する。
2回目の襲撃まであと僅か……
今回のマップは、骨の海岸を上下反転させたような地形になります。
名付けるなら骨の幹線道路ってところですね。