転生した私がゾンビアポカリプスの世界でコロニーを作る   作:ソロモンは燃えている

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転生した私、新たな戦術を試す

 

 

 

 西に砂埃が見える。

 100以上の感染者が一斉に向かってきているのだ。

 やはり、数は脅威だ。

 前回の2倍ほどのはずだが、群から受ける圧力を実数以上に感じてしまう。

 

 それでも負ける気はしない。

 こちらも出来うる限りの準備はした。

 電気が使えるようになり、防衛施設の建設がはるかに捗るようになった。

 木の防壁は、襲撃を前に余裕を持って完成した。

 西側だけだが、拠点近くにあった石場から採取した石材を使ってコンクリートを作り、石の壁にアップグレードすることも間に合った。

 

 サムライは、すでに壁の前に整列している。

 壁の上には、腕の立つベテランレンジャーが陣取り、サムライを援護する。

 壁の後ろには、残りのレンジャーと4基に増設されたバリスタの砲塔が並ぶ。

 この防衛線は破られない。

 周りを見回せば、怯むことなく群れを睨みつける兵士達がいる。

 頼もしき仲間が私を支えてくれている。

 

「こちらの準備も整っている。

 新しい戦術を試させてもらうぞ」

 

 電気が使えるようになり、建設速度が向上したことは、防衛線を強固にしただけではない。

 新たな戦術を試す余裕を与えてくれていた。

 

 

 感染者の群れは、川のように列をなして向かってくる。

 1人のレンジャーが群れの左から接近し、攻撃した。

 案の定、群れの一部は、そのレンジャーに狙いを変える。

 レンジャーは、感染者達を引き連れて後退していく。

 前回の作戦で、犠牲を出しながらも総攻撃をしのいだ戦術だ。

 だが、この戦術は、レンジャーに多大な負担と危険を背負わせてしまう。

 今回の戦術は、それを極力抑えたものになっている。

 

 レンジャーが向かう先には、杭の罠が敷き詰められているトラップゾーンを用意しておいた。

 トラップゾーンに入ったレンジャーは、そのまま罠の間をジグザグに走り抜けていく。

 後を追う感染者に罠を避けるような知性はない。

 次々とトラップゾーンに突っ込み、その身体に杭が突き刺さっていく。

 杭の罠はバリケードと違い、踠けば抜けてしまい、足止め効果は小さい。

 事実、罠に掛かった感染者が強引に振り解いてレンジャーを追いかける。

 

 よし、狙い通りだ。

 

 感染者は、痛みも恐怖も感じない。

 だからこそ、この戦術は刺さる。

 

 木の杭は、多少の足止め効果があるが、本命は別にある。

 刺さってもすぐに抜けてしまう。

 そして、次の罠に掛かる。

 そうやって感染者は出血を強いられていくのだ。

 体力を失い続け、やがては動けなくなって死ぬ。

 レンジャーは、それまでトラップゾーンを走り回って群れを拘束することにだけ集中すれば良い。

 

 感染者がトラップゾーンに入って、しばらくすると次々に動かなくなり、死に始めた。

 木の杭によって感染者の動きが遅くなっている分、誘導役のレンジャーにも余裕があるようだ。

 

 次は反対の右側からレンジャーが群れへとちょっかいを掛ける。

 同じように群れの一部が釣られて、そのレンジャーを追いかけて行った。

 後は、同じ流れだ。

 用意されたトラップゾーンに誘い込み、危なげなく全滅させた。

 

 一度に釣り出せた感染者は30〜40。

 合わせて70体ほどの感染者を木の杭だけで殺せたことになる。

 群れの総数は150体程だった。

 残りは最初の襲撃とほぼ同数。

 しかも、レンジャーが誘導したことで群れの流れが途切れ、時間差で到達することになった。

 壁の前に陣取るサムライの殲滅力を前に戦力の逐次投入となれば結果は明らか。

 防壁前の戦闘も余裕を持って完勝した。

 

「司令官殿、この戦術は行けますよ!

 完全に壊れていなければ、修理して再利用も可能なようです」

 

 新たな戦術が大きな成果を上げたことで、レンジャーの声も明るい。

 

 私も、この戦術に手応えを感じていた。

 レンジャーやサムライに過度な負担を掛けることなく、効果的に群れを殲滅できる。

 

 

 兵士達の士気も、この鮮やかな勝利で上がっている。

 この勢いのまま、南の開拓へと乗り出した。

 

 

 南の開拓は順調に進んだ。

 群れの襲撃を犠牲なしで乗り越えたことで、戦力が充実している。

 レンジャーとサムライの混成チームによって感染者を次々と駆逐し、前線を押し上げていく。

 途中で廃墟も発見されたが、今の戦力の前では点在する小さな廃墟など問題にならない。

 

 領土を広げ、使える土地が増えれば、より多くの住民を呼び寄せることができる。

 人手が増えれば、食料の生産、木材や石材の採取、貯蔵した物資を使った施設の建設など出来ることも増えていく。

 そんな正のサイクルに突入していた。

 もちろん、人が増えることは、防御に失敗し、開拓地が汚染された時の被害が増えると言うことでもある。

 

 だが、後方支援が充実すれば維持できる戦力も増やせる。

 3回目、4回目と群れの襲撃は、規模を増し続けたが、新戦術と増強された兵力によって殲滅。

 

 南の開拓が山地と川に突き当たったことで完了。

 この地を完全に制圧することに成功した。

 残る脅威は外部からの襲撃しかない。

 

 襲撃に備えて防衛力の強化を続けていた時、ついに奴らが動いた。

 

「周辺にいたすべての群れが動き出しました。

 東西から同時に襲撃が来ます!」

 

 総攻撃…

 

 そろそろだと思っていた。

 群れの襲撃は、回を重ねるごとに間隔が短くなっていった。

 前回の襲撃から7日。

 いつ来てもおかしくないタイミングだった。

 

「では、予定通り、東は私に任せてもらおう」

 

「ああ、頼んだ」

 

「ふっ、お前は司令官らしく、この司令部で吉報を待っていればいい」

 

 サムライ部隊の隊長が、東の防衛を担当する部隊を率いて出撃していく。

 

 

「では、私も出ます」

 

 レンジャー部隊の隊長が、同じく部隊を率いて西に向かう。

 

 今回は、彼らが前線指揮官となる。

 最後の襲撃は、侵入路があるすべての方向から行われる。

 今後の作戦のためにも、私の代わりに前線で指揮を取る者が絶対に必要だった。

 これからは司令部に残り、前線からの報告を聞いて、必要な指示を出すことになる。

 

 前線指揮官に任命した彼らが指揮するのは、レンジャーとサムライ、バリスタなどの防衛兵器すべて。

 もう、単一の部隊の長という立場に収まってはいられない。

 彼らには、それだけの能力があると判断している。

 兵士達も応えてくれるだろう。

 彼らは、ともに感染者との戦いを切り抜けてきた戦友だ。

 レンジャーとサムライ、兵種の違いから来る縄張り争いなどあり得ない。

 互いの長所を認め合い、時に自分の命を盾にして相手を守ろうとするほどの絆がそこにはあるのだ。

 

 

 最後の襲撃は、総攻撃と言うに相応しい、これまでの襲撃とは段違いの数で押し寄せてきた。

 レンジャーが罠を使って分断してもなお、防壁前の戦闘は激戦となった。

 誘導役のレンジャーがトラップゾーンを使い潰すつもりで何度も感染者を釣り出す。

 サムライ部隊も一時壁内に退避し、石の壁で群れを受け止めながら、壁の上から攻撃する状態まで押し込まれてしまった。

 

 それでも、最終的に届けられたのは勝利の報だった。

 それも、一人の犠牲も出さない完全勝利だ。

 今回の作戦全体を通して、住民はもちろん、兵士の一人も失わなかったのだ。

 

 交通の要所を押さえたことで、王国の先に道が開けた。

 私達の進む道に一筋の光が差した気がする。

 これが儚い希望とならないように、前へと進み続けよう。

 支えてくれる仲間達と共に……






定番の木の杭と誘導レンジャーのコンボです。
正直、これが出来ないと高難易度は厳しいですよね。
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