転生した私がゾンビアポカリプスの世界でコロニーを作る 作:ソロモンは燃えている
その日、私達は作戦会議を開いていた。
主要な幹線道路に繋がる地を押さえたことで王国の未来は大きく開いたかに見えたが、どうやら一筋縄ではいかないらしい。
「さて、これからの方針を決めなければならないが、まずは偵察隊からもたらされた情報を共有したい」
「お前がそう言うということは、何か厄介なことが起きていると言うことか?」
「その通りだ。
詳しくは、偵察に出ていたレンジャー部隊から説明してもらう」
「はっ、我々が偵察したところ、東に繋がる道が感染者の群れで塞がれていました。
群れの構成は、我々が確認した限りではウォーカーのみになります」
「ウォーカーだけなら、さほど脅威ではないと思うが」
「その総数は、およそ2万体に及びます」
「なっ、2万だと!」
いかにウォーカーと言えど、これだけの数になれば生半可な戦力では押し潰される。
まさに桁違いの数だ。
「さらに、この群れは不可解な動きをするのです」
「まだ、何かあるのか!?」
「普段は道路上に感染者の姿がないのです。
ですが、我々がある程度奥に進むと群れが一斉に動き出し、全方向から押し寄せてきました。
すぐに撤退したため、完全に囲まれる前に離脱することに成功しましたが…不思議なことに我々が脱出すると群れが再び散っていったのです」
「…司令官はどう思う?」
「待ち伏せ…だろうな」
「やはり、そう思うか」
「自分のテリトリーの奥深くに侵入するまでジッと動かずに待ち構えている。
この群れを殲滅しない限り、東への進出は出来ないな」
少数のレンジャーならそのまま突破もできるだろうが、補給路が構築できない現状では無駄に死なせることにしかならない。
だが、今の王国が投入できる戦力でこの数の群れを倒し切るのは難しい。
「相手がウォーカーだけなら、何度も侵入と離脱を繰り返して少しづつ削っていけば良いのでは?」
「いや、こんな動きをする群れが無策のまま削られてくれるとは思えない。
何度も攻撃して、経験を積ませてしまえば、逆襲を受けるかもしれない」
これだけの数の群れに耐えられるほどの防衛力は、今の王国にはない。
群れの行動が変化する前に殲滅しなければならない。
「だが、今の王国の戦力では一度の攻勢で狩り尽くすのは無理だ。
全滅覚悟で突撃しても数を大きく減らすのが精一杯といったところだろう」
サムライ隊長の認識も私と一致しているようだ。
「王国の戦力が激減したところに、生き残った群れが他の感染者と合流して攻めてくる事態になれば目も当てられない」
「下手に手出しは出来ない……となれば西か?」
「ああ、それしかないと考えている」
埼玉県方面に繋がる東の道を進むのは時期尚早だ。
となれば山梨県に繋がる西に進むしかないが、こちらは山や森が多く、開拓しても得られるものは多くないと思われる。
「ですが、朗報がないわけではありません。
西の道の先に自衛隊の駐屯地がありました。
この地を探索すれば、強力な兵器を作るためのアーティファクトが手に入るかもしれません」
軍の施設なら、そういう物がある可能性は高い。
電力を得た王国は、古代の工場をいくつか復旧させることに成功し、生産力は飛躍的に高まっている。
強力な古代兵器を復活させる土台は整いつつあるのだ。
「ならば、是非もない。
探索は任せてくれ」
「いや、今回はサムライとレンジャーの混成部隊を向かわせようと思う」
意気込んでいるサムライ隊長には悪いが、今回の探索にはレンジャーにも参加してもらうつもりだ。
サムライ達は、どうやらレンジャーに比べて活躍の機会が少ないことを気にしているらしい。
室内での戦闘が多い探索は、自分達の価値を示す絶好の機会だと思っているようだ。
サムライの火力、殲滅力は、レンジャーにはない強みだ。
そんな事を気にしなくても、得難い戦力であることに変わりはないのだがな。
今回の駐屯地は広く、野外での戦闘機会も多い。
また、多数の感染者が確認されているため、レンジャーの静音性が生きる場面も多いはず。
「そうか…では、レンジャーとの連携を考えなければな。
特に室内では、上手く立ち回らなければ逃げ道を塞がれてしまう。
レンジャー隊長、後程探索について詳細を詰めたい」
「ええ、こちらからもお願いしようと思っていました。
取り回しの良い、小さめの弓を用意しようと思っていますが、室内での戦闘ではサムライに頼らせてもらうことになるでしょう」
「何、その代わり屋外での感染者の間引きはレンジャーに働いてもらうことになる。
こちらとしても頼りにさせてもらう」
どうやら杞憂だったようだな。
サムライとレンジャーは、作戦を進めるための両輪。
強固な信頼関係が結ばれていることは、アーティファクト以上に重要だと感じている。
「良し、次の目標は決まった。
王国は西に進出する。
まずは、駐屯地の探索だ。
頼んだぞ」
「「了解」」
両隊長が退室し、探索ミッションのための準備に取り掛かった。
この探索で、王国は新たな局面を迎えることになる。
そして、新たな出会いに繋がることも……この時の私は知る由もなかった。