転生した私がゾンビアポカリプスの世界でコロニーを作る 作:ソロモンは燃えている
死を覚悟したサムライ隊長。
だが、その棍棒は彼を捉えることなく地面に打ち付けられていた。
見張り台の上に鉄砲衆の男が立ち、銃を構えている。
彼が鬼の腕を撃ち抜いたことで棍棒は狙いを外し、サムライ隊長は死を免れたのだ。
鬼も自らの邪魔をした存在に気付き、歯軋りをする。
「ぐおおおおおおおおっっっ!!!」
「くっ」
鬼が二度目の咆哮を上げる。
すると、さらに遠くから土煙を上げて新たな感染者が向かってきた。
「感染者がさらに集まってくる!
サムライ隊、これ以上の咆哮は阻止してくれ!」
「簡単に言ってくれる。
だが、出来なければ死ぬだけか。
総員、攻めろ!
奴に咆哮を上げる暇を与えるな!」
サムライ隊が攻勢を掛ける。
自棄になったわけではない。
「私の腕を信頼してくれているのか…」
見張り台の上に陣取っている鉄砲衆が呟く。
里の者は協力を拒否した。
せめて自分だけはと参戦させてもらったが、まさかこれほど信じてもらえるとは思っていなかった。
彼らは、どんなに絶望的な状況でも互いを信じて戦い続けている。
その姿を見ていると心が熱くなる。
そして今、サムライが私を信じて防御を捨てて攻勢に出ている。
ここで応えなければ男じゃない!
心は熱く燃え上がっている。
けれど、頭は冷静に…
雑賀衆は、戦場で武将を狙撃することで戦国の世に名を轟かせた。
私も雑賀衆の名を継ぐ者。
決して狙いは外さない。
ドオオオン
再び鬼の腕を撃ち抜き、サムライの命を救う。
手早く弾を装填し、狙いを定める。
ちっ、腕の傷がもう塞がっている。
なんて回復力だ。
なら、頭ならどうだ!
ドオオオン
弾丸は狙いを誤らず、鬼のこめかみを捉えた。
さしもの鬼もふらつき、膝をつく。
だが、倒れるまではいかない。
鬼が苛立ちのままに叫ぼうとする。
「させるか!」
サムライ隊長が刀を鬼の口に突き立てる。
鬼が膝をついたが故に、咆哮のために開いた無防備な口に刀が届いた。
恐るべきは鬼の生命力。
喉を貫かれてもなお、鬼は動きを止めなかった。
腕が振るわれ、サムライ隊長の身体を捉える。
咄嗟に腕でガードするが、鬼の一撃をまともに受けてしまった。
吹き飛ばされて、転がっていくサムライ隊長。
腕の骨は砕けて、肋骨にまでヒビが入っている。
口から血を吐いていることから内臓も傷ついているかもしれない。
「何をしている!
早くトドメを!」
それでも、部下に命令を飛ばす。
部下のサムライ達が鬼に殺到するのを見届けて、彼は意識を失った。
鬼はこれほど大きな傷を受けても、暴れ狂った。
飛び掛かってくるサムライを何度も吹き飛ばし、時には掴み、へし折った。
確かに伝説に語られる鬼の如き暴威を撒き散らしたのだ。
されど、サムライ達の闘志が折れることはなかった。
彼らは、隊長が示したどんな暴威を前にしても屈することなく挑み続ける黄金の意志を受け継いでいた。
魂を失った怪物にはない、人間だけが持つ魂の輝きだ!
人間讃歌のような命の咆哮を叩きつけていた。
ついに怪物は膝を屈する。
数多の刀を突き立てられ、その動きを止めたのだ。
ここに鬼討伐なる。
されど戦いは終わらない。
怪物が残した置き土産、多数の感染者が津波の如く押し寄せているのだから。
その波に飲み込まれつつあった。
バリスタはデブを狙い、確実に仕留めていく。
レンジャーも指よ千切れよとばかりに弓を引き続ける。
それでも石の壁は軋みを上げ、破られつつあった。
サムライ達はすでに満身創痍。
救援に向かったとて、ろくに戦えそうにない。
ここまでなのか…
前線で指揮を取りながら、迫り来る崩壊を感じていた。
今回は撤退すら出来ない。
追いかけてきた感染者が里に到達し、施設を破壊してしまえばこの戦いの意味が失われてしまう。
ここで最後の一兵まで戦い抜き、後任に後を託す。
そう覚悟を決めていた。
「ここまでです。
司令官殿、撤退してください」
「何を言っている。
今回の作戦は、撤退出来ない。
お前もそれは分かっているだろう!」
「ええ、ですから撤退するのは貴方だけです」
「馬鹿な!それこそ出来るわけがない。
皆を置いて逃げろと言うのか!」
「ええ、そうです!
貴方を死なせるわけにはいきません。
王国の…人類の未来のために!」
「私は、また兵を…民を失うのか」
「誰も貴方を恨みませんよ。
言ったでしょう、恨むのは貴方が諦めた時だと。
あれは彼女だけの想いではありません」
まただ、誰も彼もが私が決断を下す前に自ら命を切り捨てようとする!
重い…あまりにも重すぎる。
だけど…だからこそ背負い続けなければならない。
楽になることなど、私自身が許せない!
皆の命を背負って撤退を決意した私の前で、思いがけない変化がもたらされる。
ドドドドオオオン!
大きな音と共に複数の感染者が倒れる。
音の発生源には、銃を構える若者達がいた。
時は遡り、作戦開始当初
里の長老達は、目の前の光景が信じられなかった。
兵士でもなく、武器すら持たない者達が危険な森へと入っていくのだ。
「お前達は、なぜ森へと入っていける!?
もしや、何も聞かされていないのか?」
長老の言葉に、移住者達は否と答える。
「鬼と呼ばれる危険な感染者がいることは聞いています。
もしもの時は、撤退が許されないことも…」
長老が言葉を失う。
「なぜ、あなた達は従っているのだ?
こんな危険な作戦に従事させる上の人間が憎くないのか!?」
別の長老が問う。
「憎いなんて思いませんよ。
私達は信じているんです」
「信じている?」
「あの人なら未来を切り開いてくれる。
あの人が必要だと判断したのなら、この里には決して失ってはならないものがあるんでしょう」
だから、私達は彼を信じて着いていく。
今度こそ、長老達は何も言えなくなった。
彼らの顔には、自分たちが失った希望が満ちていた。
「長老…私達は、本当にこのままで良いのでしょうか?」
移住者を見送った後、若い男が迷子のような表情で言葉を発する。
「…あの者達が良いと言っているのだ」
そう話す長老の顔にも迷いが見て取れた。
作戦が進む中、誰もが絶望的な世界に屈することなく足掻いている姿を見せつけられ、ついに決断を下した。
「お前達は、王国の開拓地に向かえ」
「長老、我らも残ります!」
「ならぬ!
お前達は技術者だ。
万が一にも失うわけにはいかぬ。
そうなれば、我らは王国に顔向けできぬ」
「…長老」
「何、負けねば良い。
それだけの事ではないか」
技術者達は王国の開拓地に避難した。
これが一時的なものだと願いながら。
「さて、お主達…決意は変わらぬか?」
「はい、実際に撃ったこともない僕らにどれ程の事が出来るか分かりませんが、ここで逃げたくはありません!」
「では、出陣せよ。
わしらはここで吉報を待っておるぞ」
「「「「「了解です!」」」」」
こうして鉄砲衆とも言えない未熟な若者達は戦場に向かった。
そこで彼らは見た。
人間だけが持つ黄金の意志の輝きを。
鬼は、勇者の如く戦ったサムライ達の手によって倒された。
だが、その代償に彼らはボロボロで、防壁を守る仲間達は多数の感染者を前に崩壊しかけている。
彼らは立ち上がり、ふらふらになりながらも防壁に向かう。
そんな様子では、防壁にたどり着いてもまともに戦えるわけがないのに。
それでも、誰一人諦めてないのだ。
「構えろ、防壁の前にいる感染者を狙え」
彼らと肩を並べて戦いたい。
そんな熱い想いに突き動かされ、僕らは銃を構えた。
ろくに訓練すらした事ないけど、感染者は壁の前で固まっている。
今なら撃てば当たる。
未熟な僕らでも役に立てるのだ!
「撃て!」
里に残っていた銃は13丁。
その全てを持ち出してきた。
数はそれほど多くはないが、狙撃銃の威力は強力で、その一斉射によって多くの感染者が倒れた。
一人一殺に近い戦果を叩き出していた。
「装填、第二射用意!」
若者達が次の弾を込める。
彼らの動きは速いとは言えない。
それでも、ずっと訓練してきた成果か、新兵程度には形になっていた。
「撃て!」
再び一斉射。
多くの感染者が倒れる。
近くでこれだけ大きな音を立てれば、さすがに感染者の一部が若者達へと狙いを変える。
近づいてくる感染者に恐怖する若者達。
そんな彼らの前にサムライが立つ。
「案ずるな、奴らは決して通しはしない」
ボロボロだけど、刀を構える背中はとても頼もしく見えた。
恐怖に硬直していた指が動く。
やるべき事を思い出させてくれたサムライへの感謝を込めて、銃の引き金を引く。
何度も…何度も…
やがて銃声が途絶えた時、動く感染者の姿は消えていた。
スナイパーとワスプ、アンロックです。
中盤のマップでベヘモス相当の感染者を出したので難易度調整として鬼は単独、群れの襲撃もなしにしました。