転生した私がゾンビアポカリプスの世界でコロニーを作る   作:ソロモンは燃えている

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転生した私、汚染された土地に行く

 

 

 

 雑賀の里周辺の安全を確保した事で火薬の量産の目処が立った。

 里の技術者に教わり、王国でも火薬の増産に着手している。

 里を失うつもりはないが、危機管理の観点から供給を一箇所に頼るのはまずい。

 この先、感染者との戦争は激化していくことが予想される。

 それに伴い増大していく火薬の需要に対応するために生産量を増やす意味合いもある。

 

 ともかく、王国での火薬の生産は順調に進んでいる。

 必要な量の備蓄が完了すれば、道を塞いでいる2万の群れを殲滅し、先に進めるだろう。

 

 だが、我々の前にある道はそこだけではない。

 鉄砲衆の長となった男から、西に進んだ先にある工場地帯の情報が得られた。

 

「里の外を旅している時に見つけました。

 大規模な工場地帯があり、まだ稼働しているものもあるようです」

 

 まだ動いているならば、有用なアーティファクトが見つかる可能性も高い。

 弾薬の備蓄が完了するまでの時間で西の開拓を進めておくのも悪くない。

 そう思い、さらに詳しく話を聞くが、やはりこの世界は甘くはない。

 工場地帯の周辺は、工業廃水によって汚染された土地が広がっているらしい。

 そこには、その環境に適応した感染者…ベノムと呼ばれるタイプの感染者が巣食っていると言う。

 工場を探索するためには、ベノムの縄張りである汚染された土地に拠点を築く必要がある。

 汚染された土地は広大で、その全てを制圧することは今の王国では不可能だが、奥地から出てくるベノムの群れを迎撃できる規模の拠点を構築できれば十分だ。

 

 ベノムと言う強力な感染者と対峙することになるが、技術が発展し始めている王国が新たなアーティファクトを得る意味は大きい。

 新たな兵種『鉄砲衆』が加わったこともあり、汚染された土地に進出することが決まった。

 

 

 

 西に進み、汚染された土地に入ったところで司令部を設置する。

 今回の目的地がベノムの縄張りであることから、初期に投入する戦力はレンジャーだけでなく少数ではあるがサムライも連れてきている。

 ただ、前線指揮官はレンジャー隊長しかいない。

 サムライ隊長は、鬼との戦闘で重傷を負い療養中で、しばらくは復帰できない。

 臨時でサムライ隊長になった男も前線指揮官を任せるには経験が足りないため、レンジャー隊長の指揮下に入ることに納得していた。

 最後に道案内として鉄砲衆の長になった男を伴なっている。

 レンジャー…10

 サムライ…5

 鉄砲衆…1

 これが現時点での戦力となる。

 

 数が少ないのは撤退も視野に入れているからだ。

 ベノムの情報は少なく、その脅威がどれ程のものか分からない。

 まずは、情報収集を優先させる部隊構成とした。

 

 司令部の周りにテントを建て、いつも通り周辺のクリアリングを開始した。

 事前に偵察した情報通り、この辺りの感染者はさほど多くない。

 レンジャーとサムライのチームで当たれば、問題なく安全なスペースを確保できるだろう。

 そうやってクリアリングを進めていく中で、脅威はすぐにやって来た。

 

「むっ、見慣れぬ感染者が近づいて来ている…あれがベノムか?」

 

 四つん這いで接近してくる感染者がいた。

 大きさは普通の感染者のほとんど同じだが、肌は暗い緑色をしている。

 警戒しながらサムライが前に出て、レンジャーが弓を構える。

 彼らは、1体だけなら問題なく対処できると思っていた。

 

 レンジャーが矢を放つ。

 だが、ベノムの皮膚が硬いのか深く突き刺さることはなく、大きなダメージは与えられていない。

 上位の感染者となれば、より強い生命力、より強靭な身体を持つ。

 レンジャーの矢では火力不足になるのは想定の範囲内だ。

 想定外は別のこと。

 ベノムが立ち止まったのだ。

 感染者は、本能のままに突っ込んでくる。

 その常識が覆ったことに兵士達が驚く。

 

 ベノムが口から緑色の液体を飛ばしてきた。

 盾となっていたサムライが咄嗟に腕を前に出す。

 

「うわっ!」

 

 液体が掛かった甲冑の小手の部分がジュウと音を立てて溶けていく。

 慌てて小手を取り外そうとするが、ベノムに追撃の毒液を掛けられてしまった。

 全身に毒を浴びてしまい、苦痛にのたうち回るサムライ。

 レンジャーがベノムの注意を引き、負傷したサムライを下がらせる。

 今度は、ベノムの毒液がレンジャーを襲う。

 身軽なレンジャーであれば毒液を回避することが出来た。

 しかし、レンジャーの火力では決め手に欠ける。

 ベノムの毒液は、遠距離攻撃かつ範囲攻撃でもある。

 距離を詰める必要があるサムライでは厳しい。

 このまま有効な手を打つことが出来なければ戦闘音で他のベノムが来てしまうかもしれない。

 そうなればレンジャーでも回避が難しくなってしまう。

 

「くっ、どうする!?」

 

「レンジャーは、このまま奴の注意を引いてくれ。

 隙を見て被弾覚悟で突っ込む」

 

「それでは危険が大き過ぎる。

 奴1体で終わりではないのだぞ!」

 

「分かっている。

 だが、奴を倒せなければここで終わりだ」

 

 レンジャーにもサムライの言葉が正しいのは理解している。

 自分達では致命傷を与えられない。

 ここは、サムライに頼るしかない。

 必要な犠牲なのだと。

 

 意を決して、行動に移そうとした時…

 

 ドオオオン!

 

 銃声が響き、ベノムが倒れた。

 

 兵士達が振り向いた先に鉄砲衆の男がいた。

 彼は道案内として同行していた。

 銃声は感染者を引き寄せてしまうため、戦闘に加わる予定はなかった。

 

「周辺の警戒を頼む。

 感染者の姿が少ないとは言え、今の銃声で集まってしまうかもしれないからな」

 

 負傷し、後送されたサムライからベノムの特徴を聞いた司令部が男に救援を要請したのだ。

 間合いを取り、遠距離攻撃をしてくる感染者。

 想定外の行動を取る感染者にレンジャーとサムライで対応は難しいと判断した。

 幸い、周辺の感染者は少ない。

 戦闘が長引く方が危険だ。

 多少の銃声であれば問題ないだろうと送り出していた。

 

 実際、銃声に反応したウォーカーとランナーが数体いたが、残っていたレンジャーとサムライによって殲滅された。

 

 

「今回の戦闘でベノムの特性が判明した」

 

「厄介ですね。

 通常の感染者より遥かに頑丈な上に遠距離攻撃まで…」

 

「サムライの火力に頼れないのが痛いですな。

 1体であればまだやりようがあるが、多数が相手となると…」

 

 鉄砲衆の男の目撃情報では、ベノムが群れで行動していた。

 偵察部隊の情報もそれを裏付けている。

 今回はたまたま単独で行動していた個体だっただけだ。

 何か有効な戦術を考えなければ、この地の制圧は覚束ない。

 

「里に伝令を出し、鉄砲衆の派遣を要請しましょう」

 

 鉄砲衆の長の提案は、とても有り難いものだった。

 今、ベノムに有効な戦力は鉄砲衆しかいない。

 レンジャーでは火力不足、サムライの接近戦は大きな危険が伴う。

 この地での作戦は、鉄砲衆を主軸に据えるのが正解なのだろう。

 

「しかし、鉄砲衆の訓練はまだ…」

 

「確かに充分ではないでしょう。

 ですが、彼らは前回の鬼討伐作戦で実戦を経験しています。

 役に立たないと言うことはないはずです」

 

「そう言うことではない。

 未熟なまま戦場に出せば、それだけ死ぬ危険も大きい。

 鉄砲を扱える貴重な人材を失うことになってしまう」

 

「どれほど貴重な戦力であっても必要な時に使えないのであれば価値など有りません。

 王国でも鉄砲衆の訓練が始まっていると聞いています。

 我々に恩を返す機会を与えてください」

 

「恩を返すために部下を死なせるつもりか?」

 

 私は、男の言葉が気に入らなかった。

 

「…私は、司令官を信じています。

 鬼討伐の時も、あなたは可能な限り部下を死なせないように指揮を取っていた。

 鉄砲衆も無駄に死なせるようなことはさせないと…」

 

 その苛立ちも、続く言葉で消えた。

 部下の命を軽んじたのではない。

 私を信じてくれたのだ。

 男の提案は有り難い。

 鉄砲衆は、この地で大きな力になってくれるだろう。

 なら、私のすべき事は彼らを使った有効な戦術を考えることだ。

 

「…分かった。

 里に伝令を出そう。

 鉄砲衆には、この作戦の中核戦力になってもらう」

 

 さて、どう戦えば被害を小さく出来るのか?

 司令部の皆と相談しなければな…






ベノム登場回です。
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