転生した私がゾンビアポカリプスの世界でコロニーを作る 作:ソロモンは燃えている
里に伝令を送り、鉄砲衆を呼び寄せたことで前線での戦いは安定した。
ベノムの対処は鉄砲衆が行い、普通の感染者は弾薬温存のためにレンジャーとサムライが対処する。
司令部周辺のクリアリングは、順調に推移していた。
内政面では、近くを流れる川の岸辺に漁師小屋を建てた。
草地を確保して農場にするまでの繋ぎであるが、工場排水によって汚染されていることを考えると不安になるが、私以外に気にしている者はいなかった。
文明崩壊してから長い時間が経過しているため汚染濃度はかなり低下している。
現在では、人体に大きな悪影響を及ぼすほどの害はないと認識されているようだ。
まあ、こんな世界だ。
健康に気を遣うより、食料を得て生き延びる方を優先されるのが当然か。
これから土地を確保して、農地を作っていくことになる。
問題はどちらに進むか。
この辺りは大きな川が流れているが古代に架けられた橋が点在し、ベノムの侵入路が複数あるため、無計画に拡張すれば防衛が難しくなってしまう。
南は汚染された土地の奥に繋がっている。
センサーが奥に行くほど多くの反応を検知していた。
おそらくベノムの巣が存在しているのだ。
今回の作戦目的は、この地に安全な拠点を築くこと。
ある程度、南に進出する必要はあるが今は避けるべきだろう。
となれば西か東だが、どちらも一長一短となっている。
西は、川に沿って遡っていくことになるが地形が複雑で視界が悪い。
制圧しても大きな領土は得られないだろう。
その代わり防衛線の構築は容易だ。
司令部近くに架かっている橋の向こうに東と南に広大で見晴らしの良い地形が広がっている。
こちらは大きな領土が得られる反面、防衛線が長大となり、構築に大きな労力と資材が必要になってしまう。
ここは、セオリー通り西から進めるのが良さそうだな。
一刻も早く領土を広げたいが、ベノムに対抗するための鉄砲衆の数はまだ少ない。
今後もある程度訓練が終わった鉄砲衆から順次送り出してもらう手筈になっている。
面で守らなければならない私達にとって、現段階での急激な拡大はリスクが高過ぎる。
まずは西の土地を取り、鉄砲衆を増強するための後方支援を充実させる。
他方面からベノムが接近してきた時の備えを考えれば鉄砲衆が20人は欲しい。
東の橋に見張りの兵を配置し、本隊は西へと進んだ。
視界が悪いため、感染者に奇襲されないようレンジャーを先行させる。
しばらくすると大きな森に突き当たった。
木々の密度が高く、隙間にも蔦などの植物が生い茂っていて、これ以上進めそうにない。
西が理想的な地形で良かった。
こういった地形は感染者も避ける。
人間が道具を使っても奥に進むのは容易ではない。
エネルギーを温存しておきたい感染者では尚更だろう。
これで西からの襲撃を警戒する必要はない。
製材所を建て、木材の調達を開始する。
木材の供給体制が確立されれば、拡張を一気に加速させることが出来る。
司令部を設置してからここまで8日。
悪くないペースだ。
鉄砲衆の増援が到着すれば東の制圧を始めよう。
10日目
補給が到着し、鉄砲衆が20人を超えた。
さっそく橋を渡り、付近の感染者の掃討に当たる。
橋周辺の安全を確保し、橋頭堡を確立したことで、領土を東へと伸ばしていく。
鉄砲衆とレンジャー、サムライの連携も今のところ問題なく機能している。
南は、少し上流で分岐した支流に架かっている橋の手前まで進出し、そこで防壁を建設している。
橋の出口を抑えることで防衛線の長さを最小限に出来た。
南から群れが来たときのための準備も進めていくつもりだ。
14日目
「偵察部隊より報告!
南から数十の感染者が接近中!」
「動いたか…防衛設備の建設状況はどうなっている?」
「はっ、南の防壁は完成していますが、石材の確保が間に合わず石の壁にアップグレードは出来ていません。
バリスタ2基、塔も2つ完成しています」
「敵の規模は数十。
全てがベノムだとしてもなんとかなりそうだな。
前線の部隊を呼び戻せ」
東方面の監視のためレンジャーを数人残して、残りを南の防衛線に集める。
密集して向かってくる群れの反応をセンサーが捉えている。
さらに、西側は司令部と繋がってないため、群れの進行ルートをかなり正確に予想できた。
やがて群れが視界に入ってくる。
やはり、群れは全てベノムのようだ。
鉄砲衆がいなければ対応できずにやられていたな。
彼らと接触し、仲間に引き入れられたのは天啓であった。
「鉄砲衆、構えろ!」
まだかなり遠いが問題ない。
鉄砲衆は全員塔に登り、視界を確保している。
元々は監視のための見張り台だったが、ベノムの遠距離攻撃に対応するために転用した。
従来のように防壁の上にいると、ベノムの毒液の餌食になってしまう。
そのため、防壁の後ろに塔を建てて、兵士はそこから攻撃することにしたのだ。
同じ理由でバリスタも塔の上に設置している。
これを攻撃塔システムと名付けた。
「攻撃開始!」
バリスタと鉄砲衆が射撃を開始する。
ベノムは次々と倒れていくが、怯むことなく前進を続け、防壁の前まで到達。
毒液を吐きかけてきた。
ジュゥゥゥゥ!
防壁が嫌な音を立てる。
腐食し、崩れていっている。
木の壁の耐久力では長く持ちそうにない。
だが、問題ない。
バリスタと鉄砲衆の攻撃でベノムは順調に数を減らしている。
防壁が破られる前に全滅させることが出来るだろう。
不測の事態が発生することもなく、最後の1体が倒れ、襲撃は終わった。
予備兵力として塔の後ろで控えていたサムライ、レンジャー部隊も使わずに済んだ。
戦闘後に防壁の状態を確認したところ、損傷がかなり激しい。
破棄して作り直さなければいけない部分がかなり広範囲に及んでいる。
三重に補強してもこれか…石材の確保を急がせねばならないな。
短時間の戦闘でこれ程のダメージを受けたのだ。
今後、群れの数が増えていけば木の壁では持たないことは明らか。
同時に対ベノム戦術に確かな手応えを感じていた。
石の壁であればベノムの毒液にもかなり耐えることが出来るだろう。
防壁で耐え、その後方から塔やバリスタで攻撃する。
これが、今後のスタンダードになる。
襲撃を乗り越え、再び東に領土を伸ばしていく。
その広さから、感染者がすり抜けてしまわないよう面で制圧しなければならないため、進軍速度は遅くなってしまう。
時間を無駄にしないよう、確保した土地に施設を建てていく。
必然的に前線に近い場所で住民が活動することになってしまうが前線の部隊を信じて内政を進めた。
特に石場を見つけた際には、最優先で採石場を建設し、石材の確保に努めた。
最初の襲撃は完勝したと言って良い。
だが、ベノムの襲撃がこの程度で済むはずがないのだ。
センサーが捉えた汚染された土地の奥地にある反応は、とてつもない数を示している。
ここは奴らの領域の外縁部に過ぎないから、あの数が全て向かってくることはないと思うが、過去の経験から襲撃は回を重ねるごとに激化していく。
鉄砲衆の増強だけでなく、防壁の強化も急がなければならないのだ。
25日目
前線は、これ以上の進軍は難しいところまで来ていた。
ここに東からの襲撃に備える防壁を建設する。
防衛線が長いため、全てを一度に石の壁にするのは不可能だ。
少しずつアップグレードしていくしかない。
バリスタと塔の建設も進めておく。
襲撃以外の散発的な侵入は、バリスタで対応できる。
兵士達は、南の制圧に投入するつもりだが。
「感染者に動きあり!
数十の群れが東から接近中!」
「そろそろ来る頃だと思っていたが…よりによって東からか」
愚痴を言っても現実は変わらない。
守らなければならない範囲が広いからと言って、守らない訳にはいかないのだから。
石の壁へのアップグレードは終わっていない。
木の壁が所々に残っている状態だ。
バリスタも広範囲をカバーするため間隔を置いて設置されている。
一箇所に集中されれば不味いことになるかもしれない。
それでも負ける訳にはいかない。
アップグレードが間に合ってない場所には、後方にさらに木の壁を重ね、突破されても持ち堪えられるように備えた。
後は兵士達を信じて、戦うだけだ。