転生した私がゾンビアポカリプスの世界でコロニーを作る   作:ソロモンは燃えている

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転生した私、対毒の防壁を完成させる

 

 

 

 ベノムの襲撃が始まった。

 群れは、南の川に沿って向かって来たため、防壁の南部に攻撃が集中した。

 バリスタや鉄砲衆が必死に迎撃するが、ベノムの攻撃を完全には止められず、防壁が毒液によって消耗していく。

 さらに後方のベノムが壁を攻撃するために停止している前衛を避けるように流れたことで、戦闘は徐々に北部にも広がっていく。

 

 石の壁はまだ余裕がある。

 問題は、やはり木の壁の部分か…

 すでに1枚目が崩れ落ちている場所もある。

 防壁に穴が空くのは時間の問題だ。

 

 報告では、群れは数十とのことだったが見たところ100に近い。

 群れの中心が南であったため、北部での戦闘は余裕がある。

 余剰戦力を抽出し、南部に回すよう指示する。

 全ての塔に限界まで配置できるほど鉄砲衆の数は多くなかったため、南部の塔には空きがある。

 壁を攻撃するためにベノムの前線が止まっていることで、後方のベノムが北に流れていっている。

 北部も決して油断して良い状況ではない。

 あまり多くの兵士を抽出すれば、今度は北部が抜かれるかもしれない。

 兵士の配置転換も時間がかかる。

 ここは、少数でも準備が出来た部隊から移動を開始させる。

 

 北部から戦力を抽出し、南部の兵力を増強が完了した時には木の防壁が限界を迎えていた。

 崩れ落ちた防壁にベノムが殺到する。

 防壁を抜けた先は、さらに防壁に囲まれていた。

 とは言え、これも木の防壁。

 長くは持たない。

 

 侵入したベノムは、内側の防壁も毒液で破壊しようと立ち止まる。

 そのベノムに槍が突き立てられる。

 

 壁の内側で待機していたサムライだ。

 彼らは、刀を槍に持ち替えて、あえて作られた防壁の隙間からベノムを攻撃していた。

 反撃の毒液は、防壁を盾にしてやり過ごす。

 

 サムライの攻撃によってベノムが倒されていくことで内壁が破壊されるペースはかなり鈍り、時間を稼ぐことに成功。

 

 増強された鉄砲衆の活躍もあり、押し寄せるベノムの群れも終わりが見えてきた。

 最後のベノムが撃ち殺されたことで襲撃は終わりを迎えた。

 

 防壁はボロボロで所々に穴が空き、内壁でも防ぎきれなかった毒液で負傷したサムライが数人でた。

 それでも死者を出さずに防衛を成功させたのだった。

 

 

 襲撃を乗り越えたからとゆっくりしている暇はない。やらなければならないことが山ほどあるのだ。

 まずは、防壁や防衛施設の修復。

 破壊には至らなかったが、バリスタや塔もかなりダメージを受けていた。

 次の襲撃に備えるために万全の状態にしておく必要がある。

 木の壁だった所はほとんどが破られており、石の壁へのアップグレードは急務だ。

 石の壁も無傷ではなく、その修復もしなければならない。

 住民達が労働者となり、さっそく作業に取り掛かる。

 ここが彼らの戦場であり、戦いなのだ。

 

 住民達が防壁の修復に精を出す中、兵士達も歩みを止めることはない。

 彼らは南の橋を渡り、南部の制圧に取り掛かった。

 橋を利用した今の防衛線では、規模の大きい群れの対処は難しい。

 接敵範囲は狭いが、それ故に戦闘が長引いてしまう。

 それだけ防壁にベノムの毒液によるダメージが蓄積してしまうことになる。

 防壁が突破されてしまえば、一気に雪崩れ込まれてしまう。

 司令部にも近過ぎるため、もう少し南に進出する必要があるのだ。

 

 防壁に作られたゲートから兵士達が南へと進軍していく。

 この防壁は、最前線が破られた時に備えて第2防衛ラインとして残しておく。

 

 

 やはり、南下すればするほどベノムの数は増していった。

 鉄砲衆は順調に増強されているが、それでも力押しでは進めなかった。

 数に押され、接近を許せば毒液で負傷者が出る。

 防壁まで下がり、防衛兵器を利用して集まってしまったベノムを排除しなければならない事態が何度も起きた。

 南部の制圧が遅々として進まないが、強引に押し上げようとすれば兵士達の命が犠牲になる。

 後の防衛戦を考えれば、そんな選択は出来ない。

 だが、次の襲撃が南から行われれば、今の防衛線で耐えるのは難しい。

 なんとしても南にもう一枚防衛線が必要なのだ。

 

 どうすれば良い?

 さすがに防壁もなく、あの数のベノムを捌くのは不可能だ。

 

「前線の少し後ろに防壁と塔を作れば良いのでは?

 そうすれば、大きく後退する必要はなくなるでしょう」

 

「前線の近くで作業させるつもりか!?

 危険すぎる!

 何より、建設には時間が掛かる。

 前線でそんな悠長なことはしていられない!」

 

「何も完璧な防衛施設である必要はないでしょう。

 戦闘音で集まった数程度なら簡易的なもので十分なはずです」

 

「想定以上の数が集まってしまったらどうする?」

 

「防衛施設が破壊されている間に後退すれば良い」

 

「なるほど、それは良い考えですね。

 簡易的な防壁なのだから死守する必要もない。

 いや、むしろ積極的に釣り出して、防衛施設を利用すれば、効率的に間引くことが出来るのではないか?」

 

 進軍を困難にしているのはベノムの密度だ。

 対処できる数だけ引っ張ってくることを繰り返し、数を大きく減らした後に進軍すれば楽に進める。

 

 もちろん、簡易的なものであっても、それなりの時間、前線の近くで作業しなければならない。

 労働者には負担を掛けてしまう。

 

 作戦を説明し、志願者を募ったところ、すぐに定員が埋まった。

 彼らの献身には、いつもながら頭が下がる。

 私に求められているのは結果で応えることだ。

 南部を制圧し、強固な防壁を築いてみせる。

 

 

 南部での作戦を進めていく中で、再び襲撃が始まった。

 今度は、南西から侵入してくるようだ。

 前線には、すでに簡易的な防壁が作られているため、迎撃の準備に掛かる時間は大幅に短縮できる。

 襲撃が来る方向の防壁を強化していけば良いのだ。

 石壁へのアップグレード、塔の増築とバリスタの配備。

 労働者達も、作戦中ずっと建設作業を続けてきたため、手慣れた様子で防衛施設を完成させていく。

 結果、ベノムの群れが防壁にたどり着いた頃にはこれまでで最も強固な防御陣地が完成していた。

 

 

「射程に入りしだい攻撃を開始せよ!」

 

 前線指揮官のレンジャー隊長の号令で戦闘が開始される。

 ベノムの群れはさらに数を増やしているが、戦力が増強されているのはこちらも同じ。

 防壁も建設速度を優先させたために不揃いではあるが5重に達している箇所もあるほどだ。

 

 防壁でベノムの毒液を耐えている間に鉄砲衆とバリスタによって排除していく。

 この基本戦術は変わらない。

 ベノムに対しては、これからも鉄砲衆が中心になっていくだろう。

 サムライやレンジャーでは、ベノムに対処するのは難しい。

 レンジャー隊長の心に新参者でありながら作戦の中心になっている鉄砲衆への嫉妬はない。

 高い威力と長い射程を持つが弱点もある。

 装填に時間が掛かるため、ベテランであっても攻撃間隔が空いてしまう。

 その間に距離を詰められて、接近されてしまえば脆い。

 

 どんな兵種にも長所と短所がある。

 要は適材適所だ。

 皆が自分に出来ること、やるべき事を成す。

 それが出来なければ感染者との戦争は、我らの無惨な敗北で終わるだろう。

 

 これは、真っ先に兵士に叩き込まれる基本理念。

 小さなプライドのために仲間を死なせるなどあってはならないのだから。

 

 待機しているレンジャー達も、戦闘面で役に立てない事に悔しい思いをしている。

 それでも、自分達の存在も必要なのだと理解しているから腐ることはない。

 

 そんな我らをサムライも鉄砲衆も認めてくれている。

 彼らを死なせたくない。

 心の中から湧き上がる強い想いに突き動かされるように全力で指揮を取る。

 最前線で必死に声を張り上げていた司令官殿の気持ちが今なら理解できる。

 命を背負う重みに体が震えるが、投げ出したいとは微塵も思わなかった。

 むしろ、司令官殿が背負っていたものを少しは分かち合えるようになったことを嬉しく感じていた。

 ここで無様は晒せない。

 心を一つにした人間の力、ベノムに思い知らせてやろう!

 

 

 レンジャー隊長の指揮の下、防衛部隊は奮戦し、襲来したベノムを殲滅した。

 ベノムは前回の襲撃を遥かに上回る数で襲って来たが、防壁にダメージを与えることしか出来なかった。

 今回の襲撃で私は司令部に待機していたが何もする事がなかった。

 硬い絆で結ばれた仲間達となら、どんな強力な感染者にも勝てるだろう。

 さあ、この地を人類が奪還するために最後の仕上げと行こうか…

 

 襲撃後、南部の地を進み、十分な領土の確保に成功。

 ベノムの侵入路となる南と南西に防壁を建設し、塔やバリスタも配備した。

 その後に起きた、全方位からの最大級の襲撃は激戦となった。

 特に南からの圧力が強く、防衛線が崩れる可能性すらあった。

 襲撃を凌ぎ切った東部の戦力を南に回して、なんとか前線を立て直すことに成功し、開拓地を守り抜く事が出来た。

 

 この襲撃を最後にベノムの侵攻は落ち着いていく。

 これは、人類がベノムの縄張りの切り取りに成功したことを意味する。

 ベノムの巣食う汚染された土地のほんの一部に過ぎない。

 それでも、人類の明確な勝利だった。

 

 ここは、これからもベノムに対する強固な防壁としての役割を果たし続けるだろう。






コロニー拡張が軌道に乗ると同じことの繰り返しなので、間延びにならないように最後は駆け足になりました。
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