転生した私がゾンビアポカリプスの世界でコロニーを作る 作:ソロモンは燃えている
弾薬の備蓄が完了し、西の道を塞ぐ感染者の群れを攻撃する準備が整った頃、私は国王に呼ばれ王国に戻っていた。
私は今、国王と謁見している。
平民である私は、これまで国王を間近で見る機会はなかった。
若干の緊張を感じながら言葉を待つ。
「よく来てくれた、司令官
大きな作戦の前にすまないな」
「いえ、陛下との拝謁、身に余る光栄でございます」
「謙遜することはない。
そなたが遠征隊を率いて王国から出てからおよそ2年が経った。
王国の版図は拡大し、開拓地は10に迫り、その全てが順調に運営されている。
今やそなたは王国にとって最重要人物の一人となった。
余以上のな…」
「そのようなことは…」
思いがけない言葉にとっさに否定の言葉を口にしようとした私は、陛下の目を見て言葉を飲み込んだ。
その視線には、物理的な圧力を感じるほど威が込められていた。
「理解せよ。
そなたには、もう負けは許されないのだ。
そなたが敗北した時、王国に最も暗い時代が訪れるだろう」
「……肝に銘じます」
そう言って頭を下げる。
同時にその言葉の一部が間違っているとも思った。
確かに私が敗走してしまえば士気は低下し、各地の開拓地が押し寄せる感染者を前に踏みとどまることが出来なくなるかもしれない。
だが、目の前の彼女がいる限り、王国が決定的に崩壊することはないだろう。
全てがギリギリだった王国を治め、崩壊させることなく維持してきた一族。
王は一人しか子を生さない。
決して二人目を作ることはないのだ。
そんな一族が王として君臨してきたからこそ、遠征という口減らしを繰り返しながらも国民は一つに纏まってこれた。
今代の王は女性だった。
その小柄な身体にかかっている重圧はいか程だろうか…
ただの一平民であった時には想像も出来なかったが、司令官として人々の希望を背負うことになった今なら少し理解できる。
彼女が背負うものを少しでも軽くするためにも、負けられないな。
自分が背負っているものの重さを改めて自覚し、王宮を後にした。
国王との謁見を終えた後、私は技術研究所を訪れていた。
新たなアーティファクトを持ち込んだこともあり、研究状況がどうなっているかを確認するためだった。
「おお、よく来たな。司令官殿」
「所長、ご無沙汰しております。
今回のワスプ量産や弾薬の備蓄への尽力、感謝します」
「何を言う、我々は自分の役目を果たしたまでのこと。
司令官殿のお役に立てたのなら本望じゃ。
さて、司令官殿も何かと忙しい身、さっそく本日の用向きを伺いましょうか」
「先日回収されたアーティファクトによって、今後の技術研究がどうなっていくのか教えて頂きたい」
司令官として、今後の作戦にどんな物が投入可能になるのか把握しておきたい。
「ふむ、まずはクリスタルパレスについてじゃが、すぐに実物を建設することは出来ぬ。
大量の資源を投入して研究を行い、理論の実証と技術の習得を行わなければなりませんからな」
まあ、これについては想定通りだった。
効率良く食料を生産するためには、かなり大規模な施設にする必要がある。
大量のガラスも必要になるだろう。
「この技術は、王国の未来に必要不可欠なもの。
市場に流れる資源を絞ってでも実用化しなければならないと考えております。
そこは国民にも我慢してもらいましょう」
王国の領土が広がり、得られる資源に余裕が出来たことで市場が形成されていた。
今までは全てが不足していて、統制されないと維持できなかった経済が回り始めつつあるのだ。
そこに投入されていたリソースを割いてまで必要とされる技術なのか…
「優先度が高いことが疑問ですか?
確かに軍事力の強化に直結するものではありませんし、輸送力の関係上、作戦地域で食料生産を行わなければならないことも変わらないでしょう。
それでも必要なのですよ。
王国では今、生まれる子供の数が急激に増えています。
それだけ、国民が未来に希望を抱けるようになったということです。
人口とは国の力そのもの。
感染者との戦争を勝ち抜くことが出来る軍事力を得るためには、より多くの人口を養うことが出来る食料生産能力を獲得しなければならない。
この技術は、その要となるでしょう」
そうか…開拓地でも王国でも赤子の姿をよく見かけると思っていたが、出生数が増加していたのか。
考えてみれば当たり前か。
今までは子供を産んでも養いきれない者は、遠征という形で切り捨てなければならなかった。
だが、遠征の意味が変わった。
王国の…人類の未来を切り開くための戦いになったのだ。
未来に絶望していれば、その閉塞感から子供が欲しいとは思わなくなる。
前世の世界でも同じだ。
人の上に立ち、国を率いる者がやるべきこととは、民衆に未来への希望を持たせることなのだな。
なら、前世で出生率が改善されなかったのも当たり前だ。
政治家や官僚、大企業の経営陣の行動理念は『今だけ、金だけ、自分だけ』だったのだから。
それを国民に見透かされていたから、どんな少子化対策も碌に効果が出なかったのだ。
この世界では違う。
国民が王や私を信じてくれたから、子を産み、育てるのだ。
王国は前に進もうとしている。
国として成長期に入ろうとしていた。
「理解して頂けたようですね。
この良い流れを止めないためにも、人口が増えても安心だと示すためのクリスタルパレスです。
最も、司令官殿が負けてしまえば無意味なものに成り下がってしまいますが。
ですから、負けないために必要な軍事力の話も致しましょうか」
そう、話はこれで終わりではない。
探索で得たアーティファクトは火炎放射器。
これは、確実に軍事力の強化につながるはず。
「火炎放射器の構造解析は完了、量産の為の製造ラインも確保済みです」
「おおっ、では王国でもルシファー隊を運用出来るのですね!?」
「残念ながら、それは不可能ですな。
この火炎放射器は、高い火力故に使用者の身体をも焼いてしまう。
ルシファー隊として運用するには耐熱防護服が必要となります」
今回手に入れたアーティファクトは火炎放射器だけで、耐熱防護服については情報すらない。
過去の文献では、ルシファー隊は感染者との戦争においてかなりの戦果を上げたとある。
期待していただけに落胆は大きくなってしまう。
「なに、人間の手で運用することが出来ないなら別の方法で活用すれば良いのです」
「所長に考えがあると?」
「バリスタのような攻撃塔として使えば良いのではと思い、設計してみました」
そう言って、図面を広げて見せてくれた。
「名を火焔砲塔。
燃料には植物から生成したバイオマス燃料を使用。
理論上、多数の感染者を一度に焼き払うことが可能です」
「こ、これは素晴らしい」
まさに王国が必要としていた兵器だ。
レンジャーと棘の罠の組み合わせが群れに対する最も効果的な戦術だが許容量を上回るような数の群れや地形によって実行できない場合がある。
数の脅威に対抗できる兵器が喉から手が出るほど欲しかったのだ。
「過信は禁物ですよ。
強い生命力を持つ上位の感染者には、あまり効果的ではありません」
「そんなものは欠点になりません。
感染者の中でも桁違いに数が多いのはウォーカーやランナーです。
上位感染者は強力ですが、その代わり数が少ない」
少ないと言っても通常の感染者と比べればの話だが。
それでも鉄砲衆やサムライで対処できる範囲だ。
火焔砲塔を上手く使えれば、兵士を上位感染者の対処に専念させることが出来る。
構造が複雑なためバリスタ以上に建設に時間がかかる。
また、燃料の関係からあまり多用は出来ない。
それでも大きなアドバンテージを与えてくれるだろう。
火焔砲塔は、ゲームのショッキングタワーに相当する施設になります。