転生した私がゾンビアポカリプスの世界でコロニーを作る   作:ソロモンは燃えている

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転生した私と巨人キラー

 

 

 

 資料室の探索を進める中でようやく求めていたものが見つかった。

 業務日誌のようだったが、最後の方は記入者の心情がこもったものになっていて報告書の体をなしていなかった。

 それだけ追い詰められていたのだろう。

 

 

 ◯月◯日

 

 ついに試作品が完成した。

 射撃実験が成功すれば、全てが変わる。

 最近、報告があった巨大な化け物とやらが実在したとしてもこれがあれば倒せる。

 このレールガンさえ完成すれば…

 

 

 ◯月◯日

 

 射撃試験場にレールガンを組み上げた。

 後は試射するだけ。

 成功すれば、感染者がどれほど変異しようと問題ではなくなる。

 すぐに実験の申請を上げることにする。

 

 

 ◯月◯日

 

 まだ実験の許可が下りない。

 なぜだ?

 上は保安上の理由で許可できないの一点張り。

 レールガンの価値を理解していないのか?

 世間では岩戸計画なんてものが話題になっているようだが、あんなものでこの戦局をどうにか出来るとは思えない。

 私のレールガンだけがこの国を救えるのに…

 

 

 ◯月◯日

 

 案の定、岩戸計画は失敗した。

 もはや上の許可を待っている猶予などない。

 実験を強行することにした。

 研究所のすべての電力を注ぎ込んで試射を行う。

 そのために必要な制御システムにログインするためのパスワードも入手できた。

 私が世界を救ってみせる。

 

 

 ◯月◯日

 

 実験は成功した。

 レールガンは、想定以上の威力を発揮してくれた。

 これなら、あの巨人ですら駆逐できる。

 なのに…なのに、なぜ施設内で感染が広がっている!?

 馬鹿な職員たちは、セクター間の扉を封鎖して籠城している。

 このまま餓死するつもりか?

 こんな所で死ぬわけにはいかない。

 軍にデータを届けなければならないのだ。

 別の出口を探して、脱出しなければ…

 

 

 

「…………」

 

「……隊長」

 

「なにも言うな。

 目的のものは見つけた。

 今は、それだけで十分だ」

 

 技術資料だけでなく、実物も手に入る可能性が高い。

 

「射撃試験場を探すぞ。

 各セクター間の扉は、すべて開けておけ。

 アーティファクトを確保したら、最短距離で搬出する」

 

 技術資料だけでは、巨人の侵攻には間に合わない。

 現物を持って帰る必要があるのだ。

 既にあらかたの感染者を排除済みなので、扉で封鎖している意味もない。

 搬出路を確保しつつ、射撃試験場を目指して進んでいく。

 

 最終セクターは元々人が少なかったのか、意外と感染者の数は少なかった。

 ほどなく射撃試験場にたどり着き、そこに鎮座しているレールガンを発見した。

 レールガンはかなり大型で、人力で運び出せる物ではなかったが、技術資料にはパーツ毎に分解することが出来ると書いてあった。

 兵士たちがレールガンに取りついて調べてみると、資料通りに分解することが出来た。

 

「これで搬送できるな。

 速やかに帰還する」

 

 王国を救う鍵は手にした。

 後は持ち帰るだけ。

 兵士たちは古代遺跡を脱出し、離脱用のトラックにレールガンのパーツを積み込んで王国へと走らせた。

 

 

 

 レールガン入手の報告を聞いた私は、巨人がいる開拓地から最も近い開拓地に運び込ませた。

 巨人が動き出したという報告も入ってきたため、急ピッチで組み上げ、迎撃の準備を進める。

 志願したレンジャーたちが王国の領域外への誘導を試みたが、巨人が進路を変えることはなかった。

 これは、明確な意図を持った進撃だった。

 

 

「来たか……やはり、大きいな。

 準備が間に合って良かった」

 

 実際に目にすると、その大きさに圧倒されてしまう。

 こんな脅威を前に全滅するまで戦った守備隊の勇敢さに畏敬の念を覚える。

 司令官の私が気圧されている場合じゃない。

 

「チャージ完了、照準よし。

 いつでも撃てます」

 

「お前はもう無敵の存在じゃないことを思い知らせてやる。

 ……撃て!」

 

 それは意外なほど小さな発射音だった。

 だが、極超音速で放たれた弾丸は、大きな威力を発揮した。

 弾丸が巨人の肩付近に着弾し、左腕が千切れ飛んだ。

 

 いける!これならば巨人の命に届く。

 そう確信した私は、矢継ぎ早に指示を出す。

 

「チャージ開始。

 照準の補正を急げ。

 次は頭にぶち込むんだ」

 

 兵士たちが忙しなく動いている。

 初めて扱う兵器のはずだが、資料を必死に読み込んでいたためか、その動きに澱みはない。

 本当に頼もしい部下たちだ。

 

「照準補正よし。

 チャージ80%」

 

 レールガンは、発射に膨大な電力がいる。

 連射は出来ない。

 このチャージ時間がもどかしく感じる。

 すでに巨人は壁の前まで来ている。

 

 巨人の腕を防壁に叩きつける。

 轟音が司令部まで届いた。

 凄まじい威力だ。

 防壁は5重にまで増設されているが、今の一撃で1枚目の壁はすでにボロボロの状態だ。

 すぐに破壊されてしまうだろう。

 バリスタやワスプの攻撃も始まっているが、サイズ差から表面に傷を付けることしか出来ていない。

 レールガン以外で致命傷を与えるのは無理か。

 

「チャージ完了しました」

 

「撃て!」

 

 照準を補正した2射目は、目標である巨人の頭部を正確に捉えた。

 巨人の頭が破裂し、消し飛んだ。

 頭部を失った巨人がゆっくりと仰向けに倒れる。

 起き上がってくる気配はない。

 巨人の身体が塵になっていくのを見て、ようやく巨人が死んだと確信できた。

 

「やった、巨人を仕留めたぞ!」

 

 兵士たちから勝鬨が上がる。

 

「落ち着け。

 まだ、巨人が引き連れてきた感染者の群れが残っている。

 喜ぶのは奴らを全滅させてからだ。

 守備隊の仇を討つぞ」

 

「「「おお!」」」

 

 兵士たちが残敵の掃討を開始した。

 巨人を討った今、残りの感染者の脅威は低い。

 問題なく殲滅できるだろう。

 

 改めて防壁の状態を確認する。

 破壊された1枚目だけでなく、2枚目、3枚目の壁もかなりダメージを受けている。

 僅かな時間、それも片腕を潰した状態でこれなのだ。

 レールガンがあっても甘く見れる相手ではない。

 だが、今は巨人を倒せる手段を得られたことを喜ぼう。

 

 残敵の掃討が終わり、今回の巨人の進撃を凌ぐことが出来た。

 準備が整えば逆侵攻をかけ、失った開拓地も取り戻せるだろう。

 そんな私の考えは、王国に召集され、そこで聞かされた話によって根本から覆ることになる。

 

 

 

 王宮・謁見の間

 

「陛下、今回の緊急の呼び出し。

 なにがあったのでしょう?」

 

「うむ、新たな事実が判明し、状況が急変した故、そなたを呼び戻したのだ」

 

「状況の急変…それは、どのような?」

 

「それは、私から説明します」

 

 この場に同席していた技術研究所の所長が説明を始める。

 

「感染者の反応を捉えるセンサーを改良していたところ、東京方面から強力な信号の発生を検出した。

 巨人の襲来は、その直後に起こったのです」

 

「!……まさか」

 

「今のところ、この二つの因果関係は不明です。

 ですが、偶然と言うには出来すぎている。

 以前から司令官殿が提唱していた感染者を統括する存在の可能性とも付合します」

 

「この信号の発生源が感染者の総司令官であると?」

 

「その可能性は否定できません。

 この信号源をアルファと仮称します。

 今後、アルファの信号が検出されたと同時に感染者に動きがあれば…」

 

「アルファが総司令官であることがほぼ確定する」

 

「その通りです」

 

 ここで沈黙していた陛下が口を開く。

 

「王国は今後、アルファの討伐を最優先目標とする。

 司令官であるそなたには、心に留めおいてほしい」

 

「心得ました」

 

 どうやら、戦争は新たなフェーズに突入したらしい。

 私の仮説が正しければ、アルファを討てば感染者は戦術的な動きが出来なくなる。

 この戦いの終わりが朧げながら見えてきた気がした。

 今まで避けてきた東京方面に進出する時が来たのかもしれない。

 

 

 

 

 

 読切新聞

 

 世界の終焉?

 

 岩戸計画が失敗して久しいが、人類を取り巻く環境は悪化の一途をたどっている。

 先日も軍の防衛線が崩壊し、多くの犠牲が出てしまった。

 新たな首相の下、組閣された政府は首都圏での感染封じ込めを諦め、仙台への遷都を決定。

 同時に大規模な爆撃を伴う消毒作戦が決行された。

 東京は火の海と化し、感染は焼き払われたかに見えた。

 しかし、炎の中から奴らが現れた。

 今までも感染者はさまざまな変異を遂げてきたが、今回のそれは人類の終わりを決定付けるもののように感じてしまう。

 大地を埋め尽くす巨人の群れ。

 その進撃を止めることは、いかなる兵器を持ってしても出来なかった。

 奴らが通った跡には何も残らない。

 もはや神の奇跡に縋るしかない。

 我が国にいた八百万の神は、何処へ行ってしまったのだろうか?

 おそらく、これが我が社の発行する最後の新聞になるでしょう。

 この言葉を持って締めくくりたいと思う。

 人類の未来に幸あらんことを…

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