転生した私がゾンビアポカリプスの世界でコロニーを作る 作:ソロモンは燃えている
2度目の襲撃を乗り越え、我々は南への領土拡大を再開した。
前線の押し上げはレンジャーが中心となっているが、サムライや鉄砲衆を増強するフェーズに入っているため、彼らも徐々に前線に投入されていった。
そして、南の土地がほぼ平定されようとした時にそれは起こった。
数体のハーピーが突然、前線に飛び込んで来たのだ。
瞬く間に数人のレンジャーが殺されてしまった。
近くにいたサムライが対処に当たったため、被害の拡大は抑えられたが、ハーピーという上位種の出現は、ウォーカーとランナーが中心の比較的安全なエリアの終わりを意味していた。
ここから先は、多数の上位種が出没する危険なエリアになる。
前線の兵士は、サムライと鉄砲衆に完全に置き換えられた。
レンジャー部隊は後方に下がり、今後は伝令や偵察などの任務に当たることになる。
「やはり、この瞬間が一番歯痒いですね」
レンジャー隊長の口からこぼれてしまった言葉は、きっと全てのレンジャーが感じていることだろう。
より強力で、より凶暴な上位感染者との戦いに自分たちは役に立てない。
彼らとて自分たちが必要不可欠な存在であることは理解している。
非力であるがほとんど音を立てずに敵を倒せるレンジャーがいなければ、作戦の初期段階を切り抜けることなど不可能だ。
だが、理屈ではない。
ある程度、作戦が進めば肩を並べて戦うことが出来なくなることが辛いのだ。
伝令や偵察などの任務を軽んじているわけではないが、戦友が命を張って戦っている姿を見ていることしか出来ない自分をどうしても不甲斐ないと思ってしまう。
「そうだな。
だからこそ…出来る精一杯をこなさなければな。
彼らのために」
「…そうですね。
愚痴を言っている暇があるなら、出来ることを探すべきでした」
レンジャーたちの気持ちは分かる。
それは、私が常に感じてきたことだからだ。
レンジャー隊長も、そのことを察したのだろう。
若干、気まずそうな表情で部隊に指示を出している。
どうやら、気負いすぎていたことに気づいたようだな。
盟友と言えるほど信頼していたサムライ隊長が鬼武者となったことで、自分ももっと役に立たなければと思っている様子だった。
もちろん、それで判断を誤るような男ではないが、万全な状態であることに越したことはない。
後方には後方の戦いがある。
前線で戦う兵士たちが一人でも多く生き残れるように……
27日目
「襲撃です!
数百体のハーピーが南から接近中」
「ついに上位感染者の群れが到達し始めたか……だが、想定外ではない。
ハーピーの移動速度を考えれば、十分予想できることだ」
南は既に制圧済みで、防衛に適した地点も確保してある。
防衛兵器の増設とサムライを集結させる指示を出した。
敵の規模は、かつてハーピーの巣を攻略した時に匹敵する。
その時は、大きな犠牲を出しながら勝利を掴んだ。
今回も負けない。
勝ってみせる。
この必勝の信念こそが、絶望に飲み込まれないための最低条件だった。
24時間後
ハーピーの群れが作戦エリアに侵入してきた。
群れは、まっすぐ防壁を目指している。
「撃て!」
防壁の後ろにある木の塔から鉄砲衆が一斉射撃を開始する。
しかし、それで止められるほどハーピーの移動速度は遅くない。
あっという間に距離を詰め、防壁に到達されてしまった。
「接敵………ハーピーの足止め効果確認!
上手くいきました!」
前線からの報告に安堵と高揚が同時に湧き上がる。
そう、我々の戦術は常に進化している。
何の工夫もなく迎え撃ったわけではなかった。
木の壁を5重にした。
ただ単純に重ねるのではなく、壁と壁との間に少しだけ隙間を作ってある。
ハーピーの性質を利用するためだ。
ハーピーは、鳥のような羽根を持つが空を飛べない。
防壁を飛び越えるのは跳躍によるもの。
では、高く跳ぶためには何が必要か?
…助走だ。
ハーピーは、地面を滑空することでかなりのスピードを出すことが出来る。
では、そのスピードを失った状態で高く跳ぶことが出来るだろうか?
そんな疑問から生まれたのがこの防壁だ。
ハーピーには、近くに人間がいれば無人兵器や防壁を無視する性質もある。
壁の後ろにいるサムライや塔の上の鉄砲衆に反応して壁を飛び越えようとするのだ。
その結果、壁の間に着地したハーピーがさらに飛び越えようとするが、なかなか成功しない。
一度にサムライたちの所に到達するハーピーの数を減らすことに成功していた。
総数自体はハーピーの方が圧倒的に多い。
サムライと鉄砲衆は、増強したとはいえ合わせても100には届かない。
それでも数的優位を保ちながら戦闘を行うことに成功していた。
そこにバリスタやワスプの援護が加わるのだ。
終始安定した戦闘を行うことができ、群れの規模から考えると奇跡的なほど軽微な損害で襲撃を乗り越えることに成功した。
「さて、次はどこに進むか……」
ハーピーの群れを撃退した私たちの前には、四つの進軍ルートがある。
東に進むルートが二つ。
一つは、司令部から東に続く回廊。
もう一つは、南の土地から東に抜ける道。
西のルートも二つ。
司令部の西に流れる川に架かる橋を渡った先と川に沿って南西に進むルート。
もっとも、安全なルートなど一つもないのだが。
東の回廊を進んだ先は北に大きく開けているが、鬼の反応が複数ある。
南の土地から東に抜けた先には大規模な廃墟が確認された。
では、西はどうかと言うとこちらも過酷な道だ。
まず、川の向こうに巨大な廃墟がある。
南西には、多数のベノムが確認された上にこちらも鬼の反応が複数。
どこもイバラの道だ。
だが、これまでに踏破してきた道でもある。
王国を出た当初は、数十体のウォーカーですら大きな脅威だった。
多くの作戦を経て、成長してきたから今がある。
犠牲を出しながらも進んで来た道が、未来に続く道を切り開く力を与えてくれた。
なら、絶望する理由が何処にある?
困難ではあっても不可能ではない。
俯いている暇などない。
顔を上げて、前を向いて歩いていくんだ。
前へと…未来へと…
さあ、進撃開始だ!