転生した私がゾンビアポカリプスの世界でコロニーを作る   作:ソロモンは燃えている

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転生した私と天空の塔 その4

 

 

 

 サムライと鉄砲衆の混成部隊が川沿いに南西へと進んでいる。

 東へのルートが狭くなっていて防衛に適していることもあり、南西の進軍ルートを選んだ。

 川を渡った先の廃墟も放置は出来ないが大きな戦闘音が発生してしまう。

 廃墟攻略中に鬼やベノムに背後を突かれる危険性が高い。

 そのため、まずは南西の感染者を掃討することにしたのだ。

 

「ベノム接近!」

 

「構えろ、射程に入りしだい撃て!」

 

 ドオオオン!

 

 ベノム討伐の主力は鉄砲衆である。

 毒液による遠距離攻撃が主体のベノムに対して、それ以上の射程を有する鉄砲衆なら数の優位さえ確保できれば野戦でも安全に討伐が可能だ。

 ベノムの縄張りに足を踏み入れて以降、玉ねぎの皮を一枚一枚剥くように外側から釣り出して排除を進めていく。

 なかなか前には進めないが焦ってはいけない。

 被害を受けずに戦力を維持し続けることが結果として最も速く進めるのだから。

 

「鬼が動いた!

 もの凄い速さで接近してきます!」

 

 多数の鉄砲衆が隊列を組み、斉射を行なっていれば、その戦闘音は必然として鬼と言う強力な感染者を引きつけてしまう。

 鬼武者は、まだ使えない。

 西側は大きく開けていて防衛に向いていないからだ。

 鬼武者が引き寄せる感染者の大群を迎え撃つには膨大なリソースがいる。

 それは、進軍を大きく遅らせることに繋がってしまう。

 西側を制圧し、広大な後方地域を確保した上で防衛に適した地点を確保している東方への進軍。

 その時こそ鬼武者の投入が可能になる。

 

「サムライが前に出る。

 我々が足止めしている間に鉄砲衆の集中砲火で仕留めろ!」

 

 今はサムライで対応するしかない。

 言うまでもなく、鬼と対峙することは容易なことではない。

 3メートルを超える巨体と圧倒的な身体能力は、重装甲のサムライでも耐えられるものではない。

 鬼が腕を振り回すたびにサムライが傷ついていく。

 攻撃をガードしても甲冑はひしゃげ、曲がった腕は確認するまでもなく折れている。

 イモータル・アカデミーのお陰で全員がベテラン並みの実力を持つ精鋭たちだが、それでも長くは抑え込めないのが鬼と言う感染者だ。

 

 だが、ここには鉄砲衆がいる。

 この時だけはベノムを後回しにしてでも鬼に照準を向ける。

 今度は鬼の巨体が仇となる。

 サムライと乱戦の最中であっても、その巨体ゆえに射線が通っていた。

 

 ドオオオン!

 

 サムライに囲まれても一際目立つその巨体に無数の銃弾が撃ち込まれる。

 だが、鬼の動きは衰えない。

 まるで不死身ではないかと思わせる生命力だが、兵士たちに動揺はない。

 鬼の生命力の強さは知っている。

 この程度で終わる相手ではないことなど最初から分かっていたことだ。

 

 兵士の一部はベノムの攻撃に晒されているが、優先順位を間違う者などいない。

 狙撃手らしく、冷静に標的を狙い続ける。

 

 2射目が放たれた。

 

 再び鬼の肉体に孔を穿つ。

 これだけの銃弾を立て続けに受けて、さすがの鬼でもこたえたのか動きが鈍り始める。

 

「今だ、畳みかけろ!」

 

 隙を見逃さずに防御に徹しても削られ続けていたサムライが攻勢に転じる。

 届くようになった刃が傷口を拡げていく。

 そこに3射目が放たれた。

 

 全身を紅く染めた鬼がついに倒れる。

 崩れて塵になっていく体が鬼が死んだことを教えてくれる。

 

「さあ、残りのベノムを片付けるぞ!」

 

 鬼を倒したからと戦闘は終わらない。

 周りには鬼が呼び寄せたベノムの大群が残っているのだ。

 鬼への対処を優先したため、ベノムに接近を許してしまっている。

 それでも、まだマシな状況だと言えた。

 鬼の討伐に時間を掛かってしまえば、さらに多くのベノムを呼ばれて、前線が崩壊していたはずだ。

 

 何より、どれほど厳しい状況でも勝って前に進まなければならないことを全員が理解していた。

 サムライが盾となりベノムの攻撃を引き付ける。

 鉄砲衆が側面から攻撃を仕掛けて数を減らしていく。

 

 サムライが全てのベノムを引き付けることが出来るわけではない。

 鉄砲衆の攻撃もベノムの攻撃を完全に沈黙させることは不可能。

 無傷ではいられない。

 それでもベノムを駆逐していった。

 

 

 

 補給と増援を得ながら、さらに2体の鬼を討伐したことで南西の制圧が完了した。

 南西には、もう鬼の反応はない。

 前線も司令部からの補給限界に到達している。

 これ以上の前進は、防衛コストが増大するだけで利がない。

 南に続き、南西も防衛設備の建設を開始、並行して廃墟の攻略を進めようとしたが……

 

 

「襲撃です!

 3方向から同時に到達する見込み」

 

「群れの襲撃が重なったか…

 それぞれの内訳はどうなっている?」

 

「はっ、東西から来る群れはランナーとエリートの混成…いえ、大部分がエリートで構成されています。

 南からの群れは、すべて太った感染者…デブです」

 

「……」

 

 司令部に静寂が訪れる。

 東西の群れについては問題ない。

 エリートが主体と言えど、いまさら恐れることはない。

 火焔砲塔の配備も始まっているため、どれほどの規模であっても支えきれるだろう。

 

 だが、デブの大群となれば話は違う。

 ハーピーやベノムのような特異な能力を持っているわけではないが、生半可な防壁など簡単に破壊できるほどの腕力を持ち、その耐久力の前では火焔砲塔の効果も低い。

 上位感染者に片足を突っ込んでいるような存在だ。

 

「幸いにも南は対ハーピー用に建設した5重の防壁がある。

 火焔砲塔の効果は薄いから東西への配備を優先する。

 南には鉄砲衆を集結させ、バリスタやワスプと共に迎撃に当たれ」

 

 指示を出すと司令部の面々は一斉に動き始めた。

 

 そうだ、三つの群れの襲撃が何だと言うのか。

 最終的に押し寄せてくる感染者の数がどれ程になるのかを考えれば、こんなものは先触れでしかない。

 この程度で怯んでなどいられない。

 

 

 戦闘が始まった。

 やはり、過去に類を見ないほどの規模に膨れ上がった群れによる襲撃だった。

 東西から来た群れは途中の廃墟からも合流しているようで終わりがないと思わせるほどだ。

 だが、防衛は安定している。

 火焔砲塔が焼き払い、そのインターバルをバリスタやワスプが埋める。

 防壁の上に配置されたサムライも、壁に取り付いた感染者を切り払っていく。

 単純な数だけでは押し切れない防御陣地が構築されていた。

 

 最も苦戦したのは、やはり南だった。

 デブは、ランナーやエリートほどの数はいないがハーピーやベノムよりは圧倒的に多い。

 これ程の規模に膨れ上がったデブの群れは、下手をすると上位感染者の群よりも脅威かもしれない。

 

「第一防壁が破壊されました」

 

「攻撃を続けろ。

 完全な防御など不可能なのは分かっていたことだろう。

 司令官殿も防壁を使い潰して構わないと言われた」

 

 完全に破壊されたら、防壁の再建に多くのリソースが必要になる。

 出来れば損傷で済ませたいところだが木の壁では防ぎきれない。

 石の壁へのアップデートの準備は進んでいるが、まだ手が回っていないのが現状だ。

 逆に言えば、今後石の壁にするのだから守りきれるのなら失っても惜しくはない。

 粉々に砕かれては、木材として再利用することも出来なくなるが、そこは割り切るしかないだろう。

 いつだって、今持っている手札で戦うしかないのだから。

 

 追加の防壁やバリスタやワスプがいくつか損傷する被害が出たが、南も居住区への侵入は阻止できた。

 

 破壊された防壁の再建も始まる。

 さらに強固な物へと生まれ変わらせるために…

 次はもっと完璧に守ってみせると言う意志を燃料として。

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