転生した私がゾンビアポカリプスの世界でコロニーを作る 作:ソロモンは燃えている
襲撃を乗り越えた後、満を持して西の廃墟の攻略に取り掛かる。
いかに大規模な廃墟と言えど、すでに攻略法は確立されている。
襲撃時に内部にいた感染者もかなり吸われていたようで、想定したほどの数もいなかったこともあり、攻略は順調に進んだ。
廃墟を制圧したことで得た大量の資源を用いて、西側の防壁建設にも着手する。
返す刀で東側の廃墟にも攻勢をかける。
内政にも手を抜かない。
手に入れた領土に居住施設や生産施設を配置していく。
進軍、防衛力の強化、内政と目まぐるしく動いている。
兵士も労働者もフル稼働だ。
なぜ、そんなにも急ぐのか?
最終的に必要だと想定される防衛施設を築き上げるには、これでも余裕がないからだ。
全周を石の壁で幾重にも覆い、死角がないように火焔砲塔を並べる。
さらにバリスタやワスプも隙間なく配備する。
その防壁すら超えてくるであろう上位感染者に対処するために多数の兵士もいる。
現状では、まだまだ足りないものだらけなのだ。
「南西から数百体のベノムの群れが接近してきます!」
東の廃墟を攻略中にベノムの襲撃が来た。
「鉄砲衆を対処に当たらせろ。
その間もバリスタを使って廃墟への攻撃は継続する」
ベノムに対し相性が良い鉄砲衆で迎撃する。
鉄砲衆もかなりの規模に拡充されているが、それで完封できるほどベノムは甘い存在ではない。
銃撃に倒れながらも毒液を吐きかけ、防壁を腐食させていく。
石の壁ですら耐えきれずに穴が開いていってしまう。
だが、それも想定内のこと。
毒液が鉄砲衆がいる塔にまで届くようになれば、後ろの塔に後退させる。
前線に配置した防衛装置は破壊されてしまうが、それはやむを得ない。
また配備すれば良いのだ。
兵士だけは、そう簡単には補充できない。
だからこそ多数の塔を建造したのだ。
ベノムに対しては面よりも多数の点による防御の方が有効だった。
一番前の塔に攻撃が集中する。
がむしゃらに前進してこないからこその防御陣だった。
結果、防壁はボロボロにされたが、人的な被害は退避が間に合わなかった数人のみで乗り越えることが出来た。
破壊された防壁を修復し、攻略中だった東の廃墟も制圧が完了した。
広大な領土を得て、防衛面も安定したことで…ついにあの男を呼び寄せる時が来た。
「長く待たせてしまったな」
「ああ、待ち侘びたぞ。
ようやく我らの出番が来た。
存分に使ってくれ」
鬼武者たちが参戦した。
これで北東への進軍が可能になる。
北東には南西以上に鬼の反応がある。
しかも、それぞれの反応が狭い範囲に集中している。
どうあっても複数の鬼を同時に相手取らなければならないのだ。
通常の戦力だけでは、どれほど犠牲が出るか。
だが、鬼武者たちがいれば正面から戦える。
廃墟があった南東に防壁を築きながら、同時に北東へと進軍を開始した。
残るは、北東から北にかけてのエリアのみ。
ここを制圧してようやく終盤に入ると言ったところか。
勘違いしてはいけない。
これまでの襲撃など前哨戦でしかないのだ。
桁違いの規模に膨れ上がった本隊が迫っている。
その攻撃に耐えられる体制を整えなければならない。
65日目
この地に進出してから2ヶ月以上が経ち、残された最後の作戦エリアである北部へと侵攻を開始した。
先頭に立つのは3人の鬼武者たち。
彼らが発する強力な生命の気配が多くの感染者を呼び寄せる。
当然、奴らも含まれる。
「鬼が接近してきます。
その数、5体!」
「全ての鬼が釣られたか…」
北部に存在する鬼の反応が全て一直線にこちらに向かってきていた。
「まあいい、想定の範囲内だ」
「鬼は我らが引き受ける。
だが、奴らは5体。
咆哮は防げない。
呼び寄せられた感染者どもは頼んだぞ」
「「了解!」」
鬼と接敵し、鬼武者たちが戦闘を開始する。
咆哮によって呼び寄せられた、膨大な数の感染者も押し寄せてくる。
中にはハーピーやベノムも当然のように存在していた。
だが——
鬼武者と共に進軍しているのは、300を超えるサムライと鉄砲衆の連合軍だ。
それも、イモータル・アカデミーによってベテラン並みの技量を持つ精鋭たち。
次々と切り払われ、撃ち抜かれていく感染者たち。
この局面においては、戦力差は逆転し、感染者を圧倒していた。
程なく鬼は討伐され、残敵の掃討へと移行した。
その後も戦況は順調に推移し、北部はほぼ制圧され、防壁の建設が開始された。
全周を囲む防壁が完成した頃、奴らが襲ってきた。
「こ、これは…襲撃です!
東から鬼の群れが接近中。
その数…30体以上!」
「…鬼武者の10倍以上か」
「かまわん。
どれほどいようと烏合の衆に負けるつもりはない」
「いや、ここでお前たちを失うわけにはいかん。
それに…無策で挑ませるつもりなどない」
「ほう、この数の鬼を相手に有効な策を思いついたのか」
「ああ、部の悪い勝負にはしない」
「期待しよう」
鬼の群れが防壁に到達しようとしていた。
30を超える鬼が一塊となって迫り来る様は、物理的に押されているかのような迫力を感じさせる。
「さあ鬼ども、来るがいい!」
防壁の上で待ち構えているのは鬼武者が一人。
隊長だけであった。
鬼の群れが体当たりするような勢いで防壁に到達、石の壁に攻撃を開始する。
鬼武者が防壁の上から斬りつけるが焼石に水。
このままでは防壁が崩されてしまう。
その時、残り二人の鬼武者が南北から鬼の群れを強襲。
殺意と闘争本能に引っ張られ、鬼の一部が進路を変える。
二人の鬼武者は、戦いながら後退していく。
すると、密集していた鬼の群れが南北に引き延ばされていった。
そこに、バリスタやワスプ、鉄砲衆の狙撃が降り注ぐ。
隊長の鬼武者が正面の圧力を受け止め、残りの鬼武者が南北に群れの一部を引きつけることによって、群れの厚みが薄くなり、防壁への圧力を低下させた。
後は、後方から鉄砲衆と防衛兵器の攻撃によって各個撃破していく。
サムライも防壁に登り、鬼へ攻撃を加えていく。
重厚な防衛体制が築かれていた。
正面からの力押ししか出来ない感染者には、これを突破する術などないかに思われた。
しかし、鬼を全滅させた後、複数箇所で防壁が崩され、侵入される寸前だったことが判明。
防壁の多重化、防衛兵器の増設、兵士の増強の必要性を痛感する結果となった。
この襲撃を境に群れが接近することはなく、奇妙な静けさが続いた。
散発的に接近してくる少数の感染者を除き、全く動きを見せなくなったのだ。
「戦力の逐次投入をやめ、総攻撃に戦力を集中させたか…」
「おそらく…だが、我々もこの時間を有効活用させてもらう。
司令部にレールガンの設置も完了した。
後は、ギリギリまで戦力と生産力を高めることに集中しよう」
その推測通り、感染者に動きがなかったのではない。
静かにその数を増やし続けていたのだった。
その静けさが破られた時、最後の戦いが始まる。