転生した私がゾンビアポカリプスの世界でコロニーを作る   作:ソロモンは燃えている

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転生した私、攻撃を仕掛ける

 

 

 

 2つの居住区の運営は安定しており、周辺の感染者を排除しつつ領土の拡張も行なっている。

 しかし、山間の土地であるため開発可能な広さには限りがある。

 また、木材や石材は豊富に取れるが感染者との戦争で失われた高度な技術を復活させるために必要な資源や施設が存在せず、現状では研究を進めることができていない。

 

 今後は、感染者と対峙し続けることになる。

 守るにせよ、攻めるにせよ、より強力な変異感染者と戦うことは避けられない。

 古代文明の技術を復活させなければ我々に未来はないだろう。

 それも早急に……

 

 そのために平野部、かつて高崎市が存在した場所まで進出し、研究所や工場から古代文明の残滓『アーティファクト』を回収しなければならない。

 もちろんリスクはある。

 かつて都市があった場所であることから感染者の数は多いだろう。

 また、開けた土地であるため侵入路が限定できず防衛も難しい。

 

 それでも前に進む必要があると判断した。

 山間部に引きこもっていても未来は開かれない。

 いずれ感染者の数に圧倒されて抗いきれなくなる。

 そうなればこれまでの遠征と同じように私達は全滅するまで敗走を繰り返すことになる。

 強力な防衛網を作り上げるまで立ち止まることはできない。

 

 高崎方面に出した偵察部隊の報告によれば、高崎市に続く道に多数の感染者の群れが存在している。

 その数、およそ500体のランナー。

 この群れをどうにかしなければ先に進めない。

 

「これは厳しいのでは?

 数十体のランナーでもあれほど苦戦したのです。

 その時の10倍近い数ですよ」

 

「どうにか分断できないものか…」

 

「難しいでしょう。

 道は広く、周辺に障害物もない。

 不用意に近づけば、群れ全体が反応してしまう」

 

「確かにランナーの数は脅威ですが、勝てないことはないと思います」

 

「本当ですか?司令官殿」

 

「ええ、数十体のランナーに苦戦したのは、十分な態勢を整える時間がなかったから。

 事実、廃墟攻略では数百体の感染者を相手に完勝しています。

 こちらが主導権を握っていれば多数の感染者の群れが相手でも戦いようはあるのです」

 

「…確かに群れまでの距離はかなりある。

 こちらの準備を済ませてから開戦すれば良いと言うことか」

 

「そう、これは防衛戦ではない。

 こちらから開戦の狼煙を上げる。

 攻撃ミッションです」

 

「了解しました。

 我々は司令官殿に従います」

 

「うむ、それでは各自、準備を進めてくれ。

 必要な資材の調達と防衛施設の設置。

 レンジャー部隊だけでは手が足りないだろうから、今回も住民の中から志願を募り補助戦力とする」

 

「「「「はい!」」」」

 

 

 

 開戦の準備は整った。

 作戦は、最初にランナーの群れと戦った時と基本的には同じ。

 防衛施設を利用して迎え撃ち、突破されそうになったら次の防衛ラインまで後退する。

 今回も第3防衛ラインまで構築した。

 これより後ろに下がると防衛に向かない地形になってしまうので、これ以上の縦深性を確保できなかった。

 それでも問題ないと思っている。

 今回はバリケードだけではない。

 それぞれの防衛ラインに木の防壁を建設してある。

 木の壁の前に群れの勢いを殺すためのバリケードを設置。

 壁の後方にも後退を支援するためのバリケードが設置されている。

 

 バリケードだけでは群れの前進を止められなかった。

 今回は、木の壁によってかなり持ち堪えることができるはずだ。

 矢の数も十分に用意してある。

 レンジャー達は、何度も実践をくぐり抜けてきたベテラン。

 

「これより、群れの殲滅を開始する」

 

 私は自信を持って作戦の開始を宣言した。

 

 

 

 接敵したことで群れは予想通り全体が反応してこちらに向かって走り始めた。

 数百体ともなると、やはりすごい迫力だ。

 

「感染者の群れ、接近してきます。

 さ、最後尾が見えません!」

 

「狼狽えるな!

 射程距離に入り次第、攻撃を開始する」

 

 まだだ、まだ届かない。

 

「今だ!全軍、攻撃開始!」

 

 群れの先頭が射程に入ったことで攻撃開始の号令をかける。

 

 壁の後ろからレンジャー達が曲射を開始する。

 壁の上に登っているレンジャーは、近い感染者から狙い撃っていく。

 

 …が、私は数が膨れ上がった群れの圧力というものを見誤っていたのかもしれない。

 バリケードは、次から次へと押し寄せてくる感染者の前にあっという間に破壊された。

 

「先頭の感染者、防壁に取りつきます!」

 

 群れは、想定より早く壁に到達してしまった。

 レンジャー達の射撃によって群れにダメージは与えている。

 だが、それよりも……

 

 ギシギシ……ミシミシ……

 

 防壁の耐久力が低下する方が早い。

 これ以上は保たないか……

 

「撤退!第2防衛ラインまで後退せよ!」

 

 壁から飛び降り、部隊と共に後ろに下がる。

 

 後ろからバキバキと壁が破壊される音が聞こえる。

 やはりタイミングに誤りはなかった。

 しかし、思ったより群れを削れなかった。

 完璧に作戦を遂行しても勝てなければ意味がない。

 

 焦る私の耳に壁が破壊される音とは別のものが聞こえてきた。

 

「うおおおおおおお!」

 

 振り向くと一人のレンジャーが壁の上に残り、叫び声を上げながら矢を射掛けていた。

 

「なっ、何をしている!

 撤退の指示を出したはずだ!」

 

「司令官殿、後を頼みます。

 どうか、人類に未来を!」

 

「!!!」

 

「司令官殿、あいつは自分の意志で残ったのです。

 群れの勢いを少しでも殺すために……」

 

 逃げ遅れたと思っていたレンジャーの言葉に驚き、呆然としてしまった私に別のレンジャーが彼の想いを伝えてくる。

 

「くっ、総員、足を止めるな!

 あの英雄の想いを無駄にすることは許さん!」

 

 そうだ、そんな無様な真似だけは許されない。

 私の想定の甘さを彼がその命で賄ってくれたのだ。

 

「うああああああああ」

 

 やはり、群れの圧力を前に防壁は長く保たなかった。

 残ったレンジャーが群れに飲み込まれる音が聞こえてきた。

 

 振り向くな!

 前だけを見ろ!

 今は、彼の想いに応えることだけを考えるんだ!

 後悔も、反省も、今じゃない!

 

 彼が残ってくれたため、群れの勢いは一時的に止まった。

 再び走り出すが、加速しきる前に内側のバリケードに接触。

 壁を破壊された勢いのまま雪崩れ込まれるより、はるかに高い足止め効果が得られた。

 

 そのおかげで第2防衛ラインでの迎撃体制が間に合った。

 

「射て!

 射って、射って、射ちまくれ!」

 

 第1防衛ラインで命を捧げてくれたレンジャーの想いは、他のレンジャーの心を奮い立たせたようだ。

 もちろん、私の心も……

 

 全力で戦闘指揮を取る。

 レンジャー達も必死に矢を放つ。

 

 …それでも。

 

「ダメです!

 防壁の耐久力、危険域に入ります!」

 

 第2防衛ラインも限界に達しつつあった。

 まだ群れの数は多い。

 それでも、ここでこれ以上は戦えない。

 

「撤退するぞ!

 第3防衛ラインまで後退する」

 

「司令官殿、行ってください。

 私が残ります」

 

「何を言っている!

 そんなことをする必要は…」

 

「あるのでしょう?」

 

 レンジャーの言葉に声が詰まる。

 正直に言えば必要だ。

 だが、誰かに犠牲になれとは言えなかった。

 

「あなたを責めているわけではありません。

 あなたが司令官だからこそ、我々はここまで戦えた。

 だから託すのです。

 王国のために……いいえ、人類のために!」

 

「……わかった。

 任せてくれ、必ず勝ってみせる。

 ありがとう」

 

 そう言って防壁を降りる。

 振り向くことはしない。

 そんな暇があるなら一刻も早く最終防衛ラインまで後退するのだ。

 

「お礼を言うのはこちらですよ、司令官殿。

 あなたがいたから私達は希望が持てた。

 絶望しか知らなかった私達をあなたが救ってくれたのです」

 

 壁が壊される音と感染者の唸り声を聞きながら、叫び声を上げ、矢を射る手は止めない。

 

 1秒でもいいから時間を稼げ!

 それが人類の未来を守ることに繋がる。

 こんなにも前向きな気持ちで死ねるとは思わなかった。

 悔いがあるとすれば、この先の戦いについて行くことができないことくらいか。

 もっと、あなたの下で戦いたかった。

 

 感染者に壁を叩かれた衝撃で足を滑らせ、群れへと落ちていく。

 それでも、その顔が恐怖に歪むことはなかった。

 

 

 ほどなくして、最終防衛ラインに取りつかれた。

 感染者の群れも数を減らしてきている。

 すでに最後尾も見えているのだ。

 

 …が、同時に防壁も限界を迎えつつあった。

 

「怯むな!

 盾隊、なんとか防壁の崩壊を抑えろ!」

 

 今回は木の壁があるため曲射のできないボウガンは使い所がない。

 そのため志願した住民は、木の大盾を持たせて壁を支える盾隊と槍を持たせた槍隊に分けて編成している。

 盾隊で可能な限り防壁が破られるのを防いで、万一侵入された場合は槍隊が対処する。

 

 彼らの出番などないと思い上がっていたが、どうやら頼らなければならないようだ。

 自分の迂闊さに殺意すら覚える。

 だが、そんな雑念など今は切り捨てる。

 

「防壁の一部、突破されました!」

 

 どうやら、壁の一部が完全に破壊され、盾隊を押し除けて群れの一部が壁内に侵入した模様。

 

「槍隊、侵入した感染者を殺せ!

 壁の向こうの感染者は、もう残り僅か。

 後少しで勝てる!」

 

 実際に壁の外にいる感染者は、もう少しで殲滅できる。

 侵入された感染者からの感染拡大を防ぐことができれば勝利だった。

 

「壁外の感染者、全滅を確認!」

 

 その報告によって、壁内に侵入した感染者に対する指揮を取ろうと振り向いた私の目に映ったのは凄惨な光景だった。

 

 兵士達は、感染者相手によく戦っていた。

 レンジャーの一部も上手く立ち回って武装住民と協力して対処している。

 ただ、相手の感染者は、さっきまで共に戦っていた仲間だった。

 

 隣で語り合い、笑い合っていた仲間が意思のない化け物となって襲ってくる。

 そんな悪夢のような光景に、兵士達は果敢に立ち向かった。

 躊躇している余裕などない。

 躊躇えば、今、隣に立っている仲間も同じ目に合わせてしまう。

 だからこそ、必死に戦っていた。

 これ以上の感染拡大を阻止するために。

 

 壁内のレンジャーや壁の上にいたレンジャーをすべて侵入した感染者の排除に投入したことで、感染の拡大は阻止され、群れは全滅した。

 

 

 戦闘が終結した後、壁から降りた。

 辺りを見回すと仲間の死体が散乱している。

 

「どのくらいやられた?」

 

「レンジャー部隊は、撤退時に残った2人とここで5人の計7人。

 武装住民は18人やられました」

 

「合計で25人か……」

 

 大損害だな。

 膨れ上がった群れの脅威を見誤ったことでこれほどの被害を出してしまった。

 

「それでも、我々の勝利です。

 これで道は開かれたのですから」

 

 確かに、先に進むための道を塞いでいる群れは殲滅するしかなかった。

 そして、それは早ければ早いほど良い。

 私達の存在を察知した感染者が集まり、数で押し込まれる前に力を付けなければならないのだから。

 

「そうだな。

 彼らは、人類の未来のためにその命を捧げた英雄達だ。

 彼らの名を王国に送る戦闘報告に記載しておいてくれ」

 

 彼らだけではない。

 これからの作戦で命を落とす全ての兵士達の名を残そう。

 そして、彼らが英雄として語られ続けるために人類の文明を守ってみせる。

 それが彼らから託された私の使命だ。






攻撃ミッションの回でした。
初の犠牲者、それも結構な人数がお亡くなりになってしまいました。
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