転生した私がゾンビアポカリプスの世界でコロニーを作る   作:ソロモンは燃えている

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転生した私、後を託す

 

 

 

 軌道に乗り始めた草原の開拓は、一時の停滞が嘘のように順調に進んだ。

 南西エリアの制圧がほぼ終わり、感染者の数が多い南東エリアの攻略に着手したことにより居住区拡張のペースは落ちたものの、23日目に増援として20人の新人レンジャーが到着したことで再び加速。

 30日目を目前にして、草原の南半分を領土とすることに成功していた。

 

 

 しかし、順調なのはここまでだった。

 35日目を迎えても北部への拡張はほとんど進んでいない。

 見晴らしの良いこの地では、戦闘を始めると周辺の感染者達が集まってきて、瞬く間に大規模な戦闘に発展してしまう。

 その場に留まっていては、すぐにレンジャー達の許容量を超えて、戦線が崩壊してしまうのは明らか。

 そのため、ある程度の数が集まってきた段階で拠点近くまで後退して、戦闘を行わなければならない。

 

 この草原は広々としていて大規模な居住区を作るのに適している反面、感染者との戦闘や防衛に多大な労力が掛かる難しさも併せ持っていた。

 

 

 北部への領土拡張は滞っていたが、南部の開拓は順調に進んでいた。

 各地に点在する木を伐採し、居住区周辺の土地を農地にしていく。

 食料の生産が可能になれば、補給部隊の負担はグッと軽くなり、その分、他の物を運べるようになる。

 それは、軍事力の更なる増強が可能になることを意味する。

 

 内政を回し、増やしたリソースを軍事に注ぎ込んで感染者との戦いを有利にする。

 北部の制圧を進めていくためのサイクルを確立させてしまえば、後任に任務を引き継ぎ、私はこの地を離れることになるだろう。

 

 草原地帯を完全に掌握するには、かなりの時間を要する。

 掌握した後も全周に防衛線を張らなければならないため、この地にかなりの戦力を配置しておかなければならない。

 今、投入している戦力を旧高崎市の攻略に回すことはできないだろう。

 だからこそ、長期に渡り私がこの地に拘束されるわけにはいかない。

 

 全てを私の手で行う必要はない。

 そう考えられるようになった私が自分に課した任務は、この居住区を北部の感染者を相手に安定して領土を広げることができるだけの軍事力を維持できる規模にまで育て上げること。

 そして、それは間もなく達成される。

 

 付近に感染者の群れが存在しないため、ある程度の防衛体制が整えば居住区が崩壊するリスクはかなり低くなる。

 だが、0ではない。

 最後まで見届けたい気持ちもある。

 

 それでも、私は部下を信じると決めたのだ。

 彼らは、私がいなければ何もできない存在ではない。

 自分の力で未来を切り拓こうとする意志がある。

 後を任せ、先に進む。

 それが私のするべきことだ。

 

 

 48日目

 

 居住区の人口が、ついに600人を超えた。

 防衛施設も形になったことで、私はこの地での任務を終えることになった。

 補給部隊と共にやってきた部下に引き継ぎを行う。

 今後は、彼が市長としてこの居住区を率いていく。

 

 

「それでは、後を頼んだぞ」

 

「はい、命に換えてもこの地を守って見せます!」

 

 む、少し気負いすぎているようだ。

 

「それでは駄目だ」

 

「えっ?」

 

「我らが最優先すべきは住民の命。

 守りきれないとなったら撤退する勇気を持て。

 土地は奪われても奪還すれば良い。

 だが、命が喪われればそれすらもできなくなる」

 

「はっ、肝に銘じておきます」

 

 うん、いい顔だ。

 これなら心配いらないだろう。

 

 

 こうして、私は草原の地を離れた。

 戻ってきてもゆっくりしている時間はない。

 旧高崎市への進出が控えているのだから。

 

 部隊の編成、物資の調達、計画の立案など矢継ぎ早に指示を出していく。

 忙しく過ごしている私の下に王国から思わぬ客人が訪れた。

 

 

「相変わらず、あちこち駆けずり回っているようだな」

 

「……なぜ君がこんなところに?」

 

 私は、その男の顔に見覚えがあった。

 私の同級生であり、貴族階級出身の男だ。

 当時の私は、遠征隊に選ばれないように必死に努力していた。

 そんな私達に見下したような視線を向けていたことを覚えている。

 

 そんな男がなぜ王国の外にいる?

 

「王国から追加の人員が送られているのは聞いているだろう?

 それは、平民の移住者だけではない。

 今後は、我らのような貴族も参加する。

 それだけ王国も本気だと言うことだ」

 

 貴族階級の者もこの遠征に参加すると言うのか!?

 報告を聞いて、勝てると判断したのか?

 馬鹿な、そんな簡単ではないことくらいは理解しているはず。

 報告は可能な限り正確に行なった。

 感染者との戦いは過酷で、先日も大きな犠牲を出してしまった。

 確かに、このまま平民のみで構成された遠征隊が勝利し続ければ、王族や貴族の権威が低下していくことは避けられない。

 彼らは、貴族階級の権威を守るために戦場での手柄を求められているのか?

 だから、危険を承知で王国の外に送り出された。

 

 だとしたらマズイな。

 感染者との戦いは、常に我々が劣勢の立場にある。

 これまでの勝利も薄氷の上でのもの。

 崩壊し、無惨な失敗に終わってもおかしくなかった。

 そんな戦場で勝手な行動をとる者がいれば、破滅的な事態を引き起こしかねない。

 

「そう心配しなくても、司令官の命令には従うさ」

 

 私の懸念が顔に出てしまっていたのか、彼からそんな言葉が発せられた。

 

「今日は、顔見せに来ただけだ。

 これからよろしく頼むぞ、司令官殿」

 

 その言葉に思わず顔を凝視してしまう。

 彼の表情から、王国にいた頃のようなこちらを見下すような色は感じられなかった。

 

 本当に顔見せだけだったのか、彼はすぐに去っていった。

 昔とはずいぶん違った雰囲気だった。

 彼に何があったのか気になりはするが、今は次の作戦の準備で忙しい。

 彼と親しかったわけではない私が個人的な事情に踏み込むのも憚られる。

 大人しくこちらの指示に従って、作戦を邪魔しないなら良いか。

 

 

 一月後、全ての準備が整った。

 作戦目的は、旧高崎市に居住区を建設すること。

 こちらの勝利条件は、

 ・周辺の感染者を全て殺す

 ・市内に二つ存在する廃墟の破壊

 と言ったところか……

 

 他にも不測の事態が発生するかもしれないが、そこは臨機応変に対応するしかない。

 

 我々には進むしか道はないのだ。

 さあ、作戦開始だ!






少し短いですが草原ミッション完了です。
最終ウェーブを待たずに条件達成した瞬間クリアとなるマップの背景を想像で補完しました。
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