転生した私がゾンビアポカリプスの世界でコロニーを作る 作:ソロモンは燃えている
旧高崎市に進出して、いつものように司令部の設置とテントの建設を行う。
労働者達も慣れたもので流れるように作業が進んでいく。
今回も用意できた戦力は、4部隊16人のレンジャーのみ。
居住区間の伝令、周辺地域への偵察や補給部隊の護衛など、人類の領域が広がったことで他に人員を割かなくてはならなくなり、これ以上の戦力は確保できなかった。
王国から新たな移住者が到着したことで労働者の一部を兵舎での訓練に回せるようになったが、戦力化するには時間がかかる。
まあ、ある程度クリアリングを進めて、居住区の防御を強化するまでは、多くの感染者を刺激しないように大きな戦力の投入は避けなければならないため、どちらにせよしばらくはこの兵力で戦うしかない。
今回も感染者に気づかれないように静かに作戦を進めて行こう。
まず最初の目標は、旧高崎市の外縁部にある瓦礫の山に囲まれて広場のようになっているエリアから感染者を一掃すること。
ここは、地面がひび割れたアスファルトやコンクリートに覆われているため農地として利用できそうな場所は少ない。
ただ、平坦な地形のためテントの設営に苦労することはないだろう。
広場を掌握して、居住区の基礎を作る。
それから中心部へと軍を進めていくのだ。
レンジャーによるクリアリングを進めていくが、東京などの大都市とは比べものにならないとは言え、それなりの規模の地方都市だった場所だけあり、感染者の数は多かった。
これまでとは感染者の密度が段違いだ。
囮が走り回って感染者を引きつけるような派手な戦いは避けた方が良いだろう。
焦らず、少しずつでも確実に前進していく。
予想外に多くの感染者が反応してしまった時のために退路も確保しておく必要もあるため、テントのスペースは控えめにしておく。
貴重なテントのスペースを削ることになるが、製材所も建設した。
製材所は、作戦初期において最も重要な施設であるため、最優先で作らせている。
今、最も避けなければいけない事態は、レンジャーが使う矢を切らすことだ。
周辺の木を伐採したり、後方から補給部隊が運んできた木材を加工して矢だけでなく、バリケードや木の壁の材料を生産するための施設。
有ると無いでは、生産効率に格段の差が出てしまう。
補給路が長くなり、あまり頻繁に物資を受け取ることができないため、現地での生産をどれだけ早期に開始できるかが居住区の生存率に直結するのだ。
数が多いとは言え、広場にいる感染者のほとんどがウォーカーであったため、無理に前進しようとしなければ危険は少なく、矢が枯渇することもなかった。
7日目にして、司令部を置いた広場の制圧が完了。
さて、これからどうするか?
広場の周りは瓦礫の山で塞がっていて、出口は東と南の二つしかない。
…やはり、南か。
現状の戦力で無理をすべきではない。
東は、市庁舎がある高崎市の中心部に向かう道。
進めば進むほど感染者の数は増大していくだろう。
廃墟攻略にもかなりの戦力が必要になる。
市庁舎は大きな建物であり、当然、中にいる感染者の数もそれに比例する。
山間の集落のように点在している訳ではないので、戦闘が始まれば中にいる感染者をすべて相手取ることになる。
南は、高崎市の外縁部を迂回するルートとなるため、感染者の数はここと大差ないはず。
今は、こちらの戦力を保全しつつ感染者の数を減らすことに注力すべきだと判断した。
5日目に来た補給部隊の話では、次の補給でレンジャー部隊の増援が来る予定らしい。
つまり、3日後には戦力が増強される。
それでもなお、市街地の中心部を攻略するには戦力が足りない。
アレが間に合えば良いのだが…
中心部から流れてくる感染者に対する備えとして一部隊を残し、残りの部隊で南へと進んでいく。
予想通り、感染者の数に大きな差はないようだ。
ただ、少しランナーが多いことが気になる。
これほど早くランナーを相手取ることになるとは…
数だけでなく、質も山間部とは違うということか?
ならばいるかもしれない。
ランナー以上に強力な感染者が…
もし、出くわしてしまえば、レンジャーでは荷が重い。
やはり、アレが到着するまで中心部への進軍は避けるしかないな。
10日目に4部隊16人のレンジャーを加え、さらに南へと領土を拡大していく。
最初に連れてきたレンジャー達は、そろそろベテランと呼べるくらいに成長している。
それでも、ランナーが増えたことでなかなか領土開拓が進まない。
外縁部でこれなら、中心部に向かうためにはかなりの大部隊を編成する必要があるだろう。
この作戦は、長く厳しいものになるかもしれない。
14日目
司令部に凶報が飛び込んできた。
「偵察部隊から緊急の報告!
南から数十体の感染者の群れが接近中。
市内に到達するのは、およそ3日後と思われます」
「まずいですよ!
こちらの戦力は、レンジャーが32人しかいません。
以前、同程度の群れを相手にした時は、50人でもギリギリだったのに…」
「落ち着け、あの時とは違う。
今回は迎撃準備を整える時間があるのだ。
負けはしないさ」
3日も時間があるなら、何重にも重ねて補強した強固な木の壁が作れる。
バリケードしか使えなかった、あの時とは違うのだ。
「あっ、そうですね!
防御施設があれば、何百という群れにも勝てた。
なら、この程度の規模の群れは脅威じゃない」
「必要以上に恐れることはないが、油断だけはするな。
戦場では何が起きるか分からないのだから」
「はっ、すみません。
気を引き締めて準備にあたります」
接近する群れを迎え撃つための防御施設の建設を始めた。
やはり、各地に偵察部隊を派遣しておいて正解だった。
おかげで余裕を持って備えることができる。
17日目
感染者の群れが市内に到達。
数時間後には戦闘が始まるだろう。
レンジャー部隊は、すでに壁の後ろに待機している。
準備は万端。
数十体程度の群れなら問題なく殲滅できるだろう。
…そう思っていた。
私も安心して、油断してしまっていたのだろう。
戦場では何が起きるか分からない。
自分で言ったことではないか。
「感染者の群れがルートを外れました!
群れが来るのは南ではありません!
東から迂回してきます!」
市内は感染者が多く、監視は遠くからしかできない。
そのため地形がどうなっているのか詳細には分からなかった。
市内に到達した時の群れの位置から、まっすぐ此方に向かってくると予測していたが、どうやら瓦礫で道が塞がっていたらしい。
群れは大きく迂回して、手薄な東に向かってしまった。
「東には防衛施設がない。
どうすれば良いんだ。
司令官殿、指示を!」
「落ち着け。
直ちに東に向かい、防備を固める。
迂回してくるなら、それだけ時間がかかる。
奴らが来る前に迎撃準備を整えるのだ!」
私の指示で部隊は動き出した。
表に出していないが内心の焦りは抑えられない。
群れの到着までに用意できるのは、せいぜい壁が一枚。
南の防衛に物資を集中してしまったため、これが限界だ。
碌な補強もされていない防壁一枚でどれくらい保つのだろうか?
くっ、私のミスだ。
部下に油断するなと言っておきながら、私が不測の事態に備えていなかった。
それでも、諦める訳にはいかない。
すぐ後ろには守らなければならない居住区があるのだから。
急ピッチで作られていく防壁を見つめながら、必死に勝利する術を探る。
群れだけなら戦力的にそこまで劣勢ではない。
問題は、東の感染者をほとんど間引いていないこと。
南に進むことを優先して、東は近づいてくる感染者以外は放置していた。
群れとの戦闘音で引き寄せてしまうだろう。
はたして耐えられるのか?
「だいぶ、お困りの様子。
どうやら我らの出番のようだな」
苦悩する私に声が掛けられた。
聞き覚えのある声に振り向いた私の目に映ったのは、予想外の姿で驚きの声を上げてしまう。
戦国武将のような甲冑を纏った集団。
その先頭に立っているのは、私の同級生で作戦前に話をした、あの男だった。
群れが予想外のルートで向かってくる。
ゲームでは、あるあるな展開です。