クルーザーが倒した黒服と、オレが蜂の巣にした蜘蛛男は、命の灯が消えたと同時に白い泡となって散った。
死体の処理とか、面倒な事にならずに済んで良かった。
これで人体が残ったりしたら、結構ヤバかったよな。
くわばらくわばら。
オレは変身を解くと、“唖然とする彫像”と化した京子の前に立った。
「なぁなぁ、見てた?オレの変身!」
他者の生命を奪っているとは思えない能天気なオレの声に、しかし京子は小さな悲鳴を上げると一歩退く。
……………
まぁ確かに悪党で化物とはいえ、殺人だもんなぁ……
そりゃ引くよなぁ……
さすがのオレも落ち込んでいると、ロボットモードのままのクルーザーがサイドミラーをオレに向けた。
……………あ。
そこに映っていたのは、蜘蛛男に殴られたダメージで下顎の左半分の表皮がめくれ、某殺人サイボーグじみたメタリックな骨を露出させた人間擬き、つまりオレの姿だった。
慌ててマイクロチップのデータを検索し、予備の表皮を召喚転送する。
よし。イケメン復活。
「いやぁゴメンゴメン。このガワがこんなに脆いとは知らなくってさぁ」
努めて明るく話しかける。
我ながら成功していたかどうかは自信がない。
数分の沈黙の後、先に口を開いたのは京子だった。
「……いつから?」
「は?」
「いつから、そんな事になってたの?」
義体の事、か?
「前にバイクで事故った話、しただろ?奇跡の生還!って」
「そんな前から⁉︎」
「変身とかは、ついさっき出来る様になったばかりなんだけどね」
京子の体が小刻みに震える。
あぁ、そうだよなぁ。
知らない内に幼馴染が全身サイボーグとかなってたら、オレなら引くもんなぁ。
しかもソイツが人を殺すとか、最悪だよなぁ……
「…………ふ…………」
「ふ?」
「っっっざけんなぁ!」
炸裂する、京子の右ストレート。
ダメージなぞ皆無なのに、オレはその鬼迫に押されてひっくり返った。
京子はダウンしたオレに馬乗りになると、オレの胸ぐらを掴む。
「そんな大事なこと、なんであたしに黙ってたのよ!」
怒るとこソコかよ!
「いやぁ、ショック与えるのもアレだし、京子ちゃんからこの体の事が外部にバレてもマズイし……ね?」
「ほほぉ……つまりあんたはあたしを信用出来ないと?」
「あ、いや!決してそんな……」
あれ?
蜘蛛男と戦ってる時よかピンチじゃね?オレ。
こういう時は、下手に抵抗しない方が良い。
オレはマジな顔で京子の体を抱え上げ、オレの上から下ろすと……………
「ほんっと、スイマセンっした!」
その場で土下座を決めた。