無限とも思える拷問は、唐突に終わった。
視界が明るくなり、消毒液の匂いが鼻をつく。
周囲を立ち回る技術者の足音が聞こえ、自分が手術台に固定されていた事を思い出した。
口の中に血の味を感じて、俺は先刻までの悪夢が夢ではなかったと確信した。
これで『改造手術』は終わりなのか?
人類社会の常識を超える超戦士になったのか?
俺は手足の拘束が解かれるのを待つと、技術者の一人の腕を掴んだ。
「!な、何を……」
最後まで聞いてやるつもりはない。
俺は現在放出し得る最大電圧を技術者に叩き込んだ。
「ガァッ!……」
一声だけ発し、技術者はガタガタと痙攣を始めた。
身体のあちこちから白煙が上がる。
今までの俺には、ここまでの威力は出せなかった。
しかも発電能力まで手に入れたのか、放電が弱まる気配は無い。
俺は暗い歓喜に導かれるままに、“人間の丸焼き”を作るべく電流を流し続けた。
「脱走だ!」
「調整体が脱走したぞ!」
「何故だ!マインドコントロールまで施術した筈だろ⁉︎」
改造施設内は上を下への大騒ぎとなった。
蜂だのコブラだのヤモリだのといった化物共が、俺を処分すべく施設内を探し回る。
が、俺は電磁波の乱れで周囲を知覚する、レーダーにも似た能力をも得ていた。
会敵するルートを避けて、鍵の掛かってない部屋に侵入する。
そこは人体の貯蔵庫に見えた。
数十の円柱形のガラスケースが立てられ、中には得体の知れない液体に浸かった全裸の人間が保管されている。
時折ピクリと体の一部が動くあたり、死体を安置しているのではなく眠っているのだろう。
ガラスケースの中の人間達は全員が女だった。
一様に美しく、グラマーだ。
思い当たる節があった。
要人に取り入る為に当てがわれる、護衛や身の回りの(シモの用も含めて)世話をする『衛士』と呼ばれる専用の改造人間が居ると以前聞いた事がある。
敵になりそうなヤツは減らしておくにこしたことはないな。
俺はガラスケースの制御をしていると思しいコンソールに近付くと、体内電流を流して破壊した。
林立するガラスケースが悉くエラーを起こし、中の人間を崩壊させる。
そんな中、一つだけ他とは異なる挙動を示すケースがあった。
それだけは調整も全て終わっていたのか、内部の液体を排出するとガワだけが天井に収容されて中の人間を解放した。
支えを失って倒れる体を受け止めて、俺は少々後悔した。
運良く解放された女は、どことなくユリ姉に似ていたからだ。
女が俺の腕の中で目を覚ます。
女は俺と目が合うと、ふわりと笑った。
ゆっくりと掲げられた手が、俺の頬を撫でる。
「おはようございます、御主人様」
若干呂律の怪しい部分はあったが、女は俺に向かって確かにそう言った。