俺は、知った。
百合やヒルコウモリが言ってた内容が実感出来た。
新しい自分の、何もかもが理解出来る。
理屈ではなく、本能で分かる。
俺は爪針もそのままに立ち上がり、奴に向かって走り出した。
身体を貫通して倒木に刺さっていた針が、反対側から抜け出る。
「コイルアーム!」
俺の念が、俺の腕を変質させた。
表皮が捻れ、硬質化する。
再び奴の背後に立った時、俺の両腕は“指先から肘に至るまでを鋼線で巻いたかの様な”異形になっていた。
あらん限りの力を掻き集めて、奴の胴にフックを叩きつける。
やはり上体を180°曲げてこちらを見たヒルコウモリは、俺の腕に危険な何かを感じて爪で拳を迎撃した。
いや、迎撃しようとした。
無駄だった。
爪針を難なく砕いた俺の鋼拳は、ヒルコウモリの脇腹に刺さると確かな手応えと共に吹き飛ばした。
「グヘァッ!」
吐瀉物を撒き散らして転がるヒルコウモリをよそに、俺は百合の傍に膝を突いた。
奴の溶解液は百合の素肌までは溶かしてはおらず、白い肌にケロイド等は無かった。
下手に抜くと出血がヤバそうなので、四肢を貫く爪針には手を出さない。
「晶様……御理解、出来たんですね」
百合が声を掛けて来た。
声は弱々しいが、意識はハッキリしているようだ。
「手間、掛けたな……もう少しだけ待ってろ」
俺が立ち上がると、ボディブローのダメージから回復したヒルコウモリも起き上がった。
先刻までの勝者の余裕は、無い。
なんせ怪人態の改造人間が、同じ改造人間とはいえ人間態にダメージを受けたんだ。
ショックがデカいんだろう。
「お、お前……そ、その腕は、一体……」
答えてやる義理は無い。
「姉貴と……ツレが世話ンなったなぁ……礼と言っちゃあ何だが……たっぷりと地獄を見せてやるぜ!」
俺は左にやや前屈した姿勢で、両腕を重ねた。
左腕が上、右腕が下で腕組み寸前の態だ。
両腕に体内の電気エネルギーが集中するのが分かる。
上体を起こしざま、俺は左右の腕を擦り合わせる様にして両腕を広げた。
右腕は右上方へ、左腕は左下方へ。
「変身!」
これも本能の成せる業か、何故か一声叫ぶと、俺の両腕から迸る稲妻が全身を包み、轟音と共に天空へと抜けて行った。
そして、俺の変身は完了する。
真っ赤な装甲。
二本の角。
背中に垂れる白い帯状の触手。
鏡を見なくても、俺は俺がどんな姿に変わったのかも把握していた。
ーーーー鬼の武者。
俺の総身を巡る憤怒に相応しい“新たな俺”の姿に、俺は満足した。