「フォトン・メイク!」
背中から光の翼が現れて粒子に分解すると、私の手の中で収束/実体化する。
一瞬で、私の手には二振りの直刀ーーーー太極剣が握られていた。
劈掛拳の応用で剣を振る。
放長撃遠ーーーー遠い間合いでの戦いを得意とする劈掛拳は、得物を持つ事でその特性を際立たせる。
二刀が閃き、光の円を描く度に、蔦男の触手は切り裂かれて地に落ちた。
蔦男は慌てて新たな触手を形成するが、切断のスピードには到底追いつかない。
あっという間に、蔦男は丸腰になっていた。
私は太極剣を光の粒子に還元すると、半身に構えて左手を挙げ、手招く。
恐慌に陥っていた蔦男は、意味不明の奇声をあげて襲い掛かって来た。
今までは触手に頼って戦ってきたのだろう、その様は幼児の喧嘩に似ていた。
武器に依存し、思考が居着いた末に得物を失った相手ほど、与し易いものはない。
私は無茶苦茶に振り回される蔦男の腕の軌道を打撃で逸らすと、ガラ空きの胴に連打を打ち込んだ。
冲捶(縦拳)で動きを止め、頂肘(肘打ち)で崩し、虎爪掌(掌打)で追い打つ。
先程のサソリ男に打ち込んだ全力全開ではない、その前の黒服を倒した程度の、加減を考慮した打撃。
それでも充分に効果がある事は“分かって”いた。
血液ならぬ樹液を吐いてよろめく蔦男に対して、私は距離を取って構えた。
記憶の中の2号ライダーと、挙措がシンクロする。
「哈アアアアァッ」
体内で気を練ると、外甲までもが気を練り、更に周囲の気さえ取り込んで私に流し、私の内部に流れる気を強化するのを感じる。
その、絶大なまでの気を右足へ。
跳躍。
イメージ通りの飛び蹴りは、元祖たるライダーよりも綺麗だったと自負している。
「ライダァァァァ、キィィィィィック!」
打突の瞬間に、右足に込めた気を解放。
ただでさえ蹴りに体当りの威力が加わる大技である飛び蹴りに、現世では有り得ないレベルの気の威力を受けて、蔦男は派手に吹き飛び、倒れ伏した。
2号ライダーとサソリ男との戦いは、佳境に入っていた。
といっても相変わらず、ライダーの打撃はサソリ男の甲殻に弾かれ、サソリ男の攻撃は空を切るばかり。
一見すると堂々巡りの千日手に見えるが、内情は違う事をライダーと私は知っていた。
何十度目かのライダーのパンチが、サソリ男の左胸に当たった。
命中時に響いた音は、それまでの打撃音と僅かに違う。
勝機!
「ライダァァァァ、パァァァァンチ!」
ここぞと繰り出された必殺の一撃は、とうとうサソリ男の甲殻をも打ち砕いて本体を叩いた。
ライダーの攻撃は多くのフェイクの中、左胸に対する攻撃のみが殺傷の意図を持っていた。
全ての攻撃を弾く甲殻を持っていたサソリ男は、その防御力故にライダーの狙いに気付けなかったのだ。
一点集中による装甲破壊の意図に。
胸を押さえてタタラを踏むサソリ男。
2号ライダーは跳躍して間合いを取ると、止めの一撃の準備に入った。
瀕死のサソリ男に向かってジャンプ。
だが、その姿勢は私の記憶にある形とは少々変わっていた。
空中で身体を捻る2号。
その形状は、さながら卍だ。
捻りによって生み出された回転が、ライダーの飛び蹴りをドリルに変える。
「ライダァァァァ、卍キィィィィック!」
サソリ男の両手ごと左胸に穿たれたドリルは、鋏を砕き、本体を抉り、貫通した。