蟷螂男と相対した本郷さんーーーー仮面ライダーの戦いは、圧倒的だった。
とにかく、当たらない。
蟷螂男の両手の鎌も、蹴りも、噛みつきさえも完全対応してみせる。
しかも、自身の攻撃が有効打になっていないと見るや、蟷螂男の攻撃の軌道を逸らせて自滅させるという強かさ。
僕は蟹男と子供の喧嘩じみた泥仕合を繰り広げながら、本物の仮面ライダーの実力に魅入っていた。
自傷を恐れた蟷螂男の蹴りを、ライダーが受け止めたのが契機だった。
ライダーはそのまま蟷螂男の懐に飛び込むと、蟷螂男の首を腕でロックし、抱え上げる。
「衛児くん……いや、ダーク!合わせるぞ!」
ライダーは蟷螂男を持ち上げたまま、高速でスピンを始める。
僕はライダーの意図を汲めた。
「シャドウ・グラップ!」
再び影を繰り出し、今度は敵に巻き付かせた。
影はスルスルと蟹男の身体を登り、首に到達すると頸部を圧迫する。
蟹男は首を掻きむしって抵抗したが、二次元体である影を掴める訳もなく。
僕は混乱する蟹男の隙を突いて組み付くと、ライダーを習って担ぎ上げ、同様にスピンした。
戦場に、二つの竜巻が現出する。
「ライダー、きりもみシュートオォ!」
ライダーが蟷螂男を投げた。
回転力を維持したまま風を纏って上昇し、落下する。
「ハッ!投げ技なんぞで改造人間がダメージを負うものかよ!」
シザースは僕等を嘲るが、ライダーに野次は届かない。
「今だ!」
ライダーの合図に、今度は僕が蟹男を投げ飛ばした。
技が生み出した気流に合わせて、ライダーが跳ぶ。
回転しつつ落下する蟷螂男と、回転しつつ上昇する蟹男の軌道は、全く同じだった。
当然、両者は空中で激突する。
シザースは投げ技なんか効かないと嘲笑ったが、これなら当たるのは地面ではなく味方の身体だ。
互いに体当たりを仕掛けるようなもの。
であれば事情は違ってくる筈だ。
激突!
蟷螂男と蟹男は血霧を吹いた。
その外殻にもビシビシと亀裂が入る。
その間に、ライダーは二人の上方に跳んでいた。
ビルの非常階段の底裏を足場に蹴り、二人の手負いに迫る。
「ライダー、反転キィィック!」
ライダーの飛び蹴りは蟷螂男の背中にヒットし、衝撃を蟹男にまで伝える。
二人の甲殻は、最早装甲の用を成していなかった。
ライダーの蹴りで落下速度を増す怪人達。
その落下点に控えるのは、勿論僕だ。
「やれ、ダーク!」
ライダーが叫ぶ。
やらいでか!
僕は両足を踏ん張り、右拳に意識を集中した。
心臓から溢れる闇を、右腕に溜めるイメージ。
「ライダァァァ、パァァァァンチ!」
渾身の一撃。
僕は二人の怪人の体表/体裏四枚の装甲を打ち貫き、爆散させた。
一息ついて辺りを見回すと、シザースの姿は何処にも無い。
撤退したのだ。
僕はライダーとハイタッチを交わすと、今更ぶり返してきた恐怖に腰を抜かすのだった。