戦いが終わって。
僕達は立花モータースを引き払う事になった。
敵に住処がバレた以上、ここに居続けるのは危険だからだ。
一文字さんも合流して引越しの準備をする間に、僕は本郷さんから様々な“新事実”を聞いた。
一文字さんも仮面ライダーである事。
二人は六十年も前から様々な組織と戦っており、実年齢は80歳を超えている事(改造手術の影響で老化とは無縁らしい)。
そして、あの夜の事も。
僕が家族を失った、あの日ーーーー
教団が僕を狙っている事を調べ上げた本郷さんは、僕の自宅へ向かい……
僕(正確には、意識を失った僕を操るゴア神)を目撃した。
邪神は自身に群がる雑兵を、アリでも潰すかの様に駆逐すると、その力で僕の家を消滅させ、力尽きたそうだ。
僕の胸に寄生する邪神は、本郷さんの証言を肯定した。
緊急回避として僕の身体を乗っ取った邪神は、しかし内部に蓄えていた力を使い切ってしまった為、暫くは僕の中で静養するのだそうだ。
僕の家を消滅させた理由は、僕を“家族殺し”として逮捕させない様に、との事らしい。
確かに、あのまま家族が第三者に発見されれば、僕に疑いの目が向けられるのは必至だったろう。
本郷さんは僕の力を看過する訳にもいかず、とりあえず保護して監視しよう決めたのだそうだ。
一文字さんは言う。
「俺達は君のその力が覚醒しない事を祈りつつ、それでも覚醒した際に備えて、力に呑み込まれないよう鍛えたつもりだ。まだ入門編だったから、正直ヤバいタイミングの襲撃だったがな」
苦笑して頭を掻く一文字さんに、僕も苦笑で返す。
だが修行の成果は出ていた、と思う。
以前の僕なら、内から生じた激情に身を任せていただろう。
本郷さんの声を聞けたのは、一文字さんに鍛えてもらったのはフィジカルだけではなかった証拠だ。
本郷さんが続ける。
「君の力は奴等に狙われている。今より少々窮屈な生活を強いられる事になるが、安全な場所にーーーー」
そこまで聞いて、僕は本郷さんの言葉を遮った。
「僕、戦います」
本郷さんは驚き、一文字さんは唇の端を上げる。
「彼等に虐げられる人が居るのなら……僕に、彼等に対抗出来る力があるなら……僕はもう、逃げちゃダメなんだと思うんです」
なおも僕を説得しようと口を開く本郷さんを制して、一文字さんが前に出た。
「その意気や良し!だな。なら修行も、もうチョイ厳しくさせてもらうぜ?」
「望むところです」
「……決意は固い様だな」
意気投合する僕と一文字さんを眺めて、本郷さんが溜息をつく。
ただ、その表情は柔らかく、やんちゃ坊主見守る好々爺に見えた。
そして僕等は立花モータースを後にする。
ほんの僅かな期間しか過ごしていないのに別れ難い郷愁を誘う建物を、しかし僕は振り返らなかった。
過去を懐かしむのは、もう止めた。
後ろを向くのも、逃げるのも。
僕は、僕が護るべきモノを護る。
僕が手に出来なかった、平穏で平和な毎日を送る人々を。
そしてそれを守る人達を。
僕は守ってみせる。
〜邪神の戦士編〜完
イメージCV:
神楽衛児(仮面ライダーダーク):白石涼子
本郷猛(仮面ライダー1号):藤岡弘、
マスターデウス:納谷悟朗
謎の女:勝生真沙子
ゴア神:秋元羊介
シザースジャガー:広瀬正志