アンドロイド達の献身的な抵抗のお陰で、黒服女は爺さんの居住区画までは侵攻出来なかった様だ。
だが、無傷の居住区画にも爺さんの姿は無い。
あんにゃろう、人を呼び出しといて留守とはナメやがって……
などと聞こえるように呟きつつ内部を探索していると、廊下の一部でセンサーが反応した。
「深海圭介様ヲ確認、るーとノろっくヲ解除シマス」
電子音声と共に、壁に通路が現れる。
まぁた改築しやがったのか、私有地の地下500メートルだからと好き勝手に。
爺さん無駄なアグレッシブさに呆れつつ、通路を進む。
行き着いた部屋には、人一人が余裕で収まるサイズの円柱形のガラスケースが鎮座していた。
台座にはカラフルなチューブやら配線やらがゴチャゴチャと繋がれ、さながら触手モンスターだ。
こいつぁ確か、爺さんが開発に成功したものの「世界のバランスが崩れる」とか何とか言って封印した、物質転送装置じゃないか。
これが“素晴らしい誕生日プレゼント”……じゃないよな?
と、物質転送装置が電光を放って震え始めた。
オレの入室を起動キーに設定してたのか。
ガラスケース内を走る電光は次第に数と太さを増し、埋め尽くす。
轟音と共に電光が消え去ると、ガラスケースの中には一本の腕時計と、一枚のマイクロチップ。
それと、一通の手紙が置かれていた。
手紙は、ある意味爺さんの遺書だった。
爺さんは、ショッカー潰滅後も密かに改造人間について研究していた。
その人智を越えた能力に、魅せられでもしたのだろう。
そして、とうとう改造人間の原理に辿り着いた。
同時に、ショッカーの裏で改造人間を創り出していた組織の存在にも。
ゴア教団ーーーー
このいかにも怪しげなネーミングのカルト団体が、ショッカーに改造人間の技術を提供していた。
奴等は既に世界に浸透を開始しており、近く人間世界に牙を剥くであろう事を予見した爺さんは、奴等に対抗し得る力を求め、とうとうそれを手に入れた。
だが、それに気付いた連中は、爺さんに食指を伸ばしてきた。
つまり、組織に協力しろ(さもなくば死ね)ってことか。
で、爺さんは奴等の手の届かない場所に逃げる事にした、と。
マテリアル・スペース?
科学者の理想郷?
よく分からんが、どうやら冥土に行ったというワケではなさそうだ。
こっちからコンタクトが取れない以上、死んでるのと変わらんが。
“素晴らしい誕生日プレゼント”ってのと、この遺書もどきとどういう関係があるんだ?
それとも、その組織とやらから逃げるからプレゼントは無しよ、って事なのか?
なんとなく釈然としないまま、オレはマイクロチップに手を伸ばした。