マイクロチップの規格は、俺の頭部パーツに合わせた特注品だった。
膨大なデータを強制的に記憶させる、メモリーブレイン。
…………大学受験の際に利用したことは、墓場まで持って行こうと思っている秘密だ。
これ、あまり好きじゃないんだよなぁ。
いっぺんに大量の情報が流れ込むせいでスゲー気持ち悪くなるし、何日かは“知りもしない知識”の夢にうなされるし。
しかし、ビビっていても始まらない。
オレは意を決して、後頭部の髪に隠れたメモリードライブにチップを装着した。
瞬間。
情報の津波に、オレの意識は翻弄された。
脳が平衡感覚に容量を割けず、その場にへたり込む。
眼球からの画像を処理出来なくなり、視界が暗転。
オレは意識を喪わない様に耐えるだけで精一杯だった。
“受験勉強”が子供のお遊びに思える情報の奔流は、数秒で終わった。
オレにとっては、数時間とも数日とも感じられるものだったが。
マイクロチップの中身は、オレとクルーザーの秘められた能力の事と、爺さんの改造人間研究の成果だった。
爺さん…………
オレが事故った時から仕込みは始まってたのか?
まさか、事故まで含めて爺さんの企みじゃないよな?
……なんか不安になってきた。
とにかく、この腕時計型デバイス『パーフェクター』を装着する事で、オレとクルーザーのリミッターが解除されるんだな。
オレが手を伸ばすと、パーフェクターは意志を持つかの様にオレの腕にバンドを巻き付け、左手首に収まった。
……オレが着けていた腕時計を破壊して。
ノオォォォォォォ‼︎
新調したばっかりのオレの時計がぁぁぁぁ!
黒服女のボディブローとは比べ物にならないダメージを受けて、オレは地に付した。
さて、この後どうするか。
研究所を出たところで、オレの懐から『ダース・ベイダーのテーマ』が流れてきた。
この着信音に設定してる相手は、一人しか居ない。
この瞬間、オレの行動指針は「京子に自慢する」に決定された。
早速通話ボタンを押す。
「あ、京子ちゃん?聞いてくれよ、実はオレさぁーーーー」
『深海圭介、だな?』
スマホから湧き出た声は、低く、太く、嗄れていた。
「京子ちゃん風邪でもひいた?駄目だぜ、ちゃんと健康管理しとかないとーーーー」
『高山京子は預かった。2時間後、採石場に深海博士の研究データを持って一人で来い』
ツッコミくらいしろよ。
しかしーーーー
「採石場とは分かってるね」
『来なければ女は死ぬ』
全く会話にならないまま、通話は切れた。
さぁ、盛り上がってきたぜ。