採石場のかなり手前で、オレはクルーザーから降りた。
クルーザーに封印されていた能力の一つ、『遠隔操縦』を使って現地から引き離す。
クルーザーの“隠し機能”は、この遠隔操縦に加えてもう二つ。
それを駆使すれば、人質の救出くらいは成功するだろう。
後は、オレ次第……か。
オレは両手で頬を張ると、採石場に歩き出した。
再びかかって来た電話に誘導されて辿り着いた採石場の奥には、研究所で会った女とは別のMIB気取りの野郎が三人と、黒いコートに禿頭の巨漢、何故か十字架に縛り付けられた京子が居た。
黒服がそれぞれ抱えるゴツいライフルは、対物ライフルか。
さすがのオレも、あんなので撃たれちゃヤバいな。
しかし!何より!
京子の胸を搾り出すように縛る連中の緊縛術に、オレは感動した。
「グッジョブ!」
「グッジョブじゃないわよ馬鹿ぁ!」
連中よりも早いツッコミが京子から入る。
流石だな、京子ちゃん。
「よく来た。ではデータを渡してもらおう」
「そりゃ構わんけどさ。肝心の爺さんをどうこうせんで良いのかよ?データだってバックアップ取ってるかもだぜ?」
「我々が欲しいのは、『博士がどこまで知っているか』だ。さぁ、データをよこせ」
クルーザーはまだ所定の位置に着いてない。
ここは素直に応じてやるか。
オレはチップを投げた。
連中からは少し離れた位置を狙ったのだが、チップは途中で軌道を変えてハゲの手に収まった。
糸……か?
「これでお前達に用はなくなった」
「なら京子ちゃんを解放して帰らせてくんない?観たいテレビがもうすぐ始まっちゃうんだよ」
「確かにお前達を殺す必要も攫う必要も、我々にはないな」
お?意外と好感触。
「だが、生かしておく必要もまた、我々には無い」
チッ、ヌカ喜びさせやがって。
だが、これでクルーザーは配置に着けた。
「んじゃ、オレとしては精々抵抗させてもらおうかな」
黒服達の銃口が、一斉にオレを向く。
オレは余裕たっぷり、自信満々に胸を張った。
「オレの必殺技を、とくと観やがれ!」
オレは天を指差し、一声放つ。
「あっ!あれは何だ⁉︎」
シーーーーーーーーーーン
遠くで鳶が鳴いた。
一瞬で凝固した空気が重い。
「この…………大馬鹿ぁぁぁぁ!」
一番最初に立ち直ったのは、京子だった。
やはり彼女はツッコミやらせると最強だなぁ。
禿頭は声を立てて笑った。
黒服達も爆笑こそしないものの、目に見えて銃口が震えている。
(よし、降下開始!)
「何だよ、一人くらい引っ掛かっても罰は当たらんだろうに」
「こんな子供騙しに引っ掛かる馬鹿が、この世に居るとでも思っているのか?愚か者め」
「正直者は馬鹿を見る、か。だけどなぁ、たまにゃ素直に生きた方がいいぜ。特に……こんな物が降る日はな!」
言われた連中が頭上を振り仰いだ時には、既に回避出来る状況ではなかった。
黒服達の中でも京子を縛り付けた十字架の前に居た二人は、“上空から落ちてきた”クルーザーの下敷きになった。