隠し機能の一つ、飛行能力で上空数百メートルに待機していたクルーザーは、自重と重力加速度で黒服二人を無力化し、対物ライフルを潰した。
もう一丁!
「クルーザー、stand up!」
オレからのコマンドを受信して、クルーザーが“変形”を始める。
車体下部のアームが畳まれて前輪/後輪が脚に。
車体はシートを軸に折れ、シート後部が腰部に、通常のバイクのタンクに当たる部分が胸から腹に、カウル部分が頭部に変わる。
タンク部の下に折り畳まれていた腕部が展開すると、クルーザーは人型のロボットになった。
クルーザーは残った黒服のライフルを掴むと、空いた手で黒服を殴り飛ばし、ライフルをオレに投げる。
オレがライフルを禿頭にポイントするのと、クルーザーが十字架ごと京子を確保するのは同時だった。
「ヘイ大将、形勢逆転だぜ♪」
オレの不敵な笑みを前に、しかし禿頭は不敵な笑みで返してきた。
頭でもイカレたか?
「なぁ、戦車吹っ飛ばすようなライフルが狙ってるんだぜ?命乞いしろたぁ言わないが、ちょっとは焦ったらどうよ?」
クルーザーが京子をオレの下に運んで来る。
奴に手は無い……筈だ。
次の瞬間、禿頭のコートが風も無いのにざわめき出した。
「撃ってみろ。俺は構わんぞ」
その自信満々な様子に、オレの背筋を悪寒が走った。
思わず、引き金に掛かった指に力が入る。
それでも照準は腹から腕に変えた。
隻腕になってもオレを恨むなよ。
轟音。
禿頭の腕は吹き飛んだ。
コートだけが。
コートの下の奴の腕は、甲虫を思わせる甲殻に覆われていた。
その甲殻が、対物ライフルの弾丸を受け止めていた。
……嘘だろ?
「地獄を……見せてやろう」
コートの背中を突き破って、同様の甲殻を持つ四本の腕が生えた。
頭皮を脱ぎ捨てた下から現れたのは、顔の半分も占める巨大な複眼と、顎。
ボロボロになった服を千切り捨てると、禿頭は蜘蛛を思わせる化物となっていた。
なるほど、コイツが改造人間という奴か。
オレは今度は蜘蛛男の頭を狙ってライフルを撃った。
弾丸は蜘蛛男の複眼で潰れる。
「こいつぁ笑うしかないなオイ」
ここまで、爺さんの研究とのズレは無い。
後はオレに隠されていた能力が通用するか否か、か。
オレは蜘蛛男から視線を逸らさず、クルーザーによって十字架から解放された京子に声を掛けた。
「京子ちゃん。オレさ、とうとう見付けたぜ」
「見付けた?何を?」
「『仮面ライダー』だよ。今、会わせてやるよ」
オレはライフルを捨てると、左腕を眼前に掲げた。