VーROCK   作:マロンex

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始動

ー日本FPS協会 本部

 

(...あの時は喜んじゃったけど...私が呼ばれる理由全然ないな...もしかして釣り?)

 

招待状に記載された地図の通り近づいたがそれらしき人物は全然いない。

だまされたのではないかと疑心暗鬼になり、都会の喧騒が余計に大きく聞こえた。

不安に駆られながらあたりをうろうろとしていると一人の人物が声をかけてきた。

 

「...もしかして、紡木さん?」

 

「えっ?」

 

そういって振り返ると、そこには以前戦った雑賀さんの姿があった。

赤い髪を振り乱しながら、屈託のない笑顔で近づいてきた。

 

「やっぱり! 紡木さんだ! 私のことわかる?」

 

「も、もちろんです! 全国選抜でも屈指のエースですし...」

 

「いやいや! 全国までの相手でも君のことは鮮明に覚えてたよ! なんていうかFPSIQが高いっていうか、フィジカルも強いし...一緒のチームだったらなぁって思ってたよ!」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

(...いい人だな。なんというか人間としてもできてる感じ)

 

「おっと、世間話してる場合じゃないね! さ、行こうか!」

 

手を引かれ会場に入る。指示された場所に向かうと大きな扉があった。

躊躇なく雑賀さんが開くと、広い会場にはおそらく同じ招集されたFPS選手たちがごった返していた。

 

(すごい、有名な選手ばっかりだ)

 

全国各地で注目されているような見たことがあるような選手たちが所狭しと散らばっていた。

ますます呼ばれた意味が分からなくなってきたころ、会場奥のステージからコツコツと歩いてくる音がした。

 

「あ、あー。やぁやぁ、才能の原石たちよ。おめでとう。君たちはこの広い日本において私の独断と偏見で選んだ300人の優秀なFPSプレイヤーだ。私の名前は坂本。以下よろしく」

 

黒と白の髪型をした奇抜な人物は、やけに嬉しそうに壇上に立ち、こう続けた。

 

「私は君たちをEWカップ優勝させるために雇われました。...シンプルに言おう。日本が優勝するために必要なのはだた一つ。革新的な世界一と呼ばれるFPSプレイヤーを作ることだ」

 

ゆっくりとモニターが出てきて、画面にはこう映し出された。

 

『VROCK』勝利の監獄

 

「ーお前たちはこれからここで共同生活を行う。家には帰れないし今までのサッカー生活、しいては学校生活も忘れすべて俺にゆだねてもらう。...ただこれだけは断言する。ここで勝ち抜いたたった一人のFPSプレイヤーは間違いなく世界一と呼ばれるプレイヤーになる。私が約束しよう」

 

突然の衝撃にざわめく会場で、横にいた雑賀さんが声を上げる。

 

「ちょ、ちょっと待ってください! 私、いや私だけじゃない。ここにいる人達の中には全国を控えてる選手もたくさんいます。世界一かなんだか知りませんが得体のしれないことのためにチームを捨てられません」

 

ーそーだそーだ!

ー誰だお前!

ー急によばれて意味わかんねえよ!

 

雑賀さんを皮切りに周りの選手たちも次々と不満を声に出す。

しかし、そんな空気をぶった切るように、男性は大きくため息をはいた。

 

「はぁ...。お前ら重症だな。わかったよ。文句あるやつはもう帰っていいよ。説明するのめんどいし。...世界一の切符を提示してやってるのに、FPS後進国内の試合の方が大事か?」

 

はあ、ともう一度大きくため息をはくと、会場は水を打ったかのように静まり返った。

 

「はっきりいう、日本は二流だ。国民性も相まって、絆やらチームやらのくそみたいな文化に縛られちまってる。だからいつまでたっても弱小国から抜け出せない...FPSにおいて必要なのはなんだ? 強いことだ。 勝つことだ。誰よりも多く敵を倒し、ゲームに貢献した奴が一番偉いんだよ」

 

「...撤回してください。日本で選ばれた選手はみな私の尊敬する人物です。その方々の思いを踏みにじらないでください」

 

「で、その尊敬する人物は一人でもEWカップで優勝してんの?...してないよね。じゃあカスじゃん」

 

雑賀さんも含め会場がお通夜のように静まり返るなか、モニターには各年のEWカップの優勝選手たちの写真が映し出された。

 

「かの有名な世界一の韓国プレイヤーはこういった。味方が全員生き残って勝つより、自分が4人殺して負けた方が気持ちがいい、と。...またEWカップで2度MVPになった選手はこういった。チームの勝ち負けはどうでもいい、とにかく私が目立てばいい、と。....どうだ、なかなかに最悪だろ」

 

「ここで俺が言いたいことが一つ。世界一になるってことは世界一のエゴイストになることに他ならない。この会場のすべてを敵とみなし、299人全員を屠るようなそんな自分勝手で独善的な選手。...私はその最強の選手の誕生を望んでいる」

 

プシュゥゥゥゥ

 

大きな壇上の奥の扉が開くと、大きなバスへとつながっていた。

男性は嬉しそうに扉を眺めながら続けた。

 

「ーFPSはお前らのためにある。お前ら以外は全員脇役だと思え。常識を捨て、自分こそ真のFPSプレイヤーと信じて疑わない、そんな頭のねじを飛ばせると思うやつは進め。私はそんないかれたやつを歓迎する」

 

(世界一と疑わない...真のFPSプレイヤー...)

 

「つ、紡木さん...?」

 

私の足は気が付いたら扉に向かって吸い込まれていた。

そんな無意識の躍動につられ、一人、また一人と歩みを進めていく。

 

バタンッ

 

閉じた大きな扉手前の会場にはもう誰もいなかった。

 

「ー坂本さん、ではよろしくお願いしますね。300名の選手、そして...日本の未来を」

 

「...残念だが、299人の未来は多分、めちゃくちゃになるだろう。だが日本のFPS界を担うたった一人の選手が生まれる。...いや、生ませてみせる。...さあ、行こうか、世界で一番熱いFPSの会場に」

 

不敵な笑みを浮かべた坂本は、ゆっくりと奥へと進んでいくのだった。

 

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