篠澤広のプロデュースは、ままならない   作:味のないお茶

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第十話

 第十話

 

 

 篠澤さんのプロデュースを始めて一ヶ月を経過した時だった。

 四月は終わりを告げ、五月に入った。

 春の陽気と初夏の気配を感じさせるような季節。

 昼寝をしたりするのにはピッタリだよな。

 昼休みになると屋上で昼寝をする生徒やプロデューサーも少なくない。

 なんでも、『いつでも寝てるアイドル候補』が居るとも言われてるけど、そんな素行の悪い生徒が居るとは思いたくないな。

 厄介な生徒は篠澤さんだけで十分だ。

 

 そんなことを考えながら、直近の篠澤さんの健康診断の結果を見ていると、プロデューサー室の扉がコンコンとノックをされた。

 

「どうぞ」

 

 俺が外にそう返事をすると、扉がガラリと開いて篠澤さんが部屋の中へと入ってきた。

 

「こんにちは。プロデューサー。今日は報告があって来た」

「こんにちは。篠澤さん。一体どんな報告ですか?」

「ふふふ。遂に私は、片足立ち10秒を達成した」

「おめでとうございます!!すごいじゃないですか!!」

 

 俺のその言葉に、篠澤さんは誇らしそうに胸を張る。

 

「では、俺から篠澤さんに健康診断の結果について……」

「その前にプロデューサー。私の話を聞いて欲しい」

「……え?」

 

 先日の健康診断の結果を踏まえて、週ごとに体重を増やしていくことが出来てるってのを言おうとした、俺の言葉を遮って、篠澤さんが俺にお願いをしてきた。

 

「ご褒美が欲しい」

「ご褒美……ですか?」

「うん。他のアイドルたちが話してるのを聞いた。みんな、何かを達成すると、プロデューサーからご褒美を、貰ってるらしい」

「……なるほど。ちなみに篠澤さんはこれが欲しいとかあるのですか?」

 

 俺がそう問いかけると、篠澤さんは少しだけ思案した後に、要求を言ってきた。

 

「……ゲームセンターに、行ってみたい」

「却下です」

 

 即答出来た。

 あんな場所に篠澤さんを連れていったら、1秒で鼓膜が破ける。

 ズタボロになる未来が容易に想像出来る。

 

「……プロデューサー、なんで、ダメなの?」

「騒音が酷いからです。あんな場所に篠澤さんを連れていったら、1秒で鼓膜が破けます」

「……なるほど。つまり『騒音対策』が出来てれば、問題ない、と?」

「……まぁ、そうですね」

 

 俺がそう答えると、篠澤さんはポケットから『ノイズキャンセラー』を取り出した。

 

「これは私が大学に居る時に、使ってた。これがあれば、騒音とはおさらば」

「…………何故そこまでして行きたいのですか?」

「…………秘密」

 

 少しだけ頬を染めて、視線を逸らしてそんなことを言う篠澤さん。

 こういう時は理由を聞いても話してはくれないだろう。

 

「はぁ……わかりました。では今週末にゲームセンターに行くことにしましょう」

「本当?やったね」

「まぁ、頑張ってるアイドルにご褒美を出すのもプロデューサーの役目ですからね」

「ふふふ。楽しみ」

 

 篠澤さんはそう言うと、部屋の扉の前で微笑みながら言った。

 

「土曜日の午前10時に、駅前に集合で」

「了解です」

「ふふふ……プロデューサーとの『デート』楽しみにしてるね」

 

 篠澤さんはそう言うと、プロデューサー室を後にした。

 

「……デート……か」

 

 まぁ、男と女が二人で出掛ければデートと言っても良いかもしれないが、俺の篠澤さんは『プロデューサーとアイドル候補』だ。

 

「担当アイドルとの距離感だけはきちんとしておかないとな」

 

 そう呟きながら俺は篠澤さんとの『デートプラン』について、考えていくことにした。

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