篠澤広のプロデュースは、ままならない   作:味のないお茶

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第十七話

 第十七話

 

 

 

 

 篠澤さんのデートから明けた次の日。俺は少し早めに起きて朝のシャワーを浴びていた。

 昨日の疲れは少し残るけど、今日は月村手毬のファーストライブに招待を受けている。

 チケットは貰っていないが、話は通してあるので、学生証を見せれば中に入れるだろう。

 一応、リハーサルは正午にやり、本番を夕方やる。流れになっているようだ。

 

 リハーサルのうちから見せてもらえることになってるから、会場へは昼には着いている予定にしてる。

 

「学内ライブ。とは言え、かなりの集客が見込めるライブだよな。まぁ篠澤さんには当分先の話だな」

 

 通常のレッスンすらまだ出来ない彼女にとって、ライブなんて夢のまた夢。

 まずは通常のレッスンが出来る身体作りが最優先だからだ。

 

 そして、目玉焼きとトーストしたパン。砂糖とミルクを入れたコーヒーを飲みながらパソコンを開くと、篠澤さんのお父さんから返事が来ていた。

 

『広のレッスン状況は確認した。どうやら君の言うことは正しかったようだ。それに、学生時代よりも顔色が良くなっている。食事環境も改善されていることが見て取れた。引き続き、広のプロデュースをよろしくお願いする』

 

「ははは。あの動画から、彼女の顔色の変化まで気が付いてくれるのか。流石は親御さんだな」

 

 なんて独り言を言ってると、追伸があることに気がついた。

 

『追伸。昨日、広から電話があった。娘と楽しくデートをしたそうだな?プロデューサーと担当アイドルの『適切な距離感』でいることを信じている。』

 

 …………。

 

 朝から頭が痛い……

 

 返事はするべきだろうな。

 ここは変に言い訳はせずに、きちんとした距離感でプロデュースすると伝えるか。

 

 

『おはようございます。早速のレッスン動画の確認ありがとうございます。ご覧通り、篠澤さんは通常のレッスンすらままならない状況ではございますが、食事環境に関しては改善の傾向にあり、健康診断の結果も上向いています。昨日の件におきましては、篠澤さんの課題クリアの報酬として、希望のあったアミューズメントパークへ向かいました。多少のアクシデントはございましたが、無事に帰宅させられることが出来たことを報告します。担当アイドルとの適切な距離感で、今後もプロデュースを行うことを、ここに約束いたします』

 

 

 ……よし。これでいいよな。

 

 俺はお父さんにそう返信を送り、食事をした食器を流しへと入れておいた。

 食器洗いは夜にまとめてやるタイプだから、朝の分は水につけておくだけで済ませている。

 一人暮らしの身だから、毎回洗っていたら洗剤の無駄だからな。

 

 そして、着替えを済ませて読みかけの本を少し読み進めていると、家を出る時間になっていた。

 

「よし、行くか」

 

 簡単な手荷物を持って家の戸締りをしっかりと確認し、俺は家を出た。

 

 

 

 学内ライブ。

 

 初星学園では、定期的に行われているものであって、申請すれば誰でも行うことが出来る。

 基本的にはプロデューサーが、申請を行い、場所と時間のすり合わせを行うのだが、プロデューサーのついていないアイドルでも行うことが出来る。

 その場合は、申請から場所の確保、時間のすり合わせも自分でやる必要があるため、通常のレッスンの合間にやるとなると、なかなか難しい。

 

 ただ、プロデューサーのついてないアイドルにとっては、自分をアピールする場でもある為手間を惜しんでもやる価値のあるもの。としての認知がある。

 

 基本的には入場、観覧も自由だ。

 しかし今回のように、かなり知名度のあるアイドル候補が学内ライブをやるとなると、制限がかかったりもする。

 月村手毬のファーストライブ。

 友人の話ではかなりの観覧希望者があったそうだ。

 そこに、チケットもなしで入れるんだから、持つべきものは友だな。

 

 そんなことを考えながら、会場の警備の人に学生証を見せる。

 

「月村手毬さんのプロデューサーから話は通ってます。どうぞ」

「ありがとうございます」

 

 俺は警備の人に一礼して中へと入る。

 すると中には、あさり先生とビジュアル、ボーカル、ダンスの各担当レッスントレーナーも席に座っていた。

 俺も話を聞くために先生方の隣に腰を下ろした。

 

「こんにちは。先生方も招待されてたんですね」

「こんにちは、プロデューサーくん。貴方も勉強に来たのね。良い心がけですね」

「篠澤さんのプロデュースに役に立つとは思えませんが、ソロになってからの月村さんのファーストライブには興味がありますからね」

 

 俺がそう言うと、各レッスントレーナーが話をしてきた。

 

「月村の歌唱力は本物だよ。中学時代からさらに磨きがかかってる」

「ダンスの良くなってるな。スタミナに懸念があるのは確かだが、まあ及第点だろう」

「太りやすい体質だから、体型のコントロールには注意が必要だけど、そこはプロデューサーがしっかりとやってくれてたみたいよ」

「なるほど。満を持してのファーストライブということがわかりました」

 

 俺がそう言って視線をステージに向けると、月村手毬のリハーサルが始まろうとしていた。

 

「リハーサルが始まりますね。楽しみです」

 

 そして、俺の目の前で行われたのは『圧巻』という言葉が適切な月村手毬のリハーサルだった。

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