篠澤広のプロデュースは、ままならない   作:味のないお茶

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第二話

 第二話

 

 紆余曲折を経て、篠澤広をプロフィールすることになった。

 まぁ彼女の『熱意に負けて』一ヶ月だけ付き合う事にした。

 だが実際には彼女の言う、お試し期間なんてものは存在しない。

 だから本契約ということになるのだが、これは言わない方がいいだろう。

 アイドルとしての才能なんか、きっと、欠けらも無い。

 だが、彼女の目から、先程までふらふらだった女の子とはいえない『覚悟』が見て取れた。

 

『トップアイドルをプロデュースする』

 

 と言う夢は捨ててはいない。

 ただ、学園長の言葉を信じるのならば、彼女には俺には見えない可能性が秘められているということか。

 それを見抜けていない。と言うのはプロデューサー科の人間としてはかなりの屈辱だ。

 

「まぁ、まずは彼女がまともにレッスンを出来るようにすることが先決だな」

 

 そう結論付けたあと、俺はあさり先生に会いに職員室へと向かって行った。

 

 

『職員室』

 

 

 コンコン。と扉をノックした後、部屋の中へと足を踏み入れた。

 

「失礼します。プロデューサー科の一年です。あさり先生はいますか?」

 

 そう言って声を上げると中からあさり先生の声が聞こえてきた。

 

「はい。いますよ。なんですか、プロデューサーくん?」

 

 澄んだ声と共に、そんじょそこらのアイドルなんか目じゃないような容姿の先生。あさり先生が俺の目の前へとやって来た。

 

「はい。先生にお願いしたいことがあって来ました」

「お願いしたいこと?なんですか」

 

 首を傾げる先生に、俺は担当アイドルのプロデュースのために必要なことをお願いした。

 

「篠澤広さんをプロデュースすることになりまして、差し当っては、彼女の座学の授業の一部を免除させて欲しいと考えてます」

 

 大学を既に卒業するレベルの頭脳を持つ彼女だ。

 そんな彼女がいまさら高校レベルの授業を受けることに意味は無い。

 だとするならば、その時間は『違うこと』に充てた方がいいだろう。

 

「なるほどなるほど。それは道理ですね。構いませんよ。ちなみに篠澤さんには代わりに何をさせるつもりですか?」

「はい。彼女には休養とイメージトレーニングに充ててもらう予定です」

 

 通常のレッスンはまだ彼女には無理だ。

 だからなるべく、身体を動かさなくても出来るトレーニングをしてもらう予定だ。

 幸いにもここには彼女のお手本になるアイドル候補生はたくさんいるからな。

 

「そうですか。それでしたら構いませんよ。後で彼女が出ない授業を教えてください」

「わかりました」

 

 俺がそう言って首を縦に振ると、あさり先生は人差し指を立てて、注意事項を話した。

 

「それと授業は免除しますが、テストは受けてもらいます。その点数が悪ければ授業の免除のは無くなりますので注意してくださいね?」

「当然ですね。了解しました」

 

 そして、俺はそう答えるとあさり先生に一礼をして職員室を後にした。

 

「さて、これから篠澤さんに会いに行ってこの話をしていくか」

 

 俺はスマホを取りだして、昨日のうちに連絡先を交換していた篠澤さんへメッセージを送った。

 

『おはようございます。話したいことがあります。登校前に食堂に来てください。』

 

 すると直ぐに既読がついて返信が来た。

 

『ふふふ。何を話されるのかな?わくわくするね。』

『そうですね。篠澤さんに悪い話では無いです。続きは会ってから』

 

 そう返事を送り、俺は食堂へと向かった。

 

 

「おはようございます。篠澤さん」

「おはよう、プロデューサー。どうしているの?」

「登校前に話して起きたいことがありましたので。一晩あけて、体調はいかがですか?」

 

 昨日は死にそうな顔をしていた彼女だが、一晩開けて見てみると、かなり顔色は良くなっているように見えた。

 

「……筋肉痛がひどい」

「倒れたのは単純な、疲労が原因とのことでしたね」

 

 そして、俺は彼女に本題を話すことにした。

 

「プロデュースを引き受けたからには、全力を尽くします」

「うん。おねがいします」

「まずは報告から。篠澤さんの座学免除の手続きをしてきました。今後一部の授業は出席せずともよくなります」

「そうなんだ。空いた時間はどうすればいい?」

「そのぶんレッスンをーと言いたいところですが、篠澤さんの場合、レッスンを増やしてもこなせません」

「わたしもそう思う」

「空き時間は休養とイメージトレーニングに充ててください」

「いめーじ、とれーにんぐ?」

「目を瞑って、頭の中でレッスンをするんです」

「体力が減らないレッスン……合理的。わたしにあってる。やってみる」

「よろしい。続いて確認があります。篠澤さんの食事習慣です」

「わたしが不健康だから心配してる?」

「健康診断の結果がよくありませんでしたからね」

 

 俺はそう言って懐から彼女の健康診断の結果が記載された用紙を取りだした。

 

 昨晩。穴が空くほど見ていた用紙だ。

 やはりと言ってはなんだが、彼女は『軽すぎる』

 どう考えても食事が足りていない。

 アイドルは体力勝負だ。

 きちんとした食事で、栄養を摂取しなければならない。

 

「篠澤さんのプロデュースをするにあたって、もっとも不安なのは……」

「わたしに才能がなくてアイドルになれないこと?」

 

 首を傾げる彼女。

 俺はそれに首を横に振りながら答える。

 

「あなたが……また倒れることです」

 

 あんなシーンは二度と見たくない。

 心臓が何個あっても足りない。

 俺の真剣な言葉に、篠澤さんは少しだけ驚いたような表情を浮かべた。

 そして、

 

「……プロデューサー。えっと……ごめんなさい。心配させた」

「いえ、そういうわけですので、食事習慣を確認させてください」

「いいよ。ちょうど朝ごはんの時間だから一緒に食べよう」

 

 こうして俺は篠澤さんと一緒に朝食をとることになった。

 

 そこで見た『珍妙な食事』に目を疑うことになるんだが、あの食事が『篠澤さんにベストマッチした食事』だと思い知るのは、栄養価を調べたあとの事だった。

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