独身「今日から君は奉仕部の一員だ」俺「は〜面倒くせ」   作:テクトリカ

11 / 26



※オリ展開あり。
※初投稿作品なだけあって通常の文章が拙いです。
※この話だけ掲示板形式ではありません!ご了承ください!





比企谷八幡は彼女にツケを返す。

夏休みの昼下がり。

電車の椅子に座り揺れながら運ばれる俺は、目的地に向かって思考を殺すように周囲の風景を見ながら呆けていた。

何故ぼっちの俺が出かけないといけないのか、何故最強のぼっちの俺が外に出ているのか。小町はどうしたのか。

理由は少し前に遡る。

 

 

********

 

 

午前9時。朝から妹の小町の課題である自由研究を代わりにやっていた。

まぁ我が妹小町の課題くらいなら文系の俺で余裕だった。

しかし問題が一つだけありまして。

ぐたーっとしている。

ココ最近、林間学校で体を動かして奉仕部の活動を1回して今後に夏期講習が待っているくらいで外に出るのがマッ缶切れた時か本を買いに行く時くらい。

要するに、暇だ。まぁ孤高のぼっちはいつも暇を持て余しながら生活できるので大量の暇は最強なのだ。フリータイムなのだ。

しかしこんな有意義な時間も終止符が打たれる様に、インターホンが鳴り響く。

 

「お兄ちゃーん、宅配便行ってー」

「あいよ」

 

俺の近くでかまくらをモフって休憩していた小町を横目に、ダルい体を叩き起こして玄関に向かうと。

 

「なんか身長違くね?」

 

印鑑を持ってきた俺から扉越しに宅配便が見えなかった。

随分小さい宅配便だなと思いながら扉を開くと……

 

「…こんにちは」

「お前…なんで俺の家知ってんの?」

「平塚先生に聞いてきた」

「平塚先生…」

 

玄関で待っていたのは、ここ少し前に林間学校で部活動を共にした……名前なんだっけ。

やべぇ名前なんて覚える気なくて覚えてねぇ!

 

「なんか用か」

「お前にツケを払いに貰いに来た」

「ツケ?あー…」

 

ツケ?ツケ、お茶漬け?と頭を捻りながら脳内で記憶のピースを組み立てて結論が出された。

そういえば川…なんとかさんの依頼で俺があんまり金なかった時にこいつに払ってもらって「ツケにしておくから」と言っていた。俺もそれを承知にして「ツケが払わせたくなったらいつでも来てくれ、その分払うわ」と未来を見ない発言をしていた気がする。

 

「実はこれから夏期講習でな」

「そうだったか…何時空いている?」

「いやココ最近空いてなくて」

「あれー、お兄ちゃん?…誰その人!?」

「小町」

 

ぼっち特有の「予定なんてないけど予定があるように話を盛る」を披露していると、ずっと扉を開けすぎて暑かったのか小町がシャツ1枚の姿で飛び出してきた。

こいつお客さんの前ですげぇ服装してんだけど?

 

「あ、こんにちはー。お兄ちゃんのお友達ですか?」

「違う。部活仲間と言った方が正しいな」

「部活仲間…あー!もしかして林間学校で一緒だった!」

「どうも」

「えーと、お名前伺ってもいいですか?というかあの時兄と最高の写真撮ってもらってありがとうございますー」

「え?ああ、うん。家族に見せる用に撮っておいたから」

 

そういえばこいつ、川崎の1件で父親に運んでもらってたな。

あの時から川崎の問題について報告は受けてないが、あれは成功したのだろうか。俺が気にする話でもないのだが、しかし引っかかるのはやるせない。何かしらの縁で会ったら聞いてみるか。あ、大志にうちの小町はあげません!

 

「これは…来ました!義姉ちゃんになってくれる人!」

「?」

「お兄ちゃん、夏期講習ない日に行ってあげてね!」

「え、は?いや俺アレがアレだし」

「はいはいそういうのいいからね!あ、お兄ちゃんが帰ってきても小町いないしご飯作らないから!じゃ!」

「小町!?」

 

ごゆっくり〜と言って部屋に戻っていく小町を見ながら、俺は思い切りため息を吐き出しながら頭を抑える。

はーこんちくしょう、ぼっちの有意義な時間が削られてしまうのは由々しき事態である。ここは丁寧丁寧丁寧にお誘いをお断りさせてもらうしかない。

 

「なぁ、小町が勝手に決まるのもアレだし俺は」

「難しいのか?」

「まぁ俺も予定あるし予定ばっかっていうか、や、ホントあれだ、俺も誘いに乗りたいのもあるんだがそこがまぁ色々ありまして」

「分かった。別の人に頼む事にする」

 

表情はあまり変わってないが、確実にしょぼくれてしまったのは分かってしまう態度でゆっくりと帰ろうとするあいつを見ながら、よし俺も戻ろうと思って振り返った時。

 

「(お〜兄〜ち〜ゃ〜ん〜?)」

 

小町が修羅の鬼の如くこちらを睨んで絶対に家に入れてやらない!という表情だった。

不味い!これ以上小町の好感度を下げると俺のお兄ちゃんライフが確実に0になってここでゲームオーバーになる!

つまり、ここは了承せざるを得ない!

 

「あーまぁ、お前が本当に大切な用って言うなら無理矢理予定開けて行っても、いいんだが……」

 

表情を見させない(二重の意味で)為に俺が後ろを向きながらそう答えると、扉が閉まる音が聞こえず代わりに扉を密かに開けて軋む金属音が鳴り響いた。

 

「分かった。じゃあ、今日の19時に電話するから……その時に行ける日を相談したい。あと、俺の名前覚えてるよな?」

「いや待て覚えてるぞ?確か」

「はぁ…綾瀬一(あやせはじめ)。ハジメで覚えてくれ」

「あ、思い出した!……なんなら俺お前の電話番号もメールも知らないというか」

「知らなさすぎだろ。携帯見せれるか?」

「いや、普通に貸すわ」

 

ひょいっと手で投げた携帯をナイスキャッチと言いたくなる様な華麗な腕捌きでキャッチしたハジメが俺のスマホを見ながら高速で打ち込んでいく。流石と言ったところが、ずっとスマホから何かを打ち込んでいるこいつからしたら、俺とのメール交換や電話番号交換など容易いのだろう。

最終的に、俺のスマホにはいつも使っているメールアプリにハジメの名前と電話帳にも載ってしまった。

本来ならぼっちは自分の名前なんて載せずにその場でドロンしたい所だし消したいくらいなのだが、背後の小町の表情が恐ろしくて堪らないので我慢することにする。消したって言ったら殺されてしまいそう。

 

「じゃあ、また」

「お、おう」

「あ、それと……楽しみにしておいてくれ」

 

そう言い残して、その日にハジメ(よく考えたらこいつ女だったわ )と別れて通話もしたし予定も言っていた。まぁ小町監修なんですけどね!

そして、俺の最初の場面に戻るという訳だ。

 

 

********

 

 

「(今回誘われた場所も場所だからな)」

 

そして今日この頃があいつと約束した日にちとなった。

別に特に嫌な事はない。何せららぽーとだから!

待ち合わせ場所がららぽーと、それに待っているのは私服姿のハジメ。

正直あいつの私服姿は3回くらいしか見たことない。最初が買い物に付き合わされた時、2回目が林間学校で3回目が夏休み中に来た先日。

なんというか、ぼっちと豪語している割には外に出て誰かとつるんでいるので流石に不味いと感じてきた。

俺は直立不動のぼっち。故に誰かと絡むこと自体間違っているしもう何も期待しない。女子の微笑みは罠、女子からのお誘いはただの荷物持ち、女子のまた行こうねは気分が良かったら連れて行ってやるよ、だ!

……とはいえだ。俺もツケがある。何?ツケくらい金で払えって?いや俺はそれを最初に行ったんだよ通話した時に。

ただ、ハジメからの返答は……

 

『ツケが何時でも払えたのに払わなかったのはお前だろう?』

 

と言われてぐうの音が出なかった。全くもって本当にその通りでございます大変申し訳ありません。

あの日何も言えなかった俺の悔しさを噛み締めながら、電車は駅に到着し停止すると俺は降りる人と共に間隔を置いて降りていった。

ららぽーと自体大きいので、俺からすれば迷うことはないしもう何度も行ってたりする千葉のスーパーみたいなものだ。

嘘です、流石に千葉のスーパーは言いすぎた。千葉の遊園地まである。

改札口まで到着し、きっぷを送って外に出る。やはり人混みが多く夏休み期間なだけあってめちゃくちゃな人の混みようだった。

もちろん俺の目的はららぽーとなので人混みなんて気にする必要はない。ぼっちは通ろうとして『うわっこいつ邪魔くせぇとっとと行け』と思われるくらいの存在感を醸し出している、故にめちゃくちゃすり抜けるようにぬるりぬるりと人混みを抜けていき、歩くこと10分で到着した。

ロビー付近をウロウロしている事にして、しばらくするととある服装の女性が目に入った。

白いショートパンツとブラウンシャツ、黒いキャスケット帽に隠されたライトブルーの短い髪。

あれだ。間違いなくハジメだった。

俺が人混みに巻き込まれないように近付くと、すぐに気付かれたのか俺の方向へ踵を返して共に接近してきた。

 

「おはよう」

「あ、おはようございまひゅ」

 

……かみまみた、失礼噛みました。

うっわ何これ、めちゃくちゃ恥ずかしいんだけど?

 

「あんまり緊張しなくていい。長い時間いる訳じゃない」

「ああ、そうなのか。それで何処に?」

「音漏れが少なさそうなお店に。ハチ…幡は何処でもいいよな?」

「俺はまぁ何処でも。ていうか音漏れするならららぽーとじゃなくて快〇CLUBみてぇなネカフェにしておきゃいいのに」

「そこは音漏れしないのか?」

「ある程度はな。流石にデカすぎるとキツいが」

「…………分かった。まぁ、今更予定を変えたらお前が帰ってしまうだろうし、次の機会があればそこにしよう。付いてきてくれ」

 

ハジメがそう言うと、ららぽーとへ入っていった。俺も後を追うように入っていく。

最初に出迎えるのは、冷たい空気。ああ、暑すぎて困っていたところにありがたい。

ショッピングモールというものは人に対して金を取るために様々な親切設計が使われている。温度調節や移動の簡略化、階層ずつに用意された食事場所によってどの階でも食事を取って金を毟r……使える親切設計。これこそ人に与える親切であり、そしてぼっちにとってもこれ程の新設が欲しいところだ。

 

「ずっとボーッとしてるが、大丈夫か?」

「え、ああ。ショッピングモールの優しさをぼっちに分けて欲しいなぁって」

「ぼっちは、別に優しくされても避けるだろ」

「……そうだわ」

 

ごく当たり前の事を言われて正気に目覚めた。でもこれくらいの優しさは欲しいと感じる。

女子から優しくされるのは絶対に裏があると思うが、ショッピングモールの様な店の優しさには裏がないと信じれる。

何故なら最終的に収束するのは金!お金が稼げていればコストが高くても優しさをばらまいてより客寄せするのだから。

そんな事を考えながら、エスカレーターに引っ張られるように動かされ、それを2度繰り返して目的のカフェに到着した。

 

「2名で」

「かしこまりました」

「じゃ八幡、先に席取っといて」

「お、おう」

 

 

慣れた様にドリンクを注文するハジメと、正直キョドってると周りから思われてそうな俺が店内の席を探す。端の角の座席が空席だったので先に角の席に座る。

少しした後、戻ってきたハジメが俺の対になるように座る。

帽子を取って、店内のBGMを聴きながらスマホを取り出すハジメを見て、俺は口を開く。

 

「なぁ、今回カフェ奢ればいいのか?」

「いいや。これは俺から奢り……ツケ分、俺へのバイトだと思ってくれ」

「900円以上となるとバイトの時給くらいなんだが」

「じゃあ1時間のバイトだと思ってくれ」

 

そう言いながら、スマホを裏側にして机に置くハジメは無表情から少し険しく表情を歪ませた。

 

「ここ最近、昔の記憶が蘇る。それは嫌な記憶でもあり、反面教師の記憶でもあり、後悔の記憶でもある」

「昔か」

「俺は俺だ。それは誰が何と言われてもそう……男みたいな一人称を使う俺も、確実で安定を求める為に不確定要素はなるべく避けて、友好関係を程々にしながら人の面見て密かにお零れをごねて生きている俺も、自分の趣味に時間を割いて楽しむ俺も……全部俺だ。それは間違いない」

 

ふぅ、と息を漏らして店内を軽く見渡すハジメ。言葉が見当たらないのか、思いつかないのか。

俺は今何故これを話しているかが分かった気がした。

愚痴だ。彼女は、今俺に長年溜まった愚痴を解き放っている。

人は誰かに対して以前から思っていたことや嫌味な事をさらけ出す時は愚痴にしている。

愚かで痴の如く、そんなことを言っても何も変わらない。

だが聞いて欲しい。だがうんと頷いて欲しい。それが為に人は愚痴を誰かに吐き心の余裕を取る。

それを今、この取り柄もないぼっちの俺に対して彼女はぶつけている。

 

「その中で、とことん自分を殺す人間は初めて見た。君だ、比企谷八幡」

「……俺は自分を殺してないぞ。なんならピンピンして」

「いや、殺している。お前はお前の意志を殺して、そして自分を追い込んで殺している。

二重の殺人だと思ってくれ。自分の意思と自分自身を殺しているという事だ」

「いや、殺してねぇy」

「おまたせしました」

 

何故かヤケになって答える俺は、コトっと置かれた薄茶色の液体が注がれたグラスに気付かなかった。

商品名を割と長く喋られ、先程の話が遮られた所で思考が止まっているのかとも思う。

そしてすぐに、俺は言われたカフェオレを手に取って飲む。

また話す。

 

「殺してねぇ」

「……分からないか。いや、分かろうとしていないのか……じゃあこう話すか。

林間学校の時、初めて平塚先生に警告されたな。前回の川崎の件のバーに行くのもかなり危なかったが」

「ああ、そうだったな」

「もしあの時、総武生だってバレてたらどうするんだ?」

「………………まぁ、しらばっくれるかその時は俺が無理矢理連れてきたって言って何とかす」

 

……自分で出てきた言葉に、つい口を抑えた。

 

「自己犠牲はなくてはならない。自分が自分を犠牲にすることで少なからずともデメリットを半々に、メリットを更に大きいメリットにする。人に与えられた出世術の特殊スキルみたいなものだ。

だからこそ、八幡を見ていると……俺は昔の俺を見ている気分になる」

「昔のお前って俺に似てんの?」

「いや、精神面がだ。今の俺は、もう疲れた」

 

そう言って、彼女の元に置かれている薄緑色の抹茶ラテと思わしきものを飲む。

 

「昔の中学生の俺は、俗に言うイケメン……いや違うな。葉山隼人か。あいつと同じようにグループを形成していて今とは違う仲良しこよしをしていた」

「え、お前が?……今もそんな感じがするが」

「そうでもない。葉山グループが葉山が起点で話が始まるなら、俺の過去のグループは全員が起点だ」

「全員が?」

「シンパシー的な何かを感じて集まったって事だ。俗に言う、気が合う」

「ああ…」

 

そう説明を受けて理解した俺を他所に、話を続けていくハジメ。

 

「最初は探り探りで順調。徐々にお互いの性格も理解し合い意気投合した。

俺はその中で普通に、趣味なり最近の話なり、学校の話なりをして楽しんだ。中学生の内だからな、こういうのが出来るのは……小学生から上がって同じ学校の奴も一緒だったりするしな」

「ごめん俺には分からん」

「そうか。まぁ、トントン拍子に仲良くなっていけば人のボロが出てくる。グループは男子2女子2の分かりやすい比率だった。そこから時が経てば……八幡は分かったか?」

「…………分かった。恋愛事か」

「そうだ。その時の俺はそのグループを信頼して、何事も起きないと確信していた……」

 

だが、現実は甘くなかったという。

ハジメのグループは恋愛事に関しても上手く進むと思われていた。

しかし、問題が起きた。

2人の男子はハジメの事が好きだったらしく、まさかのダブル告白。本人は「ごめん、俺は2人の気持ちを取れない」と答えた。

男子は「そっか。まぁハジメの色々理解してたつもりだけどまだまだだなー」で終わったらしいが……

女子の方は違った。

やはり女は恐ろしい。2人の男子の告白を断った事がクラスで大きく晒され、ハジメは肩身の狭い学生生活になったという。

謝罪なんてこの先意味は無い、故に関わるのをやめたハジメはグループから抜ける話をするが……

 

『はぁ?今更あんたがやった事全部無しにすんの?』

『おい待て、ハジメは何も悪くないだろ。いいかダメか答えるだけだぞ、それで全部こいつのせいは違う』

『大丈夫だハジメ、お前は何も悪くない。俺達が仲良かったと思ってただけだから』

 

相反するグループ、壊れ始める関係、信頼という名の上面の見合い、宥める発端と咎める原因。周囲の啜る情報と批評、中学生という歳の中でここまでの大きな影響を与えられたハジメは……友好的な人間関係というものを完全に忘却した。

その日から友好関係を程々にして、勉強に費やすことにしたらしい。

過去の友人達が話しかけてくれる事はあったが、以前の様にグループを作ることはなくなったと言っていたが……その裏では女子の怨恨が蔓延っていたに違いない。簡単にグループの関係をまとめてゼロにする事は出来ないからだ。

そこで何処までのイジメがあったとか、何が何まで言われたとか噂されたとかなどは俺なんかが分かるわけがない。

だが、その痛みと人間関係へ希望を望む……己の浅はかさは喉を掻き毟る程の苦痛によって俺にもフラッシュバックしてきた。

ああすれば後悔しなかった、ああやっていれば何も起こらなかった。

どれだけの思考を巡らせれば、どれだけの計算をすればその悩みが解けるのか。

そんなことは無い。考え続けても足しても引こうも掛けても割っても……答えは見つからない。

何故なら、人間関係とは人間が関わり合う事で成立するのだから。

結局逃げても逃げてもそれにぶつかり合わなければならない。

 

「……俺には、やはり難しいのだろうか」

 

カラン、と抹茶ラテが半分ほどになった所でストローを動かして氷が揺さぶられ音が響く。

あっぶねぇ。俺も長考モードに入ってた。いつの間にか俺のカフェオレないし。

これがハジメのトーク力なのか。流石元陽キャである。

 

「なんっーか、難しく考えすぎじゃないか」

 

俺がそう言うと、こちらを見つめるハジメに少しドキッとしてそっぽを向く。危ない勘違いするだろ。

 

「そのな。お前が起きたことって大層な事に見えるけど……あ、これ俺の一意見だから重く捉えないでいいし『そんな事言うんじゃねぇ』とか言ってくれても構わないんだが、結局女のいざこざ怖いね、じゃあもう女とグループ作るのやめね?って話になるだろ」

「……それはそれで問題だが」

「その男達は自分達が優れてるって自分で認識してたけど、お前を落とせなかったって事なんだからそれで解決。まぁお前と同じグループにいた女の逆恨みだろ。なら、恨むべくはその女でお前の人付き合いの能力じゃない」

「………………」

 

俺の自論が響いたのか、はたまた傷付けてしまったのか分からないがハジメは目を瞑って俯いてしまった。

いっけねこれ、マジで殺されるんじゃないの?

ただ、俺が率直に思った事である。

 

「八幡は、どうなんだ」

「俺?」

「オウム返しみたいになるが、お前も大層な事じゃないと言って割り切ってる事があるんじゃないのか」

「それは……」

 

そう返されると返答に困る。

俺は確かに、中学生の時は挙動不審だし勝手に相手の言葉を自分の好きなように解釈して勘違いしたりいささか頭のおかしい部分とかもあった気がする。

じゃあ、俺は病人なのかと言われたらそうではない。

俺は間違えただけだ。もっといい方法があった、周りが悪かったんじゃない。

振り返ると、色々な自分の馬鹿らしさは浮かんでくる。後悔だって沢山出てくる。

けれど……

 

「今の歳くらい間違ったっていいんだよ。

俺が散々間違って最強のぼっちになったんだ、信じるも信じないもハジメ次第だが……俺は今の自分が好きだ。

こんな感じのぼっちになったって寂しくないぞ、ホントだからな?

結局のところ誰かの好みの自分になって楽しいならそうしておけばいいし、1人が好きで人付き合いがそれなりに出来るならそれを続ければいい。お前の好きにやればいいんだよ。やり方が分からなかったら、やっていく内に気付くと思うしまぁ。

だから、悩んで悩んで後悔するくらいなら自分がそう思った道を信じて関わり合うのが大切なんじゃねぇの?偉人も人間関係苦労してたみたいだしよ」

 

俺が散々喋り散らかし、未だに俯いたままのハジメの顔を伺う。ダメだ、顔が見えません。メディック頼んでいいですか?

あ?ダメ……はい。

 

「……そう、か」

 

そう言って、置かれていた袋に入ったお手拭きで目元を拭ったハジメを見た。

やはり泣いていたのか、ちょっと目元が赤い気がする。

 

「ありがとう。八幡の言葉は、なんだかんだ響くな」

「いや俺偉人の言葉とか思いとか借りてるだけだぞ?それをつらつら流してるだけで」

「何言ってるんだ、一応これでも国語は18位だぞ……頑張って言葉にしてくれて、助かった。ありがとう」

 

そう言って、普段しない表情で微笑むハジメを見た瞬間。俺の脳内が思考を停止させてしまった。

不覚にも、勘違いしてしまうくらいの彼女の笑顔が美しかった。

雪ノ下を初めて部室に見た時や、由比ヶ浜となんだかんだ仲直りした時の様になっていた光景とは違って……彼女の笑顔は、“そうであり続けて欲しい”と思う笑顔だった。

普段思わない感情が胸の中をぐらぐらと揺らし、俺はすぐに別の方向を向いて「まぁ、良かったな」と言葉を出す。

あっぶねぇ!ホントなんですがその表情、めちゃくちゃ可愛いし冥福だったんですけど。や、死んじゃうのかよ。

 

「それで……これは、心からのお礼だ」

 

そう言って、何と俺に1000円を渡してきたハジメに俺は流石に無理だろと言って返させるが……

 

「お前の言葉は、今の俺にとって1000円以上の価値だった。お釣りが来るくらいの値段なだけだから、受け取ってくれ……嫌なら、何かラノベでも買って渡すけど」

「それならまぁ、その様にしてくれ?」

「なんで疑問形なんだよ?分かった、俺のオススメでも渡すよ」

「オススメって?」

「ガガガ文庫」

「……楽しみにしてるわ」

 

最後の言葉を聞いて、上手い返しを返せた俺の気分は絶好調だった。

もう悩みのように溜まっていた抹茶ラテの中身もない。

彼女がそれを飲み干すのか、それともまた苦渋のように残り続けるかは俺にも定かではないが……それは彼女の答え次第である。

それにしてもだ、やはりガガガ文庫。これが分かるとは素晴らしい事である。青い文庫はきっと夏の蒼空のように人の嫌な気持ちも吹っ飛ばすほどの読み応えを見せてくれる。

そうしてカフェを2人で出て、ららぽーとからの帰り。

 

 

「八幡」

「なんだ?」

「楽しかった。出来れば、また話を聞いてくれ」

「えー、っとまぁ。ちょっとアレの予定とかがなければ」

「ははっ。また米……じゃなかった、小町さんだっけか。ごねられないように気をつけろよ」

 

そう言いながら帽子を整えるハジメの顔は俺は見れない。

ダメだあの顔、めちゃくちゃ額縁に入れたいと思ってしまった。父性でも働いているのだろうか?

流石にないな。ハジメみたいな娘はいたら嬉しいけど、俺と同じ道歩んでるとか流石に気まずくて仕方ないし。

となると、この感情は………………

 

「八幡」

「また急にか。どうした?」

「これからも、よろしく頼む」

 

そう言って、俺の方を見つめてくるハジメに俺は頭を描きながらため息をつく。

なんだよそれ、ぼっちには厳しいっての。

 

「はいはい」

 

そのまま家に帰るまで、何かと話していたという事実は伏せておくが。

意外と悪くない一日だった事と、心の中がザワザワしてしまうような一日であったのは、俺の中で残り続ける事になった。




・イッチ

本名を綾瀬 一(あやせ はじめ)。
過去に人間関係のトラウマから、これ以上深い付き合いはしないと踏ん切りを付けていた。
しかし、奉仕部での変わった心地の関係や過去の光景のフラッシュバックなどが相まって八幡に相談することに。
本人は「きっと意味が分からないだろう」と思って吐露したらしいが……

・ハチ

比企谷八幡。奉仕部の一員であり、今回借り出された。
ハジメの話を聞いて自分の過去もフラッシュバックしてきたが、結局昔の事に引きずっていては意味がない。進むなら後悔も込みで行動したらどうかと提案した。これが本人にとって吉になるのかとは、その先に待っている答えが待っている。
「難しくっていうか、頭が堅い人みたいに考えすぎじゃねーの」と思っている。

オリジナル話(11話)ですが、評価をお聞きしたいです!

  • 良かった
  • 普通
  • あんまり
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。