独身「今日から君は奉仕部の一員だ」俺「は〜面倒くせ」   作:テクトリカ

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※この話は掲示板方式ではありません、ご了承ください




そして、彼彼女達は目標を定める。

カラスの鳴き声と好きな曲のアラーム音で目を覚まし、体を起こす。スマホの画面を見ると、通話中で寝てしまっていたのかまだ通話がついたままだった。

なんという事か、これが俗に言う寝落ちというものか。

時間帯は6時18という絶妙な数字で、取り敢えず通話を切ってハチに「もう朝だぞ」部屋まで行って伝えようとした時だった。

 

「…うん?なんか、LINEの通知量が珍しく30以上になってる」

 

それらを確認すると、大抵がシンキングニキと委員長のものだった。急にどうしたと確認すると大量のSS(スクリーンショット)が送られていることが分かった。それを見ると……

 

「は?」

 

すぐに脳内がその写真の顛末に目を疑う。

何故かよく分からないが、俺が作っていたスレにスパムが大量に発生されてかなり悪質な荒らしを受けているという惨状。

更に、シンキングニキによるとおそらく魔王……雪ノ下陽乃が関与したものであるという事が確認できる。

 

「(……不味いな)」

 

本来なら落ち着けないところだが、ハチの家自体が近い。

この事をすぐに相談する事だって容易いしまずは脳内作戦会議と乗り換かろう。

だが一つ引っかかる事が出来た。

何故魔王は俺達をこんなにも早く特定出来たのか?

一応数ある掲示板の中でも匿名性が高い所を選び、俺自身もあまり情報をばらまくことはなかった。(シンキングニキと凸済ニキ、京都シャッターニキぐらいしか俺達が総武生という事を知らないだろうし)

ハチも今回の一色の応援アカウント自体広めたのも、名前が「いろはす応援アカウント」というものである事。自己紹介に「いろはすを応援するアカウントです」というふわふわとしたのも、匿名性を利用した掲示板だからこそのやり方だ。

まぁ、本当に勘が良くて色々繋げて最終的に答えに辿り着ける天才ならともかく色々が隠された匿名性の中で俺達だと断定できるもの………………

 

 

「……しまった」

 

 

あった。一つだけあった。

まとめ動画だ。昨日ハチにスレ民だとバレたのもそれだが、遂に分かりやすい表の方に出てしまったんだ!

奉仕部という架空の部活っぽくしていれば身の隠しもよくなるとは思ったが、最初から言っていればバレるか!

という事はその後はトントン拍子か。

だがまだ疑問は残る。何故こんな事をする?

俺は雪ノ下陽乃に何か嫌がらせをした訳じゃない、というか雪ノ下雪乃に恩まで作った迄ある。

……そういえば、俺はあの人の最後の動向を確認していない。

文化祭で相模の大問題を引き起こした時、魔王は雪ノ下に「困ってるのかな〜?」と言って近付いていた。

でもすぐに「大丈夫よ。私には出来ないことを、あの二人がやってくれるわ」と言って魔王からの甘い誘惑を断ち切った。

その分の時間をイケメンこと葉山達が稼いでくれたお陰で何とかボロ泣きの相模を見つけることも出来た。

その後の修学旅行も円滑に進んだし、何も邪魔は……

何も邪魔は……

何も邪魔は、

 

 

していたのかもしれない。

改めて魔王が俺達に話しかけてきた理由を考える。その間に八幡に報告をとLINEとパソコンの報告メールの同時進行で打ち込む。シンキングニキ曰く、「魔王がイッチかハチのLINEを知っている人を知りたがっていた」と伺っている。SSでもすぐに確認済みで、現在はあのスレ自体が第三者の申し立てにより「削除」されている。

だが助かったのが、削除までに時間が空いたお陰でSSを撮って保存できる時間が出来たのとあれが個人情報の流出で起きてしまったのならすぐに消せたのが大きい。

スレ転載する輩はいないだろうし、それをやっても俺から削除申請を申し出れば転載スレも消すこと自体容易だ。動画化されていても逆も然り。最新の動画には載らないだろう。

魔王がすぐに削除してくれたのは助かったと言うべきか、痕跡を残しすぎたとも言うべきか。

そして俺は思考を終え、LINEを知られた場合を込にしてメールの方で報告書を送った。

魔王が急激に攻撃してきた理由だが、よく考えれば簡単だった。

俺はあの人の邪魔ばかりしかしていない。

これが確定かどうかは分からないし、八幡との意見も連ねたい。あとはあの掲示板でスパム対策がされるまでは少し待つか。

俺はすぐにパソコンの電源を落とすと、学校の制服に着替えながら八幡の部屋に向かうのだった。

 

 

 

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学校での一日はかなり最悪、と言わざるを得ない。

八幡と廊下まで足を合わせて、何も喋らずに廊下から分かれて教室で席につき、そして授業を受ける。

そこまで会話らしい会話をせず。喧嘩などはしていない、しかしお互いの思いはある。

「やらかした」と「やってしまった」という、強い後悔。

今から言葉に出してもたらればで終わる、その時は一切喋らなかった。

そして、授業が終わって奉仕部に向かう最中でやっと、少しは会話らしい会話をし始める。

その様子を見ていた由比ヶ浜結衣も心配そうにこちらに顔を出す。

そして、遂に口火を切ったのは由比ヶ浜だった。

 

「あ、あのさ!……2人、喧嘩したの?」

「いや、してない」

「してねぇよ」

「息ぴったりだ……え、なんでこんなに重苦しい空気なのかな、って、あははー」

 

愛想笑いを浮かべて微妙な空気感になるが、俺が「それは奉仕部に到着したら説明する」と伝え、奉仕部まで歩いた。

特別棟までの長い道のりが、死刑執行の絞首台へ向かう死刑囚の様な気持ちだった。

奉仕部に到着した私と八幡が入る前に、由比ヶ浜がこの空気感を断ち切るように「やっはろー!」と作り笑顔を浮かべて奉仕部の扉を開く。

何も変わらない風景と、変わらない姿勢で本を読んでいた雪ノ下雪乃がそこにいる……が。

彼女の表情は、少しいつもと違う。

 

「ええ、こんにちは由比ヶ浜さん」

 

声音に違いはなかった。表情だけが少し違う、というだけで普段とは変わらない雪ノ下雪乃だ。

俺と八幡が軽く会釈し、各々の用意された椅子に座る。

空気は、より一層重く感じるが……すぐに私が口火を切った。

 

「やらかした」

「……やらかした、とは何かしら?」

 

そう呟く雪ノ下雪乃に答えを返す。

 

「俺はこの依頼、上手くやれてたつもりだった。だが、現実はそう上手くいかなかった……奉仕部全体と協力するべきだった。そして今回の件に繋がってしまったことを、お詫び申し上げます。誠に申し訳ございません」

 

そう言って、席から立ち上がり謝罪する。雪ノ下雪乃に向けて、独断で依頼を進めていった事への謝罪。

実を言うと、一色の依頼の解決は奉仕部としてはまだ迷走中だった。本人の意思は完成したが、ではどうやって多くの生徒から信頼を受けるかのアイデアで雪ノ下達も案を出し辛いという形だった。

そこで俺は八幡を巻き込み独断で進行した。そして状況がより悪くなっていた。

一色の応援アカウントの制作までは完璧だった、この案は八からの案だったが家で相談したものであって奉仕部で話し合って決めたことじゃない。

つまるところ、勝手にやらかして自爆したという事だ。

自爆というより自爆するように仕組まれたとも言えるが、今何かを言っても奉仕部に迷惑を掛けたのは間違いない。

頭を下げ続ける俺に対して、雪ノ下雪乃が遂に重い腰を上げた。

 

「綾瀬さん……」

 

確実に暫くは部活に行けないだろうと思いつつ、怒りの言葉を受け止める覚悟を決め―――

 

「ごめんなさい」

 

何故か、雪ノ下雪乃に謝られた。

 

なんで?

 

「え」

「あなた達がお互いを信用して動くのはいいわ。それが依頼人にとって為になるのなら、2人で動こうが1人で動こうが責める権利を私は持っていないもの。問題が起きた時の責任も、そうね。

それで、昨日……姉さんからこんなメールが届いたの」

 

そう言って雪ノ下雪乃が自分のスマホを机に置く。そこに群がるように俺と八幡、由比ヶ浜が顔を覗かせると……

 

『雪乃ちゃーん☆お久しぶり〜、お姉ちゃんだよ〜

いやー、この前あの2人に雪乃ちゃん盗られちゃって本当に悲しかったなぁ、でも大丈夫!まさか手痛い反撃を喰らって怯むだけじゃお姉ちゃんは倒せないよ〜?

あの2人もいつの間にか強くなっててお姉ちゃんビックリだけど、流石に調子に乗りすぎてるからいたずらしちゃった☆

まぁ痕跡も残してないし、雪乃ちゃんがあの二人に思い入れあるかは分からないけど頑張ってね!』

 

「……本当に、ごめんなさい。まさか姉さんがあなた達2人に嫌がらせしていたなんて…」

「マジで魔王だろ、なんでこんな事するんだ?」

「分からないけど、雪ノ下さんにこれを送ってくるという事は雪ノ下さんがこの状況を何とかしてあげることに期待してたんじゃ?」

「……どうかしらね。私は文化祭の時にあなた達と結託して、相模さんを有頂天から引きずり下ろした事があるからそれの恨みかもしれないけれど」

 

そう言ってこめかみに指を当てて考える雪ノ下雪乃を見ながら俺も考える。

魔王がそこら辺の小童に一撃を与えられたら物凄く腹が立つ人だったらしい。

だがその情報だけで充分だ、あれは「やらなけれはいけなかった」事に過ぎない。勝手に恨まれてもこっちはこっちの仕事をしただけだ。

必ずいつか仕返ししてやる。

 

「八幡」

「なんだ?」

 

喧嘩していたのでは?と思わせる空気感はとっくに過ぎており、いつもの口調で話しかける。

 

「今度は、奉仕部全員で協力しよう。もし落選しても、奉仕部全体の反省になるから」

「……まぁ、そうだな」

「そうね。比企谷君だけでは、ずっと綾瀬さんに頼りきりなのだから私が締めあげないといけないわね」

「そ、そうだよ!ヒッキーベタベタし過ぎ!ヘンタイ!」

「由比ヶ浜、俺はベタベタしてないぞ。というか変態じゃない」

「……」

「ハジメさん?なんで黙っちゃうの?え、俺いつの間にかなんかした?」

「さあね」

 

こうして、独立行動を取った私達は考えを改めて奉仕部全体で連携することにした。

 

 

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 

 

あの後、部室で長く喋るのはどうかと思いサイゼリヤの店内で話し合うことにした。

奉仕部全体がこうやって集まて話し合いを行うのはちょっと珍しさがあって、ドリンクバーで飲み物を持ってきている俺が遠目で奉仕部のメンバーを見ると余計にそう思う。

すぐに席に戻り、八幡のカフェオレと私のジンジャーエールを置いて話し合いが始まった。

 

「まず、一色さんが生徒会長になることは確定している事は皆も承知の上よね?」

「そうだね!」

「ああ」

「もちろん」

「ではそこから、一色さんがやる気を出した事に気に食わなかったクラスの女子が今度は推薦人を減らし始めた……という状況ね」

 

雪ノ下さんが問題となった部分を説明し、現在の状況を再度確認し合えた。

ここは変わらない。その先を勝手に進めようとしたのが俺達だっただけだ。

 

「まず、俺達が勝手にやってた案は……一色の応援アカウントを使ってフォロワーを稼ぐ。そしてこれらを「総武生」として推薦人にする事で生徒会長への第一歩を加速させるという事だった」

「都合のいい事に、それに参加してくれる人も多くいた。だから上手くいくとは思っていたけど……陽乃さんの妨害によって見事に撃沈。問題を大事にしかねないと思って、今日謝ってきたという事になる」

「そういう事だったのね。それにしても、この案は誰が?」

「応援アカウントの案は八幡が。けど、八幡は“多くの選挙者の応援アカウントを作って、多くのフォロワーを担いだままそれらを一色の応援アカウントにする”という作戦だった。俺はそれの成功率を考えて別の方法を提示したって、感じ」

 

上手く説明できたか不安だが、こうして人に言葉を伝えるという事の難しさを改めて感じた。

雪ノ下雪乃が、顎に手を当てて考え始めた。一応言うが、彼女と私の性能差では天と地のレベルである。私がいくら良い成績をキープしていても中学のオール5維持のような相手と比べたら大体4、所々5の俺では叶わない。

つまり、彼女からは俺が思いつかない様な案や視点を出せる可能性はある。

 

「そう、ね……綾瀬さんには多くの協力者がいてくれるのはいい事よ。頼りになる人がいてくれるのは心強いわ」

 

雪ノ下がそう言って由比ヶ浜を見ると、頭の良さそうな会話ばかりにぼけぇっとしていた由比ヶ浜がうるうるとした瞳で雪ノ下を見つめていた。

 

「私は、比企谷君の案を押すわ」

「ばっ!?げほっ、けほっ」

 

雪ノ下の推薦が上がり、隣でカフェオレを飲んでいた八幡がむせる。背中を撫でてやると、すぐに落ち着いたのかいつもと変わらない様子で八幡が問いただした。

 

「何で俺の案なんだ?」

「私の案は私自身が解決と収束に向かうことだから、奉仕部の理念に反するのよ。手伝いなのに、私自身が解決してしまっては意味がないもの」

「それもそうか、でもハジメの案はちゃんと鍵とかでやれば……」

「なら、その中にスパイがいたら?」

「……何も言えねえ」

「そうよ。意外なところに意外な繋がりがあるとはよく言ったもの、私も比企谷君も綾瀬さんも由比ヶ浜さんも同じように……」

 

意外な繋がりか。

それはおそらく事故のことを指しているのか。

だが名前を上げないという事は、そういう事なのだろう。

お互いが何処までこの件について踏み込むことなんてない。

ただの事故の関係者、そういう関係で俺達は仲を紡ぐだろうか?

いいや、そんなことは無い。事故から始まる関係は歪である。そんなの恨めしい事ありゃしない。

俺達は、俺達がなるべくして集まったのだ。そこに事故も因果も関係ない。

きっと運命だったのだと、そう言えるのかもしれないし。

 

「だとすると、いろはちゃんの応援演説をあたし達がするって事でもいいんじゃないのかなー、って思うんだけど……」

「それも一つの案だけれど、最後の切り札という事にしておきましょう。私達が大きく手伝う事は姉さんに目を付けかねられないから」

「それは、そうかも」

「ええ。だとすると、必然的に比企谷君の案を使えば上手くいくという事ね」

「俺の案が上手くいく保証なんて何処にもないんだが……」

「大丈夫よ。あなたには立派な人達がいるじゃない……誰だったかしら、材、材……材料柱君?」

「材木座な。材料柱ってなんたよ、新しい〇滅の柱か?てか名前覚えてやれよ」

「材木座君ね。彼に手伝いを頼めばいいんじゃないかしら?比企谷君のことを随分と信頼しているみたいだけれど」

「アイツとはただの体育のペアなんだが…………まぁいいか、頼んでみるわ」

 

そうしてスマホを使ってすぐに連絡を取る八幡を横目に、私はもうひとつの案を提示する。

 

「要するに、推薦人を多く出せばいいって事だよね?」

「そういう事になるわね」

「じゃあ、海浜にいる友人に斡旋して貰えるか頼んでみる、あいつ顔と見た目だけはトップクラスだから」

 

SSを貼り付けてくれた委員長ことアイツに事の経緯を説明するメッセージと共に協力出来るか頼んでみると、割と直ぐに既読がついて『今度焼肉奢りなさいよ』とのメールが。

なんて事だ、俺は金が無くはないが焼肉奢り……あんまり俺が食べないだけでいいか。

 

「あたしはどうしよう……」

「由比ヶ浜さんは、葉山君を使って推薦してあげたそうにすれば乗ってくれるんじゃないかしら」

「そうかな……うん、やってみる!」

「ええ、これは由比ヶ浜さんにしか出来ないことだから……頼んだわ」

 

そうやって、穏やかな笑みを浮かべる雪ノ下を見て過去の彼女とはやはり違うことを理解させられる。

これで奉仕部全体が動くことになった一色いろはの依頼は、協力と連携によって大きく前進することになった。

この手の提案が上手くいくとは思わなかったが、お互いがお互いの非を認め、改めて考える事で冷静さを失わずに作戦にチカラを入れることが出来た。

たらればになるが、やはりもっと早くに連携するべきだったとは思う。

お互いがお互いを信用しているのだから、簡単な話だったのだ。

……残りは、あと数日。ここで最後の根回しと行こう。

さぁ魔王、お前に見せてやる。例え嫌がらせをされようともお前に歯向かうのは運命の奴隷である我々だという事を。




イッチ

奉仕部所属。掲示板利用者。
自分達の独断で話を進めたことを謝罪、全体協力という形で今度は全員で依頼を進める事に(元はと言えば当たり前)

ハチ

奉仕部所属。掲示板利用者(NEW!)
イッチの提案に乗り、自分からも話を進めてしまった事を反省。問題の責任は自分が取るつもりだったが、イッチの話によってそれは撤回された。
あいも変わらずぼっち節全開だが、それでも大きくと変わりつつもある。

ユキ

奉仕部所属。
まさかメールのことを自分から話すとは思わないだろう、との魔王の浅はかな考えが仇となった。
より一層互いが連結することに「協力」させてしまい、ここが「姉さん」に勝つ為の道と信じて奉仕部として全員が協力する形となった。

ビッチ

奉仕部所属。
2人が喧嘩でもしていたかと思ったら、お互い悔しさと申し訳なさで喋れていなかっただけと分かって出来すぎているとまで考え始めた。
仲の良さそうな2人を見るとますます想いがこんがらがるとか、ないとか。
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