ガンダムSEED 太陽の少女   作:黄金鷹

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 DESTINY編最終話です。本当は前回の時点で終わりでこの話しは後日談の一つでも良かったのですが、個人的にシンが立ち直って前に進むまでがDESTINY編だと思っていますので無理矢理本編に入れました。
 後日談の話しは見なくても良い話しを中心に出そうと思ってますが見てくれたら嬉しいです。


第五十話 もう一人じゃない

 レクイエムとメサイアの破壊の後にオーブ軍とザフトで戦闘終了の信号が上げられた。月面のデスティニーとライズサンシャインの戦闘も終わった時には既に両軍共にまだ生きている負傷者達の救助活動に入っており、互いに和解の道を選ぼうとしていた。

 後にオーブとプラントは停戦し、終戦の為に動き出していた。両者の関係をラクスが仲介し、評議会からの要請を受けエターナルと共にプラントに戻った。そこにはキラもストライクフリーダムのパイロットとして付いていき、またストライクフリーダムに拾われエターナルに収容されたライズサンシャインと共にセナもプラントに入国となった。二度の大戦においてザフト軍に多大な被害を出した太陽の少女をプラント本国に入れる事に多くの者が最初は否定的ではあったが、かつての終戦の為の貢献と今回の戦闘で何度も命を狙われたラクスを守ってきた実績からラクスのボディガードとして認められキラと共に特例でザフト入りとなった。

 一方でデュランダルが亡くなった事により今まで秘匿されてきた情報が明らかとなった。その中には旧ザラ派にモビルスーツを流していた事とユニウスセブン衝突の計画を知っておりながら黙認していた事が発覚。その上に既にロゴスメンバーの所在やデストロイの設計図を持っていながらその情報を規制していた事も分かった。被害の責任と償いを取らせようにも当の本人は既にメサイアの崩壊に巻き込まれており、デュランダルの計画に乗っていたレイも同じく死亡しており、デュランダルの計画の要とも言えるミネルバも艦長のタリアが亡くなっており責任を取る者が誰一人残っていない状態に評議会もお手上げとなっていた。

 そんな状況で責任を取ったのはエリスだった。ミネルバ所属のシルファ隊の隊長であった事、デュランダルやレイとは軍に関係なく交流があった事とデスティニープランの概要を以前から知っていた事から関係者として自ら矢面に出たのだった。前大戦でクルーゼと共犯していた罪もデュランダルによって無罪になった事も加味しつつ、シルファ隊としてザフトに、何より戦争を終わらせる為に奮闘した事からデュランダル派閥やミネルバクルー達に責任を負わせない事を条件にプラントからの追放となった。その後の消息は不明、シルファ隊は隊長を失い解散となった。終戦してから数日で世界は大きく動き出した中、シン達はアスランとメイリンと共にオノゴロ島の慰霊碑に訪れていた。

 

「ここ、以前に来たところだよね?」

「前よりボロボロだけど、よく残っていたよね」

「かなり酷い状態だったんだが、セナがまだ無事な部分を集めて作り直したらしいんだ。素人が治したから見栄え良くないかもなんて自虐してたけど」

「そっか・・・あの人が」

 

慰霊碑に花束を置いたシンはそのまま黙祷する。それに習ってアスラン達も黙祷する。敵にはなったもののまた戦争で多くのものを失い傷ついたもの同士、お互いに争う気は無く、喪った命を偲んでいた。

 

「・・・何してたんだろうな、オレ」

「シン?」

「こんな事を繰り返したく無くて、軍に入って戦争を終わらせようとしたのに、自分が壊す側になって・・・それにすら気づかないふりをして、自分がどうなっても構わないからって無茶して周りに心配かけて・・・どこで間違えたんだろう・・・オレは」

「お前のその思いは間違いじゃなかった。ただ向ける方向が違っただけだ・・・俺だって間違ってばかりだ。だからあまり自分を責めるな」

「アスラン・・・」

 

アスランの言葉に一応頷きはするシンだったが、それでもシンの心は晴れなかった。それはシンの顔を見れば誰が見ても明らかであり、それだけシンの傷が深いものである事を意味していた。

 

(やっぱり俺はこういうのは駄目だな。ミネルバに居た時からそうだ。あの時もっとシンの事を気にかけていれば、ここまでは・・・)

「アスランさん・・・」

「・・・そういえばアスラン。あの人達は?今日私達に会わせたい人が居るって言ってたけど・・・なんとなく誰かは分かるけどさ」

「あ、ああすまないマユ。どうやら遅れてる様だが」

「アアアアアアアアアアアアアアア‼︎」

「ヤァァァァァァァァァァァァァァ‼︎」

「一体何・・・を・・・」

 

ドリフトしながら車がやってきて、アスラン達が乗ってきた車の隣に緊急停止する。騒音を聞いて振り向いたシン達が固まる中、アスランとメイリンはまたかと溜息をついていた。

 

「よし着いた。ギリギリセーフじゃないかしら?」

「・・・セナ、法定速度って知ってるよね?あと普通に遅刻しているし・・・」

「すいませんセナ・・・セナは先に降りてください。私、ちょっと動けませんので・・・」

「酔ったのラクス?皆んな揃って?ごめん、急いでたから荒っぽくなっちゃって。落ち着いたら来なよ」

 

車から転げ落ちる様に降りてくるキラとラクスを置いてセナは軽やかに降りてくる。そのままアスラン達の元にやってくるとセナは片手を上げて挨拶した。

 

「お待たせ。ごめん起きる時間を間違えちゃって・・・ってあれ?どうしたの?」

「どうしたの、じゃないだろお前・・・危なっかしいにも程があるだろ」

「セナさん、いつか事故りますよ。やめてくださいよ。ラクスさん達まで巻き込むのは」

「酷くない⁉︎メイリンちゃんは私をなんだと思ってるのよ!」

 

辛辣な物言いをするメイリンに抗議するセナ。その姿は年相応の若い女性にしか見えず、太陽の少女として、敵として立ち塞がった時のセナしか知らないマユ達はそのギャップに困惑していた。

 

「なんか、思ってたのと違うね・・・」

「そうね・・・メイリンもあんな遠慮なく言ってるし・・・」

「ごめんね、せっかくここまで来てもらったのに僕達が遅れちゃって」

「申し訳ありませんわ」

「へっ⁉︎あ、いえ、気にしなくて大丈夫ですよ、ね?」

「え、あ、うん。だ、大丈夫ですから」

 

いつの間にか回復したキラとラクス申し訳なさそうに声をかけてくる。マユ達は気にしてない風に返事をするが正直それどころじゃなくて少し詰まりながら答えた。

 

「もう、いつからメイリンちゃんはこんなズバズバ言う様になっちゃったのよ。そんな風に育てた覚えありません事よ」

「育てられた覚え無いですから・・・どの立ち位置で行ってるんですか」

「・・・あの人が本当に太陽の少女なんですか?なんか、その・・・」

「思ってたのと違う?」

「いえ、そう言うわけじゃ、うわぁ⁉︎」

 

急に目の前にやってきたセナに驚いたルナマリアは倒れそうになるところをマユとメイリンに支えられる。期待通りの反応にいたずらっ子の様に笑みを浮かべ満足したセナは自己紹介をする。

 

「あはは、良い反応してくれた。初めまして。知ってるかもだけど私はセナ・ヤマト。よろしくねルナマリアちゃん。マユちゃん」

「あ、はい。ルナマリア・ホークです」

「マユ・アスカです。どうして名前を?メイリンに聞きました?」

「そうよ。それにしても、貴女達みたいな可愛い子がアレに乗って戦ってたのね・・・想像つかないわね」

((それ、こっちのセリフなんですけど))

 

ルナマリアとマユとの挨拶を終えたセナ達は慰霊碑前に移動し花束を置き黙祷を捧げる。黙祷を終えたセナはそのまま後ろで立ち尽くしていたシンに近寄り声をかける。

 

「こんにちは。シン君で良いよね?」

 

セナがシンに手を差し伸ばす。その様子に全員が固唾を飲んでいた。戦時中にシンが執拗な程に太陽の少女を敵対視していたのはどちらからも周知の事実だった。もしかしたら何かのきっかけで再燃するかもしれないと皆が警戒していた。周りが緊張している中、シンは平然とその手を取り握手した。

 

「・・・どうも。シン・アスカです。アンタの事は初めて・・・でも無いです」

「・・・そうね。あんだけやりあったからね。それに・・・あ、あっちにいるのがキラ。私の弟でフリーダムのパイロットよ。その隣にいるのはラクス」

「えっ⁉︎ど、どうも・・・よろしくね」

「よろしくお願いします」

「・・・どうも」

 

セナに促されてキラとラクスが自己紹介する。シンもイマイチ距離感が掴めていないのかぶっきらぼうな受け答えをしてしまう。だがお互いの顔を見て一度顔を合わせていた事に気づくと自然と口が開いていた。

 

「君、あの時もここに来てたよね。ユニウスセブンが落ちた直後くらいに。よく覚えているよ。綺麗に花が咲いていても人はまた吹き飛ばす、君はそう言ったよね」

「・・・はい」

「確かに何度植えてもまた吹き飛ばされるかもしれない。けど僕達はまた花を植えるよ、植え続けるんだ。きっと」

「貴方達は見えているんですね。前が・・・」

「うん・・・けど、僕に出来る事なんて限られているんだ。一人だと大した事は出来ないんだ。だから、一緒に戦って欲しいんだ。君達に」

「オレ、達と・・・」

 

キラの言葉をシンは噛み締めていた。シンと同じ様に戦争で傷ついてきた事が分かる、だからこそ同じ様な人を増やしたく無いという決意が込められていた言葉にシンだけでなくマユとルナマリアにも響いていた。

 

「私達もですか?」

「うん。君達が良ければだけれど・・・どうかな?」

「いえ、大丈夫ですよ。メイリンが信頼している貴方達なら私も信頼出来ますので」

「エリスお姉ちゃんも悪い人では無いと聞いてたけど、本当っぽいし。私も良いですよ」

 

ルナマリアとマユがキラの言葉に同意する。二人共平和を思う気持ちはキラ達と変わらない。だから共に戦うと決めたのだった。それを後ろから見るシンの顔は、寧ろ曇っていた。

 

「お兄ちゃん?」

「オレは・・・無理です。そんな資格無い。親友の約束一つ守れず、目の前の人すら守れず、命を奪う事しか出来ないオレには・・・すいません」

 

申し訳なさそうに頭を下げるシン。それにキラ達は言葉が出なかった。拒否された事では無い、未だにシンの中で大戦の中でやった事に対する罪悪感に囚われており、そんなシンに声をかけて慰めても立ち直らない事をキラ達は分かっていた。その実例を知っているから安易に慰めることも出来なかった。

 

「・・・シン君。ちょっと良いかな?二人で話したい事があるんだけど」

「えっ?」

「セナ、それは」

「・・・大丈夫です」

 

セナに連れられてシンは少し離れた岩場に移動する。キラ達が心配そうに見守る中、セナはシンに耳打ちをする。

 

「急にごめんね。気になる事があったんだけど大勢の前で聞く事じゃないと思ってね」

「いえ、お気遣いありがとうございます。それで何を聞きたいんですか?」

「シン君は・・・・・・胸派?それともお尻派?」

「何を聞いてんだアンタは‼︎」

 

セナの質問にシンは思わず絶叫してしまう。キラ達がシンの声に驚いている中でセナはそのまま質問を続ける。

 

「いや流石に妹の前で言うのはキツいかなって。教育的にも良くないだろうし」

「そういう問題じゃねーよ!なんでこのタイミングで!その質問が来るんだよアンタは!」

「やっぱり大きい方が好き?男の子ってそういうものだと思うけど・・・いや、人それぞれかしら?」

「いや深掘りするなよ!ほんとなんなんだよアンタは」

「大事な事よ乙女にとってはね」

「は?何を言って、グエッ⁉︎」

 

突如横から突撃する様に抱きつかれシンはその場に倒れ込む

 

「痛て・・・一体誰が」

「久しぶりシン!会いたかった!」

「へ⁉︎ステラ⁉︎」

 

シンに抱きついたステラは嬉しそうに頬ずりする。一方のシンは何故ステラがここに居るのか分からず困惑した顔でセナの方を見ていた。

 

「ステラは途中で拾ったのよ。さっきまでダウンしてたらしいけど」

「セナ、運転荒い」

「ほんとごめんね。あんまり上手くなくて」

「そういう事じゃないと思うけど」

「うっ、ステラにまで冷たくされてる〜どうしようシン君!」

「オレに言われても・・・」

「そんな事よりも!またシンに会えて嬉しい!好きだよシン!」

 

シンに思いを伝えるステラの表情は今までで1番の明るい笑顔だった。それを見たシンは元気になった事に安堵しつつもその眩しさに耐えきれなくなったかの様にステラを引き剥がす。

 

「シン?どうしたの?」

「ステラ、君の気持ちは嬉しいよ。けどオレは・・・多分君の気持ちには応えられない。君を守るって約束も守れず、あまつさえ君の仲間をころ・・・傷つけたオレが、人と付け合える様な奴じゃないよ」

「そんな事無い。シンは私を救ってくれた。だから今があるの。今度は私シンを救うの」

 

そう言ってステラはシンに顔を近づけ頬にキスをする。急にキスされたシンは驚きで赤面をするが同時に飛び込んで腹部に突撃してきたマユによって背中から倒れ込む。

 

「グエッ⁉︎マユお前もか」

「お兄ちゃん。何があったかは知らないけど、抱えてないで私に教えてよ。私だけじゃない。ルナもステラも、お兄ちゃんの力になりたいから、お兄ちゃんの事が大事だから」

「マユ・・・」

「だからお兄ちゃん、私達の事頼ってよ。皆んなお兄ちゃんに助けられたから、守られてきたから、今度はお兄ちゃんの支えになりたいの」

「マユ・・・」

 

シンのすぐ側にマユとステラとルナマリアが、その周りにはセナ達がシンを見守る様に囲んでいた。自分の周りに心配してくれる人がいる。その事実にようやく気づけたシンは感極まって目に涙が浮かんでいた。

 

「オレ、みんなの事、守れてたのかな・・・ずっと迷惑かけてると思って」

「そんな事ないよ。お兄ちゃんはずっと強くて優しい人だってみんな知ってるから」

「誰も傷ついてほしくなくて・・・オレがやらなきゃって、オレに出来るのはそれくらいだからって」

「そうかもしれないけど、一人でやらなくても良いのよシン」

「そうか・・・オレにはこんなに、大切にしたいものが、残って・・・」

「うん、頑張ったねシン」

 

泣き出すシンを三人で慰めている様子を見て満足したセナが帰ろうとする。それにキラ達もついて行く。

 

「良かったのかセナ?」

「ん?良かったのかって?」

「シンと話したい事あったんじゃないのか?」

「大した事じゃないから今じゃなくて良いかなって。また今度、会った時で良いかな」

「そうか・・・じゃあ俺達もそろそろ行くよ」

「ラクスさん、キラさん、セナさんもお元気で」

 

アスランとメイリンが帰って行ったのを見送るセナ達。セナ達も自分達の車に向かってる途中でセナはシン達の方を振り向いた。

 

「・・・やっぱり。モテる子になると思ったわ」

「何か言いましたかセナ?」

「ううん、何でもない。じゃあ行こっか」

(またね少年・・・いや、もう少年じゃないんだった。またねシン)

 

セナ達が帰った後でシン達も慰霊碑から離れて行く。その顔に憂いはもう無く、雲一つ無い快晴の空の様に晴れやかだった。




 遂にDESTINY編が終了しました。長かった・・・長引いたのはこっちの都合のせいなんですけどね。
 ちなみに没になった展開ですが、落ち込むシンがセナの言葉で立ち直るという流れを考えていましたが、そうすると説教くさい感じになるのがセナに合わないのとあれだけ周りの人の心配されておいてろくに会ってもない奴の言葉で立ち直るのはおかしい気がしたのでこうしました。
 エリスについては再登場はもちろんしますが、キラとアスランと同じ実力でメンタルもほぼブレない味方がいるとFREEDOM編で戦力過多になると思いこんな形で離す事にしました。敵だと強くて厄介ですが味方だと強いせいで一方的になる危険性もある扱いが難しいキャラになってしまった・・・
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