「セナ、そろそろ起きて下さい。もう到着しましたわ」
「ん・・・分かったよ。今起きる、ふわぁ」
ラクスに肩を揺すられセナは眠りから覚める。目を擦りながら席から立ち上がったセナはラクスの後ろをついていく様に歩き出す。オーブでの休暇を終えたラクスはシャトルに乗ってプラントに帰国する事になり、ラクスのボディガードであるセナも一緒に着いてきていたのだった。
「思ったより早かったわね。もうプラントに着いたなんて。ていうか良かったの?キラと一緒に帰国しなくて」
「ええ。キラはまだ休みがある様なのでもうしばらくオーブに居ると言っておりましたわ。偶には家族で過ごす時間があっても良いでしょうから・・・セナこそ良かったのですか?家族全員が揃う事は滅多にありませんのに」
「ラクスが戻るのなら一緒に行くよ。これでもボディガードだからね。それでは行きましょうラクス様」
「ええ。お願いしますわ」
シャトルを降りるラクスの後ろを守る様についていくセナ。周辺を確認しながら歩いているが周りは護衛の為に警戒しているザフト兵達とラクスのファンの一般人だけだった。少しだけ気を楽にしていると目の前に評議会の議員達が前にやってくる。
「ラクス様。お疲れ様です。もう休暇は大丈夫なので?」
「えぇ、そちらこそお疲れ様ですわ」
「そうですか。では早速で悪いのですが」
「構いませんわ。行きましょう。セナもここまでで大丈夫ですわ」
「そうなの、ですか?なら私も今日は用事がありますのでまた後ほど」
ぎこちない敬語とザフト式の敬礼をしてラクス達を見送るセナ。そうしてラクスと離れてからすぐにザフト兵の一人がセナに駆け寄ってくる。
「セナ准将。もう大丈夫でしょうか?」
「はい。ラクス様も送りましたのでもう大丈夫です」
「分かりました。ではこちらへ」
案内してくれる兵士についていくセナ。そのまま歩いているとセナに向けて周りからの視線が突き刺さっていた。
「・・・やっぱ嫌われているか。仕方ないけどね」
「申し訳ありません。彼らの中には先の大戦で同僚を喪った者も多く・・・それと」
「私がナチュラルだからってのもあるでしょ。貴方は大丈夫なの?」
「私は元ザラ派です。昔はナチュラルが憎くて仕方ありませんでしたが・・・ラクス様や穏健派の話しを聞いて恨むだけではダメだと思う様になりました。セナ准将に対して思うところも無い訳ではありませんが恨む気持ちはありません」
「そう、ありがとうね・・・けど面白くは無いわね」
足を止めたセナは自身を睨みつけるザフト兵達に目を向ける。すると先程までの威勢が一瞬で消え去りそっぽを剥き始める。かつて2度起こった大戦の中で数多くの機体を撃墜してきた太陽の少女に敵意はありつつも正面から敵対する事に恐怖を感じる者が大多数だった。そんな中ただ一人だけ、セナに睨み返しながら近づく体格の大きい男がいた。
「ふぅん、根性ありそうなのもいるんだ」
「お前があの太陽の少女なんだって?」
「そうだけど・・・それが何?」
「モビルスーツに乗れば強いんだろうが、生身だと大した事なさそうだな」
セナに挑発をする男。セナはそれに手招きで挑発して応じた。それを合図に男は殴りかかるがセナは拳を回避しつつ男の腹部に膝蹴りを入れる。
「グッ⁉︎ゲホッ」
「ふーん、思ったより悪くはないじゃない。このくらい根性があればまだ伸びしろもあるでしょ。じゃあ行きますか」
「えっ、良いのですか?」
「敵だった奴を受け入れられない気持ちは分からなくはないわよ。こういうのはもう慣れたから気にしなくていいの。それに遠巻きに見てるだけで何もしない奴よりはああやって正面から来る奴は嫌いじゃないからね」
殴りかかってきた男を無力化させたセナは再び案内された通りに歩き出す。案内されながら向かった先はモビルスーツの格納庫だった。ここでモビルスーツの整備を行う作業員達の横を通りながら奥に進むとボロボロになったライズサンシャインの前に着く。
「改めて見るとほとんど壊れてるわね。よく途中で動かなくならなかったわね」
「はい。正直ここまで酷い状態なら普通の機体なら一から作り直した方が速いですよ」
デスティニーとの死闘の末オーバーホールしてしまったライズサンシャインはここに格納され修理作業が行われていたが余り進んではいなかった。元々ライズサンシャインは最新鋭機であったサードステージと張り合える程の性能は無かった。それをファクトリーで最新技術を無理矢理ねじ込んで開発された結果最強の機体であるデスティニーと戦える程にまで性能を向上させる事が出来た。だが損傷が激しいこの状態では元に戻す事など不可能に近かった。
「まぁ壊れちゃったものは仕方ないし、せめて私が乗る機体くらいは欲しいんだけどね・・・なんか空いてる機体は無いの?」
「無い事は無いのですが、セナ准将の技量が高すぎて今の量産機では准将の操縦に追いつきませんよ。最低でもセカンドステージシリーズ程の性能は無いとなのですが、今はそこまでの機体は・・・そこでなのですが」
「初めましてセナ准将。私はアルバート・ハインラインです」
後ろからやってきたハインラインに声をかけられセナは振り向く。ハインラインは新型モビルスーツの開発に携わる男であり、かつてフリーダムやジャスティス、サンシャインなどのファーストステージシリーズの開発もした男だった。
「あ、初めまして。セナ・ヤマトです。確かサンシャインとかフリーダムを作った人でしたよね?」
「えぇ。実際にはサンシャインは設計にしか関わっていないのですが・・・それは准将には関係の無い話しでしたよね」
「そうですね、私もその辺は詳しくは知らないんですけど」
「無駄話しはここまでにしときましょう。今日は新しいサンシャインについて話しに来たのです」
「新しいサンシャイン?ライズサンシャインを直すんじゃ無くて?」
「ライズサンシャインは性能は高いですが、良くも悪くも突出したところが無い。プロミネンスカノン一つに頼った機体です。そんな機体では貴女の腕前を活かす事は出来ません。なのでライズサンシャインをベースに改修を施すのが早いと思いましてね。キラ准将と共同で作業に入るつもりですがセナ准将に要望を聞こうと思い本日はここにお呼びしました」
「私の要望?」
ハインラインが手に持ったタブレットを操作して過去の戦闘データを再生する。その戦闘データはプロトやサンシャイン、ライズサンシャインに黄ムラサメとセナが今まで搭乗した機体全ての戦闘データが映し出されていた。
「セナ准将の戦闘は全て閲覧させてもらいました。ナチュラルでありながらコーディネイターを上回るその技量とセンスは素晴らしい。プロミネンスカノン以外は高性能なだけだったサンシャインでここまでの戦績を出せたのはセナ准将以外には不可能でしょう」
「は、はぁ。それはどうも」
「ですがそれだけでは足りないのです。サンシャインはセナ准将が乗ったから最強になれただけで、サンシャインではセナ准将の腕前を活かす事が出来ません。武装数の少なさ故に手数が足りない事、機動力とバランスを損なうバックパックとシールドの重量、すぐに使えなくなる肩のレールガンの耐久力。セナ准将の戦闘データを見ただけでもこれだけの問題点を見つけました。セナ准将にも覚えがあるのでは?」
「う、うん、確かに・・・」
セナはハインラインが指摘した事に対して頷きはしたが、ハインラインの熱量と早口に少し気圧されそうになっていた。そんなセナにハインラインは構う事なくそのまま続ける。
「ですが新しいサンシャインを作る上でどういったところを改良するのか、実際に搭乗するセナ准将に意見を募っているわけです。機体の事は実際に動かしたパイロットに聞いてそれを元に我々は新しい機体作成の参考にするのです」
「なるほど、大体分かりました。私の要望を何でも言って良いんでしょうか?」
「そこについては問題ありません。その為の我々ですから」
ハインラインに促されるセナ。気づけば近くにいる整備班の人間全員がセナに注目していた。セナはそんな中で少し考え込むとすぐに口を開いた。
「そうですね・・・シールドとバックパックを小型化出来ませんかね?それを二つ付けて欲しいですね」
「シールドとバックパックを二つずつ・・・ですがそれはあまり変わらないのでは」
「それで、シールドとバックパックを飛ばせる様にして遠隔操作でプロミネンスカノンを撃てる様にする、とかどうです?」
「シールドを飛ばす・・・確かにドラグーンの技術を応用すれば遠隔操作位は問題無いか?いやそもそも小型化したとはいえビーム砲を積んであるシールドを飛ばすとなるとあの重量を飛ばす推進装置が必要にそうなる。それを積む時なれば更に重量が増えて、そうなると更に機動力を損なってしまってセナ准将の操縦スピードに対応しきれなくなる恐れが・・・そもそもシールドもバックパックも増やすとなると両手で支える前提のプロミネンスカノンを片手ずつで撃てる様にしないとでそうなるとフレームの強度も一から見直す事に」
セナの言葉を受けたハインライン大尉がぶつぶつ独り言を呟きながら考え込み始める。その様子を整備班の人達はまた始まったと見守るだけだったがセナは初めて見る光景に無茶振りしたと少し罪悪感を感じていた。
「あ、あの、大尉?やっぱり無茶な事言ってました?」
「そうですね・・・セナ准将が言ってくれた事を実現させようとすると設計を一から練り直さねばならないでしょう。ですがシールドを飛ばすという発想は面白いですね。エンジェルダウンの時にインパルスが投げたシールドでビームを反射させていましたがそれをよりノーリスクで行える様になるでしょう。それにシールドを飛ばせる様になればシールドにビームブレイドを付けてブーメランの様にぶつけて使う道もありますし、防御面でもより幅広い使い方が出来るかも知れません。やってみる価値はあります」
「そこまで先が見えてるんですか⁉︎てかほんとに全部見てたんだ・・・」
「ともあれ、実現させる為には課題が多い。キラ准将にも話しを通してより人を集めれば・・・すぐにとは言えませんが必ず要望通りの機体を完成させてみせます。それでは私はこれで」
ハインラインは早足でその場を去っていった。その間も何か独り言を言いながら歩く様にセナは終始圧倒されていた。
「・・・なんか、凄い人だったな・・・半分くらい何言ってるか分からなかった」
「今日はまだ分かりやすい方でしたよ。普段ならもっと専門用語使ってて誰も理解出来ないまま一人で進んじゃう時もありますから」
「あ、そうなんだ。てかあの感じだと新しいサンシャインが奇天烈な事にならないよね?」
「どうでしょうか・・・モビルスーツの制限数の対策でインパルスのシルエットシステムを考えちゃう人ですからね」
「アレもあの人だったの⁉︎あの分離出来る奴のせいでどれだけ苦労をしたと」
苦い記憶を思い出すセナ。エンジェルダウンでシンの操縦するインパルスに翻弄され、最終決戦の時はルナマリアの操縦するインパルスの特攻で危機に陥った事のあるセナはインパルスに苦手意識を覚えていた。それもある意味ハインラインの仕業と知り苦虫を噛み潰したような表情になっていた。
「ははは、それはさぞ苦労した事で・・・」
「笑い話じゃないわよ・・・てかもうこんな時間か・・・ラクス、様のお迎えをしないと」
「それではまた案内します」
「いつも悪いわね。またお願いするわ」
ザフト兵に案内されセナはラクスの元に向かう。ラクスの護衛とザフト兵の二足の草鞋は気苦労が絶えないが、なんだかんだでセナはやっていけてた。だが後に複雑な立ち位置になるばかりかこの時出会ったハインラインとはまた濃い付き合いになる事になるとは今のセナには予想出来なかったのであった。
本来はセナに射撃訓練をさせる話しでも良かったと思いますが、セナの射撃ネタはまた別の話しで使おうと思い没にしました。しかしそうするとただセナが周りの仕事を見てるだけになってしまうので荒事を起こしてセナの戦闘センスを改めてお出しする事にしました。これで特に戦闘訓練はしてないのです。ちょっと盛り過ぎましたかな?地球軍の兵士に無双する学生時代も十分凄いですがコーディネイターの兵士を軽くあしらえるナチュラルは原作内では自分は一人しか知りません。あの艦長も凄いですね・・・
新しいサンシャインはどうなるのか・・・これはFREEDOM編での活躍をお楽しみに・・・