ガンダムSEED 太陽の少女   作:黄金鷹

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この辺りのパートは少し気を使っていたら時間がかかってしまいました。自分は戦闘シーンでは筆が乗るのですがこういう戦闘じゃ無い世界情勢や人間ドラマ的なシーンはあまり得意じゃ無い気がします・・・


第二話 綱渡りの平和

オルドリン自治区での戦闘が終わった頃、宇宙では大気圏を突破したツインサンシャインが人型に戻りながら飛び去ろうとしていた

 

「もうお戻りになられるのですかセナ准将?」

「お久しぶりですコノエ准将。すみません、ろくに挨拶も出来ずに早々に立ち去ってしまって」

「いや、それなら仕方ありません。ですが貴女が居なくなってからもう半年。地上では益々戦争再開の空気が蔓延しつつありますからねぇ、一人でも手を借りたい程なのですよ」

 

ツインサンシャインに乗ったセナに通信を入れて話しかけたのはアレクセイ・コノエ

だった。彼はコンパスの主力である新型戦艦ミレニアムの艦長を務めていて、セナとも交流のあった男だった。

 

「空いていたら手伝いくらいはしますよ。でも私が居なくてもみんな大丈夫そうでしたよ」

「彼らも精一杯やっているからねぇ。それに貴女が居なくなったら駄目になったでは我々もメンツが立ちませんから・・・おっと、少し話し過ぎましたかな?」

「いえ、それではまた」

 

セナの任務は不死鳥を追うことだけではなく、コンパスの総帥となったラクスの護衛を務める役目もあった。それ故基本的にはラクスの側で守る事が今のセナの役割だった。ミレニアムとの通信を終えたセナはツインサンシャインをラクスのいるプラントに向けて発進させた。

 

「クライン総裁は我が軍の被害をご存じ無いのか!」

 

机に拳を叩きつけながらジャガンナートは怒鳴りつける。ラクスはそれに対し表情一つ変えずに正面から受け止めるだけだった。先日オルドリン自治区をブルーコスモスの部隊に襲われ防衛をしていたザフト軍に少なく無い被害が出た。彼らが怒る気持ちは分からなくは無い。だが今回はそれだけでは無かった。

 

「ヤマト隊長は何を考えておられるのか!彼はなんの非も無い我らにまで攻撃をするなど、どういうつもりなのか‼︎」

 

先ほどよりも強い非難をするジャガンナート。実のところ本題はキラがザフト軍にも攻撃をした事に対しての方が怒りが強かった。少なくとも彼らには突然襲ってきたブルーコスモスの部隊に対し防衛という理由で攻撃が可能な状態だった。ここ最近ブルーコスモスの部隊に襲われる事は何度も起こっておりその度にコンパスが介入して戦闘停止しては逃げられるを繰り返していた。故に何度も攻撃されるのを防ぐ為に部隊を再編成出来ない様に徹底的に叩くのもブルーコスモスを指揮しているミケールを探そうとするのも間違いでは無い。ナチュラルに対しての恨みをぶつけようとしている事を除けばそこに咎める理由はどこにも無い行動ではあった。だがキラによってその行動は止められたばかりかモビルスーツを無力化されすぐには出撃出来ない程に部隊にダメージを受けていた。ジャガンナートをはじめとするナチュラルを攻撃したい過激派からすれば看過出来ない事だった。

 

「それについては申し訳ありません。ですが」

「君の言いたい事も分かるがね。だが彼らの動きが無ければオルドリン自治区での被害はこれだけでは済まなかったのも事実だ。それにあそこにはあの太陽の少女も居た。今は味方で居てくれる彼女だが、敵になった時の恐ろしさを君はまだ知らないのか?」

「ぐっ、それは・・・」

 

謝ろうとしたラクスをフォローする様に現最高評議会議長であるラメントが横から口を出す。その言葉にジャガンナートは何も言えなくなった。太陽の少女が敵に容赦しない事は2度の大戦でザフトは嫌という程に味わっていた。更にコンパスに入ってからの戦績は未だ記憶に新しくザフト内では敵では無い事に安堵していた。だがそれも今の停戦状態が続いている今の話しである。もし再び戦争になれば太陽の少女は戦争を終わらせる為に連合ザフト問わずに戦う事になるのは見えていた。今のザフトに太陽の少女を止められるパイロットなど存在せず戦争になるのだけは避けたいのはどちらも同じだった。

 

「先程はありがとうございました。ラメント議長」

「いや、気にしなくていいさ。だが彼の気持ちも分かってやってほしい。ザフトも元は反地球連合の義勇兵で作られた組織。今更融和と言われてもすぐに受け入れるのには時間がかかるものだ」

「はい・・・よく存じ上げます」

 

ナチュラルとコーディネイターの間の確執はかなり深く、手を取り合うには互いの犠牲が出ておりすぐには受け入れられない事である事は身に染みていた。ただ、困難だからと諦めてしまえばまた戦争となり多くの犠牲者が出てしまう事は目に見えていた。それだけはなんとしてでも避けなければならない事だった。だからこそコンパスを立ち上げて争いが起きる前に鎮静させるのがラクス達の現状だった。

 

「しかし、ミケールのテロ行為が我らの感情を逆撫でするのも事実。結局はオルドリン自治区にも彼の姿は無かった。巧妙に潜伏していたと言うにはあまりにも手掛かりが無さすぎる」

「ならやはり・・・ユーラシアの軍事緩衝地帯に彼は潜伏していると」

「考えられるのはそこくらいでしょうな・・・」

 

ミケールは何度もブルーコスモスの兵士達を扇動してテロ行為を行なっているがその姿は一度も確認出来た事は無く、テロ行為を未然に防げた事は一度も無かった。それだけ完璧な隠蔽工作を個人で出来る筈は無く、考えられるのはまだ一度も調べる事が出来ていない場所であるユーラシアの緩衝地帯以外考えられなかった。

 

「地上ではミケールのテロ、宇宙では不死鳥の無差別攻撃・・・戦争が起きなくても問題は山積みです。一刻も速く解決しなくては」

「確かに早急な対応が必要ではありますな。しかし根を詰めすぎても良いことにはなりませんよ。少しくらい休暇を入れても罰は当たりませんよ。丁度彼らも戻ってこられるのだから」

 

ラメントの見つめる先にラクスも視線を動かす。そこには壁によしかかりながら待っているセナの姿を見つける。セナは少し髪が乱れており、僅かながらに肩で息をしている事からつい先程戻ってきたと分かる状態だった。

 

「セナ、もうお戻りになっていらっしゃったのですね。急がなくても良かったですのに」

「・・・ふぅ。そういう訳にも行きませんよクライン総裁。私は護衛ですから」

「しかし、貴女を地球にまで行かせたのは私の判断です。その様子ではまた」

「ああ・・・まぁ何も見つかりはしませんでしたよ。しかし総裁が憂う事はありません。私も藁を掴む思いでその情報に縋っただけですから・・・お互い徒労に終わってしまっただけです」

 

他人行儀なセナの態度にラクスは内心でモヤモヤしていた。しかしセナは仕事中は私情を挟まない真面目さを持っており、親しき中でも立場をまきわえるだけの線引きはしているのだった。今回もいつも通りの対応をしているだけでラクスが曇る必要は無い。しかし自分の出した命令で遠くまで行かせておきながら自分の身を守る為にすぐに戻らせた事に対する申し訳なさを友人でありいずれは義理の姉になるであろうセナに気を遣われているのがラクスの罪悪感を刺激するのだった。

 

「お久しぶりですなセナ准将。セナ准将も本日から休暇に入るのだろう。少しは羽を伸ばしてくれたまえ」

「お久しぶりですラメント議長。お気遣いありがとうございます。弟共々これからも励みます」

「ああ・・・それにしても初めて見た時からだが、君があの太陽の少女とはとても思えんよ。侮辱するつもりでは無いがあの容赦の無い戦いっぷりと恐ろしいまでの戦績ををまだ若いナチュラルの少女がしていたとは思えんよ」

「ふふっ、もう少女と呼べる歳でもありませんよ。私は」

「優しいのですよ、セナも・・・彼も」

「・・・このまま立ち話をする訳にも行きませんな。それではこれで。お二人ともごゆっくり」

 

ラメントがお辞儀をするとラクスとセナもお辞儀をして挨拶を済ませる。そうしてラメントとその付き人達が立ち去るのを見送ってから二人も歩き出す。その後ろ姿をジャガンナートと話していたフードを被った男に見られていたが殺意の無い視線にセナが気づく事は無かった。

 

「・・・以上が届いた書状の内容だ。そっちにも同じものが届いてるとは思うが」

「ええ・・・しかしこれをただ信じるというのも」

「まぁ言いたい事は分かる・・・だが筋は通っていると思うぞ」

 

ラクスは自宅に帰ってからカガリとリモートで通信をしていた。二人はコンパスの創設に携わっており、こうして定期的には二人っきりで互いの立場関係なく話し合う時間を設けていた。ラクスの横にはセナが、カガリの横にはオーブの代表の後継者として教育しているトーヤが参列していた。

 

「ファウンデーションか・・・気になる所は多いけどやるしか無いかな?」

「ファウンデーション王国から送られたミケールの情報は正確で居所も掴めている様です。協力するべきだと思うのですが」

「確かにそうだ。だけどなトーヤ、物事には必ず裏があるんだ。この情報は間違い無いとは思うがあちらにも何かしら思惑あっての行動だと思うぞ」

「おおかた国際組織であるコンパスに協力した実績をもって国家承認して欲しい、てところかな?ちょっときな臭いけど私は反対しないかな。ラクスはどう思う?」

 

セナから見てもトーヤはまだ勉強中の身でまだ未熟な部分も見受けられる。だが年齢の割には冷静に見れていると思うしいずれは自分よりも世界の事を見れる人物になるであろうと思えるくらいには将来が有望に見えた。むしろ問題は心ここに在らずに見える今のラクスの方がセナには心配になった。

 

「・・・あ、すいませんセナ」

「良いから、それよりもラクスの意見を聞きたいな」

「そうですね・・・少し話しが出来すぎている気もしてしまいます。あれだけ探しても手がかり一つ見つからなかったミケールの居所をここまで正確に掴めるのは何か怪しく思えます。もしかしたらファウンデーションには何か別の思惑がある様にも」

「まさかファウンデーションが何か企んでいるとでも言うのか?」

「いえ、そこまででは・・・しかしただここにある情報だけを信じて協力を受けるのも少し憚れます」

 

カガリから見たラクスはかつてと比べると迷いが生じている様に感じていた。コンパスの総裁としてより多くの責任を背負った結果今までの様に自由に動く事が難しくなり普段なら決断できるものも出来なくなった、そんな印象が浮かんでいた。

 

「早急に決めないといけないのは分かっています。ですが申し訳ありませんが・・・少しだけ考えさせてくれませんか?」

「・・・分かった。ここで悩んでいても仕方ない、ラクスの判断を信じるよ。あとはセナなりキラなりに相談してくれ。その方が決断しやすいだろ」

「・・・はい」

「じゃあねカガリ。トーヤ君も頑張ってね」

 

モニターに手を振るセナに笑みを浮かべてカガリは通信を切る。残ったのは黒くなったモニターと重苦しい表情のラクスを見つめるセナだけだった。

 

「ほら、ラクスもそんな暗い顔しない。せっかく明日から休みなんだからさ」

「はい・・・やっぱりいけませんよね?別の事ばかり考えて話しに身が入らないのは」

「仕方ないと思うよ。いつだって完璧、なんて人間は居ないからさ。それに多分半分は私のせいでしょ?」

「そんな、事は・・・」

 

ラクスははっきりと否定しなかった。それはセナの言った言葉を少しでもそうだと思ってしまったからだった。セナはわけあってヤマト隊から抜けている。その結果ヤマト隊全員にかかる負担が増え、それらを全てキラが背負う羽目になっている。自分が安全なところで頭を悩ませている間にもキラは危険な戦場で戦っている、そんなキラの事を心配しており、キラが苦労している原因をセナにもあると他責している自分がいる事にラクスは自分自身を嫌悪していた。

 

「ごめんねラクス。悪いとは思っているよ・・・けどすぐには難しいと思う」

「いえ、そんな事は・・・セナだって大変なのは同じですから。私なんかより」

「いやだから気にしなくても・・・ってそうだ!今日キラも帰って来るじゃん!ほらほらラクス、うじうじ悩んでも仕方ないから今日はキラとのんびり過ごしなよ」

「セナ⁉︎」

「私はそろそろお暇するよ。二人の邪魔はするわけには行かないからさ」

 

セナに手を引かれてラクスはソファから立ち上がらされるとキッチンに向けて背中を押される。この家はラクスとキラの二人で暮らしている家であり、セナは客人として来ていた。セナは二人の家のすぐ近くで一人暮らしをしており何かあれば即駆けつけられる様にしていた。

 

「いえ、セナもご一緒で」

「ラクスの気持ちも考えも分かるよ。けど今のラクスに必要なのは恋人との時間だよ。だから休みの日くらいキラと甘い時間でも過ごしなよ。キラの好物を作ってあげたらきっと喜ぶと思うから」

「セナ・・・申し訳ありません。それと、ありがとう」

「うんうん、少し元気になってきた様でお義姉さん安心した。それじゃあまたね」

 

セナが自分の家に帰っていく。ラクスはセナを見送ってから夕飯を作り始める。今日はキラの好きな揚げ物を大量に作る予定だった。キラの母であるカリダから教わった料理は自分でも美味しいと感じる程には上達していると思っていた。キラも普段は少食ながらも自分の料理は美味しそうに食べてくれる。それがコンパス総裁では無い一人の女の子としてのラクスの1番の喜びだった。

 

「下味は付け終わりました。後は付け合わせのサラダにスープを作って、唐揚げは高温で揚げて」

「テヤンデ〜」

「あら、キラかしら?」

 

部屋に備え付けてある電話から音が鳴る。それに反応したハロにつられてラクスも電話に気づき受話器を取る。

 

「もしもし。キラ?帰りはいつになりますか?」

 

愛しい人の帰りを待つラクスの姿はただの恋する女の子そのものだった。難しい事は考えずに好きな人に自分の手料理を食べてもらうことが幸せな普通の女の子、そんなどこにでもある普通にラクスは憧れているのだった。だがそんな楽しみを待っているラクスの笑顔はこの後すぐに曇る事になるなど知る由も無かった。

 

「ただいま・・・って言ってもおかえりなんて返ってこないよね」

 

自宅に帰ってきたセナは来ていたコンパス隊員の制服を脱ぐと部屋着に着替える。久々に休暇を得られたセナは羽を伸ばす気でいた。

 

「ふぅ・・・さてと、夕飯くらい食べとかないとね」

 

冷蔵庫を開けて今日の夕食を作ろうとするセナ。だがその中には何も入っていない事を忘れていた。

 

「あ、そういえばしばらく帰ってこれないからって空にしてたの忘れてた・・・どうしよう。今から買い物行くのも面倒だしな・・・」

 

仕方なく引き出しの中に何か無いかを探すセナ。セナの料理の腕前は平凡で上手くも不味くも無い程度の腕前だった。そのため料理を作る事に対して何の感情も無く、ただ自分一人の腹を満たせるなら何だって構わない、そのくらいの感覚だった。セナは見つけたカップ麺を取り出しお湯が沸くまで座って待つ事にした。

 

「今のうちにメールでも・・・大半が仕事関係ね。こういうのは溜めると面倒よね」

 

溜まったメール全てに目を通していくセナ。ミケールの捜索部隊の報告や不死鳥関連の情報を一見しつつ母からの連絡には返答しステラがターミナルで頑張っている報告を見て笑みを浮かべながら時間を潰しているとお湯が沸いた音がした。

 

「お、もう出来たか。後はお湯を入れて」

 

キッチンに向かおうとしたセナの耳に着信音が鳴る。どっちも放っておけないセナは速攻で沸いたお湯をカップ麺に入れて電話を取った。

 

「もしもし。どちら様でしょうか?」

「もしもしセナさん。今大丈夫だったかしら?」

「マリューさん⁉︎こっちは休みだし大丈夫だけど、そっちこそ忙しいんじゃないんですか?」

「ええ、今は休憩中だから大丈夫よ。それよりもごめんなさいね。せっかくの休暇中に」

 

電話の相手がマリューだった事に気づいたセナは肩の力を緩める。ナチュラルでありながらプラントに住んでいるセナはプラントに住む人間から異物の様に見られていた。セナが2度の大戦でザフト軍に尋常じゃない被害を出してきた太陽の少女である事は既に知られている。故に太陽の少女に殺された者の遺族がセナがプラントに居る事を良く思っておらず周りから敵意を向けられる事は珍しい事では無かった。セナが生身でも普通に強いので嫌がらせ的な行為はされておらず暮らす事には困る事では無いがそれでも周りに殆ど味方が居ないプラントでの生活はセナの心を擦り減らしていた。だからこそ共に戦ってきたマリューからの電話はセナにとって数少ない穏やかな時間だった。

 

「いや、全然大丈夫ですよ。こっちはカップ麺食べて寝るだけですから」

「そうなのね・・・私から言うのもおかしい話しだけど食事はきちんと摂る様にしなさい。カップ麺ばかりじゃあダメだからね」

「はい、気をつけます・・・出来ないわけじゃ無いんだけど自分一人の食事にあんまり手間をかける気が起きなくて」

「そっか、それは仕方ないわね。私もムウが居ない時はあまり食欲無かったからね・・・作ってあげたい、食べてもらいたい人が居ないと料理はやりがい無いわよね」

「・・・うん、そうだね」

 

 マリューの何気ない一言にセナは眉を吊り下げていた。今のマリューには一緒に生きるムウが居て、同じ職場で働きながら仲睦まじく過ごしている二人は幸せそうに見えセナも周りも祝福していた。

 そんなマリューとは対照的にセナには隣で生きてくれる人が居なかった。今までキラと友達と共に青春を過ごしてきた学生の頃は周りとの関係も良く困る事は無かった。だが軍人として戦う様になり、気づけばセナの周りに居るのは共に戦う仲間だけになっていた。キラにはラクスと恋仲になり、アスランもカガリと恋人として甘い時間を過ごしている。シンはまだ付き合ってはいないと聞いているもののその周りに好いてくれる女の子が何人も居るシンの未来も明るいものだった。

 だがセナにはそういった相手は居ない。別に恋人が欲しいわけでもない、拒否しているわけでも無いが急いで恋人を作らねばと思う様な焦りは微塵もない。それでも戦い続けた先に大切な人と過ごせる幸せを手に入れたキラ達と比べて戦い続けた結果最強の存在として周りから畏怖され、挙げ句の果てに誰からも歓迎されないプラントで一人暮らしをしているセナには自分の幸せというものが分からなくなっていた。

 

(幸せ、か・・・別に今が不幸でも無いし辛い事も特にあるわけじゃない。でも楽しいと心の底から思えた時がいつだったかなんて、もう覚えてない)

 

最後に笑えたのはいつだったか、セナは自分の記憶を思い返す。一時は感情が表に出なくなった事を除けばセナは表情がころころ変わるタイプであり、笑っている事も多くあった自覚はある。でもそれは親しい者達と楽しい事をしていた特別な時だったから笑えていた気がしていた。日頃から自分が幸せだと自覚出来ていた事はセナには思い浮かばなかった。

 

「セナさん?聞こえるセナさん?」

「あ、ごめんマリューさん。少しぼーっとしてた」

「そう、ごめんなさい、疲れているところに。今日はこのくらいにしておきましょう」

「・・・うん、分かりました。それではまた」

「それじゃあねセナさん」

 

受話器を置きマリューとの通話を終わらせるセナ。心の中のモヤモヤはまだ残っていたが一人で考えていても答えは出なかった。既にお湯を入れてから時間は経っている。カップ麺もそろそろ食べ頃になっていた。

 

「はぁ、今日は食べたらもう寝るか、てまたか・・・」

 

再び鳴り出した電話にセナは僅かに気分を害していた。しかし何か緊急を要する内容かもしれないので無視する事も出来なかった。セナは仕方なく受話器を取り応じる。

 

「もしもし、どちらさんですか?」

『セナ・ヤマトだな』

「・・・アンタ誰?」

 

ボイスチェンジャーで声を変えている相手にセナは警戒心と敵意を剥き出しにする。自分以外に向けられた敵意にも触れてきたセナにとってセナがラクスやカガリと関係者であるだけでそういったものを向けられる事は少なくは無かった。

 

「ただのイタズラじゃ無さそうね・・・何が目的?」

『お前の事を見たぞ。かなり強そうな気配だったぞ」

「あっそ、それはどうも」

(私を見た?それで私の家に連絡を入れてくるか?てかなんで知って・・・コイツの裏にも何かいるのか?)

『またすぐ会えるさ。その時が楽しみだ』

「あ、待て・・・切られたか。多分どっかの公衆電話からだろうから探るだけ無駄か」

 

苛立たしく受話器を叩きつけるセナ。ただでさえストレスがかかりやすい環境に居る中で僅かな休みの時に謎の存在からの煽りに気分を害していた。それ程に今のセナの心に余裕は無い状態だった。だがそんなセナに3度目の電話がかかってきた。

 

「また⁉︎今日はもう何なのよ!もしもしどちらさんで・・・え?」

 

取り繕う事すらせず怒りのまま受話器を取るセナ。だがその相手からの言葉にセナの怒りがすぐに萎んでしまった。

 

「ラクス?・・・本当に?いや、それよりも・・・分かった。すぐ行く」

 

セナは急いで外に出る支度をして家を飛び出していく。今は自分の事を二の次にする程に電話越しのラクスが落ち込んでいた事の方がセナには気掛かりだった。それ故に先程の怪しい者からの電話の事などセナは忘れてしまっていた。




ネタバレ防止の為にここで登場するオリジナル機体の紹介をする事にします。

ツインサンシャイン
武装
ビームライフル、ビームサーベル×2、シールド×2、ビームシールド×2、シールドビーム砲×2、ビーム吸収パネル×2、プロミネンスカノン×2、ガラティーン、肩レールガン×2

コンパスに所属しているセナの機体。元々はメサイアでのデスティニーとの戦闘で大破したライズサンシャインを修復、改良した機体。背中のバックパックとシールドを小型化した上で二つに増やし、強力なスラスターを搭載する事で単独でも飛行する様になっている。それによって遠隔操作でプロミネンスカノンを放つ事が出来る様になっている。更にコンパスの任務で宇宙から地上への移動の為に変形機構を搭載しており、このノウハウがライジングフリーダムやイモータルジャスティスへと引き継がれていく事になる。
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