ガンダムSEED 太陽の少女   作:黄金鷹

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また更新が遅れてしまい申し訳ありませんでした。ブラックナイツ達のキャラを掴むのが難しくどう動かそうか悩んでたら時間がかかってしまいました。おそらく次からはもう少し早く更新できると思います。


第五話 力の意味

謁見の間にやってきたキラ達の間に緊張が走っていた。相手側から協力を申し出たとはいえ対面の時に相手に悪印象を持たれたらそれだけで今回の話しは白紙に戻されてしまうからだ。しかも今回は今まで誰も掴めなかったミケールに届くかもしれないコンパスにとって大一番とも言える重要な交渉だった。

 

「遠路はるばるご苦労だったな。ようこそファウンデーション王国へ。わらわがファウンデーション王国女王、アウラ・マハ・ハイバルである。此度のコンパスの迅速な対応、痛み入る」

 

謁見の間の玉座に金髪の幼女が座りアウラが言葉を発する。彼女こそがこのファウンデーションの女王でありその隣に宰相であるオルフェともう一人黒い服を着た男が立っていた。

 

「ご拝謁の栄誉を賜り、誠に光栄に存じ上げます、陛下」

 

ラクスがアウラの言葉に受け答えをすると礼をする。それに合わせてキラ達も綺麗に揃って頭を下げる。面には出していないが全員が内心で緊張していた。それは女王の前だからだけでは無かった。

 

「うむ。ミケールのパルチザンにはこちらも手を焼いていてな・・・どうか我らの民を守っておくれ」

「全力を尽くします」

 

もう一度ラクスが礼をしてキラ達もそれに続く。しかし謁見の間の装飾に目を取られていたシンは一人だけ頭を下げるのが遅れてしまう。慌てて頭を下げたシンに横からマユ達がジト目で睨んでくるのを感じ冷や汗をかいていたがアウラは特に気にしている様子は無かった。

 

「うむ、頼んだぞ。ささやかであるが歓談の席を設けた。ぜひ楽しんでいってほしい・・・・・・ところでだが、其方達はそれで全員か?来るのは9人と聞いておったが」

 

アウラの言葉に先程と比べものにならない緊張がキラ達に広がっていく。元々この場にはもう一人居る筈の者が欠けている状態だった。ファウンデーションもそのつもりで準備をしていたにも関わらずいざ対面すると人員が欠けている状態だった。アウラの疑問は特に他意のない純粋な疑問ではあったが対応を間違えればファウンデーションに対してかなりの失礼になる状態だった。

 

(やべぇ、やっぱ聞かれたぞ)

(どうすんのよこれ・・・なんて答えれば)

(てか普通案内されている上で一人だけ逸れるってどんなミラクルがあったらできるのよあの女は)

 

後ろに立っているシン達はアウラ達には聞こえない様にひそひそと話していた。セナが逸れた事に気づいたのは謁見の間に着く直前だった。少し遅れただけですぐにセナも追いつくだろうと少しだけ待っていたもののセナは現れず仕方なくセナを除いて向かったのだった。

 

(なぁ、アイツって方向音痴だったのか?)

(昔からそうなんです・・・すいません)

(ごめんなさいね・・・あの子目を離すとすぐ見えなくなるの忘れていたわ)

(お前らが謝る事じゃねえさ。けどどうしたものかな)

 

わざわざ案内までしてもらっている状況で女王の前で方向音痴でしたは言い訳にもならない。しかしこのまま黙り込むのも不敬になる。どう答えようか悩むキラ達から一歩前に進んだラクスが口を開く。

 

「申し訳ありません陛下。彼女はファウンデーション王国に着く少し前に体調を崩してしまい今は休ませています。最近私の護衛で疲労が溜まっていたのだと思われます」

「そうか、なら仕方ないか。噂の太陽の少女の姿、一度見たかったのだがな」

「今晩の会食までには体調を治せる筈です。彼女は体力自慢ですから」

「そうか、楽しみにしておくとしよう」

 

ラクスの答えを聞いて満足したのかアウラはそれ以上は追求せずにオルフェと共にその場を後にする。部屋を出る直前にオルフェが振り返り少し同情的な目をしながら去っていった。

 

「ふぅ、なんとか誤魔化せたか・・・」

「よく咄嗟に言い訳思いつきましたね」

「ほんとですよ。てか途中で来るかもって思ってたんですけど最後まで来ませんでしたね」

「ふふ、セナはですね・・・こういう時は絶対に来ないんですよ。一度迷えば一人では目的地に辿り着くことなど一生できませんから」

 

どこか遠くを見るような目をしながら笑うラクス。そこには普段人前で見せることの無い疲労を感じさせるラクスらしくない表情をしていた。

 

(苦労してるんだな・・・)

(苦労してるのね・・・)

(あの人今までよくやってこれたわね・・・)

 

ラクスの苦労を内心で労いながらキラ達は宰相秘書であるイングリットに案内してもらっていた。全員がセナの方向音痴っぷりに呆れている頃、セナは一人で外を歩いていた

 

「多分もう謁見終わってるよね・・・やっば、どうしよう・・・」

 

一度逸れてからセナは誰とも会えないまま王宮の周りを彷徨いていた。知らない場所で誰とも会わず合流できそうに無いセナは必死に合流しようと行動していた。そのせいで余計に離れている事に気付かぬまま歩き続け、最終的に謁見が終わるまで彷徨い続けてしまった。

 

「ああやってしまった。これは最悪クビにされるんじゃないかしら?それよりもどうしたものか・・・ん?」

 

セナが見つけたのはかなりの高さがある木だった。昔はよく木に登って遊んでいた事をセナは懐かしんでいた。

 

「こういうの、昔はよく登ってたな・・・ちょっと子供っぽいけど高い所から

 

「丁度木があるのがいけないのよ。こんなの登りたくなっちゃうって」

{そういうものなの?お姉さんは変わってるね}

「ッ‼︎?誰⁉︎あ痛っ!」

 

突如脳内に直接語りかけられる声にセナは驚愕する。そのせいで集中が切れたセナは手を離してしまい木から滑り落ちて背中を打ってしまう。

 

「いったぁ・・・急に何よ・・・えっ?」

 

背中をさすりながら周りを見渡すセナ。しかしその周りには誰の姿も無かった。

 

「誰も居ない・・・けど確かに今、声が・・・気のせい?」

{気のせいじゃないよ。まぁ探しても無駄だけどね}

「また!アンタ誰よ!」

{それよりも、お姉さんから見て右側に人が集まってるよ。行ってみたら?}

「えっ?」

 

謎の声の指し示す方を見るセナ。その先には黒い服を着た集団が集まっているのが見えた。今まで誰にも会えず一人彷徨っていたセナには道を聞ける相手がいるだけでもありがたかった。

 

「あんなところに。てかどうして・・・いや、今は気にしてる場合じゃないか」

 

セナは示された方へ駆け出す。とにかくキラ達の元に戻る事だけを考えているセナの頭には先程の謎の声についてを思い出す事は無かった。

 

「あちらにいるのが我が国が誇る近衛師団です」

 

ラクスとマリューとパイロット組で別れたキラ達はファウンデーションの宰相秘書であるイングリットに案内されていた。宮殿内を改めて見てその歴史ある建物に元ミネルバ組のシン達は感銘を受けていた。そして最後に連れてこられたのがサーベルの訓練をしている近衛師団達のいる兵舎だった。

 

「おー」

「凄ぇ・・・あの人ら多分オレらと同い年だよな?」

「あれが噂のブラックナイツか・・・」

 

赤い髪のリューとと白い髪のシュラがサーベルで試合をしていた。その様子をグリフィン、リデラード、ダニエルの3人がくつろぎながら見ていた。見た目の年齢からはシンやルナマリアと同い年に見える彼らは全員が同じ様な黒い服を着ていた。

 

「サーベルか・・・アカデミーには無かったよね」

「ナイフはあったわね。でも私達のナイフ捌きじゃアレには勝てないと思うわ」

「だよね。てかあの剣本物?」

 

各々がそれぞれの感想を言っている中、シュラがキラ達の姿を見つける。その瞬間挑発的な笑みをした後相手のサーベルをキラの足元へ弾き飛ばした。

 

「なっ⁉︎」

「キラさん!」

「大丈夫ですか隊長!」

「僕は大丈夫だよ」

 

咄嗟にキラが飛び引くと先程までキラが立っていたところにサーベルが突き刺さる。間一髪で回避したキラの元にルナマリアとシンが駆けつけ声をかける。

 

「やれやれ、シュラには勝てませんね」

「一手御指南頂いても?」

 

二人はキラにサーベルが当たりそうになった事を特に気にする様子もなく平然としていた。それどころかシュラはサーベルの切先をキラに向けて試合を申し込んできた。

 

「えっ?いや、あの・・・」

 

突如自分に向けられた申し込みにキラは困惑していた。ただ案内されて見学しただけでサーベルの試合の催しなど想定外だった。そもそもキラは碌な軍事訓練を受けておらずサーベルはおろか格闘術や射撃すらもこの中で一番できない自覚があるほどだ。当然断ろうとしたが二人の試合を見ていたグリフィンが嘲笑う様に声をかけられる。

 

「なんだ、剣が使えない隊長さんかよ」

「キャハハ。コンパスってのも案外大した事ないんだね」

「それはこの間実証したし」

 

グリフィンの後にリデラードとダニエルも人を馬鹿にした様な態度で声を上げる。キラどころかコンパスすらも侮辱するかの様な態度をする3人にキラは困惑していた。一時的とはいえ作戦を共にする相手である自分達に強気な態度で挑発するなど普通はありえないからだった。

 

「貴方達、お客人に失礼ですよ!」

 

イングリットが割って入って失礼な態度をした3人を諌める。が3人は特に態度を改める様子は無かった。するとシンが歩き出しサーベルを引き抜いた。

 

「シン?」

「任せてください隊長。あんなの、隊長の出る幕じゃありませんよ」

「ちょっとシン」

「やらせてやれよ。キラ」

 

ムウに諭されキラは黙って様子を見ることにした。マユとルナマリアもシンの事を心配しつつもその背中を見守っていた。

 

「・・・ふん、まぁ良いか。近衛師団団長、シュラ・サーペンタイン」

「ヤマト隊のシン・アスカ」

 

サーベルをシンに向けながらシュラが名乗りあげる。シンはサーベルを刀を握る様に両手で持ちながら名乗りあげる。シンの名乗りを聞いたシュラはそれを開始の合図として切り掛かりシンはサーベルで正面から受け止めた。

 

「ふっ!」

「ほぅ・・・」

 

シュラのサーベルを力技で振り払ったシンはそのままサーベルを振り回す様に切り掛かる。シュラはそんなシンの太刀筋を最小限の動きで躱しつつ切り掛かる。シュラの動きは鍛え抜かれた実力からくる無駄のない動きをしていた。そんなシュラにシンは慣れてないサーベルを自分の戦闘センスだけで張り合っていた。

 

「思ったより楽しめるな」

「何を!」

「だが、その程度では俺には勝てん!」

 

シンの横に振ったサーベルを跳躍して躱わすシュラ。そのまま頭を飛び越え後ろに回り込んだシュラがサーベルを振るう。咄嗟にガードしたシンだがサーベルが弾き飛ばされ首のすぐ横にシュラのサーベルが突きつけられる。

 

「なんだ、太陽殺し様も大した事ねーんだな」

「シュラ相手にもった方じゃない?」

「アイツら!」

 

シンに浴びせられる嘲笑にマユがキレて殴りかかろうとする。だがその前にルナマリアに首根っこを掴まれ引きずられる。

 

「やめなさいマユ。これ以上ゴタゴタを増やさないの」

「でも!あんなのに好き放題言われるの納得いかない!」

「やはり最強はアスラン・ザラか」

「はあっ⁉︎」

 

続けて出たシュラの言葉にマユは激昂しルナマリアの拘束を抜けて殴りかかろうとする。がその前に回り込んだシンに抱き抱えられ止められてしまう。

 

「良いからマユ。落ち着け」

「だってアイツ!お兄ちゃんを馬鹿にして!挙句にはアスランが最強なんてデタラメを。最強ならセナさんの方を出せよ!」

「そっち⁉︎」

「セナ・ヤマト・・・太陽の少女か。本人がいれば手合わせしてみたかったが・・・体調を崩したのだろ?自分のコンディションも管理できないやつなど大した事ないだろうからな」

 

シュラの言葉にマユは動きを止めてしまう。マユだけでなくその場にいるコンパス組全員が気まずそうに顔を逸らしてしまぅた。謁見の間で女王であるアウラの前での言い訳をその場に居たシュラは知っておりそれが誤魔化すための方便であることも見抜かれていた。

 

「世界を統べるのは力のあるものだけだ。体調管理もできないセナ・ヤマトや臆病者な貴様にそれができるかな?」

「そんなの、誰も望んじゃいない」

「そうかな?少なくとも自由とは名ばかりの無法な今よりはマシだとは思うがな。そもそも力でどうにかしてきたのはお前も同じ筈だ」

 

シュラの言葉にキラは何も返す事ができなかった。キラ達はデュランダルの示したデスティニープランを否定して今の世界を勝ち取った。その結果争いは止まらず今もナチュラルとコーディネイターの間には埋まらない溝ができていた。力で抑えつけるやり方は正しいとは言えずともデスティニープランによる統治された世界なら少なくともミケールの様な連中が暗躍する事は防ぐことができたはずだった。何よりキラ達自身がデスティニープランを力で否定してしまっていた。特にデスティニープランの代わりとなる代案も考えず戦い続けるしかできないキラからすればシュラの言葉を否定する事は自分自身が正しく無いと公言しているも同然だった。

 

「答えられないのか?やはりそんなもんか・・・なら」

 

シュラが目で合図を送る。するとグリフィンが自身のサーベルを抜き取り近くの藪へ目掛けてサーベルを投げつける。サーベルが藪に突き刺さると同時にセナが転がり出てきた。

 

「グリフィン!怪我をしたらどうするのよ!」

「あれくらい太陽の少女なら避けれるだろ」

「えっ、セナさん⁉︎」

 

全員がセナを見つめる中何事もなくセナが立ち上がりシュラの方を睨みつける。シュラはセナの反応に不敵に笑いながらサーベルを構える。

 

「お前はどうだ?この世界を統べるのは何か・・・元最強はどう考えているんだ?」

「さぁね・・・私には分からない事だらけだよ。なんで隠れてたのが分かったのかと・・・アンタ達がそんなに強気なのかとかね!」

 

藪に突き刺さった剣を逆手で抜くとシュラに投げつけるセナ。それと同時に走り出しシュラと距離を詰めていく。いきなり不意打ちをしてくるセナに周りは驚く中シュラは冷静に飛んでくるサーベルを見据えていた。

 

「不意打ちは卑怯とか言わないわよね?始めたのはそっちからよ!」

「・・・所詮はナチュラル、こんなものか」

 

シュラはつまらなさそうに飛んできたサーベルを切り払って上に弾き飛ばす。その後近づいたセナの足元にサーベルを振るとセナは高く跳躍して回避して空中でサーベルをキャッチし振り上げる。

 

「見切った!」

「そこ!」

 

セナが落下しながらサーベルを振り下ろしシュラはセナの動きに合わせてサーベルを横に振るう。二つのサーベルがぶつかり合いセナとシュラがすれ違い背中合わせになる中、空高く弾き飛ばされたのはセナのサーベルだった。

 

「ああっ!」

「嘘っ」

「俺の勝ちだな」

 

勝ち誇りながらセナの方へ振り返りサーベルを突きつけるシュラ。だがシュラのサーベルは半分に折られていた。

 

「何⁉︎」

「そのサーベル、最初に訓練してた時からヒビ割れてたわ。だからそこ目掛けて叩きつければ割れると思っただけよ。強さとか世界とか私には分からないけど、力はなんであれ力でしか無いわよ。使い方次第よこんなのは」

「セナ・・・」

 

 落ちてきたサーベルをキャッチしながら答えるセナにキラは強く心を揺さぶられていた。キラにはシュラの言葉に何も言い返す事ができなかった。それどころか好き放題言ってくるブラックナイツを抑える手段も言葉もなく無力な自分に苛立ちを感じていた。

 だがセナはブラックナイツ達の煽りに対し正面からぶつかっていき自身の意思を貫き通してみせた。ただ強さを証明しただけではない、シュラの問いに自分の意見を押し通す強かさもあるセナはこの場にいる誰よりも強く人を照らす光の様だった。あの頃から変わらないその輝きは今のキラには目を背けたくなる程に眩しかった。

 

「ふっ、どうやら俺は相手の力量を見誤った様だな。君は強い。共に戦う時が楽しみだ」

 

シュラはセナからサーベルを受け取ると納得した様に踵を返す。自分の求める強者と手合わせできたシュラは満足した様だった。

 

「やっぱ凄いなセナは」

「そうだね、なんであそこに居たかは分かんないけども」

「結局あの人に任せた方が良かったわね。そうしたらアンタも恥かかずに済んだのにね」

「お前なぁ・・・嫌味以外言えないのかよアグネス」

「アグネス?月光のワルキューレか?」

 

立ち去ろうとしたシュラがアグネスの名前を聞いた途端足を止め振り返る。突如声をかけられたアグネスは警戒心をむき出しにするがシュラは特に気にせず近寄る。

 

「な、何よ・・・」

「強きものは美しい。君にも期待してるよ」

「へっ⁉︎」

 

シュラは言いたい事だけ言って去って行った。シュラに続く様にブラックナイツ達も歩いて行く。そんな彼らにガンをつけるマユを嗜めるシンの隣でアグネスはシュラの言葉が何度も響き鼓動が早まるのを感じていた。

 

「はあ〜疲れた。なんでファウンデーションに来てこんな荒事しないといけないのよ」

「お疲れ様ですセナさん。ほんとどうなるかと思いましたよ」

「相変わらず凄いなセナ。昔から頼りになるなお前は」

 

肩を回し体をほぐしているセナにルナマリアとムウが労いの言葉をかけてくる。相手の得意分野である剣での試合にセナは持てる全てを駆使してその場を収めてみせた。そのおかげでコンパス側もファウンデーション側も共に怪我をする事なく諍いを終わらせる事ができた。そんな功労者であるセナにキラはかける言葉が見つからず表情を曇らせて遠くから見つめるだけだった。

 

「ま、お前が最初からこの場に居たらもっと穏便に済んだかもしれんがな」

「それはそうですよね。方向音痴とは聞いてましたけどこれでよく今まで軍人やっていけましたよね」

「うぅ、こればかりはどうしようもなく・・・反省はしてます。反省は」

「あ、あの」

 

談笑するセナ達にイングリットが近づいてくる。振り返って見ればイングリットは申し訳なさそうに頭を下げて謝罪をしていた。

 

「この度は申し訳ありません。彼らには後で言っておきますので」

「ああ、謝らなくて大丈夫ですから。貴女が悪いわけじゃないんですから・・・なんなら迷子になって謁見をバックれた私の方が迷惑かけた気がしますんで」

「それは・・・・・・・・・はい」

「ですよね・・・だからまぁお互い様って事ですよ」

 

申し訳なさそうにするイングリットに気遣わせない様にするセナ。イングリットの様子から見てブラックナイツ達の言動に振り回されている苦労人なんだろうというのはすぐに分かりセナ達は全員イングリットに同情的だった。

 

「私は貴女の案内してる様子までは見てないのでよく分かってないですけど、多分根が良い人だろうなって分かりますから」

「それは・・・あ!あの、お顔に汚れが」

「顔?・・・あ、さっき木から落ちた時についたのかな?」

「なんで木から落ちてるんだよお前は・・・」

「何をしてるんですかセナさん」

 

木に登ろうとしてたセナにムウ達の突っ込みが入る。そんな言葉を聞きながら顔の汚れを拭おうとするセナだったがイングリットがハンカチを取り出して顔を拭き始めた。その瞬間セナの脳内に不思議な反応が起こりだす。

 

「へっ‼︎?あ、あの」

「失礼します。これくらいは、させてください」

「あ・・・はい・・・」

 

 不思議な感覚と距離感の近いイングリットに押されてセナはされるがままだった。イングリットの表情から見るに彼女も未知の感覚に驚いていたがほとんど表情には出さずセナの顔を拭き続けていた。

 あと数センチで触れるくらいの距離にあるイングリットの顔にセナはドキドキしていた。鼓動が経験した事のないほどに速くなるのを自覚し、顔が熱くなるのを止められない、セナにとっては未知の出来事だった。

 

「はい、これで大丈夫です」

「・・・あ、はい。ども・・・」

「えっと・・・失礼しました。それでは休憩室の方に案内します。こちらです」

 

イングリットはすぐに平静を取り戻すと案内を始めた。その背中をセナは時が止まった様に見つめていた。そんなセナの様子にムウとシンは不思議そうに見つめていた。

 

「おい、どうしたんだセナ。そんなぼーっとして」

「なんかあったんすか?顔赤いですけど」

「う、うん・・・なんだろうね」

 

二人の問いに返すセナだが明らかに動揺していた。自分の身に何が起こっているのか、全く分からないセナは困惑してるばかりだった。




あんまり進んでないですけどここで区切ったのは次のパーティーのシーンでキャラの心理描写で文章が増えそうだと思いましたのでここで分けようと思いました。割と終始周りを振り回してばっかなセナですがこのあとしばらくはセナが振り回される事になりそうです・・・唐突な気はしますがお楽しみに
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