ガンダムSEED 太陽の少女   作:黄金鷹

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セナ視点の話です。少し暗い雰囲気が続きます。


後日談そのニ 曇った太陽

(なぁ、あの時どうして来なかったんだよ。お陰で最後に死んじまったじゃねーか)

 

これは夢だ。だって私の前には死んだはずの人がいる。

 

(全く酷いじゃないか。一生懸命サポートしたのに、お前負けちゃってるじゃないかよ)

 

こんな事を言う人じゃないのは分かりきっている。これは罪悪感が生んだ幻だ。自分を責める為に自ら生んでいるのは分かっている。けど・・・

 

(ねぇ、どうして守ってくれなかったの?)

 

「ウワァァァァァァァァァァァァァ‼︎!」

 

飛び上がる様に起き上がるセナ

体中から汗が噴き出し、目には涙が浮かんでいた

 

「ハァ、ハァ、ハァ・・・」

「セナ大丈夫?大きい声が聞こえたけど」

 

キラがセナの部屋に入って来る

その後ろからラクスとカリダもセナの様子を伺っている

 

「キラ・・・大丈夫よ、ちょっと嫌な夢見ただけだし」

「本当に?・・・でも」

「大丈夫だから・・・もう遅いし、寝よう。ごめんね、起こして」

「セナ・・・分かったよ、お休み」

 

キラ達が部屋から出ていく

布団を被って寝ようとするセナ

 

「・・・あれは夢、だから大丈夫、大丈夫・・・」

 

翌日起きたセナ

 

「ふわぁ・・・今日は寝れた方ね」

 

部屋から出て一階に降りて来るセナ

 

「キラ、ラクス、おはよう」

「おはようございますセナ」

「ハロハロー」

「おはようセナ。昨日は寝れた?」

 

ラクスはいつも通りの優しい声で、キラは少し心配が入った声で挨拶を返して来る

 

「うん。今日はよく寝れたよ」

 

笑顔で話しかけるセナの顔は少しだけ顔色が良かった

 

「そうか、良かった」

「顔洗ってくる」

 

セナが洗面所に向かう

 

「今日は、まだマシな方だね」

「そうですわね。最初は寝れない事が珍しく無いくらいでしたから、良くなっていますわね」

「オマエモナー」

「うん、でも・・・」

 

今のセナを見ているキラの顔は暗かった。元々セナは感情を表に出す性格で笑顔がよく似合う女の子だった。だが今のセナには感情というものがまるで見えなかった。殆ど無表情に近い状態で、人と話す時だけ僅かに口角が上がる程度だった。

 その一方でほぼ毎日の様に悪夢を見ているらしく、一度眠ってもすぐに起きてしまう事も珍しく無くなっている。まともな睡眠も取れなくなったセナは無気力になってしまい、一人では日常生活でさえも支障をきたす程となっている。今ではオーブ軍も療養の為に一時的に抜けている扱いとなっており、共に暮らしているキラ達に世話してもらっている状態となっていた

 

「そういえば今日は二人は何か予定あるの?」

 

顔を洗ってきたセナがキラ達に話しかける

 

「私はマルキオ様の孤児院のお手伝いですわ」

「テヤンデー」

「僕はモルゲンレーテのお手伝いに」

「モルゲンレーテ・・・何か手伝える事無いかな?いつもお世話になりっぱなしだし偶には」

「う〜ん、簡単な仕事くらいなら手伝えるかもだけど・・・」

「キラ・・・」

 

セナにモルゲンレーテの手伝いをさせようとするキラの提案に少し不安を感じるラクス

戦争のせいでこうなってしまったセナにその事を思い出させそうなモルゲンレーテに連れていく事で、セナの心にまた傷がつかないか不安だった

 

「分かってる。でもセナがやる気出しているなら、なるべくやらせた方が良いと思うよ」

「それは、分かっていますが」

「ミトメタクナイ」

「心配しなくても私にだって出来る事はあるから。それにお世話になりっぱなしは嫌だから少しでも返せる様になりたいの」

「セナ・・・ならさ、午前中はこっちの手伝いをしてもらうからさ、午後から孤児院の手伝いしてくれないかな?」

「孤児院の?ラクスやマルキオさんが良いなら私も行くけど」

「ならお願い致しますセナ。子供達の相手は楽しいですが、大変な事もありますので手伝ってくださると助かりますわ」

「分かったよラクス。じゃあまた後でね」

 

キラの運転でモルゲンレーテに来たセナ

 

「久しぶりね、ここに来るの・・・マリューさん達は元気にしている?」

「セナ、外ではマリアさんって言ってね。社内でなら良いとは思うし、前よりはマシだろうけど一応ね」

「あ、そうだっけ?ごめん」

「いや、大丈夫。次から気をつけて貰えば良いから」

 

モルゲンレーテ内に入るキラとセナ

近くにいたエリカとマリューに挨拶をしに行く

 

「おはようございます、エリカさん、マリューさん」

「おはようキラ君。セナさんもおはよう、久しぶりね」

「おはようセナ。オーブに戻ってきた以来になるわね」

「おはようございますエリカさん、マリューさん・・・ってマリューさん、少し痩せました?」

「ええ、まぁちょっとね・・・セナさんこそ大丈夫?」

「大丈夫ですよ、これでも。それより私は何を手伝えば良いですか?」

「そうね・・・私の部屋、少し散らかっちゃっていてね、良かったら片付けを手伝って欲しいんだけど」

「分かりました」

「じゃあ付いてきて」

 

エリカとセナがその場を離れていく

 

「しかし今日は驚いたわ。まさかセナさんをここに連れてくるなんて」

「セナが何かしたいと言ってきましたから・・・外に出る事もセナの為になると思いますし。急に連れてきてすみません」

「そうね・・・でも事前に連絡してくれて助かったわ。今丁度新型作っている途中だけど、隠す事も出来たわ」

 

なるべくセナに戦争の事を思い出させないようにしたい。その為兵器を、ましてやモビルスーツをセナに見せるのは言語道断だった。それはキラやマリューだけじゃなくセナの現状を知っている人全員の総意でもあった

 

「とりあえず午前の間だけならなんとかなるわね。キラ君にはOSの方をお願いしたいわ」

「分かりました」

「いつも悪いわね。貴方も大変だったのに」

「僕はセナに守られてばっかでしたよ・・・だから知らなかった。セナがあんなに追い詰められていたなんて。知った時にはもう遅かった・・・」

 

キラが俯く。セナの心が辛い時に気づいてやれなかった自分を責めていた。だがそれはキラだけでは無かった。

 

「私達もよ。どうする事も出来ない状況になってから気づいたというのに、それでもセナさんの力を頼るしか無くて・・・」

「あれ?そこにいるのキラ君じゃない!」

「本当だ、久しぶりだ!」

 

キラとマリューにモルゲンレーテの制服を着たアサギ達が駆け寄ってくる

 彼女達はヤキン・ドゥーエ攻防戦後も生き残り、現在はオーブ軍のパイロット候補生達の訓練と新型モビルスーツのテストパイロットをしている。

 

「アサギさん、マユラさん、ジュリさん、久しぶりですね」

「久しぶり・・・ていうかアレはどこやったんですか?私達今日テスト運転するって聞いてたんですけど」

「そうなんだけどごめんなさいね。セナさんが今日お手伝いをしに来ちゃってね。早く来てもらって悪いのだけど、午後までは」

「セナ先生が⁉︎そういう・・・今はどこにいるんですか?」

「今はエリカさんの部屋の片付けをやっていますが」

「え・・・それ昨日私達が手伝ったやつですよね・・・」

「そうなのよ。だから今日セナさんが来る前にもう一度散らかしてなんとか仕事を作らないとって」

「あの量をもう一度・・・大分大変ですよ」

「そうね・・・」

「・・・なんか、申し訳ありません」

 

部屋にやってきたセナとエリカ

 

「ここよ。汚くてごめんなさい」

「いえ・・・結構ありますね」

 

机の上は一度片付けた資料等ををもう一度散らばらせており、ぐちゃぐちゃになっていた

 

「そうなのよ。どこかで片付けたいとは思っているのだけど忙しくてね・・・こんな事頼むのは悪いんだけど」

「いえ、大丈夫ですよ」

「そう、とりあえず資料を一纏めにしてそこに置いて欲しいの。分別などは後でやるから」

「分かりました」

 

机に散らばった資料を集め始めるセナ

 

「結構大変なんですね、戦争が終わっても」

「・・・まぁそうね。終わった後は壊された街や施設の復興があるし、まだ一触即発の状態だから備える必要もあるしね」

「備え・・・そうですよね、またあんな事があるのかもしれないんですよね。なら」

「別にまた敵が攻めて来るなんて事は絶対では無いからそこまで力を入れているわけじゃないの。地球軍もザフトも今は戦争するだけの余裕は無いからね。だから貴女は気にしなくて大丈夫よ」

「エリカさん・・・私はやれますよ」

 

セナの目は真っ直ぐエリカを見つめていた。その瞳は以前より弱々しくとも力がこもっていた

 

「セナは戦う事なんて考えない方が良いのよ。まともに寝れないくらいに精神面に影響が出ている以上、軍人をやれないのよ今の貴女は」

「はい・・・」

 

作業を再開するセナ

 

(・・・意外と動きはテキパキしている。少しずつだけど良くなってきてるのは本当らしいわね。あと2年くらいしたらテストパイロットくらいならやれるかもしれないわね。やらせるかどうかはともかく)

「エリカさん。終わりましたよ」

「え?あらいつの間に・・・ありがとうセナ」

「いえこれくらいなら。他に手伝う事はありますか?」

「今は無いわね。ありがとう。次は孤児院の手伝いだったわよね?頑張ってね」

「はい。久しぶりに会えて良かったです」

「私もよ」

 

昼食を食べ終えて孤児院に来たセナとラクス

 

「ようこそ来てくださいましたね、セナさん」

「こんちにはマルキオさん。突然来てすいません」

「いえいえ、お手伝いしてもらえてこちらも嬉しいですよ。ではお願いします」

「セナ、では私と来てください」

「ハロハロ、セナ」

「分かったよラクス」

 

ラクスとハロの後をついて行くセナ

 

「それで私は何をしたら良いの?」

「私が子供達の相手をしていますので、庭のお手入れをしてください」

「庭のお手入れ?草むしりとか?」

「はい。それとお花の水やりもお願いします」

「良いけど・・・それだけで良いの?」

「はい。お願いしますね」

「ハロー、ハロハロ」

「分かったよ」

 

孤児院の庭にやってきたセナ

庭は意外にも手入れが行き届いており、一人でも2時間も掛からずに終わる量だった

 

「これなら二人でやった方が良さそうだけど・・・ま、良いや」

 

雑草の草むしりを始めるセナ

 

「こういう体使う感じのは久しぶりね・・・ん?」

 

草むらの中から手のひらサイズのクモが現れる

セナの手をよじ登っていくクモ

 

「大きいクモ・・・毒は無い種類だけどこれは女の子は嫌だよね」

 

セナは基本的に動物全般は好きである。それは虫などといった苦手な人が多そうなものも関係なく好意的に見る事が出来る。

 

「ん〜この子をここから追い出すのは可哀想だしねぇ、けどラクスや子供達は怖がっちゃうよね・・・大変だね、見た目だけで嫌われちゃうってのは。本当に嫌われるべきなのは人の迷惑を顧みない・・・」

 

バナディーヤの街でブルーコスモスの連中を撃ち殺した事を思い出すセナ

 

「・・・まぁ君はここに居なよ。私からはそれとなく伝えておくからさ」

 

クモを庭に戻すセナ

セナの手から離れて草むらの中に戻っていくクモ

 

「後は花に水やりだったよね・・・これで終わりかな?」

 

水やりを終えたセナの元にラクスと子供達がやって来る

 

「お疲れ様ですセナ」

「オマエモナー」

「あ、ラクス。終わったよ」

「はい、ありがとうございます。私はこういうのは苦手でして・・・申し訳ありません」

「いいよ別に。私は虫とかクモとか平気だし」

「・・・居たのですね、すみません。虫が嫌でセナに押し付けたかったわけでは無いのですが、やはり少し怖くて・・・」

「ああ、大丈夫だよ。私平気なタイプだし」

「それにしてもあの量を一人で・・・大変ではありませんでしたか?」

「いや、寧ろ少ない方だなって思ったたんだけど」

「そうなのですか・・・疲れていませんか?よろしければ」

「ねぇねぇお姉さん、誰?」

「お名前は?」

 

セナに群がる子供達

 

「え?私はセナ。セナ・ヤマトだよ」

「て事はキラお兄ちゃんのお姉さん?それとも妹?」

「キラの姉だよ」

「そうなんだ。キラお兄ちゃんもラクスお姉ちゃんも優しいから大好きなんだ」

「私も私も」

 

セナを囲んで楽しそうに話しかける子供達

 

「ふふ、早速懐かれてますわね」

「ミトメタクナイ」

「元気だね・・・今日は何をしてたの?」

「今日はみんなでお歌を歌ってたよ」

「歌か、良いね。私は歌はあんまりだからな・・・」

「そうなんだ。セナお姉さんは何か得意な事あるの?」

「得意なのか・・・一番はモビ」

 

エリスに恨み言を言われた事を思い出すセナ

 

「・・・」

「セナお姉さん?」

「セナ?どうしましたか?」

 

少し暗い顔をして俯くセナを心配するラクス

 

「・・・『ハローラクス』」

「わぁ!ハロの真似だ!」

「凄いねセナお姉さん!」

「ミトメタクナイ、ミトメタクナーイ」

「『ミトメタクナイ』」

「ふふ、似ていますわね」

「ハハハ、面白い!」

 

セナの声真似で子供達が笑顔になる

 

「そう?まぁこんなので良ければまた今度披露するけど」

「良いの?やったぁ」

「ねぇねぇ、他にも何が出来るの?」

「おっと、それは次のお楽しみよ。私も準備するから期待しててね」

「うん、待ってるよ」

 

子供達の相手をするセナの顔には、普段とは違う明るい笑顔が戻っていた




セナ以外は基本的に本家通りの道に進んでいます。ただキラは本家よりメンタル面ではダメージが受けていないので、モルゲンレーテの手伝いで新型のOSの作成や開発等の手伝いをしています。
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