議長の部屋に招き入れられたアスラン
「遅くなってしまって申し訳ない」
「あ、いえ・・・何かあったのですか?」
正直聞きたい事は他にもあったのだが、とりあえず今の状況を聞いてみるアスラン。
だが返ってきたのは思いもよらない事だった
「ああ・・・先程連合がこちらに攻めてきてね、プラントに核攻撃をしてきたのだよ」
「核攻撃を⁉︎そんな、まさか・・・」
「と言いたいところだがね、私も。だが事実は事実だ」
ニュースの映像を見せられるアスラン
そこには先程の戦闘の映像も流されていた
「君も掛けたまえ、アレックス君。ひとまずは終わった事だ。落ち着いて」
「・・・はい」
部屋のソファーに座るデュランダルとアスラン
「しかし想定していた訳ではないが、やはりショックなものだよ。こうまで強引に開戦され、いきなり核まで撃たれるとはね」
ショックを受けたのはアスランも同じだった。寧ろアスランだけでなく、プラントに住むすべての人が同じ気持ちであった
「この状況で開戦するということ事態、常軌を逸しているというのにその上コレでは・・・これはもう、まともな戦争ですらない」
「はい・・・」
「連合は一旦軍を引きはしたがこれで終わりにするとは思えんし、逆に今度はこちらが大騒ぎだ。防げたとはいえまたいきなり核を撃たれたのだからね・・・問題はこれからだ」
「それでプラントは・・・この攻撃、宣戦布告を受けてプラントは、今後どうしていくおつもりなのでしょうか?」
悲痛な声でデュランダルに質問するアスラン
もしここでまた開戦したら、今までの犠牲は、自分達の戦いはなんだったのか?そんな思いが溢れていた
「我々がこれに報復で応じれば、世界はまた泥沼の戦場になりかねない。分かっているさ。無論私だってそんな事にはしたくない。だが事態を隠しておける筈もなく、知れば市民はまた怒りに燃えて叫ぶだろう。許せないと・・・それをどうしろという?今また先の大戦の様に進もうとする針を、どうすれば止められるというんだね?既に我々は撃たれてしまったんだぞ。核を」
デュランダルの言う事をアスランは理解していた。理解してしまった。プラントに住む人が、再び核を撃たれて憤るのも無理はない。かつてアスランも核ミサイルで母を喪い、父が復讐に捉われてしまった。そして自分自身もナチュラルを許せず、敵を討つ為にザフトに入ったのだから。
「しかし・・・でもそれでも、どうか議長!怒りと憎しみだけで、ただ撃ち合ってしまったら駄目なんです!これで撃ち合ってしまったら、世界はまたあんな何も得るものの無い戦うばかりのものになってしまう。どうかそれだけは!」
だがそれでも、憎しみのまま撃ち合うのだけは止めたい。それではまた同じ事の繰り返しになる。それだけはなんとしてでも防ぎたかった。
「アレックス君」
「俺は!俺は・・・アスラン・ザラです!
2年前、どうしようもないまでに戦争を拡大させ愚かとしか言いようのない憎悪を世界中に撒き散らしたあのパトリックの息子です」
それは誰にも言えてないアスランの心の叫びだった。父の憎悪を、怒りを、嘆きを・・・それによって出てしまった犠牲にアスランは心を痛めていた。
「父の言葉を正しいと信じ、戦場を駆け、敵の命を奪い、友と殺し合い、間違いと気づいても何一つ止められず全てを失って、なのに父の言葉がまたこんな!もう絶対に繰り返してはいけないんだ!あんな」
「アスラン!」
デュランダルの呼びかけで少しだけ冷静になるアスラン
「ユニウスセブンの犯人達の事は聞いている。エリスとシンの方からね。君もまた、辛い目にあってしまったな」
「いえ、違います。俺は寧ろ知って良かった。でなければ俺はまた、何も知らないまま」
「いやそうじゃない、アスラン。君が彼らの事を気に病む必要は無い。君が父親であるザラ議長の事をどうしても否定的に考えてしまうのは仕方のない事なのかも知れないが、だがザラ議長とて初めからああいう方だった訳では無いだろ?」
「いえ、それは」
「確かに彼は、少しやり方を間違えたのかも知れない。だがそれは皆、元はプラントを、我々を守りより良い世界を作ろうとしての事だろう。
想いが合っても、結果として間違ってしまう人はたくさんいる。またその発せられた言葉がそれを聞く人にそのまま届くど限らない。受け取る側もまた、自分なりに勝手に受け取るものだからね」
「議長」
「ユニウスセブンの犯人達は行き場のない自分達の想いを正当化させる為にザラ議長の言葉を利用しただけだ。自分達犯人間違っていない。何故ならザラ議長もうそう言っていただろうとね。だから君までそんなものに振り回されてしまってはいけない。
彼らは彼ら。ザラ議長はザラ議長。そして君は君だ。たとえ誰の息子であったとしても。そんな事を負い目に思ってはいけない。そんなものは何も無いのだから」
「議長・・・」
デュランダルの言葉にアスランは救われた気持ちになった。今まで父であるパトリックの罪を背負っていかないといけない。だから自分の名前すら隠して生きていかないといけない。そんな日々を過ごしていたアスランにとってその一言で、自分の存在を肯定してくれた事にアスランは救われていた。
「今こうして再び起きかねない戦火を止めたいとここに来てくれたのが君だ。ならばそれだけで良い。一人で背負い込むのは止めなさい」
「・・・はい」
一人で背負い込む。その結果精神的に深く傷ついた少女の事をアスランは知っていた。
だからこそ次は自分達が頑張る番だと、その考えがいつの間にか自分を追い詰めていた事にアスランは今気づいたのだった。
「だが嬉しい事だよアスラン。こうしてきてくれた、というのがね。一人一人のそういう気持ちが必ず世界を救う。夢想かも思われるかも知れないが、私はそう信じているよ」
「・・・はい」
テレビにラクスそっくりの女性の姿が映る
「皆さん、私はラクス・クラインです」
「な⁉︎あの子は、あの時の・・・」
「笑ってくれて構わんよ。君には無論、分かるだろう?」
「あ、はい・・・」
ラクスはオーブでキラ達と暮らしている。それを知っているアスランだからこそ、ここにいる女性がラクスでは無いと分かっている。
「我ながら小賢しい事と情けなくもなるが、仕方ない。彼女の力は大きいのだ。私のなどより、遥かにね。
バカな事をと思うがね。だが今私には彼女の力が必要なのだよ。また君の力も必要としているのと同じにね」
「私の?」
「一緒に来てくれるかね」
デュランダルに連れられて来たのは一機のモビルスーツがディアクティブ状態で置かれていた
「これは?」
「ZGMFX23S、セイバーだ。性能は異なるが例のカオス、ガイア、アビスとほぼ同時期に開発されたセカンドステージシリーズの機体だよ。この機体を君に託したいと言ったら、君はどうするね?」
「・・・どういう事ですか?また私にザフトに戻れと?」
「そういう事では無いな。ただ言葉の通りだよ。君に託したい。まぁ手続き上の立場ではそういう事になるのかも知れないが。
今度の事に対する私の想いは、先程私のラクス・クラインが言ってた通りだ。だが相手、様々な人間、組織、そんなものの思惑が複雑に絡み合う中では願う通りに事を運ぶことも容易ではない。だから想いを同じくする人には共に立ってもらいたいのだ」
「ですが・・・」
「出来る事なら戦争は避けたい。だがだからといって銃も取らずに一方的に滅ぼされるわけにもいかない。そんな時の為に君にも力のある存在でいて欲しいのだよ、私は」
「議長・・・」
「正直な話、今のザフトはかつて程の力は無い。モビルスーツを持っている優位性は既に無くなり、せっかくの最新鋭の機体も次々奪われ、優秀なパイロットも先の大戦で多く戦死してしまった。だから才能のある未成年にすら縋ってしまう程なのだよ」
「マユがミネルバに居たのは、そういう・・・」
「もちろん本人が望んでいたのを私が特例として認めさせての入隊だがね、周りから反対の声は出なかったよ。シンは反対していたが本人に説得されて今に至るのだよ」
その一言でプラントは相当追い込まれている事を示していた。アスランが持っていったジャスティス、ラクスの手によって強奪されたフリーダム、クライン派によって設計図事奪われたサンシャイン、先の大戦だけでもこれだけの戦力を奪われてその力を向けられ、停戦条約を結ぶ程にまで被害を受けたのだ。ユニウス条約に違反しているジャッジメントを未だに軍の戦力の一つとして密かに配備しているのはそこまで追い詰められている事の現れだった。
それだけで終わらず、アーモリー1でセカンドステージシリーズの強奪、テロリストによるユニウスセブンの落下事件。そして今回の連合による核ミサイルでの攻撃。これ程まで追い詰められたからこそデュランダルは少しでも優秀なパイロットにセイバーを乗せたいと考えていた。
「先の戦争を体験し、その愚かさを知っている君なら、どんな状況でも道を誤る事は無いと信じている。もし私や世界が間違った時にそれを正す為に力はいるだろう?先の大戦の様にね」
「議長・・・」
「急な話だ。すぐに決めてくれとは言わないし、どうするかは君の自由だ。せめて後悔の無い選択をしてくれ」
「・・・はい」
先のデュランダルの提案について悩みながらアスランは歩いていた。
個人的には思ってもみなかった提案ではあったが、カガリの事、オーブの事、キラやセナの事を想うと素直に首を縦に振る事は出来なかった。
だがマユまで軍人として戦場に出さなければいけなくなる程ザフトが弱体化しているのは事実だとアスランは考えていた。
テロリスト達が乗っていたジンハイマニューバ2型は改良はされているが旧式の機体であった。そんな相手ですら今のザフトのパイロットは苦戦していた。今のザフトにも優秀なパイロットも居ないわけでは無いが、戦争になった場合、その少数精鋭で勝てるなどほぼあり得ない事をアスランは先の大戦で思い知らされた。
そして図らずもミネルバの乗組員達と関わってしまった事がアスランの中では大きかった。戦争になれば、マユもシンもレイもルナマリアも戦場に出る事になる。そうなった時に必ず生き延びる保証など無いと知っている。それに自分よりも年下の彼らがプラントの為に命をかけて戦っているのだ。かつて同じ志を抱いていたアスランにとっては他人事では無かった。
「俺は・・・」
「あ、アスラン!」
ラクスそっくりの女性がアスランに抱きつく
「お帰りなさい、ずっと待っていましたのよ」
「え、君、あの・・・」
「ミーアよ。ミーア・キャンベル。でも他の誰かの前ではラクスって呼んでね」
「え、ああ」
「ご飯まだでしょう?一緒に食べましょう」
「え、いや、あの・・・」
ミーアに引っ張られるアスラン
その胸中は様々な感情が駆け巡っていた
アスランとデュランダルの会話だけでほぼ一話分まで行きました。自分で思っていたより短い・・・