ガンダムSEED 太陽の少女   作:黄金鷹

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この話は完全オリジナルの過去ですので独自の解釈、展開があります。ただ、最悪これを見なくても本編の話しは分かる筈なので、気に入らなければ見なくても大丈夫です。


第十九話 シンの過去

「実はアークエンジェルの事なのだがね、君も聞いているだろう?」

「んな⁉︎」

「なんですって⁉︎」

 

タリア達と別れた後、デュランダルにそう切り出されたアスランとエリスは驚きを隠せなかった。

 

「あの艦がオーブを出た後どこへ行ったのか、もしかしたら君なら知っているのではないかと思ってねアスラン」

「いえ、アークエンジェルの事は私の方では何も」

「そうか・・・なら、アークエンジェルとサンシャインが共にいるという事は知っているかな?」

「な⁉︎ほんとですか⁉︎」

 

デュランダルから伝えられた事実に驚きを隠せないアスラン

 

「ああ。サンシャインとアークエンジェルが共にいるのなら、彼女、本物のラクス・クラインも一緒なのではないかと思ってね」

「はい・・・それは間違い無いかと思います。けど」

 

エリスを一瞥するアスラン。エリスにミーアの事を知られない様にラクスの事を話すのはほぼ不可能、なのでエリスに秘密がバレるのではと危惧していたのだった。

 

「あ、あの子のことは私は知ってるから気にしないでね」

「そう、なのか。なら・・・キラが、いえ、あの艦がラクスを置いていく筈がありません」

「そうか。こんな情勢の時だ。彼女が本当にプラントに戻ってくれればと私もずっと探しているのだがね。こんな事ばかり繰り返す我々に彼女はもう呆れてしまったのだろうか?」

「・・・そんなの関係ないと思いますよ。ラクスはザフトを裏切り、刃を向けた。そしてプラントはラクスをオーブに追い出した。そこで終わりですよ」

「エリス・・・」

「寧ろ一度ザフトを抜けて敗北まで追いやった癖にどの面下げて戻ってきたな奴の方が私は納得していませんよ。フェイスなんてなんでもありな権限までつけて。いつまた牙を剥かれるか気が気じゃないわよ」

「エリス、今は彼も仲間なのだよ。そう邪険に扱わないでやってくれ」

「・・・それよりもサンシャインは問題ですよ。アレに暴れられたら、まためちゃくちゃにされますよ」

 

エリスの目には強い憎しみがこもっていた

 

「エリス・・・その」

「アスラン。もしもあの艦から君に連絡が入る様な事があったら、その時は私にも知らせてくれないか?」

「はい、分かりました。議長の方もよろしくお願いします」

「ああ分かった。そうしよう」

 

デュランダルがその場を立ち去る

 

「ねぇ、もしアークエンジェルがこっちに攻撃したら、アンタは戦える?」

 

エリスに問いかけられるアスラン

 

「・・・分からないな。だが少なくとも彼らに今のザフトを攻撃する理由は無いはずだ。俺から見ても今のザフトはいたずらに敵を撃つだけの集団じゃない。だからこそ、戦争を終わらせる為に俺はここに戻ってきたんだから」

「そう・・・今はそれで良いわ」

「なぁ、一つ聞いて良いか?」

「何を?」

「さっきの・・・シンの事なんだが」

「ああ、あれね・・・シンは気にして無かった様だし、もう時効かな?なら良いか」

「血まみれの狂犬だったよな?軍でも噂されるくらいには有名なんだよな」

「そりゃそうよ。アカデミー内でも屈指の事件なんだもの。ってこの話しをするなら、まずはシンと私の出会いから話した方が良いかな?」

 

ホテルの自分とシンに割り当てられた部屋に向かうマユ

 

「お兄ちゃん、どこまで行ったのかな?って、あれ?」

「ハァ、ハァ、ハァ・・・速、いわね・・・ハァ、ハァ」

 

マユの目の前に息切れしたミーアが居た

 

「あ」

「あれ?確かシンの妹さんよね?確かマユって」

「・・・気安く名前を呼ばないでください。私は貴女の事、好きじゃなくなりましたから」

「それは・・・ごめんなさい。私の配慮が足りなかったわ」

 

本気で落ち込むミーアの様子を見て、少しだけ罪悪感が出るマユ

 

「あ、その・・・本当にわざとじゃないんですね。なら、良いです。こちらこそいつまでもムキになってすみません」

「え?い、良いのよ。ありがとう・・・けど、この話は聞いたらダメだよね?」

「・・・はぁ、しょうがない。ついてきてください。私達の部屋で話しますから」

「え、良いの?」

「その代わり他言無用でお願いします。それと人前でその話題は出さないでください」

「分かった、気をつけるわ」

 

ミーアを連れて自分達の部屋に入るマユ

 

「ん〜っと、どこから話したら良いのかな・・・やっぱり私達とエリス隊長との出会いからかな」

「エリス隊長と?ミネルバに配属される前から知り合いだったの?」

「はい、そうですね。あれは確か・・・」

 

一年半前のプラント。アカデミーに入ったシンは緑服だった。赤服になれるのはアカデミーで優秀な成績を残した上位のみだった。この頃のシンはどちらかというと下から数えた方が速い、そのくらいの順位だった。

 

「ハァ、ハァ、ハァ・・・間に合った」

「お兄ちゃん、大丈夫?」

「ハァ、ハァ・・・あ、ああ」

 

赤服を着ているマユに心配されるシン。マユは最初はアカデミーに入れる年齢では無かったのだがモビルスーツ操縦の才能が歴代でも屈指のものだった。試しにシュミレーターをやらせてみると、初操縦で歴代上位の結果を出す程だった。故にマユ自身が軍入りを望んだ事を理由に特例でアカデミーに入る事を認められ、パイロットとしての点数のみで赤服に選ばれたのだった。

 

「ほら、買ってきてやったぞ。マユの分も」

 

外で買ってきた飲み物をマユに渡す

 

「ありがとうお兄ちゃん。でも自販機あったよね?」

「ああ、壊れていてな。だから」

「ってそろそろ授業だよ、席につきなよ」

「ああ、また後でな」

 

それぞれ席につくシンとマユ。その後すぐに教官が入ってくる。

 

「よし、全員いるな。今から授業をするのだが、特別講師を呼んでいる」

「特別講師?誰が来るんだ?」

「誰だろう・・・ザフトのお偉いさんとかかな?」

「かっこいい人かな?」

「楽しみだよね」

 

特別講師が来る事にざわめき出す学生達

 

「静かに。では入ってきてくれ」

「失礼します」

 

扉を開けて入ってくる水色の髪の少女。その姿を見たシンは

 

「あああああ‼︎」

 

思わず大声をだして立ち上がった

 

「うるさいぞシン!」

「あ、すいません」

 

席に座るシン

 

「ん?君さっきの・・・偶然ね。初めまして。私はエリス・シルファ。よろしくね」

「エリス・シルファってあの」

「宙の舞姫だよな、あの」

「でもエリス・シルファってあの」

 

エリスの名前に動揺が隠せない学生達。学生達の間ではエリスが戦犯で、処刑されかける程の事をしでかしたという認識であった。何故そんな事をしたのか、何をしたのかといった背景についてまで知っている人は誰もいなかった。

 

「ま、色々気になる事があると思うけど、しばらく貴方達と共に授業します。と言っても何を教えたら良いのやら・・・」

「先の大戦であった事を彼らに質問させます。君はそれに答えてほしい」

「そんなんで良いのですか?」

「ああ。実戦で気をつける事やら、どういった戦闘があったのか、経験者の言葉は違うからな」

「分かりました。それではこの時間は私に質問してください。なんでも良いですが、関係ない話しだったら答えないのでそのつもりで」

 

それぞれ手を挙げる生徒達

 

「おっ、結構やる気ありそうじゃない?なら・・・さっきの君。確か、シンだっけ?」

「あ、はい。シンです。その・・・貴女はなんでザフトに入ったのですか?」

「そう来たか・・・まぁ理由ってのは大事だからね。私の場合はナチュラルをぶっ・・・プラントに被害が出ない様に奴らから守る為ってところかしらね」

「そうなんですね、ありがとうございます」

(ぶっ殺すって言いかけたよな?)

(ぶっ殺すって言いかけたよね?)

(ナチュラルへの恨みから地球すら壊そうとしたって噂、本当なんだな・・・怖ぇ)

 

エリスの回答にシンとマユ以外は困惑していた

 

「あれ?私なんかおかしい事言ったかな?まぁ良いや。他に質問はある?」

 

エリスとの授業が終わり、昼休憩になる学生達

 

「お兄ちゃん、ご飯食べようよ。お腹空いたし」

「そうだな・・・アレ?弁当どこいった?」

 

シンが鞄の中を探すが、入っていた筈の弁当がどこにも無かった

 

「入れた筈なのに・・・忘れたのかな?」

「そうなの?なら私のを」

「いや、それはマユのだろ。ぼ、オレは購買でなんか買ってくるから先に食べてな」

「え、分かった・・・」

 

購買に向かうシン

 

「・・・この時間だともう無いかな?・・・っと⁉︎」

「おっと!」

 

曲がり角でエリスとシンがぶつかりそうになる

 

「また君?危ないから前を見ろって言ったわよね?」

「すいません、今は急いでいるので」

「購買?さっき売り切りてるのを見たわよ」

「マジですか⁉︎うわ、どうしようかな・・・」

 

昼飯をどうするか考えるシン

 

「アンタ、もしかして何も用意してないの?」

「いや、弁当は用意した筈なのに、何故か無くて・・・今日は飯抜きかな」

「学生も兵士も大変なのよ。なんかは食べないともたないわよ・・・ほらコレ」

 

シンにコロッケパンを渡すエリス

 

「え?いや、あの」

「これは小腹空いた時用のだから。私はこれとは別にあるからそれ食べなよ」

「・・・なら、もらいます」

「こんなんで足りるのか分からないけどね・・・ってそういえばさ、なんで私に戦う理由を聞いたの?もしかして前大戦で私が何したか知ってないの?」

「え?何かしたんですかエリスさん?」

「ああそういう・・・もしかして、貴方移民?」

「・・・そうですよ。ぼ、オレとマユはオーブからの難民ですよ。それが何か?」

 

少しだけ警戒する様な表情になるシン。難民であるが故に、プラントの教育についていけず、回りから馬鹿にされがちなシンは何を言われるのか警戒をしていた。

 

「やっぱり、なら私の事あまり知らないのよね。寧ろそっちのが良いか。これでも私、銃殺刑一歩手前だったのよね。前大戦の時は」

「え⁉︎なんで、そんな」

「まぁ、地球軍だけでなく、地球そのものにまで手を出しかけたって感じかな・・・直接は何もできていないから今もザフトの一員にはなっているのだけど」

「・・・じゃあ、アンタは罪のない民間人まで撃つっていうのかよ?」

 

エリスの事を睨みつけるシン

 

「・・・撃つ事になっても私は躊躇はしないわ。でも自ら進んではやらないわよ。そこまで見境なしじゃないし」

「そう、なんですね・・・なんかすいません」

「いや、良いのよ。って少し話しすぎたわね。じゃあねシン」

 

エリスがその場を去る

 

「・・・アッ⁉︎やべっ、マユの事待たせてるよな?急がないと」

 

放課後に帰宅するシンとマユ

 

「はぁ、疲れたな・・・」

「そうだね。って私は操縦関連の以外は除外されているからそこまでだけど・・・」

「夕飯、何にしようかな?」

「ふぅ、疲れたわね・・・ってあれ?」

 

同じく帰宅途中だったエリスと道端で会う

 

「あ、エリスさん・・・ってそれ、なんですか?」

「これ?今日の夕飯」

 

エリスが持つ袋にはポテトチップスとお酒のみだった

 

「こんだけですか?」

「ええ、こうやって飲むのが美味しいのよ。貴方達はまだよ。あ、でも君はもうすぐ成人か」

「プラントだとそうですね・・・でもこんだけって。昼もオレにパンくれたのに足りてますか?」

「良いのよそれくらい」

「せめて、お礼させて欲しいです。オレ、なんか作りますから」

「いや、そんなの悪いわよ。私のはただ適当に買っただけの奴だし・・・ん?作る?君、料理できるの?」

「え、はい。でもこんな事出来たところで」

「いやいやとんでもない!凄い事よ!」

「はい、お兄ちゃんの作るご飯は美味しいですよ。よかったら食べていってくださいよ」

「う〜ん・・・せっかくだし、お邪魔しよっかな?どこ住みなの?」

「ああ、もう見えますよ。あれですよ」

「あれって・・・あれ?」

 

シンが指差す先にはかなり古いアパートだった

 

「ここまで古いのは見ないわね・・・ってそういえば君達の親に何か挨拶しないとね。何渡せば・・・」

「あ、大丈夫ですよ、別に。両親、いないですから」

「え、いないって・・・ごめんなさい、配慮が足りてなかったわね」

 

両親がいないという発言とオーブからの難民と聞いていたことから、エリスはシンとマユの事情を察した。彼らは子供だけでプラントに来て暮らさないといけないのだ。だからこそ孤児院などでは無くこうして自分達で暮らし、大変な思いをしていると気づいたのだった。

 

「気にしないでくださいよ。言ってないんですから知らなくて当然ですから」

「そう、けど二人で暮らすのは大変でしょ?家賃とかって・・・えっ高⁉︎ここでこんなに!」

 

先月の家賃代を確認してみると学生が払うのはかなり大変な額だった

 

「ええ・・・よくここに住もうと思ったわね」

「仕方ないでしょ、ここ以外だと二人で住める場所見つからなかったし、オレのバイトでなんとか」

「限度があるでしょ⁉︎アンタ、なんか周りより疲れてそうなのってそういう」

「はい、私は働けないですから」

「・・・ここより安くて二人以上で住めるとこ、知ってるわよ」

「ええ⁉︎本当にあるんですかそんなの?」

「おいマユ、そういってシャワーがないとかトイレがないとかそんなんだったじゃないか」

 

興味津々なマユと諦め気味のシン

 

「いや、シャワーもトイレもキッチンもあるわよ。それに人数分部屋があるし、何より値段が安いわよ」

「そんなのって・・・どこなんですか?」

「・・・値段の方は?」

「ふふん、聞いて驚きなさい。なんと無料よ!」

「「はっ?」」

 

無料と宣うエリスに疑いの目を向けるシンとマユ

 

「いやいや、流石にないですよね、そんなの」

「なんか変なのに巻き込まれそうなんで嫌です」

「変じゃないわよ!かなり良いとこでしょ!ほら見なさいよこのソファとか!結構高いけど、奮発した甲斐あって座り心地は最高よ。毎日座ってるんだからこれに」

「「へーって毎日?」」

「だってこれ、私の家だもん。貴方達の分も払うから実質無料でしょ?」

「ええ⁉︎」

「何言ってんですかアンタは⁉︎なんでそんな」

「良いでしょ。なんか見ていると苦労しているのが分かるから・・・それにこんな広いけど、一人だと持て余すからね。丁度同居相手探していたのよ」

「いや、でも」

「お兄ちゃん、エリスさんのとこ、行こうよ。うちより広いし、もう遅くまでバイトしなくても良くなるんだよ?」

「それは・・・」

 

働けないマユの分もとシンはほぼ毎日夜遅くまでバイトをしていた。それもあって学業に集中する時間が取れず、成績はあまり良くなかったのだった。

 

「ほら、良いことづくしでしょう?これ食べ終わったら手続きしましょう」

 

シンの作った料理を一口食べるエリス

 

「うわ美味しい⁉︎ホントに君が?」

「え、まぁ」

「これは是非ともうちに来てもらわないとね」

「えっと・・・じゃあ、よろしくお願いします、エリスさん」

「エリスで良いわよ、同居人なんだし。よろしくねシン、マユ」

 

共に暮らす様になってから、学校でも一緒になる事が多くなったエリス達。食事や行き帰りも共にする様になっていた。

 

「マユ、帰るわよ」

「エリスお姉ちゃん、お兄ちゃん見てない?」

「いないの?珍しいわね。一体どこに」

「おい、ヤベェよアレ!」

「何よコレ⁉︎誰か人呼んでよ!」

「こいつ、正気かよ!」

「ん?何あの騒ぎ?」

 

エリスとマユが騒ぎ声の聞こえる方に向かうと、人だかりが出来ていた

 

「ちょっと、これなんの・・・っ⁉︎」

 

エリスが見たのは、廊下で血を流しながら倒れる数人の学生達と、その真ん中で立つシンの姿だった。シンの体中に返り血がついており、誰がやったのか一目瞭然だった。

 

「シン、貴方・・・」

「お兄ちゃん、それ・・・」

 

シンは無言のまま、その目つきは鋭かった

 

「と、その事がきっかけでその二つ名が付いたわけで、同じアカデミーの人達からも恐れられる様になったんです、お終い」

「いや急ね⁉︎もう少し何かあったでしょ⁉︎」

「話せるのはこれくらいなんですよ。お兄ちゃんもあの日のこと何にも言わないし、誰もあの日のこと知らないのよ」

「そうなんだ・・・でもよく軍に入れたわね、それだけのことをして」

「うん・・・なんでかは知らないけど、特にお咎め無しで終わって・・・」

「不思議ね・・・教えてくれてありがとう。お休みなさい」

「はい、お休みなさい」

 

ミーアが退室する

 

「・・・お兄ちゃん、まだ帰ってこないのかなぁ?」

 

エリスから血まみれの狂犬の話しを聞かされたアスランは驚きを隠せなかった。インド洋での基地を襲った時は、無理矢理働かされその上撃たれてしまった現地住民の姿を見て激怒したと後になって知った。前は理由が分からなかったが、シンは人の為に怒り、自分の事だけで攻撃する奴では無いとアスランは思っていた。

 だからこそシンの過去の所業に驚愕していた。

 

「それ、本当なのか?本当にシンがそんなことを・・・」

「本当よ。これが嘘って言えたらどれだけよかったことやら・・・」

「けど、あのシンがそんな・・・何か理由があるんぞゃないのか?でなければそんな事、あいつがする筈は無いだろ?」

「・・・一応理由はあるらしいのよ。上から他言無用って事だけど・・・アンタになら良いか?」

 

教師達に連れられて尋問を受けるシン

 

「どうしてあんな真似を?お前がよく周りの人間と喧嘩することはあれど、あそこまでやる必要はないだろ?」

「・・・別に。今回は偶々当たりどころが悪かっただけだろ?」

「ねぇシン。貴方が何の理由もなく怒る人間じゃない事は分かっているつもりよ。だから、話してくれない?このままじゃあ、退学になっちゃうわよ」

 

シンの脳裏に先程の記憶が浮かんでくる

 

(それにしてもあのエリス・シルファが特別講師とはね・・・もっとこう英雄的な人が来た方が良いのにな)

(ほんとそれだよな。宙の舞姫なんて二つ名貰ってるけど、ラウ・ル・クルーゼと二人がかりで太陽の少女に負けた敗北者だろ?)

(どうせあれだろ、ラウ・ル・クルーゼに体売って得た地位なんだろ。だから実力なんてそんなもんだろ)

 

エリスへの陰口を物陰で聞いてたシンは、怒りのあまり後先考えずに殴りかかっていた

 

「・・・バカにされたのが許せなかっただけだよ。人の事何にも知らない癖に、口だけはべらべらと・・・それでついカッとなってやっただけですよ」

 

エリスから視線を背けながら話すシン

 

「それが理由?それであそこまでやるの?」

「・・・悪いとは思いますよ。けど過ぎた話しですよ」

「あのね、殴った殴られたで済ませるにはおおごとになり過ぎたのよ。そこ、分かってるの?」

「・・・はい」

「はぁ・・・もういい、今日はここまでだ。処遇はまた後日決まり次第連絡する。それまで自宅謹慎だ、良いな?」

「分かりました」

 

シンとエリスが部屋から出て帰宅する

 

「アンタ、これからどうする気よ?あれだけのことやったら問題児ってレベルじゃないわよ。ったく」

「・・・エリスに頼みたい事がある。オレはもう無理だろうけど、もし出来るのならマユの事頼む。アカデミーでも、ザフトに入ってからでも。少し先の事だろうけどな」

「今はマユの事より貴方の事でしょうが!何言ってるのよ!」

「いや、本気だよ。マユはオレと違ってあそこに友達もいるけど、今回の事で逆恨みでマユを狙われる事がないとは限らないから・・・それだけが心配で」

「この、バカ‼︎」

 

シンの胸ぐらを掴んで無理矢理自分の方に顔を向かせるエリス

 

「うわっ⁉︎な、何だよ」

「このバカ!何がマユの事頼むよ!まず自分の心配をしなさいよ!アンタに何かあったら悲しむのは、マユよ!私だって悲しむ!シンは一人じゃないのよ!身近な人の事を思うのなら、自分の事も大事にしなさい!何かあってからじゃ遅いのよ‼︎」

 

エリスは涙目になりながらシンを叱る。純粋にシンの事を思って言っているが、それだけでは無かった。エリスはセナに敗れクルーゼと死別した時の苦しみと後悔がまだ残っていた。だからこそ一人で抱え込むシンに頼って欲しいと、思った事を全部言って欲しかったのだった。

 

「エリス・・・ごめん」

 

伏し目で謝るシン

 

「とりあえず帰りましょう。後の事はその時に考えれば良いわ」

(このままだとシンは退学どころじゃあ済まないでしょうからね、どうにかしてシンの処罰を軽くしないとね・・・まずは被害者の子達が何したのかを調べないとね・・・明日は私は空いていたわね、どこから調べるかな・・・)

 

「それで翌日調べようとしたらデュランダル議長に呼び出されてね、シンは特にお咎め無しになったと言われたのよ、お終い」

「いやいきなり終わったな⁉︎何でだよ!」

「デュランダル議長曰く、あの被害者が私の悪口とマユの実力に嫉妬してなんかしようとしてたのをシンが聞いちゃってとか何とからしいのよ。

 詳しくは私も分からないけどその被害者達が用意してたのが凶器でね、それが理由で彼らは退学。止めようとしたシンは過剰な攻撃はしないよう注意された程度で終わったってのよ。けど、この件は他言無用って言われてね。この真相知ってるのほぼゼロなのよ」

「他言無用だと?何故だ?」

 

エリスから聞いた話しが本当ならシンに何の落ち度もない。だからこそシンの名誉回復の為に真相を話した方が良いとアスランは思っていた。故に誰にもその真相を伝えず、シンが味方からすらも恐れられる様な二つ名が広まる事態になった事に疑問を持っていた。

 

「私も分からないのよ。なんでそうしたのか・・・議長に何度か聞いてみたんだけど、これ以上は言えないって」

「・・・シンは納得しているのか?あの二つ名を」

「さぁね・・・シンもシンで何も言わないからね」

 

ホテルの外で空を眺めているシン

 

「はぁ〜なんで休暇でこんな目に・・・疲れた」

 

近くのベンチに座り、今日の出来事を思い返すシン

 

「ラクス様といいデュランダル議長といい、急に来るのは止めて欲しいよ・・・緊張するし」

 

愚痴が止まらなくなるシン

 

「・・・久々に聞いたな、オレの二つ名。血まみれの狂犬ねぇ。あのお姉さんに知られたら、どう言われるかな?ていうか、そもそも会えるのかどうかだな」

 

自嘲する様に呟くシン。シンが思い返すのはあの日家族で逃げる直前のあの公園での出来事だった。

 

「おーい、そこで何してるのお姉さん?」

「ん?」

 

シンに呼びかけられ顔を上げるオレンジの髪の少女。シンはいつもは誰も使っていないお気に入りのベンチに人がいるのが珍しくて、声をかけた。

 

「君、あの時の・・・久しぶりね」

 

オレンジの髪の少女にそう挨拶され、シンも思い出す。少し前に逸れてしまったマユ自分を探してくれた年上のお姉さんだった。

 

うん、久しぶり。この前は妹がお世話になりました」

「良いのよそれくらい」

「ところでお姉さんは、どうしたの?こんなところで」

 

シンはお姉さんが以前と比べて元気が無い事に気づいて質問した

 

「あ、その・・・少し悩み事をね」

「そうなんだ。大丈夫?」

「分からない・・・今までやって来たことを否定されたみたいで。もう貴女はいらないって言われたみたいで・・・違うって分かってるのに、でもどうしたら良いのか・・・」

 

よくは分からないが、とても深刻な悩みである事はシンにも分かってしまった。ただ、このまま曇った顔をしているお姉さんを見て、シンは思わず思った事を言った。

 

「きっと、お姉さんの事を思って言ってるんじゃない?その人達」

「え?」

「僕はよく分かんないけど、お姉さんはきっと困っている人を放っておけないでしょ?それでお姉さんに助けられた人はたくさん居るよ。僕達もお姉さんに助けられたんだし」

 

正直何を言っても悩みを晴らす事は出来ないかもしれない。それでも少しでも心が楽になって欲しくて励まそうとしていた。

 

「そうかな?自分じゃあよく分からないけど」

「う〜ん、とりあえず今は何がしたいかを考えたら?お姉さんは悩んでいるよりあの日みたいに笑っている顔が似合っているよ」

「何それ、ナンパ?まだ君には速いわよ少年」

 

突如揶揄われて慌てて否定するシン。内心自分でも似合わない事言ってる気がして、小っ恥ずかしく感じていた。

 

「いや、そんなつもりじゃあ・・・それに少年じゃない、僕は」

「でも元気出た。ありがとう」

 

そう言ってシンの頭を撫でるお姉さんは少しだけ明るくなっていた

 

「え、あ・・・ど、どういたしまして?」

「ふふふ、君は将来モテそうね」

「そうかな?でも元気が出て良かった」

「うん、ありがとう。私、ちょっと用事出来た。じゃあね」

「うん、じゃあねお姉さん」

 

お姉さんが公園を出ていく背中を見送るシン。それはシンにとってのオーブでの最後の思い出だった。

 

「こんなところでどうしたのかなシン?」

「えっ⁉︎」

 

あの日の出来事を思い返すシンは突如デュランダルに声をかけられて驚いていた

 

「議、議長!どうしました、でしょうか?」

「ああいや、一人でここにいるからどうしたのかな気になってね。ゆっくりしているところ済まなかったな」

「いえ、大丈夫ですよ」

「そうか、なら良いのだが・・・もう夜も遅い。休むのなら部屋に行ったらどうだ?マユが待っているのでは無いのかな?」

「ああ‼︎そうだった!すいません議長、失礼します!」

「ああ、前に気をつけていきなさい」

「はい!」

 

議長との話しを切り上げて部屋に向かうシン。その後ろ姿を眺めるデュランダルは密かにほくそ笑んでいた。




シンはアカデミーでは、その後マユとエリスの手助けを借りて何とか赤服になりました。シンは本家程はルナマリア達とは友好が少なかった為、この頃はマユの友達という認識でいました。
シンのあの日の話しはオーブにアークエンジェルが立ち寄った日から考えていた二人の出会いの話しです。これが後にどう響くのか、お楽しみに。
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