ディオキアで潜入捜査するロアノーク隊とアルスター隊
「と言っても、ここにいるザフト軍の調査は私とロアノーク大佐でやるから、アンタ達は外を適当にぶらつきなさい」
「適当にって・・・というか何を調べろと言うんですか?」
「あら、分からなかった?適当にと言ったのよ。なら好きにすれば良いわ」
「いやだから」
「要するに、任務のふりした休暇だよ」
「「「休暇⁉︎」」」
今は敵地であるディオキアで、しかも任務で潜入している自分達に休暇など想像もしていなかったアリス達は驚きを隠せなかった
「いやいや休暇と言われても!というかなんで急になんですか?」
「そ、そりゃあ偶には羽を休めてーとは言ったけどよ、急すぎるぜ!」
「つーか、何しろというんだよ・・・」
「・・・ネオ達は?」
「俺らもここで奴らの情報を漁るついでに休むさ。お前らも、好きな事すれば良いさ。働き詰めだっただろ?少し休んで、次の戦いに備えろよ」
「う〜ん・・・何しようかな?とりあえず外出るか」
「そうするか・・・行くぞ」
アリス達が外に出る
「アンタは良いのか?アルスター隊長」
「私は良いわよ。あの子達も私がいると心から休暇楽しめないでしょ」
「そんな事ないと思うが・・・まぁ良いか。俺らは俺らで楽しもうかな」
ネオが冷蔵庫から缶ビールを取り出す
「真っ昼間から?贅沢ね」
「君もどうだい?」
「良いわね。私にも同じの下さい」
「ほい、どうぞ」
フレイに缶ビールを手渡すネオ
「バジルール中佐に見られたら怒られそうね」
「それもそうだな、はは」
「ふふっ、それじゃあ乾杯」
「おう、乾杯」
ホテルの部屋で目覚めるアスラン
「う〜ん・・・よく寝たな。ん?」
横を見ると掛け布団が何故か人一人分の膨らみが出来ていた
「なんだ?」
掛け布団を捲るとそこにはスケスケで体のあちこちが丸見えのまま寝ているミーアが居た
「うええぇぇぇぇ‼︎?」
驚きのあまり、ベッドから転がり落ちるアスラン
「ん、んん、ふわぁ・・・おはよう、アスラン」
「おはよう・・・じゃない!どうして君がここ」
「おはようございます隊長。起きていますか?」
外からルナマリアがノックをしてくる
「よろしければダイニングにご一緒にと思いまして」
「うえ⁉︎ちょ、ちょっと待ってくれ!」
寝起きから想定外の事ばかりで動揺しながら着替えるアスラン
「むぅ・・・もう」
ミーアが扉に近づいていく
「えっ?ま、待て!ミ、ラク」
扉が開いた先でルナマリアが見たのは着替え途中のアスランとほぼ丸見えなスケスケのミーアの姿だった
「えっ⁇」
「ありがとう、でもどうぞお先にいらしてくださいな。アスランは私と後から私と参りますから」
「えっ、あ、あの・・・はい」
呆然としたルナマリアがその場を後にする
「はぁ・・・どういうつもりだミーア!」
「えっ⁉︎だってあの子」
「そっちじゃない!いつ、どうして、どうやってここに?」
アスランは鍵を閉めて眠りについたのである。なのでミーアが部屋に侵入できた理由がアスランには分からず、ミーアを問い詰める。
「だって、行くって約束したじゃない?けどもう寝たっぽかったからフロントの人に言って入れてもらえたのよ。そしたら本当に寝てたから」
「だからって、なんでこんな急に!」
「えっ、だって久しぶりに婚約者が会ったんだからそしたら普通・・・」
「ラクスは、そういう事はしない!」
「そうなの?どうして?」
「それは・・・っというかなんだその服は!服なのか⁉︎とにかく着替えてくれ!目のやり場に困る」
「そう?分かったわ。これは好みじゃないのかしらね・・・次は」
「またやる気なのか⁉︎」
先程の光景に衝撃を受けながら廊下を歩くルナマリア
「はぁ・・・仕方ない、シンとマユでも誘うか・・・ん?」
シンとマユの部屋の前でノックするエリスを見つけて咄嗟に隠れるルナマリア
「マユ。シン。入っても良い?」
(エリス隊長?なんでここに・・・そういえば隊長ってやけにシンやマユと距離近いわよね、確かアカデミーの頃からよく一緒にいた様な・・・)
「エリスお姉ちゃん、良いよ。というか手伝って」
(エリスお姉ちゃん⁉︎隊長の事お姉ちゃんって呼んでるのマユ?)
「手伝う?分かった入るわ」
扉が開き、エリスが部屋に入る
「おはようエリスお姉ちゃん」
「おはようマユ。手伝うって何?」
「お兄ちゃんが・・・」
ベッドでぐっすり寝ているシン。先程からマユが呼びかけたり揺すったりしているが、全く起きる気配が無かった。
「これは中々ね・・・ほら起きなさいシン」
「ん・・・ん〜ん」
エリスとマユとは反対の方向に寝返りをうつシン
「あっ・・・マユ、反対に回り込みなさい。挟み込んで起こすわよ」
「分かったよエリスお姉ちゃん」
「よしいくわよ」
「「せーの」」
両側からシンの腕を掴んで体を起こしあげるマユとエリス
「ん、ふわぁ・・・あと5分」
「こら、また寝ようとするな!」
「もう!いい加減起きてよお兄ちゃん!」
また寝ようと横になろうとするシンを支えるエリスとマユ
「ぐぬぬ、せめてあと一人くらい居れば」
「エリスお姉ちゃん、そんな都合よく手伝ってくれる人なんて」
「いるわよ」
「ほら見なさい、ここに居るじゃない・・・えっ?」
「へっ?」
エリスとマユが声のした方を振り向くと、扉の前で一部始終を見ていたルナマリアが居た
「ル、ルナ⁉︎いつから見てたの⁉︎」
「エリス隊長が部屋に入る前からよ」
「ああ、なんか気配感じると思ったらルナマリアだったのね」
「気づいてたのお姉、エリス隊長」
「あら、私に構わずエリスお姉ちゃんって言っても良いのよマユ」
「アアア‼︎聞かれてた‼︎」
恥ずかしいところを見られて赤面するマユ
「まぁ良いや」
「良くない!」
「とりあえず手伝ってくれる?」
「分かりました・・・ってどうすればいいんですか?」
「私の代わりにシンの事支えて」
「え?はい・・・」
エリスとルナマリアが入れ替わる。そのままシンの正面に回り込んだエリスがシンにデコピンをする。
「えい」
「痛ぇ⁉︎何するエリス!」
デコピンの痛みで目が覚めるシン
「おはようシン。やっと起きたわね」
「おはようお兄ちゃん。もう」
「お?もうこんな時間か・・・ん?」
シンが横にいるルナマリアに気づく
「ルナ⁉︎おま、なんでここに?」
「なんでもなにも、起こすの手伝わされたのよ・・・それにしても隊長を呼び捨てとか、随分な態度じゃない?」
「ゲ⁉︎いや、その」
「別に構わないわよ。私達の関係だし」
「関係?それってまさか・・・」
「一緒に住んだ仲よ。同じ屋根の下で」
「いや言い方!」
「シンがまさか、そこまで進んでたなんて・・・ケダモノー」
先程のミーアのせいで変な勘違いをして出ていくルナマリア
「いや、なんか変な誤解してないか⁉︎」
「何の誤解か知らないけど、ご飯、食べにいくわよ」
「はーい」
エリス達が食堂に行くと、席には多くのザフト兵達が居た
「もうこんなに・・・空いてる席あるかしら?」
「お兄ちゃんが遅いから・・・もう!」
「勘弁してくれよ、昨日は大変だったんだから・・・」
「よぉ、エリス。それとミネルバのお二人さん」
「「ん?」」
ハイネに声をかけられるシン達
「えっと・・・おはようございます」
「おはようございます」
敬礼しながら挨拶するシンとマユ
「ああおはよう。そこまで畏まらなくて良いぜ」
「おはようございます」
「おう、おはようエリス。中々隊長も様になっているじゃないか」
「ふふん、どうよ。隊長らしいってさ」
ドヤ顔でシンとマユに振り返るエリス
「いや、オレらに言われても・・・普段は抜けてるところ多いし」
「そういう事は言わなくて良いのよ!」
シンの横腹を指で突っつくエリス
「うわっ⁉︎やめ、やめろ」
「うるさい!生意気言うならこうよ」
「大人気ないぞ!」
「ははは・・・そういえばもう一人、フェイスの奴が居ただろ?そいつは?」
「アスランの事?私は見てないわね」
「あ、居ましたよ、あそこ」
マユが指差す先にはミーアに引っ付かれながら食事するアスランと、睨みつける様にその様子を見ているルナマリアが居た
「お、あんなとこに・・・サンキュ」
ハイネがアスラン達の方に行く
「おはようございますラクス様」
「あら、おはようございます」
「昨日はお疲れ様でした。基地の兵士達も大層喜んでおられましたね。これでまた士気も上がる事でしょう」
「ハイネさんも楽しんで頂けましたか?」
「はい。それはもう」
「あ、エリス隊長。それにシンとマユもいるじゃない」
ミーアがエリス達に近づく
「おはようございます、ラクス・クライン」
「おはようラクス様」
「お⁉︎はようございます、ラ、ラクス、様・・・」
「昨日はごめんなさいねシン。もう追いかけないから」
「ほんとですか?」
怪訝そうにミーアを見つめるシン
「大丈夫よお兄ちゃん。この人はもう追いかけないから」
「そうなの?」
「ええ・・・よかったら次のライブ、見てね。絶対楽しませるから」
「えっ、あ・・・はい」
「ラクス様、そろそろお時間です」
「ええ⁉︎もう・・・分かりました。それじゃあね、シン、マユ。エリス隊長も」
「ええ、お気をつけて」
「アスラ〜ン、また会いましょうね!」
ミーアがその場を去っていく
「相変わらずお忙しそうだな」
「そうですね・・・」
「昨日はゴタゴタしてまともに挨拶も出来なかったな。特務隊、ハイネ・ヴェステンフルスだ。よろしくなアスラン」
「こちらこそ、アスラン・ザラです」
握手するハイネとアスラン
「知ってるよ有名人。複隊したって聞いたのは最近だけどな、前はクルーゼ隊に居たんだろ?」
「あ、はい」
「俺は大戦の時はホーキンス隊でね、ヤキン・ドゥーエではすれ違ったかな」
「ああ・・・そうですね」
「・・・エリスとアスラン、そして君達3人と昨日の金髪で6人か。ミネルバのパイロットは」
「えっ、はい」
「ジャッジメント、インパルス、プロトインパルス、ザクウォーリア、セイバー、あとザクファントムか・・・かなりの戦力だな」
「はい」
改めて聞くと核動力のジャッジメントに最新鋭機のインパルスとプロトインパルスとセイバー、更に量産型でも性能が高いザクウォーリアとザクファントム。一つの艦に搭載されたモビルスーツ隊としては破格の戦力であるとシン達は感じていた。
「んで、お前フェイスだろ。艦長も」
「はぁ」
「人数は少ないが、戦力は十分だよな。なのになんで俺にそんな艦に行けと言うのか議長は」
「うぇ⁉︎」
「「ええ⁉︎」」
「ミネルバに乗られるのですか⁉︎」
驚きの声を上げるアスラン達。ハイネの言っていた通り、戦力としては十分過ぎる程の今のミネルバにフェイスのハイネまで加わるのは戦力を一箇所に集めすぎだと感じていた。
「ま、そういう事だ。休暇明けから配属さ」
「そうなんですね・・・」
「艦の方には後で着任の挨拶に行くが、なんかめんどくさそうだな。フェイスが3人なのは。おまけに隊長は別だし。指揮系統ぐちゃぐちゃになりそうだな」
「言っとくけど、私が隊長だからね!」
「エリス隊長・・・」
相変わらずなエリスに少し呆れるシン達
「分かってるって、とにかくよろしくな。議長が期待しているミネルバだ。なんとか期待に応えてやろうぜ」
「はい、よろしくお願いします」
ハイネがその場を後にする
「まさか、新たなフェイスが来るとはね・・・新たなライバルが」
「別に隊長の座を奪う気はないからな、俺も」
「・・・さぁ、どうしようかな今日は。街に出たい気もするけど1人じゃあつまんないしねぇー。レイにも悪いし艦に戻ろうかなー」
「シンとマユと行けば良いじゃないか。せっかくの休暇だ、のんびりすれば良い。艦には俺が戻るから気にしなくて良いぞ」
「へっ?」
「良いんですか?」
「そっか、アスランさんはもう良いんですもんねーラクス様と十分ゆっくりされてー」
何か含みのある言い方をするルナマリア
「ええ⁉︎」
「どうせならラクス様の護衛について差し上げれば良かったのに」
「ルナマリア・・・」
「隊長はフェイスですもん、そうされたって問題はないでしょう?」
「ちょっと待てルナマリア」
「アンタ・・・ルナマリアに何したのよ」
「それにシンはシンで昔から隊長と関係あったらしいし」
「うえっ⁉︎」
「関係?」
「ルナマリア?あの、なんか誤解してない?」
「別に良いですよー以後気をつけますんで」
ルナマリアが不機嫌そうに歩いていく
「・・・まぁシンとマユは好きにしなよ。ルナマリアは私とアスランで機嫌直すから」
「えっ、はい・・・」
「・・・はぁ、仕方ない」
「ねぇお兄ちゃん、隊長と関係あったってどういう事?」
「・・・オレもよく分かんないよ」
マユはエリスと買い物、アスランはミネルバでオーブについてのニュースを探り、ルナマリアはメイリン達と出掛け、それぞれ思い思いに過ごしていた。シンは1人で海沿いをバイクで走っていた。
(・・・ん?女の子?こんなところに?)
崖の上で歌いながら踊るステラを見かけシン
「ららら〜♪ららら〜♪」
「楽しそうだな・・・ん?あの子・・・」
「らら、あぁ⁉︎」
「あれ⁉︎どこに!」
シンがふと目を離した一瞬で姿を消してしまったステラ。ステラのいたところに駆け込み下を覗き込むと海面で溺れるステラを見つける。
「あぷっ、ぷはぁ!」
「泳げないのか⁉︎マジかよ・・・えい!」
シンが海に飛び込みステラを抱える
「だ、誰⁉︎あっ」
「お、落ち着いて!とりあえずそこに!」
暴れるステラを抑えながら近くの浜に上がるシン
「はぁ、はぁ、はぁ・・・」
「はぁ、はぁ・・・危ないだろ。死ぬ気かよ、このバカ!」
「はっ⁉︎」
「泳げもしないのに、あんな」
「いや、イヤァァァァァ‼︎」
「えっ、うわぁ⁉︎」
ステラ達エクステンデッドにはブロックワードというものがあり、その言葉を聞いてしまうとパニック状態に陥ってしまう。偶々シンが口に出した死ぬがステラをパニックに陥らせてしまい、近くにいたシンに襲いかかる。
「うお、何するんだよ、この」
「いや、いや、死ぬのはイヤァァァ‼︎」
「グハァ!」
ステラの拳で洞窟の中に殴り飛ばされるシン。痛みに悶えながらもステラの追撃を横に転がって躱わす。
「ってぇ・・・なんだよ、この・・・えっ⁉︎」
「コノォォォォォォォ‼︎」
シンはステラの顔に見覚えがあったが、ステラに襲われそれどころじゃ無かった
「おわっ⁉︎落ち着いて。オレは」
「死ぬのはイヤァァァァァ‼︎」
「いや、だからウゥ⁉︎」
シンに飛びついたステラがシンの肩に噛み付く
「痛っ⁉︎えっ⁉︎」
「ウウゥ‼︎フゥゥゥ‼︎」
「痛てて!お、落ち着いて!君は死なない!」
肩から血が流れながらも必死にステラに呼びかけるシン
「君は死なない!大丈夫、オレが守るから!」
「えっ?」
シンの肩からステラの口が離れる
「君は、ステラはオレが守る!だから、大丈夫!」
「死なない?ステラ、死なないの?」
「ああ、大丈夫だよステラ。君はオレが守るから」
「守る・・・ステラ、守ってくれる・・・」
落ち着き出したステラを近くの洞窟に連れていくシン
「ふぅ、ここなら・・・ステラ、大丈夫か?」
「え、うん・・・痛っ⁉︎」
「診せて」
ステラの左足から血が流れていた
「とりあえず傷口抑えないと・・・これでっと」
傷口をハンカチで縛るシン
「これで大丈夫だよステラ」
「あ、うん・・・でもなんで?」
「なんで?いや君はオレが守るから」
「そっちじゃない。なんでステラの事を、ステラの名前を」
ステラの疑問は当然だった。一応お互い顔は見た事あるのだがその事を覚えていなかったステラは、初対面の相手が名乗ってもない自分の名前を知っている事が不思議だった。
「・・・覚えてないか、仕方ないよな・・・」
少しだけ寂しそうな顔をした後、誤魔化す様に笑顔で自己紹介をするシン
「オレ・・・僕はシン・アスカ。よろしくな」
「あ、うん。ステラはステラ・ルーシェだよ」
「よろしくなステラ・・・けど、どうしようかな?」
シン達がいるのは崖の下で、通行人に声をかけても下まで降りないと見つからない場所にいた。見えやすい場所に移動しようとも考えたがステラは足に怪我を負い、その上泳げない。シンも肩を怪我している為崖をよじ登って助けを呼ぶのも困難な状態だった。
「はぁ、あとで怒られるかもだけど・・・ま、良いか。慣れてるし」
「えっ?」
シンが持っていた発信機を壊す。こうする事でミネルバに救難信号が送られ、シン達のいるところに誰かが来てくれる算段だった。
「しばらくしたら誰か来てくれる筈だ。それまであそこで待ってよう。服、乾かさないとだろ」
「え、うん・・・」
日が暮れたので、ステラの手を引きながら洞窟内に入るシン。その後慣れた手つきで火を起こし、適当に組んだ枝に服をかけれるようにした。
「あっち向いてるからさ、服、掛けなよ」
「うん・・・シンも服、乾かす」
「うん・・・っ⁉︎」
先程噛まれて出血した肩が痛むシン
「シン、大丈夫?」
「あ、ああ大丈夫・・・ぐっ!」
「それ、ステラが・・・ごめん」
「ステラは悪くないよ、オレが気が利かなかっただけ・・・」
「・・・シン」
「ん、ステラ?うえっ⁉︎」
ステラの呼びかけられ振り向くと半裸のステラが近づいてきてた
「ス、ステラ⁉︎ちょっ⁉︎」
「シン、落ち着いて」
「落ち着けないよ⁉︎見えてる、見えそうだから!」
動揺するシンに構わず近づき、先程噛み付いた肩を舐めるステラ
「ふぇ⁉︎ステラ⁉︎」
「こんなのくらいしか出来ないけど、お詫びとお礼、させて」
「あ、うん・・・」
お互い下半身が少し隠れる程度にしか着衣してない状態の密着に、シンは過去一番にドキドキしていた
(な、なんだよコレ・・・恥っずいぞ・・・人目無くて良かった・・・っていやいやいや)
「ん、ん・・・こんな感じでどう?」
「へ?あ、ああうん、大丈夫ありがとう」
「そう、ご馳走様。おいしかったよ」
「え?・・・どういたしまして?」
「ふふ、何それw」
照れのあまりおかしな口調になるシンに笑みが浮かぶステラ
「なぁステラ。お父さんとお母さんは?」
「お父さん、お母さん、知らない・・・知ってるのはネオ、スティング、アウル、アリス、レオ、フレイ・・・あとナタルって人」
「・・・そっか、そういう事か・・・」
シンはステラが家族を失い、記憶を無くしていると推測した。それで孤児院の様なところでお世話になっているのではと考えていた。それは半分は正解だったが、ステラが自分を狙うガイアのパイロットである事など、夢にも思っていなかった。
「シンは?シンの家族は?」
「オレも父さんも母さんもし・・・今はいないんだ。オレとマユの二人だよ」
「マユ?それって・・・」
シンの口から別の女の名前が出てきて少しだけ靄るステラ。それが何故なのかはステラにも分からなかった。
「妹だよ、マユは」
「妹・・・ほっ」
「ああでも、父さんと母さんがいなくなった後でエリスに世話になってるな」
「・・・エリス?誰?」
また別の、しかも明らかに今も側にいるであろう女の存在に少しだけ機嫌が悪くなるステラ。何故だか分からないが、シンの口から他の女の名前をあまり出して欲しく無かったのだった。
「え?エリスは・・・なんだろう、親、じゃないし・・・義姉?いや、それにしては抜けてるしなぁ・・・なんて言うんだろ?でも、オレにとって大事な人だよ」
「・・・ふーん、その人の事、好きなの?」
「えっ⁉︎ど、どうなんだろうな?よく分からない・・・かな」
「・・・ふ〜ん、シンの周りには女の子がいっぱいなんだね」
嫉妬心剥き出しでシンに話しかけるステラ。だがシンには、自分の周りに女の子は、というより側に身内以外の人がいるとは思っていなかった。
「そうかな?マユとエリスは側にいるけど、他は唯の同期と上司くらいだよ。そこまでオレに親しくしてくれる奴はもう居ないよ」
「えっ⁉︎どうして?」
「・・・自業自得だよ。オレは、そういう奴だからさ、オレは」
自分を卑下するシンの後ろ姿に何か寂しいものを感じたステラ
「シン・・・そんな事無いよ。シンは、優しいよ」
シンに後ろから抱きつくステラ
「ス、スススススステラ‼︎?な、何を⁉︎」
ステラは純粋に励まそうとしたつもりだが、布一枚無い、そのままの胸の感触はシンにとっては刺激が強すぎた
「シンは、ステラを守ってくれる。優しい人だよ。だから、そんな寂しい事言わないで。自分を、大切にして」
「寂しい?オレが・・・」
両親が亡くなり子供だけでプラントに行くことになり、マユを守る為に一生懸命だったシンは自分の心がどれだけ傷ついているのか分かっていなかった。自分の悲しさや苦しさに蓋をしてマユの事を気遣い、その為に自分が傷つく事を厭わなくなってからシンの心はいつの間にか麻痺しており、どんな状態なのかもう分からなくなっていた。
「だってさっき、怒られるのに慣れてるから良いなんて・・・ステラのせいなのに、シンが責められるなんておかしいよ」
「ステラ・・・けど」
「シンがステラの事守ってくれるなら、ステラもシンの事守りたい。これなら寂しく無いよね」
「ステラ・・・」
「シ〜ン‼︎どこにいるの‼︎」
外からボートが近づく音とエリスの声が聞こえてくる
「誰⁉︎」
「エリスだ!助けに来てくれたんだよ!お〜い、ここです!今行きます!って服着ないと」
「あ、うん・・・」
服を着て洞窟の外に出るとボートからエリスが飛び降りてシンとステラの元に駆けていく
「もう!せっかくの休暇に何してるのよ!こんなとこで・・・怪我は無い?」
「ザ、ザフト⁉︎」
シンの体をジロジロと見て診察するエリス。そのエリスとシンの間に割って入るステラ
「・・・誰この子?」
「ステラはステラだよ」
「ステラね・・・この子となんかしてたの?」
「えっ⁉︎いや・・・それよりステラは足怪我してて、それで」
「ああ、大体分かったわ。相変わらずね・・・その肩もその子を助けて?」
シンの肩の怪我を見て問いかけるエリス
「いや、それはステラが」
「はい。ステラが海に落ちちゃって助けようとして飛び降りた時に、ちょっとぶつけちゃって」
「・・・分かったわ。とりあえず乗りなさい。行くわよ」
「はい・・・ほらステラ」
「あ、うん」
差し出されたシンの手を掴んで船に乗り込むステラ
「それでその子・・・ステラだっけ?はディオキアの子?」
「それは・・・ちょっとはっきりしてなくて。何か怖い目に遭ったらしくて、記憶が曖昧に」
「ふ〜ん、知り合いはいるのよね?ならその子の名前と知り合いの名前を基地で調べるしか無いわね」
「基地、それって・・・」
「おーい、ステラー!」
「どこに居るのよー!というか聞こえるー?」
「あっ!レオー!アリスー!」
「おわっ⁉︎もしかして、さっき言ってた」
「うん!」
「あら、手間が省けて良かったわ。上に上がりましょう」
ボートを港に止め、ジープでレオ達の元にむかつたシン達
「レオー!アリスー!」
「やっと見つかったわ。というかあれ、ザフトのジープじゃん」
「あっちは気づいてなさそうだな。ったく危なっかしいなステラは」
「一体どうしたのステラ?どうして」
「海に落ちたんですよ。オレが丁度近くに居てなんとか引き上げたんだけど上に上がれなくて・・・でも見つかって良かった。ステラの事、知り合いがいる事しか知らないからどうしようかと」
無警戒のシンとは裏腹に赤服を着ているエリスを警戒しているレオ達
「そうですか、それはすいませんでした。ありがとうございます」
「ザフトの方々には本当に色々とお世話になっていますからね」
「そう・・・では我々はこれで、帰るわよシン」
「はい」
ジープに乗るエリスと乗り込もうとするシン
「シン、行っちゃうの?」
「え、うん。ごめんな。でもほら家族の人?が来ただろだからもう大丈夫だろ」
「うん。でも・・・」
不安そうな顔のステラ。この短時間でステラはシンが自分で抱え込みすぎちゃう正確である事を見抜いていた。この先大丈夫なのか心配していたのだがシンには別れるのが寂しいのだと勘違いしていた。
「えっと・・・ほら、また会えるからさ。きっと」
「本当に?」
「ああ、約束する。だからさ」
「うん!待ってるから!」
シンに抱きつくステラ
「へっ⁉︎ス、ステラ⁉︎」
「約束だよシン!」
「あ、ああうん、約束」
「シン、速くしないと置いてくわよ」
「えっ⁉︎分かりましたから!じゃあねステラ」
シンが乗った事を確認してからジープが発進する。シンとステラは互いが見えなくなるまで見つめ続けていた。
「はぁ、ほんと参ったわ・・・というかなんでよりにもよってザフトなのよ」
「ほんとだぜ、ほらステラ。行くぞ」
「うん。シン・・・」
レオの運転で走り出すジープ。彼らもステラを助けた少年が自分達の天敵であるインパルスのパイロットだと気付かぬまま、走り出して行った。
シンとステラの出会いの甲斐でした。この時期のステラに心配されるシンは、果たしてこの先大丈夫なのでしょうか・・・