ガンダムSEED 太陽の少女   作:黄金鷹

74 / 107
第二十四話 ニュースピシースとエクステンデッド

研究施設に着いたジャッジメント達

 

「着いたわね。マユはプロトインパルスに乗って待機。シンは一応中に入れる様入り口で待ってて」

「「了解」」

「レイ、行くわよ」

「はい」

 

エリスとレイとシンが自機のコクピットから降りて、研究施設に向かう。入り口に入ったところでシンは止まり、エリスとレイが奥に進んでいく。

 

「はぁ、アスランが居たら中に入るの任せて、私は外で待っていたのに・・・肝心な時にいないんだから」

「調査任務は嫌いなのですか?」

「嫌いなのは調査じゃなくて研究施設の方。分かるでしょ?」

 

スーパーコーディネイターの研究施設で壮絶な体験をしたエリスにとって、それを思い出させるものは出来るのなら二度と関わりたく無いと思っていた。しかし未成年のマユにやらせるのは倫理的に避けたい上、今のシンだと焦って前に行きすぎてしまう危険性があるので、仕方なく自分も出る事にしたのだった。

 

「それは・・・配慮が足りず申し訳ありません」

「別に敬語じゃなくても良いわよ。知らない中じゃないでしょ」

「今は任務中ですので」

「そう・・・暗いわね、この部屋」

 

部屋の電気をエリスが付けると中には様々な設備が置かれており、床には大量の紙が散らばっていた

 

「何この装置?それに色々散らばってるし」

 

足元に落ちていた紙を拾い上げて読むエリス

 

「えっと、遺伝子操作されたコーディネイターに勝つには、優れた種を生み出す必要がある、その為優れたナチュラルを集めて子を産ませ、優れた存在を生み出す・・・最近噂されるニュースピシースって奴ね。反吐が出る」

 

今すぐこの紙をグシャグシャに潰したい衝動を抑えるエリス。優れた人間同士で強制的に子供を作らせて、より優れた子を増やしてコーディネイターを超えるナチュラルを産み出そうとする研究だった。かつて無理矢理襲われたエリスにとってそれは自身のの逆鱗に触れる研究だった。

 

「ここはデータを取れたら即刻潰すべきね。ていうか私が潰したい・・・レイ?」

 

隣に居た筈のレイの反応が全く無くなり、辺りを見回すとレイの姿が無かった。よく見ると部屋の奥の扉が空いていた。

 

「そこに居るの?何か見つけ」

 

部屋を覗き込んだエリスの目には、カプセルの様なものに入れられた少年少女と、その場でうずくまるレイの姿だった

 

「レイ⁉︎大丈夫?何があったの?」

「ハ、ハ、ハ、ハ・・・グゥゥ」

 

レイの顔を覗きむと、顔は青ざめており、過呼吸を起こしていた

 

「レイ、落ち着いて。何があったの?まさかどこかでガスか何かが」

「出ていけ!この化け物!」

「な⁉︎」

 

いつの間に扉の前に居た白衣の男に発砲されるエリス。咄嗟にレイを庇い、左腕に弾丸が掠るが、正確に男の頭部を撃ち抜くエリス。

 

「ぐっ・・・まさか生き残りが居たとはね。レイ、一人で立てる?」

 

言葉は発せなかったが、レイは首を横に振って意思を示した

 

「そう、ごめんね。今の私じゃあ一人で貴方を運ぶ事は難しいわね。呼ぶしかないわね」

 

エリス達が施設の調査をしている中、待機中のシン達は周りを警戒していた

 

「・・・暇だな」

「確かにそうだけど、何も起こらない方が良いよね」

「そうだな・・・それにしても、ルナはどこ行ったんだろ?マユは聞いてないか?」

「私も何も。エリスお姉ちゃんは知っているのかな?」

「聞いとけば良かったな・・・」

「シン。聞こえる?返事して」

 

シンのトランシーバーにエリスから通信が入る

 

「どうしたエリス?何か見つけたのか?」

「レイが動けなくなった。ちょっと手助けして。私は左腕をちょっと掠って一人じゃあ動かせないの」

「何⁉︎じゃあ中にまだ」

 

シンは今のやり取りでレイの体調不良、エリスの負傷だけでなく、施設内に敵がいる事まで把握した。

 

「ええ、気をつけて中に進んでねシン。マユはミネルバに戻って艦長に連絡を」

「了解。すぐに戻りますから」

 

プロトインパルスがミネルバに急いで戻っていく。それを見送ってからシンは一人で施設内部に入った。

 

「暗いな・・・エリスとレイはどこに居るんだ?」

「入り口を真っ直ぐ進んで、それから右に進んだ先の部屋よ。明かりは付けたからわかりやすい筈よ」

「了解。敵はどれくらいいる?誰にやられた?」

「服装からするとここの研究者だと思う。不意打ちにさえ気をつければ脅威じゃないわ」

「分かった。レイは大丈夫か?」

「今は呼吸は安定したけど、かなり憔悴してるわね。悪いけど今のレイを置いてそっちの迎えには行けそうにもないわ」

「分かった。そこで待っていてくれ」

 

シンが奥に進んでいくと、横から微かに物音が聞こえてくる

 

(今の音、大きさ的に人が動いた時の音か?・・・なら)

 

シンが周りを警戒していると、物陰に潜んでいた白衣の女性が身を出して発砲してくる

 

「くっ!やっぱ隠れてたか!」

 

咄嗟に身を捩って弾丸を回避し、物陰に隠れるシン

 

「シン⁉︎今の発砲音は?」

「まだ敵がいる!白衣を着ている!少し待っててくれ!」

 

エリスとの通信を切ってから拳銃を撃ち、白衣の女性の銃を撃ち落とす

 

「グッ⁉︎」

「動くな。抵抗しなければ殺しはしない」

 

拳銃を撃ち落とし、戦う術が無いと判断して姿を現して白衣の女性に近づくシン

 

「この、化け物が!」

「生憎だが、オレはコーディネイターの中じゃあ下の方でね。アンタらとそこまで変わらないよ」

「うるさい!」

「うおっ⁉︎」

 

服の内側に忍ばせていたナイフをシンに振りかざす白衣の女性。咄嗟に躱したが拳銃を落としてしまい、白衣の女性にマウント体勢から顔にナイフを突きつけられる。

 

「このぉ!」

「グッ!」

 

ナイフを振り下ろす腕を抑え、足で白衣の女性を蹴りながら体を反転させて体の上に乗るシン

 

「グゥ⁉︎」

 

そのまま白衣の女性の腕を押さえつけて抵抗出来なくする

 

「だからやめろ!オレはあんたを殺しに来たわけじゃあ」

「一緒よ!コーディネイターなんて、みんな死んじゃえば良いのよ!あんな、人の姿をした化け物なんて!」

 

白衣の女性の目に宿る憎しみを見たシンは心の中で同情していた

 

(ここまでコーディネイターに恨みを持つってことは、ザフトに家族を・・・それでブルーコスモスの思想に近づいたってことか)

「コーディネイターの全員が、アンタになんかしたわけじゃ無い。恨むなら」

「黙りなさい!化け物の言葉なんて」

 

尚も抵抗しようとする白衣の女性がシンを振り解こうとするが、全く抜けることが出来ず、ただ暴言を吐く事しかできなかった。だがその言葉はシンには届いていなかった。

 

「これ・・・は」

 

シンは白衣の女性を押さえつける態勢になり、目線が下がった事で、物陰に隠れていたものが見えてしまった。そこに血を流して倒れている複数の少年少女達の死体が隠されているのを見つけてしまった。

 

「これ・・・なんだよ、なんでこんな・・・」

「クソッ!これもあのガキ共が反乱を起こすから!ただのモルモットの癖に!」

「はっ?おい、お前・・・」

「せっかくコーディネイター共をぶっ殺せる様に強くしてやったというのに!あの恩知らずのガキが」

 

シンの目が怒りに塗りつぶされる

 

「・・・お前がやったのか?」

「はぁ?それが」

「お前が!やったのかぁぁぁぁ‼︎」

 

シンには先程までの同情は無かった。今のシンには目の前の女性は子供を自分の復讐の道具にする人手なしにしか見えていなかった。

 

「ヒィ⁉︎」

「このぉ!」

 

白衣の女性からナイフを取り上げ、遠くに投げると、白衣の女性の首を絞め出した

 

「グゥ⁉︎ガッ、アァ」

「お前が、あれを?あの子達を?」

「カッ、ハァ、アゥ」

「お前みたいなのがいるから!お前みたいな奴のせいで‼︎」

 

必死に抵抗するがシンの腕を引き剥がさない白衣の女性は息が出来ずにもがいていた。それに構わず更に締める力を強めるシン。

 

「カハッ、や、やめ・・・」

「今更被害者気取りかよ!都合の良い奴だな!どっちが人手なしだよ‼︎」

 

今のシンは戦争を再開した連合と、連合に組みしてザフトを攻撃するオーブと、戦闘に割り込んでハイネを死なせる原因となったサンシャイン達への、それらを止めれない今の自分の弱さに対する怒りが、今まで抑えていたものが止まらなくなっていた。

 

「お前みたいなのがいるから!人の悲しみをなんとも思わないお前みたいな人でなしがいるから‼︎いつまでも被害が出るんだろうが‼︎」

「ハゥ、グッ・・・アッ」

「こんな事で戦争が続くんなら、戦争で死ぬ人が増えるっていうのなら、オレが‼︎」

「そこまでにしときなさい、シン」

 

ヒートアップするシンの後ろからレイに肩を貸しているエリスが声をかける

 

「エリス⁉︎なんで?」

「レイが少しだけ回復して立てる様になったからね。発砲音もしたし、結構近くだから心配になってね・・・それよりも、その手、離してあげなさい。殺す気?」

「けど!コイツは!」

「非戦闘員に過剰な暴力は良く無いわよ。抵抗する術が無いなら拘束に留めておきなさい。それとも弱いものいじめが貴方のやる事なの?」

「ぐっ・・・」

 

渋々白衣の女性の首から手を離すシン。解放された白衣の女性が苦しそうに咳き込んでいた

 

「ゲホッゲホッゲホ、ハァ、ハァ、ハァ」

「シン、レイを外に連れて行きなさい。彼女は私が拘束するから」

「けど!エリスだって」

「武器もない奴に負ける筈ないでしょ。良いから行きなさい」

「・・・分かったよ」

 

レイに肩を貸して来た道を引き返すシン。それを見送ったエリスが回りを見渡すと、先程シンが見たものを発見した。

 

「なるほどそういう・・・これをアンタが?」

「ハァ、ハァ、コーディネイターに、話す事など」

「拷問されたいの?なら今私がやるけど。それともシンを呼び戻してさっきの続きをした方が良い?」

「ヒィ、や、やめ」

 

先程シンに絞められた事を思い出し恐怖で体が震える白衣の女性

 

「・・・気持ちは分かるわよ。ああなったら動けないものね、怖くて当然よ。けど、それだけシンを怒らせたのはアンタという事、覚えた方が良いわよ」

 

シンがレイを連れて外に出て、近くの木の下にレイを座らせる

 

「大丈夫かレイ?」

「・・・ああ、済まないな」

「気にすんな・・・何があったんだ?」

「いや・・・」

「言いたくないなら別に良いさ。レイはそこで待ってろ。オレはエリスを」

「待てシン」

「ん?」

 

もう一度施設に入ろうとするシンを呼び止めるレイ

 

「お前もここにいろ・・・今のお前は、だめだ」

「はぁ?オレは別に怪我してないし・・・嫌なものは見たけど、オレはまだ」

「良いからここにいろ・・・良いな?」

 

先程のシンの様子を虚ろ状態で見ていたが、今のピリピリしているシンにあの施設の研究をこれ以上見せるわけに行かない。下手をしたら自分よりも酷い状態になると思ったレイはなんとかシンを引き止めようとする。

 

「なんだよそれ・・・入り口で待つくらいなら良いか?」

「中に入らないなら、良い」

「分かったよ・・・一体何を心配して」

 

シンが入り口で待つと後ろ手に拘束された白衣の女性を連れたエリスが出てくる。それと同じタイミングでプロトインパルスとミネルバが調査隊を連れてやって来た。

 

「お兄ちゃん、エリスお姉ちゃん、レイ、大丈夫?」

「貴女達、どうしたの?」

「艦長、レイを優先的にお願いします。それとシンも」

「艦長、オレは何もないです。だからレイとエリスの方を」

「貴女達全員、診てもらいなさい」

「「了解」」

 

互いに自分より相手を心配するエリス達の様子についため息が出るタリア

 

「はぁ・・・思ったよりやばそうな施設だったのね。迂闊だった」

「いえ、艦長の責任では」

「せめてアスランかルナマリアも呼ぶか、本格的な調査隊と合同にするべきだったわね」

 

シン達を医療班に診てもらってる間に施設内の環境チェックが終わる

 

「内部のチェック、完了しました。自爆装置は全て撤去。生物学的異常は認められません」

「そうなの?ありがとうね・・・」

「ということは、レイの体調不良のわけって一体・・・」

「精神面ってところかしらね?でも」

(何故レイだけが?エリスに話しを聞いてみたけど何が原因なのか分からないわね。寧ろシンの方を心配してたけど、見た感じいつも通りなのよね)

 

エリスとシンに内部の調査で起こったことを全て確認していた。エリスは激昂したシンが白衣の女性を殺しかけていた事から精神面で何か問題が無いか心配していたが、シンはタリア達から見ると今までと変わりなく見えていた。

 

「後で詳しく聞くとして・・・中に問題が無いのなら、調査再開しても良いかしらね」

 

タリアが考え事をしていると、セイバーがミネルバの元に降りてくる。コクピットから降りたアスランがタリアとアーサーの元に駆け寄る。

 

「港に行ったらもう出港したと聞いて。一体何があったんですか?」

「・・・丁度良いわね。戻ってすぐで悪いけど、調査の手伝いをしてくれないかしら?連合の研究施設らしいの」

「連合の⁉︎中は今どうなっているんですか?」

「中にはなんかの資料と、死体がいっぱいでしたよ、子供のね」

 

診察が終わったシンがアスラン達に話しかける

 

「シン、それは本当なのか?」

「ここで嘘ついてどうなるんだよ。艦長、中に他の生存者は?」

「もう居ないそうよ。生存していたのはエリスと撃ち合いになった男と、貴方を襲った女の二人だけだったらしいわ。それ以外は」

 

生存していたのは二人だけ、その言葉でシンは中で見た子供達がもう手遅れであった事を知り、心を痛めていた。

 

「そう、ですか・・・艦長。オレも行かせてください」

「シン、大丈夫なの?別に無理しなくても」

「無理してませんよ。それに今はオレが一番動けますよ」

 

レイは体調を崩し、エリスは負傷。ルナマリアは不在でマユはまだ子供。帰還したばかりのアスランを除けば調査に行けるのはパイロット内ではシンだけになっていた。

 

「確かにね・・・分かったわ。私とアーサー、アスランとシンで行くわよ」

「「「了解」」」

 

基地に戻り、修理と補給を済ませているファントムペイン

 

「まさか、キメラプロトとガイア以外がここまでやられるとはね・・・」

「ええ。ですがそれをスエズに戻らずにここでというのは正直きついですよ」

「分かってはいるがね、でもやるしか無いだろ。完膚なきまでにやられたならともかく、まだステラ達は元気だからな」

「うん・・・けど、アイツ強かった。私は直接は戦ってないけどあのオレンジの奴、あの合体野郎を簡単に押さえてた」

 

前回の戦いでのサンシャインの動きを思い出すステラ。はっきり言ってサンシャインを相手にして勝てる自信のあるものはこの中に一人もいなかった。

 

「確かに、アレは脅威的だな。俺が戦っても勝てないだろうな・・・全く、とんでもない奴がいたもんだな、オーブには」

「ロアノーク大佐、ロドニアのラボの事なのですが」

 

ネオに報告しに来た連合兵が駆け寄る

 

「どうした?何があった?」

「アクシデントの発生でラボの処分に失敗した様で。更に悪いことにそこにザフトが」

「おいおい、マジかよ・・・」

「報告を受けてスエズも慌てている様ですが・・・」

「はあ、やれやれだな。どうしたものかな・・・」

 

施設内部に入ったタリア達は中の惨状に絶句していた

 

「これは・・・」

「なんて事を・・・」

 

数多くの子供達と研究者が血まみれで倒れており、腐敗が進んでいた

 

「なんなんですか、ここは?」

「なんでこんな子達まで・・・まさかアイツか!」

「落ち着きなさいシン。多分誰かにやられたって訳じゃなさそうよ」

「えっ?」

「おそらく内乱、でしょうね」

 

所々で争った形跡と、荒れてはいるが物が散らばっているだけである事から内部争いの末に全滅したとタリアは推測していた

 

「内乱・・・この子達が」

「推測でしか無いけどね。この子達もただやられたって訳じゃなさそうよ」

「そう、なんですか・・・」

「・・・どうやらここでは二つ研究が進んでいたそうね」

「えっ?」

 

タリアがまだ生きているパソコンからデータを探っていると研究データを見つける

 

「エリスが見つけたニュースピシースと、エクステンデッドがここで産み出されたらしいのよ」

「えっ⁉︎」

「遺伝子操作を嫌う連合やブルーコスモスが、薬や様々な手段で肉体を改造して作る生きた兵器。戦う為だけに生まれた人間。ここはその実験、生産施設って事らしいわね」

 

回りの惨状を見渡すアーサー達。ここに倒れている子供達が全員、戦争の道具にされた子達と知り、連合の所業に驚きと嫌悪が浮かんでいた。

 

「なんなんだよ、それ・・・遺伝子操作は嫌う癖に自分達は薬で体を、それもこんな子達に無理矢理して自分達の都合の良い様に・・・どこまで腐ってるんだ!アイツら‼︎」

「シン、気持ちは分かるが落ち着け」

 

怒りを露わにするシンを宥めようとするアスラン。かつての自分やエリスの様に怒りで視野が狭まる危険性を知っているからこそ同じ過ちを繰り返したく無かったアスランの言葉はシンには届いていなかった。

 

「許せない・・・議長が言ってたのはこういう奴らの事なんですよね?だったら、オレが」

「・・・後は専門のチームに任せましょう。出るわよ」

 

ドミニオン内で会話しているスティング達の元にステラがやってくる

 

「ねぇ、ロドニアのラボって何?」

「はぁ?そこは俺達の育った場所だろうが」

「ステラ、悪いけどその場所は思い出したく無い。というか壊したいくらいなんだけど」

「ごめんアリス・・・でもネオがさっきそう言ってたから。ザフトが来るって」

「何?あそこ見つかったのか・・・もしかして先に壊すのか?」

「おい、ちょっと待てよ!そこには母さんがいるんだぞ!うっ⁉︎」

 

自分でブロックワードを言ってしまい、錯乱するアウル

 

「おい、バカアウル。落ち着け」

「だってあそこ、母さ、んが、母さん、いる」

「分かってるさ!落ち着け、まだそうと決まったわけじゃあ」

「落ち着いてアウル。あそこにいる人を処分すると決まった訳じゃ無いよ。きっと守ってくれるから」

「守る・・・」

 

アリスの口から出た守るという言葉に反応するステラ。ゆりかごで消した筈のシンとの記憶が断片的に思い出すステラ。

 

「守る・・・わたし、が守、る・・・守る」

 

シンの事を思い出す度に頭痛に襲われるが、それを無視してステラは駆け出す

 

「俺が艦長と隊長に確認してみる。アリス、ここは任せたぞ」

「分かった。というかネオに聞いた方が速いんじゃない?」

「それもそうか。ステラ、ネオは・・・あれ?」

 

レオが辺りを見渡すが、既にステラの姿は見えなくなっていた

 

「あれ?ステラはどこ行った?」

「悪いが見てない!お前は知らないのかアリス?」

「知らないわよ。というかアウルを宥めるのが先でしょ」

 

格納庫に駆け込んどステラがガイアに乗り込む。今のステラはアウルの為に守るという意志と、頭に断片的に浮かぶシンを探す目的でいっぱいだった

 

「あ、おい」

「ハッチ開けて!開けないとこじ開ける!」

「おい待て!」

 

整備班の静止を振り切り、ハッチを両手でこじ開けて走り出すガイア

 

「ちょっと!何この騒ぎ?」

「どうした?何があった?」

 

近くにいたフレイとナタルが駆けつける

 

「バジルール中佐、アルスター大尉。ガイアが勝手に出撃しました」

「なんだと⁉︎目的は?」

「分かりません?突如乗り込んで強引に」

「まずいな・・・アルスター大尉、ルーシェ少尉を連れ戻しに行ってくれ」

「了解。ったくステラの奴、急にどうしたのよ・・・」

 

キメラプロトに搭乗しに向かうフレイ。すぐに出撃したものの、既にガイアの行方は分からなくなっていた。

 

「艦長!もう姿が見えないんだけど!やっぱガイアに全速力出されたらキメラプロトじゃあ追いつけないです!」

「こちらで何か知っている者がいないか確認してくる。それまでなんとか探してくれ」

「なんとかって・・・分かりました!」

 

プロトインパルスに乗って辺りの警戒をしているマユにシンが話しかける

 

「マユ、お前もそろそろ休めよ」

「お兄ちゃん・・・私は大丈夫だよ。ここにいるだけだし」

「ずっと周辺を警戒するのは疲れるだろ。交代だ」

 

マユは最初にシルファ隊で調査をした時からミネルバを呼びに行く時以外は日が暮れるまでずっと見張りをしていた。マユにはそろそろ体力的にキツくなってくる頃だった。

 

「けど、お兄ちゃんも朝からずっとでしょ?だから」

「オレは少し休んでたから平気だ。艦長に許可はもらったから交代して良いんだぞ」

「・・・分かった。お願い」

「おう、よく寝ないと大きくならないぞ」

「うるさい、分かってるよもう」

 

プロトインパルスがミネルバに帰艦し、シンが近くで止めていたインパルスに乗り込む。マユを休ませたいのは本心ではあったが今日の事だけで溢れ出した怒りを抑えるために、何かしてないと気がすまなかったのだった。

 

「シン、しばらくしたらアスランと交代してもらうからね。貴方も朝からずっと動いてたでしょ?」

「艦長、大丈夫ですよオレは。それよりレイとエリスはどうなっていますか?」

「レイはもう動ける様にはなったそうよ。エリスは左腕さえ動かさなければすぐに治りそうね」

「本当ですか!良かった」

 

心の底から安堵するシンの様子を見て、少しはメンタルが良くなったかと一安心するタリア

 

「まぁすぐには来ないとは思うけど、頼むわね」

「了解・・・ん、なんだあれ?」

 

インパルスの視線の先には木が薙ぎ倒されていく光景が見えていた。それと同じタイミングでミネルバのレーダーにガイアの反応が出ていた。

 

「艦長!モビルスーツ1、接近中!ガイアです!」

「1機だけ?後続は?」

「現時点ではありません?」

「分かったわ。シン、施設を守りなさい。あそこにはまだ中に人が」

「分かっています!」

 

インパルスが上空に上がりガイアに近づく。インパルスの姿を見つけたガイアも臨戦態勢になる。

 

「アイツ、間違いない、合体野郎だ。今日こそ!」

 

インパルスとプロトインパルスは見た目が瓜二つな為、見分けるには出撃の瞬間を見ないと分からないのだが、ステラにはインパルスである事を確信していた。だがステラは施設やその中にいる者を守る目的があったために、普段より落ち着いていた。

 

「ハァァァ!」

 

ビームブレイドを展開しながらインパルスに突撃するガイア

ガイアの突撃を横に回避してビームライフルを撃つが、躱されてビームサーベルで切りかかられる

 

「クッ⁉︎やっぱり前より強い・・・けど!」

 

ビームサーベルを取り出してガイアに切りかかるインパルス

ビームサーベルの攻撃を避けながら距離を取り、モビルスーツ形態のままビーム突撃砲を撃ち出すガイア

 

「何⁉︎」

 

今まで変形した状態でしか使用しなかった武装を使われた事で不意を突かれ、紙一重で躱わすが態勢を崩してしまうインパルス

 

「今だ!」

 

態勢を崩した隙に変形して体当たりをするガイア

体当たりの衝撃で落下し地面に転がされるインパルス

 

「うわぁぁぁ⁉︎」

「ええぇぇい!」

 

倒れたインパルスにビームサーベルを振りかぶるが、フォースシルエットの推進力で無理矢理起き上がり、シールドで受け止める

 

「くそっ、今更お前に負けるわけに行かないんだよ!」

 

飛び上がり上空からビームライフルを連射するがガイアに悉く躱されてしまう

 

「なんでだ⁉︎なんで当たらないんだよ!」

 

今のシンは怒りが収まっておらず、普段の実力を出せないでいた。一方のステラは守る者、戦う為の理由がある分落ち着きを持っておりいつも以上の力を出せていた。

 

「このぉ!」

「そんなので!」

 

ビームライフルの射撃を躱しながら跳躍し、インパルスにビームブレイドで切りかかるガイア

咄嗟にシールドで防ぐが弾かれてしまい、再び地面に落下するインパルス

 

「グアァァァ!」

「シン!待ってろ、今行く」

 

苦戦しているインパルスの元にセイバーが駆けつける

 

「もう一機、アイツか!けど」

「邪魔するなアスラン!コイツはオレがやる!」

 

助けに来たセイバーを無視してガイアにビームサーベルで切りかかるインパルス

 

「シン!少し落ち着け!」

「コイツにハイネは殺された。オレのせいでハイネを・・・だからオレが‼︎」

 

自暴自棄になりつつあるシンにアスランの声は届いていなかった

 

「シン!一人で抱え込むな!お前には」

「アスラン、もう一機来たわ。キメラプロトよ。そっちをお願い」

「なっ⁉︎了解」

 

別方向からガイアを探していたキメラプロトがやってくる

 

「ガイアは・・・はっ⁉︎」

 

正面から撃退に来たセイバーのフォルティスビーム砲を回避するキメラプロト

 

「あれはザフトの。て事は・・・居た!」

 

近くでインパルスと交戦するガイアを見つけるキメラプロト

 

「ステラ!何してるのよ!速く退きなさい!」

「けどアウルの母さんが!それにここは」

「だからって、クッ!」

 

ガイアに近づこうとするが、セイバーのフォルティスビーム砲で阻まれてしまう

 

「クソ!邪魔しないでよね!」

「シンも、施設も攻撃されるわけには行かないんだ!」

 

空中ではキメラプロトとセイバーが撃ち合っており、地上ではガイアとインパルスが激闘を繰り広げていた

 

「このぉぉぉ‼︎」

「うぇぁぁぁ‼︎」

 

インパルスのビームサーベルを跳んで回避して、蹴りを入れるガイア

 

「クゥゥゥ!なんでだ、なんで⁉︎」

「押せている、あの合体野郎を・・・今日こそ!」

 

ビームサーベルを構えて突撃するガイア

 

「くそ・・・こうなったら!」

 

ガイアに向かってシールドを投げつけるインパルス

 

「そんなので!」

 

飛んできたインパルスのシールドをシールドで弾き飛ばすが、インパルスの姿は見えなくなっていた

 

「なっ⁉︎どこに・・・はっ⁉︎」

 

上空に飛びガイアの死角を突いたインパルスが上からビームサーベルを振り下ろす

咄嗟に身を捩って回避するガイアだが、右腕の肘から先を切り落とされてしまう

 

「クッ、この!」

 

右腕を切られた直後に体を捻り、ビームブレイドでインパルスの腹部を切り付けるガイア

 

「うわぁ⁉︎チィ!」

 

後退して距離を取るインパルス

ガイアも後退して距離を取り、態勢を整えていた

 

「ハア、ハァ、ハァ・・・強いけど、今なら」

「ハァ、ハァ、ハァ・・・どうすればアイツに、今のガイアに勝てるんだ?」

 

ガイアはシールドを投げ捨てて、左手にビームサーベルを持ち、ビームブレイドを展開して三刀流になる

 

「これで、終わらせる!」

 

インパルスに向かい突撃するガイア

インパルスもガイアに向かって駆け出す

 

「エアァァァァァァ‼︎」

「ウオォォォォォォ‼︎」

 

先にインパルスがビームサーベルを振り下ろすが、ガイアに回避される

 

「これで!・・・えっ⁉︎」

 

ビームサーベルを振りかぶったところで、インパルスの腹部の切り傷からコクピットの中にいるシンを見つけてしまうステラは思わずガイアの動きを止めてしまう

 

(あれは、誰?いや、ステラは知ってる?・・・シン?)

「この野郎!」

 

左腕でビームサーベルを取り出したインパルスがもう一度切りかかるが後退して躱わすガイア

 

「な、なんであれにシンが?・・・シン?なんであれがシンだと・・・なんなの?」

 

ステラはシンの姿を見た事でシンの事を段々と思い出してしまうが、突如思い出した記憶と今まで狙っていたインパルスにシンが乗っている事に困惑し、先程までの冷静さを失ってしまう

 

「クソォ!舐めやがって‼︎」

「はっ⁉︎くっ」

 

二刀流で向かってくるインパルスが左手のビームサーベルで切りかかるが、スライディングしながら躱して足に向かってビームサーベルを振るガイア

 

「そんなもん!」

 

ガイアの足を狙った一撃を飛んで回避し、右手のビームサーベルを振り下ろして左側のビームブレイドを切り落とすインパルス

 

「うおぉぉぉぉぉぉぉ‼︎」

「クッ、この!」

 

咄嗟にビームサーベルをインパルスに投げつけるガイア

身を捩って回避するインパルスに、ビームを切った右側の羽を腹部に叩きつけるガイア

 

「グハァ⁉︎グッ」

 

コクピット部を叩きつけられた衝撃で頭を打ちつけ、目眩が起こるシン

右手が緩んだ隙にビームサーベルを奪い取り、逆手に持ち直してインパルスに突きつけようとするガイア

 

「これで・・・くっ」

 

振り上げた左腕を下ろしてビームサーベルを突き刺す。そうすれば今まで狙っていたインパルスを倒せる絶好の機会であったが、ガイアは動きを止めてしまう。このまま撃墜すればシンを殺してしまう。ステラはそれだけはなんとか回避したかったのだ。

 しかし手足を落としたところでコアスプレンダーの状態で逃げられる、最悪の場合、もう一度フライヤーと換装して戻ってしまう可能性もあるので、どうすれば無力化出来るのか考え込んでしまった。

 

「こ・・・んのぉ!」

 

目眩でふらふらの状態のまま、左手のビームサーベルを切り上げて、ガイアの腹部を切り付けるインパルス

 

「なっ⁉︎しまっ」

「これで!」

 

態勢を崩したガイアの両足をビームサーベルで切り落とすインパルス

 

「キャアァァァァァァァァ‼︎」

 

両足を失い、背中から地面に倒れるガイア

中で頭を撃ちつけて血を流しながら気を失ってしまうステラ

 

「ステラ⁉︎くそ!」

「やったかシン!良くやった!」

 

上空からインパルスとガイアの決着を確認したキメラプロトとセイバー

 

「ハァ、ハァ、ハァ・・・やっと、倒せた。こんなんじゃあアイツらには・・・ん?」

 

インパルスには倒れているガイアの腹部の傷からコクピット内部が見えていた

 

「あれがガイアのパイロットか・・・ッ⁉︎ステラ⁉︎」

 

コクピットの中で気絶しているステラを見つけたシンはインパルスをガイアに近づけさせる

 

「アイツステラを⁉︎やらせるか!」

「させるか!」

 

インパルスを狙おうとするキメラプロトにセイバーがビームサーベルで切りかかる

 

「クソッ⁉︎邪魔で近づけない・・・ハッ⁉︎」

 

後ろから飛んできたビームを咄嗟に躱わすキメラプロト

後ろを振り返るとケルベロスを撃ったプロトインパルスと戦闘途中で帰ってきたルナマリアが乗る赤ザクウォーリアの姿を見つける

 

「お兄ちゃん!アスラン!大丈夫?」

「遅くなって申し訳ありません。援護します!」

「くっ・・・多勢に無勢ね・・・ごめんねステラ」

 

ミラージュコロイドで姿を消すキメラプロト

 

「消えた⁉︎どこに・・・」

「周りを良く見るんだ!姿を消した状態では攻撃出来ないからな」

「分かりました!」

 

キメラプロトの不意打ちを警戒するセイバー達だが、既にキメラプロトはその場を去っていた

その事に気がついていないシンは、インパルスから降りてガイアのコクピット内に入っていく

 

「ステラ、なんで君がこれに・・・」

「う、うぅ・・・シ、ン・・・」

 

ステラは気を失いうなされており、寝言の様にシンの名前を呟いていた。弱々しく名前を呼ぶステラを前に、シンは先程まで戦いあった事を忘れ、助けようと決意した。

 

「待ってろ、ステラ。すぐに診てもらうからな」

 

ステラを抱えてガイアのコクピットから抜け出すシン

インパルスの元に駆けつけたセイバー達がステラを抱えるシンを見つける

 

「シン?おい何をしているシン」

「シン?その子誰よ?何をしてるの」

「お兄ちゃん?誰を・・・えっ⁉︎」

 

必死なあまりアスラン達の声が聞こえてないシンはそのままインパルスに乗り込み、ミネルバに向かって飛んでいく

 

「シン・・・シ、ン・・・」

 

無意識にシンの服の裾を掴むステラ

 

「ステラ・・・絶対にオレが守るから」

 

ステラの手を握るシンはそのままインパルスを全速力で飛ばしていた




ニュースピシースは、コーディネイターに対抗する為に、薬による肉体改造ではなく、優秀な人間同士を無理矢理くっつけて、優れた遺伝子を持つ子供に訓練させて生み出した兵士の事です。レオとアリスはニュースピシースであり、普通のナチュラルや緑服のコーディネイターのパイロットよりは強い設定です。
 ニュースピシースが生まれたわけは、ナチュラルでありながらコーディネイターを上回る才能を持つセナの様なナチュラルを人為的に生み出す為です。
 ちなみにニュースピシースの元になった両親達はニュースピシースやエクステンデッド達の性能テストの為に殺し合いをさせられ、そのほとんどが亡くなっています。そしてニュースピシース同士でも子供を無理矢理作らせて・・・レオとアリスが連合を嫌っているのはそういった理由だからです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。