ガンダムSEED 太陽の少女   作:黄金鷹

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かなり独自路線に行きました。一部オリジナル設定あります。過去が明確にされていないキャラはこういう時に色々付け足せて便利ですね。


第二十五話 守りたい子

飛び立つインパルスを見たアスランにタリアから通信が入る

 

「アスラン、キメラプロトの撃退、ご苦労様。それでガイアはどうなったの?」

「艦長、ガイアはシンが無力化させました。ですがガイアのパイロットを勝手に連れてそちらに戻りました」

「なんですって⁉︎」

「ええ⁉︎何を勝手に」

 

タリアとアーサーはシンの独断行動に驚いた。偶に態度が悪い時や言葉遣いがあれなところはなくは無いが、基本的には命令を聞いたり、自分勝手な事はしなかったシンの突然の行動の真意が分からなかったのだった。

 

「全く・・・ミネルバ全体に通達して!万一に備えて白兵戦闘準備も。貴方達もすぐに戻ってきて」

「了解。聞こえたなマユ、ルナマリア。急いで戻るぞ」

「了解です」

「了解・・・アスラン、その、ガイアのパイロットの事なんだけど・・・」

「ん?どうしたマユ?何か気になる事でもあったのか?」

 

少しだけしどろもどろになりながら話すマユに疑問を持つアスラン。会話も共闘も何度も行ってきた仲である為今更萎縮される様な覚えもなく、その態度に疑問を感じていた。

 

「あの・・・見間違いじゃ無かったら、もしかしたら知ってる子かもしれないんです」

「何⁉︎本当なのか⁉︎」

 

マユから告げられる言葉に驚きを隠せないアスラン。もしガイアのパイロットがマユの知り合いなら、それはシンも知っている子の可能性がある。弱いものや自分の身内を守ることを意識するあまり視野が狭くなることの多いシンなら、勝手に連れてきて助けようとする事も納得出来るからだった。

 

「私が本当に小さい頃だったから、今どうなっているかは分からないし、遠くからだったので確実にとは言えないんですけど、見覚えがあるんです・・・あの子は」

「分かった、だがその話はまた後だ。今はすぐに戻るぞ」

「はい」

 

セイバー達はミネルバに急いで帰艦する為に全速力を出していた

 

ミネルバの格納庫に急いで戻ってきたシンはインパルスを停めた直後にステラを抱きかかえて降りる

 

「あ、シン。どうしたんだよこの騒ぎは?それにその子」

「うるさい!今急いでるんだ!退いてくれ!」

 

事情を聞こうとするヴィーノに構わず医務室に急ぐシン

 

「あっ・・・どうしたんだよシンの奴、あんな慌てて」

「あそこまで焦っているシンは珍しいな・・・最近はずっと余裕は無かったけど」

 

シンはマユやエリス、アスランとの力の差を感じて強くなろうと寝る間も惜しんで訓練している事を同期達は知っていた。それに加えてハイネが死んだ責任は自分にあると考え、更に自分を追い込んでいる事も知っており、心配はしていたのだが今のシンはそれらとはまた違う別の意味で焦っていると感じていた。

 

「先生!この子を!速く!」

 

医務室に駆け込んだシンがステラの治療をする様に促す

 

「一体なんだね?急に」

「その軍服、連合の兵士じゃないの?」

 

シンが連れてきたのは連合の軍服を着たステラであり、敵兵の治療をする事は基本的には艦長等の指示でもない限り独断でして良いものでは無かった

 

「でもケガしているんです、だから!」

「だが敵兵の治療など艦長の許可無しに」

「そんなのはすぐ取る!だからお願いします!オレにとってこの子は・・・」

 

頭を下げてお願いするシン

 

「そんな事言われても」

「シンはその子を見てなさい。私が行ってくるから」

 

医務室で休んでいたエリスが立ち上がる

 

「エリス・・・」

「エリス隊長、まだ安静に」

「別に腕にだけ気をつければ平気よ。それにこの程度なら死なないから」

「死ぬ?・・・死ぬのは・・・ダメ!」

 

ブロックワードを出されて錯乱したステラがシンに飛びつき掴みかかる

 

「うわぁ⁉︎」

「シン⁉︎この!」

「ワァァァァァ!」

 

シンからステラを引き剥がそうと近づいたエリスに後ろ蹴りをして蹴り飛ばすステラ

 

「グフッ⁉︎痛いわね・・・」

「エリス⁉︎落ち着いてステラ!君を襲ったりしないから!」

「死ぬのは、ダメ!イヤァ!」

 

シンを無理矢理引き起こして壁に叩きつけるステラ。尚も暴れるステラを後ろに回り込んで羽交い締めにして抑えるシン

 

「大丈夫だから!君は死なない!オレが守るから!」

「イヤ、イヤ、イヤァァァァ‼︎」

 

シンが必死に宥めようとするが、ステラには届かなかった

 

「駄目ね、シン。その子を無力化しなさい。頭を殴るでも絞め落としでもなんでも良いから、これ以上暴れられたらどうしようもないわよ」

「そんな事、出来るわけないだろ!」

「そうでもしないと治療とか以前に捕虜にすら出来ないわよ。ここで撃たせて死なせる気なの?」

「エリス!その言葉は駄目だ!」

「え?」

「死ぬ?イヤァァ‼︎」

 

シンを無理矢理引き剥がしたあと近くにあったパイプイスを掴み、シンに叩きつけるステラ

 

「ガッ!」

「シン⁉︎コイツよくも!」

「エリス!これはどういう状況?」

 

兵士を連れて駆けつけたタリア達が医務室の前で状況確認をする

 

「艦長、捕虜が暴れました。申し訳ありませんがなんとか落ち着かせます」

「そんな悠長な事」

「待って下さい!ステラは、オレが」

 

頭から血を流しながら立つシンが再びステラを羽交い締めにする

 

「クゥゥゥ!ハナセェェ‼︎」

「もう大丈夫だから!君はオレが守るから!君は死なない!ステラはオレが守るから!」

「ウウゥゥ!・・・ハァ、ハァ、ハァ・・・」

 

シンの必死な説得でようやく落ち着きを取り戻すステラ

 

「ハァ、ハァ、ハァ・・・シン?」

「ハァ、ハァ・・・良かった、もうだい、じょうぶ、だが・・・ら」

 

ステラを落ち着かせる事に成功し、安堵したシンがその場で倒れ気絶する

 

「シン⁉︎」

「急いで彼女の拘束とシンの治療を!」

 

状況が分からずボーッとしていたステラは両脇から兵士に抑えられる。それでも抵抗の素振りがない事を確認してから、別の兵士がシンを治療の為に運ぼうとする。

 

「シン・・・ダメ!」

 

近寄るザフト兵がシンに触れた途端に自分を掴んでいる兵士を投げ飛ばし、シンの近くの兵士を殴り飛ばしてからシンに覆い被さり庇おうとするステラ

 

「グッ⁉︎」

「コイツ、まだ抵抗を」

「ダメ!シンは死なせない!シンはステラが守る!」

「えっ?なんでシンを・・・」

「一体どういう事なの?」

「シンと何が・・・知り合いなのか?」

 

連合所属である筈のステラがザフト所属のシンを守ろうとする理由が分からず困惑するタリア達

 

「艦長、ここは私に任せてください」

「エリス、貴女何を?」

「ねぇ、貴女。ステラだったよね?」

 

シンを守ろうとするステラに一歩近寄るエリス

 

「シンに近づかないで!シンは私が守る!」

「心配しなくてもシンは傷つけないよ。私達はシンの仲間だから」

 

理由は分からないが、今のステラは話しが通じると判断したエリスはステラを宥めてシンを治療の為に連れて行こうとしていた

 

「シンの・・・仲間?」

「そう仲間。だからシンは傷つけないから。だからね、シンを渡してくれる?」

「・・・シンをどうするの?」

「怪我の治療をしないといけないでしょ?ついでに貴女も。だからもう大人しくしていてね。そうしたらシンも貴女も助けられるから」

 

ステラがどこまでエリスの言葉を信じたのか、理解したのか分からないがステラは渋々シンから一歩下がり距離を取った。エリスはステラを刺激しない様に一歩ずつゆっくり近づいてからシンを担ぎ上げた。

 

「ほら、貴女も。今度は暴れないでね」

「・・・うん」

 

差し出されたエリスの手を掴んで立ち上がるステラ。そのままシンとステラをベッドに寝かしつけた。

 医務室から医療班以外は退室し、エリスはタリアに連れられ艦長室に行った。

 

「敵兵の無力化と部下の保護については良くやったわエリス。けど、その子をどうする気なの?彼女は敵兵なのよ?」

「艦長・・・この子は」

「シンの知っている子らしいけど、ステラだったかしら?一体いつ、どこで敵兵と知り合ったの?」

 

エリスに厳しく問い詰めるタリア。本来問い詰めるべき相手はシンなのだがシンは怪我をしてそれどころではないのと、何故か事情を把握しているエリスが勝手にステラにまで治療をさせたので、同犯としてエリスに責任追及をしていた。

 

「この子はディオキアでシンが助けた子で、家族は居なくて迎えにきた男達も同年代だったので戦争で家族を失った被害者だとその時は思いまして・・・」

「でもあれはガイアのパイロットだわ。それに乗ってたのだから」

「ガイアの・・・それは知りませんでした。そんなに強そうには思えませんでした。あの暴れ方を見るまでは」

 

普段は口数の少なく大人しくステラを知らない人間が兵士である事に気づく事は難しかった。しかも演技でしているわけでなく素の状態でシンに接していたこともあり、尚更か弱い女の子に見えてしまっていたのだった。

 シンとステラ、お互いに敵である事を知らなかったが故に起こってしまった事故みたいなものだった。

 

「分かったわ。後の事はシンに聞くとして・・・これ、見て頂戴」

「はい・・・これは?」

 

エリスが見せられたのはステラの検査結果だった

 

「あの子の体を検査した結果らしいわ。彼女はエクステンデッドよ」

「エクステンデッド・・・それであんなに」

 

ステラの暴れっぷりはナチュラルにしては強すぎた。その事を疑問に思っていたエリスはステラがエクステンデッドである事を知り、納得した。

 

「詳しい検査をしないと分からないらしいわ。外傷はともかく中身まではここでは難しいそうよ。それに記憶も操作されているらしいわ。おそらく貴女達の事は何も覚えていないと思った方が良いわ」

「何もって・・・シンの事も?」

「ええ」

「・・・分かりました。それと独断で彼女を保護しようとして申し訳ありませんでした」

「ええ、次からは気をつけてちょうだい。もう良いわよ」

「失礼します」

 

エリスが艦長室から出ていく

 

(記憶を消された・・・じゃあシンがどれだけ守ろうとしても、あっちには伝わらないって事?辛いわね)

 

シンがステラに好意的なのは十分分かっていた。だからこそシンの事を覚えておらず敵兵としてここに置く事になる事をシンが知ればどれだけ傷つくのか想像しなくてもエリスには痛いほど伝わってしまった。

 

「終わったのかエリス?」

「あ、エリスお姉ちゃん」

 

エリスが出てくるのを待っていたアスランとマユがエリスに声をかける

 

「アスラン、マユ・・・ステラ、あの子の事、聞いた?」

「ああ、エクステンデッドなんだろ?それとシンの知り合いだったか?」

「ええ・・・せっかくディオキアで仲良くなったのにあれではね」

「・・・ディオキアからじゃないよ」

「えっ?」

 

マユの方に振り向くエリスとアスラン

 

「マユ、やっぱり知っている子だったのか?」

「はい。あの子は・・・ステラは、私達の幼なじみです」

「えっ⁉︎それ本当なの?」

 

マユの口から出た衝撃の事実に驚きを隠せないエリスとアスラン

 

「はい。お兄ちゃんに聞いたらもっと詳しく分かると思いますけど・・・子供の頃、隣の家に住んでたステラで間違いありません。よく一緒に遊んでいたから、覚えています」

 

泣きそうな顔で話すマユ。11歳の年齢で自分の友達だった子と殺し合いをしていたという事を知るのは、それを人に伝えるのはあまりに酷な事だった。

 

「そう・・・教えてくれてありがとうねマユ」

「辛かったな・・・」

「ううん、私はお兄ちゃんと居たら一緒に遊んだだけだから・・・けどお兄ちゃんはステラと本当に仲良くて、引っ越してしまう日にも、泣きながらまた会おうと約束してたくらいに・・・だから一番辛いのはお兄ちゃんだと思います。せっかくステラと再開出来たのに・・・目の前で覚えてないなんて言われるなんて酷い話しですよね」

 

兄であるシンの事を思うマユであったが、その言葉を聞いたエリスは言葉を失っていた。先程は知らなかったとはいえシンにステラを攻撃する様に命令してた事を後悔していた。シンがそれ程までに大切な子に乱暴な真似は出来る筈がなかった。

 あの時、敵に殺されそうとパニックになってたステラの事を可哀想に思っていた。だが本当に追い詰められてたのは、幼なじみと味方に挟まれてどうすれば良いか分からなくなっていたシンの方だと、気づいてしまったのだった。

 

「・・・今日はもう休みましょう。明日、シンの様子を見るしかないわね」

「そうだな。マユ、今日はもう寝るんだ」

「・・・はい」

 

マユが通路を歩いていく。その姿を見送ってからアスランがエリスに話しかける。

 

「彼女の事もだが、この後の戦闘はどうする?これ以上シンには戦わせたくない」

「ええ、私もよ・・・けどどうやって止めさせれば良いか分からないわ」

 

シンは弱い人や仲間を守る為にどれだけ自分が傷つこうとも戦いに出てしまう性格なのは分かっていた。その上今はステラをエクステンデッドにした連合に対して強い怒りも抱き、ステラの様な被害者を産まない様にするという理由まで出来てしまう状態だった。

 今のシンは怪我を理由に休ませる事は出来る。だがその後戦いに出さない様にするにはどうすれば良いかエリスは頭を悩ませていた。戦力外にするにしてはシンの力は十分過ぎるほどミネルバの戦績に貢献していた。そうでなくても少数精鋭のミネルバでパイロットの人数を減らすわけには行かないのだった。

 

「まぁ、その時になったら考えましょう・・・今は私達も頭がパンクしそうだし」

「ああ・・・俺もだ」

 

エリスは施設内の惨状とステラとシンの関係に、アスランはラクス暗殺の犯人とカガリ達との決別に対して動揺していた。らしくもない弱音を吐いていたが、互いにそれを指摘するつもりも無かった二人はそのまま解散して休む事にした。

 

「ロドニアのラボの件はともかくとして、ステラ・ルーシェに関しましてはもはや損失と認定する様にとのことです」

 

連合兵士からの連絡に悔しさを隠しきれないフレイ達。ロゴスからの指示でステラは死んだ事になり、スティングとアウルの記憶から消す様に指示されていた。

 

「迂闊だったよ、俺が・・・」

「いえ、大佐はよく彼らを使いこなし、その功績はジブリール氏も」

「ああ、もう良い。そういう話しは」

「はぁ」

 

上からの評価などネオには心底どうでも良かった。この部隊で活躍する事はエクステンデッドやニュスピシースの有用性が証明される事、つまりステラ達の様な子供達がまた生み出され利用される事につながってしまうからだ。仮に失敗してもステラの様に無かった事にされる。そしてまた新しい犠牲者を増やし続けていく。それを繰り返すのはうんざりしていた。

 だからわざと失敗するかというとそうすれば逆に今戦っているスティング達の身も危なくなってしまう。それを良しとしない程にはネオは彼らの事を守る対象として見ていた。彼らの様な子供を守る為にはやはり成果を出して少しでも長く生存させるしかなく、ネオはどうしようもない現状に苛立ちを隠せなくなっていた。

 

「損失か・・・まぁ軍ではそういう言葉になるんだろうな」

「納得できないよ!どうしてステラを助けようとしないのよ軍は!というか何よ損失って言い方!ステラは物じゃないのよ!」

 

軍の意向に納得していないアリスは怒りを爆発させていた。記憶を消せないニュースピシースにはただ命令するしか出来ない。自分の意見を発言出来るだけの自由は残っている分、エクステンデッドよりはマシな扱いだった。

 

「そう言わないでくれ。俺かって良いとは思ってないさ。けど仕方ないだろ」

「何が仕方ないのよ!散々ステラ達の力を利用して助けてもらった癖に、誰も助けようとしないなんて!やっぱクズの集団よ軍人なんて!」

「落ち着けアリス。ネオに言ってもどうしようもないだろ」

 

ネオも中間職なだけで権限が無い事を理解しているレオはアリスを宥めようとするが、アリスには届かなかった

 

「何よレオ!アンタまでそっちの味方する気?アンタも私もコイツらに!」

「確かに連合は嫌いだよ俺も。だがネオに何かされたわけじゃない。八つ当たりは止めろ」

「何それ・・・もう知らない!勝手にしろ!」

 

怒りが収まらないアリスがその場を立ち去る

 

「あ・・・悪いなネオ。アリスの奴、ステラと仲良かったからさ・・・」

「分かってるさ。ステラにもあの子にもアイツらにも悪いとは思ってるよ」

「あんたらは他とは違うさ。俺達を人として見てくれる。だからあんた達の命令なら、受けても良いさ・・・」

 

施設の調査を専門部隊に任せてミネルバはポートタルキウスを目指して出航する

 

「ん、んん・・・あれ?ここは・・・医務室?」

 

目覚めたシンはどうして自分が医務室にいるのか分からず困惑していた。頭や腕、胴体に包帯が巻かれており次の戦闘に出るどころか歩く事すら今は不可能な状態だった。

 

「シン、起きたの?」

「え・・・ステラ⁉︎なんで君がここに、グゥ⁉︎」

 

横からステラの声が聞こえて体を起こそうとするシンだが怪我の痛みで疼くまってしまう

 

「グッ、ってえ・・・なんだよコレ・・・」

「シン、動いちゃダメ。体痛むよ」

「だ、大丈夫、だから・・・ステラこそ、っ⁉︎」

 

なんとか体を起こしたシンが隣を見ると、ステラは頭に包帯が巻かれていたものの、両手に手錠がかけられ、紐で首とベッドを繋がれた状態だった

 

「なっ⁉︎誰がこんな事を!ステラはただ」

「戦争に巻き込まれた被害者、って言いたいのかしら?」

 

声のした方を睨みつけながら振り向くと椅子に座ってシンが起きるのを待っていたエリスとタリアの姿があった

 

「艦長、エリス・・・これはどういう事なんですか!なんでステラをこんな」

「その前にまずは貴方からよ!敵兵を勝手に艦内に連れて、被害が出たらどうするつもりだったのよ!」

「それは・・・」

 

一度時間が経ち、冷静になった事でシンは自分がこうなっている理由を理解してしまった。ステラは連合の兵士でありガイアのパイロットであった。それを怪我していたからという理由だけで勝手に連れてきた結果、ステラが暴れ出し危うく他の搭乗員まで怪我するところだった。

 そして治療したところで降ろすわけにも行かず、ステラは捕虜としてそれ相応の扱いにするしかなくなるというのも分からなくない話しだった。

 

「貴方の知り合いだったらしいけど、敵兵だと知らなかったらしいけど、それにしても私に一言伝えてから行動しなさい。次に独断行動したらこちらも貴方を罰するしか無いわよ」

「・・・申し訳ありません」

 

頭を下げて謝るシン。ステラの扱いに一言言いたい思いではあったが、全面的に自分に非があるので気持ちを押し留めていた。

 

「悪いけど、あの子にはあれくらいはしとかないといけないのよ。エクステンデッドの彼女は暴れられたら私達でも抑えるのは容易じゃない。本当はベッドにぐるぐる巻きにしたかったんだけど、シンを守れないとか言ってまた抵抗されたからね。妥協案としてシンの側に近づける範囲まで行動を制限させる事にしたの。

 訳までは分からないけどステラはシンのこと、守ろうとするからさ」

「ステラが、オレを?」

 

ステラの方を振り向くと、ステラはシンに向かって微笑んでいた

 

「どうせシンはしばらく出撃停止だし、しばらく捕虜の面倒を見る事、良いわね?」

「はっ⁉︎なんでですか⁉︎オレは別に、グゥ!」

 

声を荒げた途端に怪我痛み、傷口を抑える様に縮こまるシン

 

「その有様で戦闘なんて無理に決まってるでしょ。本来ならこの騒動の責任を取らせないといけないのをその怪我で罰を与えた体にしてくれてるんだから。そうじゃ無かったら、今頃貴方営倉の中よ」

「そういう事だからもう勝手な真似はしないでね。分かったかしら?」

「・・・了解です」

 

シンの返事を聞いたタリアとエリスが退室する。残されたシンは自身のベッドに倒れ込む。

 

「シン、大丈夫?ごめん。ステラのせいで」

「ステラは悪くないよ。オレがバカだっただけさ。先に艦長に許可を貰って動くべきだったんだ・・・」

 

ステラを心配させない様に平気なふりをして話しかけるシンだったが、全身の痛みで今にも叫んでしまいそうだった

 

「それにしてもステラが・・・なんで連合に?」

「色んな人に言われて、そういう風に作られ育てられ命令されて、そうじゃないと処分されるからって」

 

ステラは死ぬ事を恐れているが、処分がどういう事を指しているのか分かっていなかった。しかしその意味を分かってしまったシンは怒りで拳を力強く握りしめていた。

 

「ステラをそんな事に・・・許せない。もしかして、一緒にいたあの二人も?」

「スティングとアウルは私と同じだけど、あの時いたのはレオとアリスで、私達とちょっと違うけど、あそこで育った仲だよ」

 

あそことはロドニアにある施設の事を指していた。それが分かったシンは自分が見た惨状を思い出し、心を痛めていた。

 

(じゃあステラもあの子達と同じ様に、体を・・・そして殺しの訓練を小さい時から・・・ん?ちょっと待てよ)

「そういえば、ステラはオレの事、覚えているんだよな。どうして?」

 

エクステンデッドはゆりかごを使って体の調整と記憶の操作をする事は研究資料を調べる中で判明した事であり、シンもそれは知っていた。なら自分と会った時の記憶も消されていると考えていたが、ステラはシンの事を覚えていた事を疑問に思っていた。

 

「分かんない。しばらくゆりかごはあまり使っていなかったから。合体野郎を倒したくて、血を飲んでばかりだったから」

「血を飲む?どうして?」

「ゆりかごの代わりに、人の血で代用できるから。ステラは血の方が好き。見たものを忘れないし、なんか元気が出るし」

「そ、そうなのか・・・」

(もしかして、あの時ステラが落ち着いたのはオレの血を飲んで体の調子が良くなったからなのか?)

「ねぇ、シンが合体野郎のパイロットなの?」

「へ?合体野郎?・・・ああインパルスの事か。そうだね、そうなるね」

「そうなんだ・・・」

 

シンが敵にいた事を知って内心落ち込むステラ。だがステラはシンが自分達を攻撃していた事よりも、優しいシンが戦って傷ついていくかもしれない事の方を憂いていた。

 

「やっぱり、怖いか?敵だったオレの事?」

「ううん、シンは怖くないよ。ステラの事、守ってくれるし、優しいから」

 

立ち上がり、シンの元に歩み寄るステラ。首の紐はシンのベッドに座り込んだ辺りでピンと張り詰める程の長さであり、手を伸ばせばギリギリシンと触れ合えるほどだった。

 

「ステラ⁉︎オレがそっちに行くから別に」

「ダメ、シンは大人しくしていて」

 

シンの頭を優しく撫でるステラ

 

「速く、体が治ると良いねシン」

「あ、うん・・・」

 

ステラとの穏やかな時間を過ごすシンは戦争が再開してから今まで無かった安らぎを感じていた。




シンとステラは幼なじみだったという設定はDESTINY編一話で僅かに匂わせましたが、どうだったでしょうか?これで伏線になってたのか不安です・・・
 ここでシンは負傷していますが、まだ終わりません。今後どうなって行くのかお楽しみに。
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