ミネルバに帰投したインパルスから降りるシン。その周りを整備班の人達やレイ、ルナマリア達に囲まれていた。
「シン!お前凄いよ!」
「まさかお前があのサンシャインを倒すとはな!」
「凄いじゃないシン!あんな戦い方、びっくりしちゃったわよ!」
「よくやったなシン」
「えっ⁉︎あ・・・おう」
周りから絶賛されているシンは褒められる事に慣れておらず言葉が詰まりがちになっていた
「おいおい、お前がそんなんでどうするんだよシン。勲章貰う時もそれはアレだぞ」
「へっ⁉︎勲章?」
「そりゃそうだろうな。あの太陽の少女に、無傷無敗の最強を討ち取ったんだからよ。だからもっと誇れよ」
「て事は、今日からシンはザフト最強って事だよな!」
「ホント、意外だったわ。シンってこんなに強かったのね」
「ごめん、ちょっとどいて!」
シンの周りでみんなが盛り上がっている中をかき分けてマユが駆け寄る
「マユ、大丈夫だったか?悪かったな、途中で放ったらかしにして」
「良いよ別に。そんな事より、ホント凄いよお兄ちゃんは!」
嬉しそうにシンに抱きつくマユ
「ずっと、頑張ってたもんねお兄ちゃん・・・それに、格好良かったよ」
「マユ・・・ありがとう。お前も頑張ったよ」
マユの頭を撫でながら褒めるシン。漸くシンも自分がサンシャインを倒した事に対しての喜びを噛み締める事が出来た。
「マユがフリーダムを撃退してくれたお陰だ。アイツまで居たらオレも勝てなかったよ」
「いやいや、お兄ちゃんがサンシャインに勝てたのはお兄ちゃんの力だよ」
「そうだな。マユも凄いがお前はそれ以上に活躍したんだ。もっと誇っても良いんだぞ」
「レイの言う通りだよ。凄い事だぞ、これは!」
シン達の様子を遠くから眺めているアスランはセナ達が落とされた事に落胆していた。
(セナ、まさかお前が・・・それにアークエンジェルが、いやまだ決まったわけじゃあ・・・)
その場をそっと離れようとするアスラン。アークエンジェルやサンシャインを倒した事を素直に喜ぶ事は出来なかったが、だからと言って軍からの指示に従って戦ったシンとマユ、ミネルバクルー達は間違っていないのでそれを咎めようとは思わなかった。
「酷い顔してるわよアスラン」
「・・・エリス」
立ち去ろうとしたアスランの前にエリスがやって来て声をかける
「悪いが、俺は喜べないよ。たとえ今は味方じゃないとしても」
「それは仕方ない事でしょ。部屋で一人で悲しむくらいは良いんじゃない?」
「・・・分かってるさ」
アスランが立ち去るのを見送ってからエリスはシン達に近づく
「あ、エリス!見てたか?」
「ええ・・・まさか本当にサンシャインに勝つとはね」
「ずっと訓練の相手してくれたからな。エリスのお陰だよ」
「そう?なら実質私のお陰」
「「それは無い」」
「なんでよ〜」
シンとマユに否定されたエリスの声が格納庫内に響く。その様子を見て和んだ全員の笑い声が響いていた。
アークエンジェルの医務室に入ってくるキラとカガリ。ベッドの上で食事をしているネオの隣に包帯を巻いた状態で寝ているセナの姿があった。
「セナ・・・」
「まだ起きないな・・・無理もないか」
「僕の力が足りないから・・・セナに頼りっぱなしになって結局足を引っ張って・・・あの頃から何も変わってない」
悔しそうに拳を握りしめるキラ。前回の戦闘でデスティニーインパルスの動きを躱わすので精一杯でまともに反撃出来なかった自分と比べてセナは動きを見切って対処する事が出来ていた。そんなセナすらも凌駕したインパルスのパイロットの技量と執念にキラは危機感を覚えていた。
「キラが悪いわけじゃない。みんな頑張ってた。キラもセナも」
「分かってる。けど次はこのくらいじゃあ済まないかもしれない。サンシャインは壊されたし、フリーダムだってもう彼らを相手には通用しない・・・これじゃあ何も」
「まさかあの坊主があそこまで腕上げるとはな・・・なんか少しだけ嬉しいな」
食事を終えたネオが話しに入ってくる
「それ、どういう意味ですか?」
「裏表の無い真っ直ぐな奴だったからな。敵だけど少しだけ応援したくなったんだよ」
「会った事あるんですか?」
「ああ、一度だけ捕虜だったステラを返しに来た時にな。今の太陽の少女より包帯を巻いた重傷の状態でな」
ステラを返しに来た時の事を思い出すネオ
「しかし、ステラを助けてくれた恩人同士でこうも戦い合うしかないのは、やりきれないねぇ」
「・・・そういうのはもうたくさんですよ。僕達も」
「だとしたら下手なんだよ、お前らは。どこの連中にも喧嘩売る真似しか出来ないってのはどうかと思うぞ俺は」
「そんなの、こっちだ、って分かって・・・るよ」
セナが目を覚ましてネオに話しかけながら体を起こそうとする
「お前・・・大丈夫なのか?」
「今、そんな事・・・気にしてる場合じゃあ」
「セナ!もう大丈夫だから!」
「大人しくしとけお前は!こういうところは変わってないな!」
キラとカガリが起きあがろうとするセナを再び寝かしつける
「ぐぅ・・・なんか久々かも、体が重いと感じるの」
「なら寝とけよ。どうせしばらくは戦闘なんてしないんだから」
「分からない、でしょ?またザフトが来たら今度は」
「殺されるぞ。その体で出撃してもな」
「・・・けど、私が出なかったらまた」
「お前が無茶して、ここにいる奴らは喜ぶのか?ここまで心配してくれる仲間の気持ちを無駄にするのが太陽の少女って奴なのか?」
「そんなの・・・ちっ」
ネオの言葉を受けて何も言い返せないセナは不機嫌そうにそっぽを向いた
「えっと・・・ありがとうございます。やっぱりこういうのはムウさんが向いていますよね」
「だからネオだって・・・まぁ良いや。ほらアンタらも休め。ずっと起きてたから疲れてるだろ?その子は診ていてやるから、今のうちに休んどけ」
「そうさせてもらうよ。ほら、行くぞキラ」
「うん・・・」
キラとカガリが退室する。ネオは二人を見送ってからセナの方へと視線を向けた。
「起きてたらで良いんだけどよ、一つ聞いても良いか?」
「・・・良いですよ」
「やっぱ寝たフリか・・・まぁ良いや。お前、なんでそこまでして戦おうとするんだ?」
「そうしないとみんな、死んじゃうからですよ。私もキラも・・・みんな」
天井を見上げながら答えるセナ。ネオは相変わらず表情が変わらないセナの事を心配していたが、それを表に出さずに話しを続けた。
「それはそうだろうがな、そうじゃなくてもっと根本的な話しだ。どうしてお前が戦うんだ?はっきり言って休むべきだろお前は」
「私が戦わないと死んじゃうから、目の前で。それが嫌なだけですよ。戦って傷つく事よりも」
「それは・・・そうだな。けど」
「それに、私には・・・それ以外に出来る事が無いんです。敵を撃つ、それだけしか・・・だから大丈夫ですよ」
ネオは何も返す事が出来なかった。会ったばかりのネオにですら分かるほどにセナの心は壊れている。それを気づいていながらも戦い続けようとするセナを、それ以外の道を選べなくなっているセナの事を気の毒に思っていた。
(と言っても、関係のない俺が言っても止まる筈ないからな・・・それにステラをデストロイに乗せて戦わせた俺が言えた事じゃないからな・・・ほんと、嫌なもんだな)
「これで満足しましたか?」
「ああ・・・悪かったな。休んでいる時に」
「別に良いですよ。寝たくないですから」
「どうしてだ?なんか理由でもあるのか?」
「・・・嫌な夢を見るからですよ。守れなかった人に、私が殺した人に、恨み言を吐かれる夢を」
「・・・そうか」
会話を終わらせたネオは横になって寝ようとする。だが頭の中では先ほどの話しのことでいっぱいになっていて寝るどころでは無くなっていた。セナはまだ自分が動けない事を分かっているからか、大人しく目を閉じて寝ようとしていた。
「太陽の少女が負けちゃうなんてね・・・そしたら私、最強じゃないって事?ならもう・・・私ってなんの価値があるんだろう・・・」
呟く様な独り言に返してくれる者は居なかった。そのままセナは疲れが溜まっていたのか沈む様に眠りについた。
「シン?入るわよ」
遂にジブラルタルに着いたミネルバは着港し、ミネルバの乗員は待機命令が出ていた。エリスは自室で待機しているシンを訪ねて部屋に入ると椅子に座って読書しているシンと部屋のベッドで寛ぐマユの姿があった。
「あら、マユも居たのね。丁度良いわ」
「エリス?なんかあったのか?」
「エリスお姉ちゃん。どうしたの?」
「二人はエンジェルダウンで活躍したからね。個人的に祝おうと思ってね」
「祝うって、うわぁ⁉︎」
体を起こそうとしたマユに上から覆い被さるように抱きつくエリス
「ちょ!エリスお姉ちゃん!重」
「ふふん、油断したわね。このまま可愛がってあげるわ」
「ちょ、やめ、ひょわあ!」
ベッドで抱きつかれ身動きが取れなくなったマユをエリスは撫で回す
「くすぐったいから!止めて〜」
「止めな〜い。もう可愛いなマユは」
「お兄ちゃん!助け、にゃあ!どこ触ってヒャ!」
「諦めろマユ。エリスはこうなったら止められないから」
「そんな〜って匂い嗅がないでよ!」
頭の臭いを嗅ぎ出したエリスに抗議の声を上げるマユだったがエリスは止まらなかった。しばらくされるがままにされたマユは疲れ果ててうつ伏せで倒れ込み、エリスの顔は満ち足りた様に輝いていた。
「ふぅ・・・こんなもんかしらねマユは」
「これが祝いなのか?」
「もう勘弁してよ・・・」
「そう?本当に嫌だったら突き飛ばすくらいは出来るでしょ?なんだかんだ言ってマユはこういうスキンシップは好きでしょ?」
「うっ・・・偶にはね」
エリスの指摘で図星を突かれたマユは照れ隠しにそっぽを向く。それ見て微笑んでからエリスはシンの方に振り向く。
「さてと、シンはどうする?」
「どうするって・・・オレは別に」
シンは遠慮気味だったがエリスは構わずシンの隣に座り何をして欲しいか尋ねだした
「シンが一番頑張ってたでしょ。出来る範囲で労わせてよ。新しい本とかはどう?」
「本は自分で買うよ。自分で探すのも楽しいからさ」
「そっか。じゃあ・・・何か美味しい物でも奢ろうか?」
「飯も良いよ。どうせ味分かんないし」
「そうだったわね。けどそれを理由に食事抜きとかは良くないわよ」
「食欲が無いから仕方ないだろ・・・最低限出撃出来る様にはしてるから」
「そう・・・ならせめてちゃんと睡眠はしっかりしなさい。ほら、膝なら貸してあげるわよ」
エリスがベッドに腰掛けて膝を軽く叩いて促す。シンは少し考えた末に大人しくエリスの膝に頭を乗せて横になった。
「なんでこんな急に・・・」
「アンタの頑張りと無茶を間近で見てたからよ。自分の事を蔑ろにしすぎてなのよシンは。エンジェルダウンの時だって、ヒヤヒヤしたんだから・・・」
「そうでもしないとサンシャインは倒せなかったんだからしょうがないだろ」
「しょうがなくない!アンタに何かあったらマユも私も悲しいわよ・・・また私の前で身内がサンシャインにやられるなんて・・・耐えられないわよ」
エリスは自分のすぐ目の前でクルーゼをサンシャインに殺された事がトラウマになっていた。エンジェルダウンでも自分が出撃できない時にシンが倒されそうになり不安な気持ちを抑えられなくなっていた。
「・・・ごめん」
「分かったって言うのなら、自分の事も大事にして。分かった?」
「ああ・・・それと、ありがとうな。エリスにはずっと・・・助けられてばっかで・・・」
シンが眠気に耐えられずそのまま寝始めた
「やっぱりちゃんと寝てないじゃない・・・困った子ね」
「エリスお姉ちゃん。私も」
マユもエリスに抱きつきながら甘えてくる。エリスはシンとマユの頭を撫でながら自身も癒やされていた。
「えへへ、やっぱ3人でいると落ち着くね」
「そうね。最近色々あってゆっくり出来なかったからね。今くらいはこのまま」
「シン。入るわよ」
ルナマリアが部屋に入ってくる
「なんか基地司令部から出頭命令が・・・何この状況⁉︎」
「ルナ・・・タイミング悪いよ〜」
「なんでこのタイミングなのよ・・・せっかく寝てくれたばっかりなのに」
「私が悪いの⁉︎というよりエリスとアスランも呼ばれてますよ」
「私とアスラン?まぁ分かったわ」
呼び出しを受けたエリスはシンを起こそうと体を揺らす
「悪いけど起きてシン。基地司令部から出頭命令よ」
「ん・・・分かった」
「ほらマユも」
「・・・はーい」
マユは渋々エリスから体を離し、起きたシンは眠そうな顔でエリスと共に部屋を出ていった
「でも、なんの呼び出しなのルナ?」
「それは私にも分からないわよ。エリスとアスランはともかくシンもってのが分からないわね」
「う〜ん・・・考えても仕方ない。少しだけシュミレーターでもやってくるかな。早くデスティニーインパルスを使いこなせないと役に立てないから」
「じゃあ私も。やっと怪我が治ったんだし体動かしたいのよね」
基地の兵士の案内についていくシン達
「結局、なんの呼び出しなんだエリス?」
「さぁね、私にもさっぱりよ。アスランは知らない?」
「いや、俺も分からないよ・・・なんでこの3人なんだろうな」
それから無言で歩き出すシン達。格納庫に連れられ待っていたのはデュランダルとミーアだった。
「失礼します。シン・アスカ、エリス・シルファ、アスラン・ザラを連れてきました」
「うん、ありがとう」
「お久しぶりです議長」
エリスがデュランダルに敬礼する。それに合わせてシンとアスランも敬礼をする。
「先日のメッセージ、感動しました」
「いや、ありがとう。私も君達の活躍は聞いているよ。特にシン。君があの太陽の少女を倒したというのは評議会でもずっと話題にされているよ。勲章の用意も出来てるよ」
「ありがとうございます!」
自分の戦いを評価してくれている事を聞いて嬉しそうな顔をするシン。それを見てからデュランダルはエリスにも声をかける。
「本当に良くやってくれているよエリス。君の部隊は」
「お褒めいただき光栄です。ですがこれも全てシンとマユにレイとルナマリア、アスランの頑張りあってこそです。私自身はそこまでですよ」
「そんな優秀な彼らをここまで活躍させられるのも隊長のお陰というものさ。あのラウ・ル・クルーゼにも負けない優れた指揮官だよエリスは」
「・・・ありがとうございます」
エリスは憧れのラウにも負けないというエリスにとって最上級の褒め言葉を受けて顔を綻ばせていた。その様子を横目にデュランダルはアスランの方へ振り向いた。
「久しぶりだねアスラン」
「議長、その」
「アスラ〜ン!お久しぶりですわ!」
アスランがデュランダルに声を掛けようとした直後、ミーアに勢いよく抱きつかれる
「うお・・・お久しぶりです、ラクス」
「会いたかったですわアスラン。あとシンも」
「げっ!」
ミーアに声をかけられたシンはついエリスの後ろに隠れる
「シン・・・流石に失礼だよそれは」
「うっ、けど・・・」
「もう前みたいに追いかけないから。ごめんて」
「いやそれだけじゃなく・・・とにかくオレじゃなくアスランだけにしてくださいよ」
シンは以前ディオキアでミーアのファンサービスに嫉妬したラクスのファンに追いかけらてからシンはラクス・クラインというものに苦手意識を覚えていた。ミーアにも自覚があるのかシンには執拗に迫る事をしなくなった。そして何気に売られたアスランはシンの事をジト目で睨んでいたがシンはそれに気付かないふりをしていた。
「・・・まぁ積もる話しは色々あるだろうが、まずは見てくれたまえ。先程から目もそちらばかりに行ってしまっているだろ」
ミーアの乱入で一人だけ話の輪に入れなくなっていたデュランダルが無理矢理話しを戻しに入る。後ろでミーアが平謝りしている一方でシン達はディアクティブモードで置いてあった3機の機体を見ていた。
「ZGMF-X666Sレジェンド、ZGMF-X40Sリバース、ZGMF-X42Sデスティニー。3機とも従来のものを遥かに上回る性能を持った最新鋭の機体だ。詳細は後ほど見てもらうがおそらくはこの3機がこれからの戦いの主力となるだろう」
「これは・・・」
「あれ、ジャッジメントに似ている・・・こっちはプロヴィデンスそっくり・・・でもどうしてこれを私達に?」
「はぁ、凄ぇ・・・ん、デスティニーって事はこれマユの機体か?いいなぁ」
アスランは少し曇りながら、エリスはかつての機体の面影を感じながら、シンは新しい機体に胸を打たれていた。
「これは全て、君達の新しい機体だよ」
「なっ・・・」
「そうなんだ。じゃあ私は多分あの機体だよね」
「ええっ⁉︎オレ達の機体!本当ですか!」
「ああ。レジェンドとリバースは元となった機体の戦闘データを元に更なる改良を施した機体でね。一方のデスティニーはシンの戦闘データを元に君が乗る事を想定して調整を加えたザフト最強の機体だよ」
「オレの戦闘データ・・・」
デスティニーの方を見ながらしみじみと呟くシン。まさか自分の事をそこまで高く評価してくれるとは思わず感動していた。
「ああ。前大戦最強だったサンシャイン、それを打ち破った君にこそこの機体を託したいのだよ。これからも期待しているよ」
「はい!ありがとうございます!」
自分の事を期待していると言われたシンはより嬉しそうにしていた。エリスは高く評価されているシンの事を誇らしく見守っており、アスランはまた更に激しくなるだろう戦火を嘆いていた。
リバースの型番はほぼ適当です。ミーアの扱いがおかしい気が・・・ちゃんとしたシーンで少し悪ふざけしがちなのは自分の悪癖かもしれません。