ガンダムSEED 太陽の少女   作:黄金鷹

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かなり更新が遅れてしまいました。個人的な事なのですが最近他の事で忙しくなりがちな事と、今後の展開の詳細な部分を考えていたら割と時間が経っていましたね。


第三十四話 疑惑

「オレの新しい機体・・・へへっ」

「背中のビーム砲増えてるわね。それに足にもなんか付いてるし。これ使いこなせるかな?」

 

シンとエリスは自分の新しい機体を観察しながら感慨にふけているいる。だがアスランは一人納得のいかない表情をしていた。

 

「どうしたのかなアスラン?」

「議長・・・これはこれからロゴスと戦っていくために、という事ですか?」

 

アスランは尋ねてくるデュランダルを真っ直ぐ見つめながら質問を返した。その鋭い目つきにミーアは戸惑い、シンは困惑していたがエリスとデュランダルは表情ひとつ変えずにアスランを見据えていた。

 

「戦争を無くす為にロゴスと戦うと議長はおっしゃいました」

「ああ。戦いを終わらせる為に戦うというのも矛盾した困った話だが。だが仕方ないだろう。彼らは言葉を聞かないのだから。それでは戦うしかなくなる」

「では何故彼らを、アークエンジェルとフリーダムとサンシャインを撃てと命じられたのですか?」

「はぁ⁉︎」

「あのバカ・・・」

 

アスランのエンジェルダウンに対する不満を真正面からぶつける聞き方にシンは驚愕しエリスは空を仰いでいたが、デュランダルは顔色を変える事なくアスランの言葉を聞いていた。

 

「あの艦は確かに不用意に戦局を混乱させたのかもしれません。でもその意思は私達と同じでした。戦争を終わらせたいと、もうこんな事は嫌だと。

 デストロイに立ち向かったのだって彼らの方が先だ!なのに何故話し合う機会すらままならないままあんな命令を!」

「では私も聞くが、では何故彼らは私達の所へ来なかった?」

「なっ⁉︎」

「思いが同じというのなら彼らがこちらへ来てくれても良かったはずだ。私の声はあちらにも届いていた筈だ。なのに何故彼らは来ようともせず戦ったのだ?」

「うっ・・・」

 

アスランはこの場で何も言う事はできなかった。本物のラクスを暗殺される疑いがあるからなど事情を知らないシンの前で話すわけにもいかずそもそも証拠も不十分でそれだけで疑う事など出来る筈が無かった。

 そうでないとしても一度アスランにオーブに戻って欲しいと、戦場に介入しないで欲しいと忠告したにも関わらずそれを無視して敵対し続けたのはセナ達の方だった。それを庇える事はアスランにも出来なかった。

 

「機会が無かったわけでもあるまい。グラディス艦長も戦闘前には投降を呼びかけたと聞いている。その言葉にも耳を傾けず撃ってきたのは彼らの方だろう?」

「それは!・・・くっ」

「ラクスだってこうして共に戦おうとしているのに」

「議長!」

「ア、アスラン!そこまでにしとけよ!」

「落ち着きなさいアスラン。気持ちは分からなくは無いけどそれとこれは別の話しよ」

 

熱くなっているアスランをシンとエリスが抑えようとするがアスランはそれで落ち着けるほど冷静にはなれなかった

 

「君の憤りは分かる。何故こんな事に。何故世界は願ったように動かないのかと。実に腹立たしい思いだろう。だが言ってみればそれが今のこの世界という事だ。

 今のこの世界では我らは誰もが本当の自分を知らずその力も役割も知らずただ時々に翻弄されて生きている。アークエンジェル、いや君の友人のキラ・ヤマトや太陽の少女に限って言っても・・・彼らは実に不幸だったと、気の毒に思っているよ」

「不幸?」

 

アスランはなんとか自身の怒りを抑えながらデュランダルの言葉に耳を傾ける。セナの事を太陽の少女と呼んでいた、それはセナの英雄的な活躍しか知らない事を、本人がどれだけ傷つき、それでも必死に戦ってきたかを知らないが故の発言であり、それを理由に判断されている事はアスランには許容出来ない言葉だった。

 

「あれだけの資質、力を持っていたのだ。彼らは戦士なのさ。モビルスーツで戦わせたら当代誰にも敵うものは居ないという程の腕を・・・なのに誰一人、彼女自身それを知らず、知らぬが故にそう育てずそう生きず、ただ時代に翻弄されていた。あれ程の力、正しく使えばどれだけ良い事が出来たか分からないというのにね」

 

いつの間にかキラとセナの話しからセナ一人になっているがアスランはそれを指摘しなかった。それだけでデュランダルはセナの事を一番強い兵士としか見えていない事をアスランは分かったので敢えて指摘しなかった。

 

「ラクスと離れ何を思ったかは知らないが、オーブの国家元首を攫い、ただ戦闘になると現れて好き勝手に敵を撃つ。そんな事のどこに意味があるというのかね?」

「しかしセナは!」

「セナ?」

 

アスランの口から出た聞き覚えのない名前に疑問を感じるシン。それが今までほとんどの人が知らなかった太陽の少女の正体であると気づくのに少し時間がかかっていた。

 

「以前強すぎる力は争いを生むと言ったのは攫われた当のオーブの姫だ。ザフト軍最高責任者として私はあんなわけの分からない強大な力をただ野放しにしておく事は出来ない。

 だから討てと命じたのだ。それは仕方のない事だろう。実際にエンジェルダウンではプロミネンスカノンを撃たれて半分近く戦力を失ったと聞く。その威力と恐ろしさは、君はよく知っているだろう?」

「それは・・・」

「もう良いでしょうアスラン、この辺にしときなさい。それでは失礼します議長。シン、行くよ」

 

デュランダルとアスランのやり取りに不安を感じたエリスは無理矢理話しを打ち切ってアスランの腕を引っ張って出て行った

 

「あ⁉︎し、失礼します」

 

シンは呆気に取られながらもエリスについていくようにから出て行った

 

「あ・・・行っちゃいましたね」

「そうだね・・・まぁ必要な事は話せたさ。後は好きにさせれば良いだろう」

「はぁ・・・」

(大丈夫かなアスラン?議長にあんな態度取っちゃって。見た目は怒ってなさそうだけど・・・)

 

通路までエリスに引っ張られたアスランは掴まれた腕を無理矢理振り解く

 

「何するんだエリス!俺は」

「一旦落ち着きなさい。議長の次は私?それともシンにでも不満をぶちまけるつもり?」

「それは・・・」

「何がしたいんだよアンタは!」

 

エリスに諭されたアスランは俯いていた。だが追いついたシンが怒りのままにアスランを問い詰める。

 

「ちょっとシンまで熱くならないでよ」

「止めないでくれエリス。それよりもアスラン!何がしたいんだよアンタは」

「シン・・・お前は何も疑問に持たなかったのか?ロゴスを撃つことと、アークエンジェルを撃つ事になんの繋がりが」

「敵を撃っただけだ!命じられた通りに!そこになんの違いもないだろ!命令無視するなと言ったのはアスランだろうが!」

 

以前シンに向けた言葉をそのまま返されてしまいアスランは言葉を詰まらせてしまう。その様子を見てシンは失望した様にため息をつく。

 

「なんだよそれ。結局アンタもアスハやオーブの奴らと変わんない、勝手な奴なのかよ」

「シン・・・俺は」

「もう良い。どうせサンシャイン達は敵じゃないとか言い出すんだろ?そんな奴の言葉なんか聞いてられるかよ」

 

シンはそのまま不機嫌そうに歩き出す。それをアスランは見つめることしか出来なかった。

 

「はぁ・・・俺が間違っているのか?だからみんな、俺の言う事を信じてもらえないのか?」

「・・・アスラン。私が言うのもおかしい事だけど、やっぱりアンタはこっちに来るべきじゃなかったわね」

「エリス・・・」

 

エリスがアスランに近寄り話しかけてくる。また何か言われるのかと身構えるアスランだったがかけられた言葉は予想とは違っていた。

 

「やっぱりアンタは、ザフトよりもオーブに居た方が良かったわよ。少なくともナチュラルかコーディネイターか、どちらを勝たせてもアンタの思う平和は訪れないわよ」

「えっ?」

「その点だけで言うならオーブの、カガリの綺麗事が一番アンタの理想通りだと思うわよ」

「エリス、お前・・・」

「私は別にザフトの考えを否定する気は無いわよ。議長の言うままにロゴスを撃つ、それは間違ってないと思うわ。

 けど、殺したから殺されて殺されたから殺してだっけ?そうやって繰り返していく事を止めたいってアンタ達の気持ちは、もう私は否定しきれなくなったわね」

 

エリスはアスランやアークエンジェル側の思いを否定する事はせずに自身の考えを伝えた。それに呆気に取られたアスランは驚きで声が出なかった。

 

「ぷふっ、何その顔w。そんなおかしい事言ってないでしょw」

「いや、お前・・・そんなんじゃなかっただろ」

「それはそうね・・・こう言っちゃあアレだけど、シンにセナが落とされた時、半分くらいは残念って気持ちがあったのよ」

「えっ⁉︎」

「勿論ラウを殺したセナを簡単に許す気は無いわよ。でも、ああして倒しちゃったら謝ってもらう事も出来ないって思ったら少し名残惜しくなってね。

 ・・・いや違うわね。本当はそこまでセナの事憎んで無かったのね。ただラウが死んだ現実を受け入れたく無かっただけなのよ・・・愚かね、私も」

 

アスランから見エリスは嘘をついている様に見えなかった。そしてエリスの言葉でアスランも冷静に自分の事を見つめ直す事が出来た。

 

(エリスも前を、未来を見ているんだな。本当に前が見えなくなっていたのは、俺の方だったんだな。なんとかしないとと思って、焦って自分がしたい事すら見えなくなってたんだな。そんな俺の言葉なんて確かに誰にも届く筈ないよな)

「・・・悪いなエリス。お前には何度も助けられたな」

「少しはマシな顔になったんじゃない?だからってまた裏切らないでよね。もうアンタとやり合うのはごめんよ」

「そのつもりは無いよ。けど、俺はどうしたいのか、やっと分かった気がするよ」

 

その夜、自室に戻ったアスランは一人考え事をしていた

 

(アークエンジェルはまだ沈んだと決まったわけじゃない。きっとカガリもキラ達も生きている筈。今すぐには無理かもしれないが、カガリが代表に戻ればオーブとプラントは争う事は無くなる。そうすれば)

「アスラン、入るわよ」

 

ノックをしたミーアが部屋に入ってくる

 

「ん、ミーア?どうしたんだこんな時間に?」

「どうしたんだじゃないわよ。こんなとこに居たままだったら疑われちゃうわよ。シンとエリスはもうずっと新型の所にいるのよ。貴方も速く」

「疑うって、何をだ?」

「ほらコレ見て」

 

ミーアから渡された写真を見るアスラン。そこにはカガリとセナ、ミリアリアと会って話している時の姿が映し出されていた。

 

「なっ⁉︎いつの間に」

「さっきミネルバに居たレイって子が議長と話していたのよ。もう駄目かもって。早く疑いを晴らさないと本当に」

「・・・いや、もう潮時かもな」

「えっ?」

 

扉が再びノックされ、保安部の兵士が訪ねてくる

 

「ミネルバ所属特務部隊アスラン・ザラ。保安部の者です。ちょっとお話しをお聞きしたい事があるのですが」

「流石議長は頭が良いな」

「えっ?」

「俺は、議長の望む様な戦うだけの人形にはなれない。どうせもう追われる立場だというのなら!」

 

アスランは窓ガラスを破壊し、ミーアを連れて外に出て屋根の上に身を潜めた

 

「えっ⁉︎ちょっとアスラン!」

「君はここにいろ。すぐに終わらせる」

「ったく、往生際の悪い奴め」

「まだそう遠くには行ってない筈だ!探すぞ!」

 

アスランを追って外に出てきた保安部の兵士を上から奇襲をかけ、瞬く間に無力化させる

 

「アスラン・・・貴方」

「逃げるぞミーア。こっちだ」

 

奪い取った銃を持ちながらミーアの手を取って脱走を計る。だがミーアはアスランの行動の意味が分からず足を止めた。

 

「ちょっとアスラン!どうしてこんな」

「議長は自分の認めた役割を果たす人間には優しいかもしれないが、役に立たなかったり言う事を聞かない人間、そして邪魔な者には容赦しない。このままラクスのふりを続けたらいずれ君も議長に殺される。だからその前に」

「嫌よ‼︎あ、あたしは、あたしはラクスよ!」

 

アスランの手を払いのけるミーア。ミーアは自分こそがラクスと主張を始めるがアスランにはミーアが無理をしている様にしか見えなかった。

 

「ミーア!」

「違う!あたしはラクス、ラクスなの!ラクスが良いの‼︎役割通りに生きても良いじゃない!それの何がいけないのよ?」

「ミーア・・・」

 

ミーアの悲痛な叫びの意味をアスランには分からなかったが、並々ならぬ苦労と思いを感じたアスランはミーアは共に来てくれないと悟った

 

「そうか・・・なら良いさ。何か聞かれたら俺に人質にされそうになったとでも言ってくれ」

「え⁉︎ちょ、アスラ」

「元気でな、ミーア」

 

ミーアの言葉を最後まで聞かず、アスランは駆け出した。後ろから泣き声が聞こえた気がしたがアスランは振り返らずに逃げ道を探す事にした。

 

「ここも駄目か・・・クソッ!動きが速い。かなり前から準備していたな。仕方ない。誰も部屋に居ないでくれよ」

 

扉がロックされており、建物内に入れない事に気づいたアスランは窓を突き破って部屋に侵入することにした。勢いをつけて窓を突き破ると、そこにはシャワーを浴びようと服を脱ごうとしていたメイリンとばったり会ってしまった。

 

「なっ、しまった⁉︎メイリンの部屋だったか」

「へっ⁉︎アスランさん!何をして」

「悪い、すぐ出るから。だから声は俺が出てから」

「保安部だ。室内を検分したい。ドアを開けろ」

 

騒ぎを聞きつけた保安部が訪ねてくる

 

「えっ?えっと・・・」

「俺が出たら銃で脅されていたと言え。そうすれば君は被害者だ良いな?」

「あ、えっと・・・こっち!」

「えっ⁉︎」

 

メイリンに腕を引っ張られてアスランは浴室に押し込まれてしまう

 

「な、一体何を」

「静かにしてください。あと、後ろ見ててください」

 

突如浴室に押し込まれたアスランは抗議の声を上げようとしたが、突如服を脱ぎ出し頭からシャワーを浴び出すメイリンの姿を見ない様に目を背けた。その間にメイリンはタオル一枚だけを羽織って保安部の兵士達の前に出て行った。

 

「あっ・・・なんでこんな・・・おっと」

 

外の会話の様子に耳を傾けようとするが床に脱ぎ捨ててあるメイリンの下着が視界に入りそうになり、アスランは目を閉じてただ待つ事しかできなかった。

 

(クソ、もし見つかったら色んな意味で終わるぞ・・・ってルナマリアの声まで聞こえるぞ、くっ・・・)

 

命を狙われているのとはまた別の緊張感がアスランに走るが、やがて足音が遠ざかっていき扉が閉まる音を確認してからアスランは浴室を出た。その場でへたり込むメイリンに上着を着せてから助けてもらった礼を伝えた。

 

「ありがとう。お陰で助かった。だが何故だ?」

「分からないです。でも、アスランさんは悪い人じゃないのは分かってますから・・・だから何かおかしいと思ったんです」

「そうか。だが危険だからこれ以上関わらない方がいい。メイリンはここで大人しく」

「待って下さい!ここを出るんでしょう?なら格納庫に」

「格納庫・・・確かにモビルスーツを一機奪えればここを出るのも不可能じゃない。けどあそこの警備は」

「私に任せて下さい!」

 

メイリンは部屋のパソコンから基地のホストに侵入して警報を鳴らさせて捜査の目を撹乱させた。その隙にアスランとメイリンは共に格納庫を目指していた。

 

「君のお陰で助かったが、良いのか?ここまでしたら君も」

「良いんです。こんなの絶対おかしいですから。それとも、アスランさんは本当に裏切ったんですか?」

「そんなわけないだろ・・・と言いたいが、議長はそう思っていないそうだ」

「議長が⁉︎それって怪しくないですか?」

「だが俺はともかく君はまだ残る事は出来る筈だ。何か聞かれたら俺に脅されたと言えば疑われる事は無いだろう。流石に君をこんな事に巻き込んでルナマリアと生き別れになんてさせたく無いから」

「アスランさん・・・見えました!」

 

格納庫についたアスランとメイリンは警備の人間が居ない事を確認してからグフイグナイテッドの足元に近づいた。

 

「今は港に集まっている筈です。すぐに出れば追っ手が来るにしても時間がかかると思います」

「ありがとうメイリン。けど良いのか?」

「はい・・・少し名残惜しいですけどね」

「そうか・・・元気で、危ない!」

「キャァ⁉︎」

 

アスランがメイリンを庇いながら銃弾を避ける。物陰に隠れながら撃たれた方向に振り向くと銃を構えたエリスがそこに居た。

 

「やっぱり・・・また裏切ったのねアスラン」

「エリス・・・俺は」

「言い訳は結構よ!」

「クッ!」

 

アスランに向けて銃を撃つエリス。アスランは銃弾を横に転がって回避しながらエリスに向けて撃つが物陰に隠れてやり過ごされる。

 

「メイリンまで巻き込んで・・・共に戦った仲間だったけど容赦しないわよ!」

「待ってください!アスランさんは」

 

メイリンはエリスを止めようと立ち上がって姿を見せるがエリスに発砲されて腰を抜かす

 

「キャア⁉︎」

「止めろ!メイリンは関係ない!」

「関係ない?基地の警報を鳴らして警備の目を誤魔化して関係ないとでも言うつもり?」

「なんでそれを⁉︎」

「ここの警備は厳重なのよ。その基地のホストにハッキング出来る程の優秀なハッカーなんてそうそう居ないわよ。普段からやっているのならともかくね」

「普段から?」

 

アスランはついメイリンの方を向くと日頃の行いがバレた事に動揺して目が泳いでいるのが見えた。その反応でアスランも察してしまった。

 

「メイリン・・・それは庇えないぞ」

「うぅ、こんな形でバレるなんて・・・」

「・・・軍の機密事項程度なら私だって黙ってあげても良かったけどね、これは流石に許さないわよ。覚悟しなさい」

 

メイリンに銃を向けるエリスだったがアスランに銃を撃ち落とされてしまう。その間にメイリンはグフイグナイテッドに乗り込み起動させていた。

 

「くっ⁉︎相変わらずいい腕してるわね、むかつく」

「悪いが説明する時間も無い。行かせてくれ」

「アスランさん!速く!」

「待て!」

 

エリスの静止を振り切って、アスランも乗ったグフイグナイテッドは格納庫から飛び立って行く

 

「クソ!逃げられた!・・・なんでこんな・・・」

「今は考えても仕方ないだろ、エリス」

 

グフイグナイテッドの背中を見つめる事しか出来なかったエリスにレイが駆け寄り声をかける

 

「レイ・・・アンタも来てたのね。よく気づいたわね。逃げられちゃったけど。私達もグフに乗って追いかける?」

「いえ、それよりももっと良い機体がありますよ」

「・・・仕方ない。こうなったら私とレイで」

「シン、デスティニーとレジェンドとリバースの発進準備をさせろ。逃走犯がモビルスーツを奪って逃走した。追撃に出るぞ」

「ちょっ⁉︎レイ!」

 

シンに通信して追撃に出るように指示するレイにエリスは抗議の声を上げる

 

「何故です?人手は多いに越した事は無いでしょ?」

「それはそうだけど!けどシンは関係ないでしょ!それに」

「今は無駄話をしている場合じゃあありませんよ!急ぎましょう」

「あ、ちょっと!・・・もう、どいつもこいつも!」

 

苛立ちを感じながらもエリスはレイと共にリバース達が置いてある格納庫に急いで向かった

 

グフイグナイテッドで海上に出たアスランとメイリンは雷雨に紛れながら脱走を図っていた

 

「とんでもない事になりましたね・・・これからどうするんですか?」

「アークエンジェルを探す」

「えっ⁉︎でもあの艦は」

「きっと沈んじゃいないさ。キラも・・・セナだって」

「・・・はっ⁉︎後ろ!」

「なっ⁉︎」

 

後ろから放たれたビームライフルの射撃を躱わすグフイグナイテッド。後ろを振り向くとレジェンドとリバースが追いかけてきており、その後ろにはデスティニーの姿も見えた。

 

「見えたわね・・・ここで止めるわよ!」

「逃しはしないぞアスラン。ギルを裏切った報い、ここで受けろ!」

「アスラン・・・なんでなんだよ!」

「エリス、レイ・・・シンまで・・・」

「このぉ!」

 

全身を青く染め、胸部と足先は黒、肩と手を赤く彩ったジャッジメントの後継機、リバースが4本の背部ビーム砲でグフイグナイテッドの行く手を遮る様に威嚇射撃をする。なんとか躱したグフイグナイテッドにレジェンドがバックパックに連結されているドラグーンを一斉掃射する。

 

「くっ⁉︎よせ!エリス!レイも!メイリンまで殺す気なのかお前達は!」

「メイリンは情報のエキスパートだ。本人の意思に関わらず軍の機密事項を抜き取られる危険がある以上、ここで始末するしか無い。何より俺達を、議長を裏切ったお前達は生かして置けない」

「死にたくなかったらここで止まりなさい!無駄な抵抗は意味ないわよ」

「クソ!この」

 

グフイグナイテッドはレジェンドに向けて4連装ビームガンを撃ち牽制する。その間にリバースは接近してビームソードガンで切り掛かるがシールドで受け止める。

 

(やっぱり。さっきの撃ち合いから思っていたが、エリスは手加減をしてくれている。エリスなら話せば分かってくれるか?)

「聞いてくれエリス!俺は裏切るつもりは無かった!だが無実の罪を議長に着せられて処分されそうになっただけだ。メイリンはそんな俺に巻き込まれてしまっただけなんだ。だから」

「無実の罪?そう言うのはね、荒事を起こす前に直接言えって事よ!」

 

シールドでビームソードガンを弾かれるがすぐに腹部に蹴りを入れて海面スレスレに蹴り落とすリバース。その後ビームソードガンの二丁拳銃でグフイグナイテッドの周りを撃ちまくり動きを封じる。

 

「これじゃあ逃げられない!アスランさん」

「大丈夫だメイリン、君は俺が死なせない。それにエリスは本気で殺すつもりは無い」

「えっ?本当ですか?」

「本気で倒す気なら蹴りじゃなくて足のビームブレイドで終わらせていた筈だ。レイにさえ気をつければなんとか」

「なんでこんな事になるんだよ!」

 

リバース達の後ろからグフイグナイテッドに向けて長距離射程砲を撃つデスティニー。上に飛んで回避するが追撃のビームライフルを撃たれたグフイグナイテッドは紙一重で躱わす。

 

「シン!止めろ!メイリンを殺す気か?」

「うるさい!アンタが巻き込んだくせに!」

「止めろシン!お前も踊らされているんだ!」

「はっ?」

「聞けシン。議長やレイの言う事は確かに正しく心地よく聞こえるかもしれない。だが彼らの言葉はやがて世界の全てを壊す」

「はぁ⁉︎何言ってんだよ!意味分かんねぇよ!」

 

アスランの説得はシンには上手く伝わらなかった。アスランも焦りのあまり自身で思っていることをいつも以上に言語化することが出来ていなかった。だが伝わらないでもシンに今の状況について考えさせるだけの効果は持たせられた。

 

「オレにどうしろと言うんだよ!」

「シン、お前も」

「聞くなシン!アスランは既に少し錯乱している!」

 

言葉でシンを動揺させるアスランを止める様にレジェンドはビームジャベリンを取り出してグフイグナイテッドに切りかかった

 

「ふざけるなレイ!俺は」

「惑わされるなシン」

「シン!どうしても討つというのならメイリンだけでも降ろさせろ。彼女は」

「彼女は既にあなたと同罪だ。その存在に意味はない」

「くそっ、オレは・・・」

 

シンにとってレイの言葉は正しい事ではあった。かと言って今日まで味方だったものを、たとえあまり仲良く出来なかった相手であろうと簡単に割り切る事はシンには出来ず、どうするべきなのか迷いが生じていた。そのまま動きを止めてしまったデスティニーにリバースが近づいてくる。

 

「シン。無理だと言うのなら、嫌なんだったら貴方は戻りなさい」

「エリス・・・けど」

「貴方はこんな事で苦しむ必要は無いわ。裏切り者を撃つなんて、頭で分かっていても簡単に割り切れるものじゃないわ。なら出来る奴に任せれば良いのよ。見てみなさい」

 

リバースの指差す先を見るデスティニー。レジェンドはビームジャベリンで切りかかり、グフイグナイテッドはテンペストビームソードで対抗していたが性能差で押されていた。

 

「どれだけパイロットの腕が高くてもレジェンドとグフの性能差を覆すのは無理よ。しかもレイは初めて乗ったレジェンドを使いこなせている。貴方が居なくてもレイ一人で十分撃墜出来そうよ」

「けど、それじゃあ」

「レイは躊躇しないでしょうね。落とされるのも時間の問題ね」

「だったらどうしたら良いんだよ?どうしたら」

「助けようだなんて考えるだけ無駄よ。貴方まで裏切り者になるつもり?覚悟が出来ないなら、大人しくしていて」

 

リバースはレジェンドとグフイグナイテッドの間に割って入りビームソードガンでグフイグナイテッドに切りかかる。咄嗟に躱してテンペストビームソードを投げつけるが脚部のビームブレイドで真っ二つに割った。

 

「エリス!クソォ!」

「抵抗は無駄と言った筈よ、アスラン!」

 

レジェンドとリバースに攻められグフイグナイテッドは躱わすので手一杯だった。デスティニーはその様子を少し離れたところで見ているだけだった。

 

「アスラン・・・メイリン・・・オレは」

「良いのかシン?このまま奴らを放っておいて?」

「レイ、でも」

「お前はなんの為に戦っている?お前が力を求めた理由は何だ?」

「レイ・・・」

 

レイはシンに発破をかける為にシンの戦う理由を聞いた。シンは今一度自分が力を求めた理由を考えていた。

 

「マユとエリス、それとあの子を守りたくて、親しいものを守りたくて力を求めたんじゃないのか?このまま奴らを放っておいて、お前の大事なものが傷つく事になっても良いのか?」

「止めろレイ!俺もメイリンもそんな事は」

「お前が躊躇したら、また大切なものが失うかもしれないぞ。それで良いのか?」

「はっ⁉︎」

 

両親が流れ弾で死んだ瞬間とデストロイのコクピットにビームサーベルを突き刺すサンシャインとサンシャインがデスティニーインパルスを墜落させた時の記憶がフラッシュバックするシン。その瞬間、シンからは戸惑いが消えていた。

 

「そうだ、オレはもう・・・失いたくないんだ、だから!」

「シン!」

「オレは、オレはぁぁぁぁぁぁぁ‼︎」

 

シンのSEEDが発動する

背中に背負ったアロンダイトを取り出して構えたデスティニーは光の翼を展開してグフイグナイテッドに突撃する。咄嗟にアロンダイトの一振りを躱わすがデスティニーはすぐに追いついた。

 

「なっ⁉︎シン!お前」

「アンタが悪いんだ。アンタが、裏切るからぁぁぁ!」

「クソ、だが!」

 

グフイグナイテッドがデスティニーに向けてスレイヤーウィップを飛ばす。光の翼を展開した時の加速力は凄まじいが制御が効かなくなり、マユでも未だにコントロールできていない程難しいものだった。アスランは急には止まれず直撃するか、回避の為に方向転換した際に離れて行ってしまうと考え、デスティニーに反撃をした。

 だがデスティニーは僅かに後退してからスレイヤーウィップを掴み取り、掌に仕込まれたパルマヒィオキーナで破壊した。

 

「なっ⁉︎」

「嘘、でしょ⁉︎」

「シン、貴方・・・そこまで」

 

デスティニーの一連の動きを見て、アスランとメイリンは、側から見ていたエリスですら困惑していた。あまりの加速力でコントロールが効かないと思われていたデスティニーの最大稼働をシンは完全に制御していたからだった。

 

「ウォォォォォォォ!」

「クッ⁉︎」

 

再び近づいてきて切りかかるデスティニーにグフイグナイテッドは対応しきれず、シールドごと左腕を切り落とされてしまう。なんとか下がりながら4連装ビームガンを撃つもののデスティニーはその機動力を存分に発揮して、目で追うのも精一杯の速度で迫ってきて、右腕を切り落とした。

 

「クゥ、シン!お前」

「オレは、オレが・・・戦争を終わらせるんだ。だから、誰であろうともオレは‼︎」

 

デスティニーがアロンダイトを構えて突撃する。その一撃を躱せずグフイグナイテッドの胸部の左側にアロンダイトが突き刺さる。そのまま落下したグフイグナイテッドは海中で爆発し完全にロストした。

 

「はぁ、はぁ、はぁ・・・くっ」

「シン・・・」

「シン、よくやった」

「レイ・・・オレは、アスランを・・・メイリンを・・・」

 

デスティニーの元にリバースとレジェンドが近寄り声をかける。任務を終えた直後だがそこには無事にやり遂げた達成感など微塵も感じられなかった。

 

「敵を討ったんだ、お前は。裏切り者を」

「でも・・・二人を・・・殺して、しまった・・・オレは」

「気にするな。裏切り者を倒してお前は大切なものを守ったんだ。お前が」

「シン・・・貴方は悪くないわ。戻りましょ」

 

シンは本当は無力化させて捕まえようとしていたのだったが、誤って撃墜してしまった。その事を後悔して嘆いていたが、レイは賞賛しエリスは帰還を促した。

 

「エリス・・・オレ、オレは・・・」

「強くなったわねシン。大丈夫、貴方はちゃんと、人を守れる力を持っているわ」

「そうだシン。お前がザフトで最強なんだ。だから議長も俺達もお前の強さを信じているんだ」

「エリス・・・レイ・・・」

 

レジェンドとリバースが方向転換して基地に帰還する。デスティニーも遅れながらも後についていく。

 

「うぅ・・・なんでこんな、オレはただ、アスランとメイリンを・・・うぅ」

(シン・・・やっぱり凄く傷ついているわね。なんでレイはそこまでシンにやらせようと・・・いやそれよりも、これからどうするかね・・・)

 

自分が仲間を殺した事に深く傷ついているシンを心配しながら、エリスはこれからの戦いについて考えていた。雷雨は未だ弱まる気配はなかった。




今回はアスラン視点を中心としていた為デュランダルとレイの密談など少し飛んだ部分がありますが、本家と同じ感じだと思ってください。
 遂にデスティニーの戦闘を描く事が出来ましたね。個人的にSEEDのモビルスーツの中で一番好きな機体なので楽しみだったのですが、当のシンは凄く落ち込んでいますね。冒頭ではあんなに嬉しそうだったのに・・・やはりこの辺は本家通りにすると地獄みたいな空気になってしまいますね。
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