ガンダムSEED 太陽の少女   作:黄金鷹

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この話しは直前までどうするか悩んで描きました。賛否両論の分かれそうな展開ですが楽しんでもらえれば嬉しいです。


第四十二話 仮面を外す時

「ん、うぅ・・・」

「あ、アスランさん。目が覚めたんですね」

 

医務室で寝ていたアスランが体を起こそうとするのをメイリンが手伝う。その様子を見ながらキラが声をかける。

 

「大丈夫ですかって聞かない方が良いよ、アスランがには。絶対、大丈夫って言うから」

「そうですわね」

「あっ・・・はい」

「・・・本当に大丈夫だ」

 

キラだけで無くラクスにまで言われてしまいアスランは不機嫌そうに答える。その様子から少しは休めたと思いキラは安堵した。

 

「でも良かった。またこうして君と話せる日が来て・・・平和な時は当たり前ですぐ忘れちゃうけど、そういうの本当は凄く幸せなんだって」

「キラ・・・」

 

アスランの頭に浮かぶのはカガリとセナの事だった。何も言わないままザフトに復帰してカガリに心配をかけてしまった事、自分やカガリの為に動いてくれたセナと口論になってしまった事。あの時に気づけなかった事をキラに言われてアスランはため息混じりに答える。

 

「そうだな・・・俺も、忘れていたらしいな。二人にはちゃんと謝らないとな」

「体を治してからにしてね。また倒れられても困るから」

「お前な・・・」

「ふふふ」

 

にやけ面で揶揄うキラにアスランはそっぽを向く。そんなアスランを見て微笑むラクス。戦争が再び始まってからしばらく無かった穏やかな空気にキラ達は和んでいた。

 

「お?起きたのか。しかし危なっかしい奴だな」

「良かった。もう大丈夫そうねアスラン君」

「あ、目覚めたんだ。良かったね」

 

偶然医務室の近くにやってきたマリュー達がアスランに一言声をかけてくる。

 

「はい・・・ご迷惑をおかけしました」

 

見舞いに来たマリュー達に軽く会釈してからアスランはベッドに横たわる。そのままもう一度眠ろうとしたアスランだったが

 

「・・・って待て‼︎?ちょっと待て‼︎?グゥ!」

 

マリュー達と来ていたステラに気付き驚愕し飛び上がる様に体を起こすアスラン。しかし勢いよく起き上がった反動で傷が痛み蹲ってしまう。

 

「アスランさん⁉︎大丈夫ですか?」

「大、丈夫、だ・・・いやそれよりも!なんで君がここに?」

「君じゃない。ステラはステラ・ルーシェだよ」

「あ、すまない・・・いやなんで⁉︎」

 

ムッとしながら自己紹介するステラを尻目にアスランはキラに質問する。そのあまりの慌てっぷりと先程見せた綺麗な二度見にキラは苦笑いしながら答える。

 

「さっきのメイリンと同じ反応してるよ・・・まぁ良いや。この子、ステラが連合に居た事は知ってるんだよね?ベルリンの時のデストロイに乗ってたのを保護したんだよ」

「保護?あ、あの時か⁉︎あの一瞬で・・・」

 

キラの説明でサンシャインがデストロイを破壊するついでにステラを連れて行った事を理解したアスランはセナの技量に感嘆する。あのデストロイを相手に旧式のサンシャインで勝利するだけで無く乗っていたパイロットを救助してみせたセナに心の中で称賛していたアスランだったがある事に気付き顔色を変える。

 

「アスラン、どうしたの?」

「もしあの子が乗っていると分かっていたら、いやまさか・・・なぁメイリン。もしかして」

「多分、シンも気づいていたと・・・なのであそこまで太陽の少女に・・・」

 

二人して顔を合わせて青ざめるアスランとメイリン。ベルリンでの戦闘以降のシンの行動とアークエンジェル視点での情報を合わせた結果、二人はシンがサンシャインに固執する理由が分かってしまい頭を抱える事になってしまった。

 

「えっ?二人してどうしたの?」

「どうしたというか・・・どこから説明するべきか・・・そういえばセナは?アイツはどの行ったんだ?」

「セナならアスランがお目覚めになる前に出ましたわ。今はカガリさんが一番大変だから手伝わないとって」

「そうか・・・ったくどうしてこうなるんだよアイツは」

 

オーブの内閣府を警護するM1アストレイ達に機体接近のアラームが挙がる

 

「ん?なんだ?」

「どこから・・・空か!」

 

上空を見上げるM1アストレイ達。その視線の先には上空を飛んでいたストライクルージュの姿があった。

 

「ストライクルージュ⁉︎何故カガリ様の機体が?」

「誰が乗っている!答えろ!」

 

現在カガリが被害者達の救援と混乱するオーブをまとめる為に奔走している事はオーブ政府とオーブ軍であれば分かりきっている事である。故にカガリ用の機体であるストライクルージュに今乗っているパイロットがカガリでは無いことは一目で見抜いていた。

 

「驚かせてしまい申し訳ありません。私は太陽の少女。アスハ代表の警護の為に来ただけです」

「えっ⁉︎そうだったのですね、申し訳ありません」

「気にしなくて大丈夫です。ストライクルージュは以前カガリ様を連れて行った時に持って行ったのでついでに返しておこうと思い乗ってきました」

 

地面に降り立つやその場でしゃがみ込むストライクルージュ。その直後にコクピットから降りたセナは何時ぞやの代表誘拐の時に使用していた仮面で顔を隠していた。

 

「代表の元まで案内します」

「必要無いです。何度か来ていますので分かります」

 

内閣府に入ったセナは迷いなく進んでいく。そのまま真っ直ぐにカガリの元に辿り着いたセナが見たのは演説の準備をしているカガリの姿だった。

 

「セナ⁉︎お前・・・休んでいろと言った筈だぞ」

「もう十分休んだわよ。それにカガリこそずっと働き詰めでしょ?お互い様よ」

 

カガリに声をかけながら仮面を外すセナ。その仮面を見たカガリは呆れた顔をしていた。

 

「まだあったのか、それ・・・ていうよりお前何個仮面持ってるんだよ」

「仕方ないでしょ。名前隠す為の太陽の少女だったんだから素顔バラしちゃ駄目でしょ」

 

前大戦後にセナはカガリの護衛として付いてくる時にはごく一部の事情を知る者を除いてオーブ軍や政府関係者の前では素顔を隠して人前に出ていた。そのバリエーションも無駄に豊富でありサングラスに帽子とシンプルなものからブカブカのパーカーにフードまで被った性別まで分からない中性なスタイル、目から上を全て覆う3本ツノの白い仮面を付けている時もあった。

 

「まぁ良いや。お前が変なのは今に始まった事じゃ無いしな」

「酷い言いようね・・・」

「初めて会った時はふらふらだったし、明らかにやばい状態の癖に自分より人の事を心配するお人好しだし・・・見てるこっちの方が心配になる」

「そこまで言う⁉︎」

 

カガリの酷評に抗議の声を上げるセナ。そんな様子を見てカガリは笑いながら話しを続けた。

 

「おまけに考える事もやる事もぶっ飛んでるし。普通地球軍辞めさせられた直後にオーブ軍に入るかよ、しかも変な偽名で通そうとするし・・・けど、お前のお陰でオーブも私も助かった。全部とは言わないがそれでも多く救われていると思う。ありがとうな」

「えっ?ど、どうも」

 

突如感謝の言葉を言われたセナは困惑を隠しきれなかった。あんまり自覚の無いセナにカガリは苦笑していた。

 

「だから私も自分に出来ることをしようと努力している。それでも向いてない事、出来ない事が多くあるし迷惑だっていっぱいかけた」

「迷惑なんて・・・カガリは精一杯やっているでしょ。それくらいは分かっている」

「その結果が今の現状だ。自国すら纏める事が出来ずウナトやユウナ達を止められず再び国を焼かれる事になった。

 あそこまで被害を抑えられたのはお前や軍のみんなの奮闘のおかげだが、そもそもまた攻められない様に立ち回れば被害をゼロに出来た筈なんだ」

「そう、かもね・・・けど・・・」

 

自分を責めるカガリにセナはなんと声をかければ良いから分からず言葉を詰まらせてしまう

 

「正直な話、セイラン家に政権を取られそうになっていた時にそれでも良いかって思ってたんだ。私は経験の無い小娘だし理念を守る事ばかりで現実を見れていない。お父様の娘だから後を継いだだけで、お父様の様にはなれないって。本当は向いてないんだろうなってのはずっと思っていた事だったから」

「カガリ・・・」

「でも違った。それはただ逃げる為の口実だった。私はどうやってもお父様の様にはなれない。なら私にしか出来ない事を目指すしか無いんだって今になって気づいた。私の事を信じてくれた者の為に、私の事を助けてくれたお前達の為にも、お父様の名に恥じぬ様な国の代表になってみせるさ」

 

真っ直ぐ前を見つめるカガリの瞳にセナはは力強さを感じた。それを見てセナは慰めの必要は無いと安堵した。

 

「そっか・・・かっこいいじゃん、カガリ。応援しているから」

「ありがとな、セナ」

 

セナに向けて拳を前に突き出すカガリ。セナもカガリに合わせて拳を握りしめながら前に突き出しグータッチをする。立場の関係上あまり表には出せないが二人の友情はいつまでも変わらない、そんな二人の関係を示すかの様にピッタリと噛み合った。

 

ミネルバの休憩室のソファに座るシルファ隊。全員が黙りこくっておりその表情も暗く沈んでいた。

 

「・・・これからどうするんでしょうね、私達?」

 

そんな沈黙の中放たれたルナマリアの疑問にエリスが頭痛が痛む様な面持ちで答える。

 

「ジブリールに逃げられた以上、オーブと敵対する理由はもう無いからね。後はお偉いさん方に任せて停戦交渉してもらってってところかしらね。ジブリールの方も宇宙に逃げたと思われるけどそっちは時間の問題でしょ。見つけて捕まえてそれで終わりよ」

「本当にそう簡単に行くと思うのか?」

「・・・そうなったら楽だなって思っただけよ。今はちょっと考え事したくない」

 

エリスのらしく無い楽観的な予測に聞き返すレイ。エリスもその自覚があるので渋々返答をする。

 

「セイランの馬鹿お坊ちゃんが指揮するオーブ軍なら大した事無いからすぐ終わると思ったのに・・・なんであんな新型引っ提げて勢揃いするのよアイツら」

「確かに強かったね。私全く役に立てなかったし・・・」

 

エリスの言葉に同意するマユの表情はかなり落ち込んでいた。オーブに現れたストライクフリーダムとインフィニットジャスティス、そしてライズサンシャインを相手にマユは終始圧倒されており何も出来なかったと考えていた。あちら側は全く余裕がない程に追い込まれていたのだがマユの視点では手抜きでも自分達を抑えるくらいの余裕がある様に見えておりそれ故に余計に自信を失わせていた。

 

「マユはアイツら相手に頑張っていたでしょ。私なんてなんの邪魔も無かったのにあのシャトルを止められなかったし」

「シャトルを追いかけて全速力で飛びながらの射撃なんて狙いつけれるわけないでしょ。それにシャトルを逃したのは私も同じだし」

「それを言うんだったら私の」

「その辺にしておけ。責任の被りあいは気持ちを沈めるだけだぞ」

 

レイの一言でエリス達は再び黙り込む。あのヘブンズベースでの戦闘を乗り越えた自分達がたった3機のモビルスーツに足止めされてなんの成果も得られず屈辱の撤退をする事になった。その落胆は尋常では無かった。

 

「はぁ・・・落ち込んでもしょうがないか、というわけでお兄ちゃん、膝借りるよ」

 

流れる様にシンの膝に滑り込み、膝枕を堪能するマユ。シンもそれを当たり前の様に受け入れ無言で頭を撫でていた。

 

(・・・シンも相変わらず考え事はしているっぽいけど、思ったより大丈夫そうね。ここはそっとしておきましょう)

 

シンの様子を見てエリスはそこまで落ち込んでおる様には見えないので問題なしと判断した。そして気を紛らわせる為に部屋に備え付けてあるテレビをつけると、そこにはカガリが声明を出しているのを生中継で送られているところだった。

 

「オーブ連合国代表首長、カガリ・ユラ・アスハです」

「・・・嘘でしょ・・・」

 

ようやくマシになった空気の中、カガリの演説が始まったせいで先程の反省の時の様なピリつきが起こってしまう。寧ろ先程よりも露骨に機嫌の悪くなったシンのせいで空気はより重くなったとエリスは感じていた。だが周りを確認するとシン以外は特に感情を出す事なく淡々と聞いていた。

 

(ひとまずは大丈夫そうね。これでさっきの様な反省会が始まったら目も当てられなくなるところだったわね・・・まぁ良いや。私も落ち着かないと)

 

エリスは一旦心を落ち着かせて演説を聞く事に集中した。部下の前で慌てる姿を見せない様に平静を装いながらテレビに映るカガリを見ていた。

 

「過日様々な情報と共に我々に送られたロゴスに関するデュランダル議長のメッセージは確かに衝撃的なものでした」

 

カガリの演説を世界中が見ていた。ジブリールがオーブに潜伏してそれを知ったザフトが引き渡しの要求をした事、それを突っぱねた事でザフトがオーブに攻め入った事は既に知られている事だった。そのオーブが今後どう動くのかを機にするのはザフト以外の国も同じだった。固唾を飲んで見守る中、映像にノイズが走るとそこにはミーアの姿が映し出された。

 

「私はラクス・クラインです」

「えっ⁉︎」

 

カガリの演説を現場で見ていたセナが思わず声を上げる。目の前のモニターに映るミーアを真っ直ぐ見つめるカガリの方を心配そうに眺めるがカガリは冷静にその様子を見ていた。

 

「プラントとも親しい関係にあったかの国が何故ジブリール氏を匿うなどという選択をしたのかは今もって理解する事は出来ません」

 

ジブリールを匿うオーブを一方的に悪く言うその決めつけたかの様な言い方にセナは苛立ちを感じていた。そもそもジブリールを匿ったのはユウナ達であり、セイランから政権を取り返した後オーブ軍は防衛をしながらジブリールの捜索をしていたのである。その弁明すらさせてもらえず避難するミーアのやり方にセナは目つきだけを鋭くさせていた。

 

「なんなのよ・・・何も知らない癖に、ラクスの姿であんな事。ムカつく」

「落ち着けセナ。彼女の言ってる事も一理あるさ。実際にジブリールを捕まえる事が出来ずに逃げられてしまった責任はあるからな」

「だからって!あんなの許すって言うの?」

「うん、だから反撃するんだよこっちも」

「えっ、キラ⁉︎」

 

振り向いた先にいたのはアークエンジェルに居る筈のキラとラクスだった。訳が分からず困惑するセナを置いてラクスはカメラの前に立ち、準備をしていた。

 

「えっ?ど、どうする気?」

「まぁ見てて。今からが本番だから」

「ですが、ロゴスは別です。あれはあってはならないもの。この人の世に不要で邪悪なものです。私達はそれを」

 

セナがキラ達の来訪に驚いている間もミーアの演説は続いていた。そんな中もう一度映像にノイズが走る。ノイズが晴れるとそこには今まさに目の前にいるラクスの姿が映し出されていた。

 

「その方の姿に惑わされないでください。私はラクス・クラインです」

「へっ⁉︎あれ⁉︎えっ‼︎?」

「セナ、落ち着いてよ・・・」

 

セナのリアクションを嗜めるキラだったが思った通りの反応をするセナを内心面白がりながら見ていた。おそらく世界中の殆どが今のセナと同じ様な反応をしているだろうと考えれば上手くいったのではと確信していた。

 

「私と同じ顔、同じ声、同じ名の方がデュランダル議長と共にいらっしゃるのは知っています。ですが私、シーゲル・クラインの娘であり先の大戦ではアークエンジェルと共に戦いました私は今もあの時と同じかの艦と、オーブのアスハ代表の元におります」

「あ、えっ・・・」

 

ラクスの演説の右下では困惑するミーアの映像が小さく映されていた。突然の事で困惑してキョロキョロしてしまうミーアは見ていて可哀想に思えるくらいに動揺していた。それすらも世界中に晒されてしまいどちらが本物か以前の話しだった。

 

「わ、私は」

「私はデュランダル議長の言葉と行動を支持しておりません」

 

何かを言おうとしたミーアを遮る様に言葉を紡ぐラクス。それを横から見ていたセナはうんうんと頷きながら感銘を受けていた。

 

「やっぱラクスってこんな感じだよね。改めて見比べると結構違うもんだよね」

「それはそうだよ。見た目をどれだけ似せても中身は全然違うから」

「けどまさか、こんな大胆に動くとは思わなかったわね」

「そうかもね。でももう、やられっぱなしは嫌だったから。何も知らないままただ状況に流されるだけじゃあ良くないから」

「・・・そっか。凄いねキラもラクスも」

(私じゃあどうする事もできなかった。こんな自分の名前すら碌に名乗れない様な臆病者じゃあ何も・・・)

 

ラクスの演説を聞きながら自分との違いを痛感しているセナは少し寂しそうな目で見守っていた

 

「ナチュラルでも無い、コーディネイターでも無い。悪いのは世界彼ら、世界。貴方では無いのだと語られる言葉の罠にどうか陥らないでください。我々はもっとよく知らねばなりません。デュランダル議長の真の目的を」

「それなら貴女はどうなんですか?」

 

突如割って入ったミーアに思わず言葉を止まらせるラクス。今のミーアは先程とは別人に見えるくらいに表情が変わっていた。

 

「どうとは?私は」

「貴女が本物だと言うのなら、何で今出てきたのよ?何で今まで何にも言わなかったの?貴女が居ないから私がラクスになったのよ。今まで何やっていたの?ずっと大変だった時に出なかったのに今更出て来ないでよ‼︎」

 

先程までのラクスを演じた時とは違う素のミーアの言葉はただ感情を爆発させただけのものだった。だがそれ故にその言葉は今のラクスには突き刺さるものだった。今のラクスはミーアを否定し、デュランダル議長に疑問を抱かせる効果はあった。だがそれ以前のミーアやザフトに救われたという実績までを覆す事は出来ず、そこを比べられれば今のラクスには打つ手が無かった。

 

「それは・・・」

「私と貴女の考えが違うのは良いけど、何でデュランダル議長を支持しないのかは知らないけど、どうして今出て来たのよ・・・何で今邪魔するのよ。私はもう後戻り出来ないのに・・・それを台無しにするのが今するべき事なの⁉︎」

「ねぇキラ、これ不味くない?」

「分かってるよ・・・けどどうすれば・・・」

 

キラもこうなるとは予測出来ず動揺を抑えれなかった。突如現れた本物のラクスにミーアが困惑している内にミーアの中継を終わらせると考えていた。今まで支持していたミーアが偽物だと世間に知られればデュランダル側に少なくない痛手を味わせると読んでいた。故にまさか自棄になったミーアに反撃されると思わず痛いところを突かれてしまい何も返せなくなってしまった。

 

(どうしよう・・・ラクスが、友達が困っているのに・・・けど私が出たところで太陽の少女として出来る事なんて何も・・・いや)

 

セナは何かを覚悟した様な顔つきでラクスの元に歩き出す。その表情に嫌な予感を感じたキラがセナの手を掴んで止める。

 

「セナ!」

「キラ、行かせて」

「どうして?そんな事したらセナが」

「やっぱ分かるよね、姉弟だから。けどお願い。私だって守りたいのよ」

 

セナが何をするか分かっているキラは複雑な表情をしながらセナの手を離す。本当は止めたいが他に出来る事は無い。何よりセナが戦争に巻き込まれて以降一度も無かった自分自身のやりたい事をやろうとしているのが分かり背中を押したくなったのだった。

 

「・・・ありがとう」

 

キラにお礼を言ってセナはラクスの元に歩き出した

 

「ねぇ、なんで何も言わないのよ・・・なんとか言ったらどうなのよ‼︎」

「私は・・・」

「はい、ストップ」

 

何かを言おうとしたラクスを遮る様にセナが姿を見せる。中継を見ていた人のほとんどは先程のラクスとミーアの会話を忘れ謎の乱入者に注目していた。

 

「えっ?誰ですか貴女?今大事なところなんですけど」

「知ってるよ。最初から現場で見てたし」

「なら邪魔しないでください。誰だか知らないですけど部外者は」

「あ、あの・・・」

 

ミーアもラクスも割り込んできたセナに困惑を隠せず気まずい空気が流れていた。そんな様子を横目にセナは決意した様に真っ直ぐカメラを見つめていた。

 

「そういえば自己紹介まだだったわね。それは申し訳ありません」

「いや別に良いですから」

「初めまして。私は太陽の少女をやらせてもらっています、セナです」

 

カメラに向かってピースしながら笑顔で名乗るセナ。それを聞いたミーアは絶句していた。

 

「えっ、はっ?いや・・・貴女が?」

「セナ、貴女」

「まぁ信じる信じないは各々の自由だけどさ、これでも関係者のつもりだよ私」

 

ミーアは動揺のあまりカメラ外に視線を向けて何か確認している様子が映し出されていた。ラクスとカガリも同じ様にカメラ外にいるキラに目で問いかけるがキラは半ば諦めの表情をしていた。

 

「えっと・・・どうするんだよセナ。色々台無しだぞ」

「・・・まぁ反省は後でするよ。それはそれとしてあと一つだけ」

 

不敵な笑みを浮かべながらセナはカメラに向かって指を指す

 

「もし次、またオーブに攻めこむなら容赦しないから。そして二度も私に苦渋を飲ませた奴、必ずこの借りは返してもらうから」

 

宣戦布告に等しい発言をしたセナはそのままカメラ外に出ていく。残されたカガリはそのまま演説を続けてもセナのインパクトに勝てないと判断し中継を終える。後に残されたのは怒涛の展開についていけず置き去りにされた視聴者だけだった。

 

「・・・・・・・・・えぇ」

 

ミネルバでその様子を見ていたエリスも困惑で言葉が出なくなっていた

 

「・・・あの、つまりどういう事なんですか?」

「聞かないでよ・・・私も分かんないから」

「だが奴の最後の言葉、あれは」

「まぁミネルバに向けて、というよりはシンに向けて」

「わっ⁉︎」

 

エリス達がシンの方へ振り向こうとした瞬間、ガタッと音を立ててシンが立ち上がっていた。信じられない様なものを見た表情をしていたシンには膝に乗っていたマユが転がり落ちている様子にすら気づかないでいた。

 

「アタタ・・・どうしたの急に?」

「・・・嘘だろ、いやでも・・・けどあれは間違いなく・・・」

「シン?」

 

ぶつぶつと何かを呟くシンは自分に声をかけているルナマリア達に気づく事なくそのまま部屋を出て行った。自室に戻る途中ですれ違ったヨウランに声をかけられていたがそれすらも聞こえずシンは考え事をしながら歩いていた。

 

(どういう事だ?なんであの人が・・・けど間違いない。あの時の)

 

シンが思い出しているのはオーブでの最後の思い出。あの日会ったお姉さんとの記憶だった。

 

「まさか・・・あの時のお姉さんが・・・太陽の少女⁉︎嘘だろ・・・」

 

シンにとって因縁の敵だった太陽の少女。その正体がかつて再会を望んだ相手だと知ったシンは動揺で今にも倒れそうになっていた。




太陽の少女の正体を全世界にバラす事は以前から決めていました。タイトルにも出ている仮面ですがラクスのふりをするミーアと同じでセナも太陽の少女という仮面を被って行動する事が多くありました。それを取っ払ってセナ個人の意思で戦うというのはずっと人の為に戦っていたセナにとって大きな一歩だと思っています。
 シンとセナの関係ですがSEED編の頃から考えていた展開です。相手が知っている相手だと気づかずに殺し合うのはSEEDではよくある話しでしたが、シンとセナをライバルにする以上何かしら因縁をつけたいと考え思いついたのがこれでした。自分で知り合いを殺そうとしていた事に気づいてしまったシン。いつかの少年と戦っている事に気づいていないセナ。この二人の決着がどうなるかお楽しみに。
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