ガンダムSEED 太陽の少女   作:黄金鷹

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偶にくる前半と後半で温度差が凄くなる現象は何なんでしょうね・・・多分自分の趣味趣向がそういう雰囲気が好きなのかなと思います。あと背徳的な恋愛ももしかしたら好きなのかもしれません。それにしても抑えないとどんどん変な方向に行ってしまう気がします・・・


第四十五話 偽物と本物

レクイエム発射が阻止されジブリールが討たれたその日の夜、アークエンジェルは宇宙に向けて発進する最終準備をしていた

 

「嫌!私も行く!連れてってよ!」

「だから駄目だと言っているだろうが!ここで大人しくしてろ!」

 

そんな静かな夜にアークエンジェルでネオとステラの怒鳴り声が響いていた。二人の周りにいるクルーも二人の剣幕に止めようと割り込む事も出来ないでいた。

 

「どうして駄目なのよ!寿命とかは気にしなくても良くなったから問題無いんでしょ!」

「元気と言っても大人しくしている分には問題無いだけだ!まだ完全に治ってないんだから連れて行けるわけないだろ!」

「ちょ、ちょっと二人共落ち着いて。どうしたのよ急に?」

 

二人の言い合いはヒートアップしていき、手が出るのも時間の問題になりそうな時、騒ぎを聞いて来たセナが仲裁に入る。セナはもう突撃態勢に入っているステラの肩を抑えながらネオと距離を離しつつ背後のネオの方に事情を聞いてみた。

 

「らしくないですよネオさん。ステラと何があったんですか?」

「これは俺とステラの問題だ。お前には関係ない事だ」

「そうだよセナ退いて!私は戦えるってここで証明してやるんだから!」

「だからもうお前を戦わせるわけにはいかないんだって!その必要は無いんだから待ってろって言ってるだろ!」

「戦わないのなら危険じゃないでしょ!問題無いでしょ!」

「あーもう、二人共落ち着いて」

 

二人の言い合いに無理矢理介入してストップをかけるセナ。一旦言い合いが止まったタイミングでセナが二人に事の詳細を問い詰める。

 

「えっと・・・よく分かんないけど明日の出発にステラはついて行きたいって事で良いのかな?それをネオさんは反対してるって事ですか?」

「うん」

「まぁそういう事だよ。セナ、お前からも説得してくれ。大分マシになったとはいえステラはまだ治りきってないんだ。連れていくわけにはいかないだろ」

「それは、分からなくは無いですけど・・・てかステラはどうして一緒に行きたいの?」

 

ネオの言い分にセナはある程度納得しつつステラの主張にも耳を傾ける。セナは少し屈んでステラと目線を合わせて聞くとステラも少し落ち着いて話し出す。

 

「アークエンジェルは宇宙に行くって言ってたでしょ。ならザフトとも戦闘になるかもでしょ」

「別に戦闘が目的では無いと思うよ。まぁ無いとは言い切れないかな」

「そしたらシンと会うかもしれないでしょ。だから行きたいの」

「あのねステラ、下手したら私達そのシンと戦うかもしれないのよ。それは分かってるよね?」

「うん分かってる。だから私も行きたいの。シンと話し合えたらセナ達とシンが戦わずに済むかもしれないでしょ?」

「それは・・・絶対とは言えないわよ。そのシンって子にも立場があるし、戦う事になったら最悪・・・ステラの目の前でその」

 

殺してしまうかもしれないと言いそうになった口を慌てて閉じるセナ。だがステラはセナが言いかけた言葉が分かっているかの様に返答した。

 

「分かってる・・・だから待ってるだけなんて出来ないの。少しでも可能性があるのなら・・・まだ私に出来ることがあるのなら私は」

「ステラ・・・」

 

ステラの真っ直ぐな瞳を見て本気だとセナは分かっていた。そしてそれを止めるのはおそらく不可能だと内心思っていた。

 

「う〜ん・・・気持ちは分かるよ。けど」

「俺は彼女も連れて行った方がいいと思うぞ。反対しても艦に潜入してついてくるタイプだろうしな」

 

ステラを連れていく事にまだ躊躇しているセナの横からアスランが声をかけてくる。部外者を連れていくことを反対しそうなアスランが肯定して来た事に目を丸くしたセナの横を通り過ぎアスランはステラの方に近づく。

 

「えっと・・・どうして?」

「これでも一応シンの先輩だったんだ。アイツが間違った方に行かないか心配なんだよ。今の俺が言ったところでアイツが聞くとは思えないけどな・・・けど諦めたく無いんだ、俺は。君も・・・ステラもそうだろ?」

「うん。私はシンの事諦めたく無い」

 

アスランはステラに手を差し出す。ステラはその手を掴み力強く握手をする。再会してから少しギクシャクしていた二人だったが共に戦う仲間としてお互いを認め合った瞬間だった。

 

「いや、お前らなぁ、勝手に」

「仕方ないんじゃない?ステラちゃんも行くって決めた様だし」

「止めた方が良いとは僕達も分かってますけど、止まれないのは一緒ですから」

 

まだ渋っているネオにマリューとキラからも賛成の意見が出される。人手が少しでも欲しい現状で優秀なパイロットは幾らでも欲しがっており、何より大事な人と戦いたくないから止めたいという動機はキラ達にはとても深く響いていた。

 

「アンタまで賛成なのかよ・・・」

「ネオ・・・お願い」

「・・・ああもう分かったよ!仕方ねーな」

「ホント⁉︎」

「ただし約束しろよ。危なくなったらすぐに退けよ。分かったな?」

「うん、分かった」

 

ステラの熱意と周りからの後押しに折れたネオはステラの目を真っ直ぐ見て問い詰める。ステラはそれに頷き答える。

 

「ならステラ用の機体も用意しないとね?ステラって連合の時何に乗ってたの?」

「地上用だけどガイアって機体乗ってた。あれはザフトに回収されたけどな」

「ガイアならエターナルにあるよ」

「ホントに⁉︎」

「うん。今はバルトフェルドさん用に調整しちゃってるから合流してから話しつけてみるよ」

「ありがとうキラ!」

「ガイアって・・・あの時の黒い奴か。あれステラだったのか・・・」

 

ダーダネルス海峡で戦闘していた時のガイアのことを思い出していたセナは少し考えるとステラの方を見て断言する

 

「あれに乗ってたのがステラなら・・・ちょっと厳しいかもね」

「ええ⁉︎」

「あの程度の実力ならミネルバの誰が来ても簡単に落とされるわよ」

「うぐっ」

「しかも戦闘になるとしたら宇宙だろうから、あの機体じゃあどうしても不利になるわね。はっきり言って実力が足りないわ」

「そんな・・・」

 

セナに酷評されたステラはしょんぼりと俯く。その様子を見て申し訳なく思ったセナが慌ててフォローを入れようとする。

 

「ま、まぁステラの実力なら大体の敵なら問題なさそうだし少しは自信持って良いと思うよ。別に私やキラに勝てないからって弱いわけじゃないし、これから強くなれば良いんだし!」

「だったら・・・私を強くして欲しい。お願いセナ」

「俺からも頼むセナ。そうしてくれた方が俺も安心出来る」

「まぁそれは構わないけど・・・私は厳しいよ?」

 

セナはステラに自分が師事するのか確認をする。それを見ていたキラと周りのアークエンジェルの乗組員が慌てて止めに入る。

 

「そうだよセナは止めた方が良いよ!ステラが泣いちゃう!」

「嬢ちゃん、悪い事は言わねぇ!セナだけは止めとけ!後悔するぞ!」

「皆して失礼ね!前みたいに全員強制させようか?」

「「「それだけは勘弁してくれ‼︎」」」

「・・・なぁ、何があったらこうなるんだ?」

「俺も分からないですよ。セナってスパルタなのか?」

 

必死で断るアークエンジェルメンバー達についていけずネオとアスランは戸惑っていた。ステラも同じだった様で自分よりも盛り上がる様子を見せられ首を傾げていた。

 

ダイダロス基地攻略を終えたミネルバは僅かながらではあるが休暇を貰っていた。連戦続きだった為に艦内クルー全員が羽を休めていた。エリスもその一人であり、食堂で軽く食事を摂りながら寛いでいた。

 

「ふぅ・・・ヘブンズベースから最大速でオーブに行ってその後宇宙に上がってダイダロス攻略は流石にキツいわね」

 

シルファ隊のメンバーを誘おうとしていたが何故か誰も見つからず、エリスは一人で食事をしながら脱力していた。サンドイッチ二つをペロリと平らげ腹を満たしたエリスは机に突っ伏して無防備な姿を曝け出していた。

 

「レイやシンはともかくマユもルナマリアも見つからないなんて・・・まぁこんな姿、部下に見られたくは」

「今更気にしませんよ、俺は」

「うわぁ⁉︎」

 

後ろからレイに声をかけられたエリスは飛び上がる様に背筋を伸ばした。そんなエリスを気に留めずエリスの隣の席にレイは座る。

 

「い、いつから?いつから居たのよ?」

「ふぅ・・・ってため息をついてた所からです」

「最初からかい!何で声かけなかったのよ!」

「隊長の休暇中だからそっとしといた方が良いと思っただけです。人目があると隊長の振る舞いをしちゃうでしょう?」

「そういうもんでしょ。どんな時でも公私混同はしないものよ・・・いや、意外とそうでも無いか?」

 

エリスは二人っきりの時は割とリラックスしていたクルーゼの事を思い出していた。過去の記憶に想いを馳せているエリスにレイは声をかける。

 

「ラウは・・・そうだったのか?」

「私と二人っきりの時はね。それ以外では見てないわね」

「ならエリスは、俺といる時は違うのか?」

「誰かいたらリラックス出来ないわけじゃないよ。あんまりかっこ悪いところを見せたくないだけよ」

「・・・そんな気にしなくてもエリスのかっこ悪いところはみんな知ってますよ」

「うぉい!」

 

割と失礼な事を言われたエリスはレイを軽く小突く。レイはそれを気にせずに会話を続ける。

 

「だからそのくらいの事は気にしませんよ。俺も、アイツらも」

「そう。ならもう少し気楽にするかな・・・ってそういえば急にどうしたの?いつもはシンと訓練しているでしょこの時間は」

「流石に疲れはありますから。俺もシンも。それにもうあんまり無いでしょうから」

「無いって、何が?」

 

レイの言葉に首を傾げるエリス。レイはエリスを真っ直ぐ見据えながら何でも無い様に答える。

 

「こういうのんびりした時間は・・・もうそんなには」

「・・・・・・何か食べる?今なら奢ってあげるけど」

「いえ、大丈夫です。これで十分ですから」

 

レイは自分で買ってきたコーヒーを一口飲み一息つく。エリスもそれ以上何も言わずにコーヒーを飲みながら休息を取っていた。その頃ルナマリアはシンを探して通路を歩いていた。

 

「居ないわね・・・どこに居るのよアイツ?」

 

ルナマリアはダイダロス基地での戦闘でレクイエムに向かう自分の事を援護してくれたお礼をしようと探していたが朝からずっと見かけず艦内を彷徨っていた

 

「またレイと訓練していると思ったけど違うし・・・一体どこに」

「いや、ここでは流石に・・・せめて部屋に」

「大丈夫だよ。今は皆んな休んでいる頃だし、ここあんまり通らないから」

「あ、やっと見つけた」

 

曲がり角からシンとマユの声が聞こえてくる。漸くシンを見つけたルナマリアは近づいて声をかけようとする。

 

「ねぇシン、ちょっと良」

「では失礼して」

「おい待っ」

「へっ‼︎?」

 

曲がり角を曲がったところでルナマリアはマユがシンにキスをするところを見てしまう。無重力空間で身長差を気にしなくても良い状態でマユはシンの首に腕を回して抱き寄せる様にキスをする。ルナマリアは驚きのあまり絶句しながら咄嗟に角に隠れて様子を伺った。

 

(え⁉︎キ、キス‼︎?何で⁉︎しかもマユの方から・・・)

「へへっ、何度やってもドキドキするねお兄ちゃん」

「・・・オレもだよ。ちょっと違う意味でだけど」

(何度も⁉︎じゃ、じゃあ前にもした事が・・・どういう事?)

 

ルナマリアが角から見ている中で、マユはシンに抱きつく。マユの髪が無重力で広がりシンの顔は隠れルナマリアの位置からは表情は見えなかった。だが手前にいるマユの顔にはほんのりと赤くなっており一人の異性として意識している事はルナマリアから見ても明確だった。

 

(アレ、本気の奴じゃない・・・まさかマユが、シンの事を・・・いや、何ちょっとショック受けてるのよ私!今はそれどころじゃあ・・・)

 

余計な思考を頭を振って払い再びマユの方を見るルナマリア。少し戸惑いながらシンはマユの背中に腕を回し抱きつく。マユは更に顔を赤くしながら嬉しそうに頬擦りをしていた。その一瞬でマユの目線が曲がり角の方を見つめ出し、ルナマリアは慌てて姿を隠す。

 

(やばっ‼︎もしかして、バレた?)

「マユ?どうした?」

「いや、何でもないよお兄ちゃん。というかお兄ちゃん、ちょっと痩せた?」

「そうか?まぁ最近忙しかったって事だろ。そういうマユこそ腰回りが3cmくらい細くなったんじゃないか?」

「そこまで具体的に言うのは流石に私も引くよ」

(気づいてない?よ、よかった・・・いや良いのかなこれ?)

 

マユとシンが抱き合っている中でルナマリアは動揺しまくっていた。そんな中マユは抱きつくのをやめ突如シンの腕を両手で掴み出した。

 

「マユ?急に何を」

「えいっ」

 

シンが言うよりも早くマユはシンの手を自身の胸に押し当てる。あまりに突然の事にシンと見ていたルナマリアも驚きで声も出なかった。

 

(ええええええええ‼︎?ど、どどどういう事なの⁉︎何で急に胸を⁉︎)

「・・・マ、マユ‼︎?急にどうし」

「・・・んっ」

 

マユの胸に押し当てられたシンの指が同様のあまり揉んでしまう。揉まれたくすぐったさに声が漏れたマユの反応にシンは手を振り払いながら謝っていた。

 

「わあぁ‼︎?悪いマユ!」

「いや、良いよお兄ちゃんなら・・・」

「良くないから‼︎自分からとか・・・もっと自分の体を大事に」

「今回はこの辺にしとこうかな。中々良い反応してくれたからね、この辺で満足してあげる」

「満足って・・・勘弁してくれ、心臓に悪い」

「ふふふ、じゃあまた後でね」

 

マユがシンから離れて曲がり角を曲がる。そこにはルナマリアの姿は無くマユはそのまま去って行った。シンは壁にもたれながら天井を見上げていた。

 

「はぁ・・・何してんだオレ、休暇の時にこんな・・・」

 

シンは先程マユの胸を揉んだ手のひらを見つめながら指を開いたり閉じたりを繰り返す

 

(急に押し付けるんだから驚いたな・・・それに、見た目じゃあ分からないけど思ったよりも・・・って何考えてんだオレ!妹だぞマユは!)

 

考えていた事を振り払うように両手で頭上を振り払うシン。マユにグイグイ迫られたシンは動揺しまくっていた。

 

(よりにもよってマユの、妹ので・・・ドキドキするなんて・・・いや別に胸触るの慣れてないけどな‼︎誰に言い訳してんだよオレ!けど、エリスとは違って・・・何考えてんだオレ‼︎?)

 

脳内がパニックになったシンは思考が纏まらず頭を抱えていた。そこに通りかかったエリスとレイが近づいてくる。

 

「どうしたのシン?今度は百面相の練習?」

「のわぁ⁉︎エ、エリスか、びっくりさせるなよ!」

「随分愉快な事になっていたが、何かあったのか?」

「なぁ⁉︎なななな、何も無かった、ぞ」

「挙動不審過ぎるでしょ・・・」

 

明らかに反応がおかしくなっているシンを見てエリスとレイは顔を見合わせる。何かあったのは確定しているがシンの反応を見るに大した事ではないと判断してみなかった事にした。

 

「まぁ良いや。それよりもアンタ、最近ちゃんと食べてる?ここんところ食堂でアンタの事見ないけど」

「えっ⁉︎いや、食ってるよ。偶々時間が合わなかっただけだろ多分」

「そう・・・ならいいけど。てっきり好きじゃないものばかり出てるから避けてるとかそんな理由だと思ってたけど」

「・・・もう何食っても味分からねーよ」

「へ?今なん」

「あ、悪い!ちょっと用事思い出したから、じゃあな!」

 

突如慌ててその場を走り去るシン。そんなシンの背中をレイは無言で見つめ、エリスは何か言いしれぬ不安がよぎるものの声をかけられないでいた。

 

カガリの命令を受けたアークエンジェルは宇宙に上がりコペルニクスに入っていた。気分転換を兼ねた買い出しの準備をしているキラはアスランからミネルバのパイロットについて話しを聞いていた。

 

「じゃあセナを倒したインパルスって機体のパイロットがシンって子だったんだ」

「ああそうだ。アイツが今デスティニーに乗っている」

「デスティニー・・・あの子、執拗にセナを狙っていた。それってもしかして、ステラと関係ある?」

「ああ・・・シンとステラは幼馴染らしい。ステラは連合に強化されたせいで覚えてないけどな」

「やっぱり・・・あの感じ、普通じゃないとは思ってたんだ」

 

エンジェルダウンやオーブでの戦闘を思い返すキラ。何としてでもセナを倒そうとするインパルスやデスティニーの挙動には溢れんばかりの怒りと憎しみをキラは感じていた。それは絶滅戦争にまで発展した前大戦を彷彿させる程だった。

 

「もしまた戦う事になれば俺はアイツを止めたいが、多分アイツの方が強い。悔しいけどな」

「僕もだよ・・・オーブで戦って分かったよ。あのパイロットはセナと同じくらい、いや下手すればセナよりも強いかもしれないって・・・」

「シンだけじゃない。シンの妹のマユも俺らに匹敵する程だしレイやルナマリアもかなり出来る。止めるには力尽くしか無いだろうが、かなり厳しい戦いになるだろうな」

「ルナマリア・・・確かメイリンのお姉さんだったよね?じゃああの機体にはレイって子が・・・ねぇアスラン、そのレイって子は」

「キラ、もう準備は出来ていますか?」

 

外から準備を終えたラクスが声をかけてくる。キラとアスランは護衛用の拳銃を懐に入れてから部屋を出た。

 

「ごめん、お待たせ」

「いいえ大丈夫ですわ」

「けど、本当に良いのか?護衛が俺達だけで」

「良いんじゃない?大人数だとかえって目立つし、顔も隠しておけばバレないでしょ」

「それじゃあ行きましょうか」

 

コペルニクスの街に出たセナ達はショッピングを楽しんでいた。キラとメイリンは私服だがアスランはアレックスの時にも使用していたサングラスをかけており、ラクスは上着のフードを被って顔を隠し、セナは伊達メガネをかけて髪をポニーテールにして変装をしていた。

 

「セナ、それ変装のつもりか?」

「何よ、サングラスだけの人に言われたくないわよ」

「俺はこれでバレないんだから良いんだよ」

「いえ、みんな結構分かってましたよ」

「・・・それはともかく、お前は一度全世界に素顔晒してんだぞ。本当に分かってるのか?」

「だから髪型変えたでしょ。それともいつもの様に仮面でもつければよかった?」

「それは目立つからやめた方がいいよ」

 

セナ達が雑談をしていると試着室のカーテンが開けられる。中から着替えたラクスが似合っているかキラに確認していた。そんな中で周りを警戒しているアスランにセナが声をかける。

 

「どうしたの?そんな誰かに付けられているみたいにキョロキョロして」

「みたいじゃなくて後を付けられてるんだよ」

 

アスランが目で上の方を指し示す。セナは目線だけ動かすと黒服の男が物陰からこちらを覗いているのが見えていた。

 

「・・・本当に後を付けられてたわね」

「あれだけじゃない。あと2、3人くらいは居るさ」

「そう、けど警戒しすぎも良くないわよ。増援呼ばれても厄介だし」

「分かっているが、だがな」

「・・・どうでも良いみたいですね」

「ザンネン」

「あ、ええ、そういう意味じゃあ」

 

ラクス達の声を聞いてセナとアスランが振り向くと頬を膨らませたラクスにキラが詰められて必死に弁明しているところだった。セナはラクスの機嫌を直すために近づいて話の輪に入る。

 

「相変わらずこういうの下手ねキラは。一言言うにしても似合ってるとか、可愛いとか他にもあるでしょ」

「あら、可愛いですか?」

「うん、ラクスに似合ってる色だと思うよ。あっちにその服と合いそうなスカート見つけたから取ってくるよ」

 

セナがスカートを取りに向かう背中をキラ達は感慨深そうに眺めていた。楽しそうなセナを見てキラ達は安心していた。

 

「少しはセナもリフレッシュしてくれている世ね」

「ええ、初めてお会いした時みたいに明るくなってくれましたね」

「そうなんですね。この後どうします?」

「そろそろ戻った方が良いかもな。これ以上は帰りが」

「ハロハロ、エクスキューズミー」

「「「・・・ん?」」」

 

アスラン達が声のした方を見ると赤いハロが手紙を咥えて近づいて来ていた

 

「まぁ!」

「これ⁉︎ミーアの!」

「何か持ってますよ」

 

ハロが咥えていた手紙の内容を確認するとラクスに助けを求める内容と居場所が示されていた

 

「・・・なんか、思いっきり罠ですね」

「ああ。だが放ってもおけない。くそ、それも見越して仕掛けてる」

「この子が?」

「ああ、ミーア・キャンベル。議長のラクスだ」

「なら行く必要無いでしょ。戻りましょう」

 

アスラン達が後ろを振り返り戻っていたセナを見て顔を凍り付かせていた。セナの表情が先程の面影が無いほどに無表情になっていたからだった。

 

「セナ・・・お前」

「明らかに危険な事に首を突っ込む必要無いでしょ。別に私達を釣れなかったとしてもあの子には何もされないでしょ」

「そういう訳にも行かないだろ。もしこれが本当だとしたら」

「だとしたら何よ?元々ラクスの名を騙って仕掛けたのはあっちよ。その後どうなろうともこっちの知った事じゃないわよ」

 

一方的に話しを切り上げて帰ろうとするセナ。らしくない冷酷な物言いをするセナにキラ達が戸惑っている中、ラクスはセナの行く先に回り込んで止める。

 

「セナ、私は参りますわ」

「・・・ラクス、まさか助けに行くなんて言わないよね?そんな事してなんの」

「為にならずとも私は彼女に会いたいのです。彼女の事はいずれちゃんとしないといけない事ですから」

「今する事じゃないでしょ。罠に敢えてかかってまで助ける必要は」

「人を助けるのに理由は必要ありませんわ。それでは議長と同じではありませんか?それにたとえ敵であろうとも相手を知り仲良くなり助けようとするのはセナの美点ではありませんか?」

 

ラクスの言葉にセナは何も言えなくなる。かつてアークエンジェルに保護された時にザフトに追われてコーディネイターと敵対していた環境内で理由も無く仲良くしてくれたセナの事をラクスは感謝しており、それをセナも分かっているので否定できずにいた。

 

「・・・だからって危険過ぎる。キラもそう思うでしょ?」

「・・・とりあえず艦には連絡をしてから行こうラクス」

「はい」

「はぁ⁉︎」

「な、お前⁉︎」

 

ラクスの身を案じて止めようとするかと思っていたラクスの意見に肯定するキラに驚くセナとアスラン。キラはそんな二人を見ながら答える。

 

「大丈夫。罠だと分かっているならどうにでもなるよ。皆んな居るし、何よりセナとアスランが居るでしょ」

「ありがとうキラ」

「ううん、でも気をつけて」

「お前なぁ・・・」

 

見つめ合うキラとラクスを見てアスランとセナは説得出来ないと予感する。ミーアを放っておけないアスランとラクス達を放っておけないセナは半ば諦めた様に首を縦に振るしか出来なかった。

 

手紙で示された場所に向かうと劇場の真ん中にミーアは座っていた。アスラン達はすぐにはミーアの元には向かわずに陰から様子を見ていた。

 

「・・・あんな見晴らしのいいところに居たら、どこからでも狙われるわね」

「ああ、だが相手に付き合う必要も無い。まずは俺が出るからセナは」

「ハロ、ハロ、サンキューベリマッチ」

「「あっ」」

 

セナとアスランが作戦を立てている途中でミーアのハロがミーアの元に行ってしまう。そのせいでミーアにも、おそらく潜んでいるであろう敵兵にも自分達がやって来た事を知られてしまった事に二人は頭を抱える。

 

「どうする二人共?もうバレてる以上コソコソとは出来ないけど」

「分かってる。まずは俺が出るからお前達はラクスを守る事だけを考えていてくれ」

「キラとメイリンちゃんは周りを警戒してて。もしもの時はラクスを連れててきとうなとこに隠れる様に」

 

軽く打ち合わせをしてからアスランから姿を現す。アスランの姿を見たミーアは思わず駆け寄ろうとする。

 

「アスラン⁉︎貴方生きて」

「そこで止まれ」

「なっアスラン?」

 

アスランに銃を向けられミーアはその場で立ちすくむ。アスランはミーアに敵意が無い事を確認してから周りを警戒しつつ一歩ずつ近づいていく。それに合わせてラクス達もミーアの前に姿を現した。

 

「メッセージは受け取った。罠だということも分かっている。だが最後のチャンスだミーア。だから来た」

「ラ、ラクス様・・・それに貴女は」

「こんにちはミーアさん。初めまして。お手紙には助けてとありました。殺されると、なら私と一緒に参りましょう」

「あ、あれはあたしよ!あたしだわ!」

「ミーア⁉︎」

 

追い詰められた様に叫ぶミーアに戸惑うアスラン達。ミーアに危険なものを感じたセナはラクスの前に出て警戒し始める。

 

「ミーア落ち着け。大丈夫だから」

「あたしがラクスだわ!だってそうでしょう?声も顔も同じなんだもの、あたしがラクスで何が悪いのよ!」

 

ミーアが拳銃を取り出してラクスに向ける。その瞬間にアスランがミーアの拳銃を撃ち落とし、拳銃が落ちた瞬間にセナが駆け出しミーアに迫る。

 

「うぅ、ひっ⁉︎」

 

ミーアが攻撃される恐怖で縮こまる中、セナはミーアを抑えようと首に手を伸ばして掴む寸前で動きを止める

 

「・・・えっ?」

「・・・別にこのまま貴女をボコボコにしても良いんだけど、ラクスもアスランも望んでないからね。次やったら容赦しない事にするわ。それで良いでしょ?」

「ああ、済まないセナ」

「ありがとうございますセナ」

 

セナに礼を言いながらラクスはミーアに一歩ずつ歩み寄る。ミーアは警戒心を露わにしていたが気にせずにラクスは対話を試みる。

 

「この名が欲しいのなら差し上げます。姿も。でも、例え名も姿も変わろうとも貴女は貴女です。私では無いのですよ」

「なっ・・・」

「私達は誰も、自分以外の何者にもなれないのです。でも、だからこそ貴女も私も居るのでしょう、ここに」

 

ラクスがミーアに更に近づく。それに寄り添う様にセナもラクスの隣に立ち周りを警戒する。

 

(動きが無さすぎる。正直今囲まれて撃たれる方が危険なのに誰も来ないなんて・・・狙撃する気か?)

「貴女の夢は貴女のものですわ。それを歌ってください。自分の為に」

「そんな事、私の歌なんて誰も・・・」

(演技じゃあ無さそうね。ただ役割を、ラクスの仮面を付けさせられただけの普通の子なのね・・・まるで)

 

懺悔する様に泣きながら自分の秘めた思いを話すミーアに太陽の少女として振る舞っていたかつての自分の姿を幻視したセナは不機嫌そうにそっぽを向く。するとその視線の先に空を飛んでこっちに向かってくるトリィの姿を見つける。

 

(トリィ?なんでここに来たのよ・・・ん?あそこ・・・)

「そんな事はありませんわ。私は聞きたいですわ、本当の貴女の歌を。ですから」

「危ない‼︎」

「え、キャ⁉︎」

 

セナがラクスをキラの方へと突き飛ばす。その直後にラクスの立っていたところに向かって銃弾が飛んできて庇ったセナの左腕に掠る。

 

「グッ⁉︎全員隠れて!」

「ミーア!こっちだ!」

「えっ、ああっ⁉︎」

 

キラとメイリンはラクスと共に後ろの壁に隠れ、アスランはミーアの手を取って隣の壁に走り込み、セナも同じところに滑り込む。

 

「セナ!大丈夫?」

「このくらい何でも無いから!それよりも」

 

セナ達が隠れている壁に何発も銃弾が撃ち込まれる。気づいた時には黒服の兵士達に囲まれており身動きが取れなくなっていた。

 

「何人だ?知っているか?」

「分かんない!サラしか!」

「くっ、セナ。お前銃は?」

「初めて撃った時にバルトフェルドさんに褒められた。後はエリスとクルーゼさん相手に拳銃を撃ち落とせるくらい」

「分かった。ならミーアを頼む」

「はっ⁉︎ちょ」

 

セナが呼び止めようとするもアスランは一人で飛び出し銃弾を躱しながら敵兵を撃ち倒していく。セナも後に続こうとするもミーアに足に抱きつかれ動けなくなる。

 

「なっ⁉︎ちょっと離してよ!これじゃあ動けないでしょ!」

「お願い・・・一人にしないで・・・嫌・・・」

「そんな場合じゃ、くっ⁉︎」

 

セナ達が隠れている方に銃弾が飛んできて咄嗟に体を隠すセナ。隙を見て物陰から拳銃を撃ち牽制するが拳銃では距離が離れすぎて上手く狙いをつける事ができなかった。

 

「チィ、埒が開かないわね。ねぇアンタ・・・ミーア、立てる?」

「えっ?」

「走ってここを離れるわよ。ほら」

「でも、危ないんじゃ」

「良いから行くよ!手離さないでね!」

 

ミーアの手を掴んで左腕で立たせるセナ。傷口から血が少し溢れ痛みを感じるがセナは痛みを無視してミーアを手で引きながら隣のキラ達の元に走り込む。

 

「セナさん!すぐに手当を」

「まだ必要無い!メイリンちゃんはどれだけ戦える?」

「銃の訓練は下から数えた方が」

「分かった、ならラクスとミーアの事頼んだわよ。すぐ終わらせる」

「あ、ちょっと!」

 

セナは壁から飛び出すと走りながら拳銃で敵兵士達を倒していく。射撃を避けながら主にラクス達の居る方へ向かう敵を撃ち倒していると自身の頭部を狙った銃弾が飛んでくるが咄嗟に頭を傾けて回避し目の前の壁裏に滑り込んで避難する。

 

「ハァ、ハァ・・・アスランは・・・何あれ、本当にアレが病み上がりの奴の動き?それよりキラとメイリンちゃんは」

 

数メートルくらい跳躍しながら空中で敵兵士を撃ち抜いていくアスランに少し引きながらキラ達の様子を見ると、敵に射撃を当てられずとも銃弾が止んだタイミングで自分達も撃ち出し敵兵士を寄せ付けない様にしていた。

 

「牽制は出来てそうね。けど長くは持たない・・・イッ⁉︎」

 

痛みを感じてセナは自身の足を見てみると左足から血が出ていた。避けきれなかった銃弾が左足に掠り出血しており、左腕より深い傷口から血が出続けていた。

 

「痛た・・・最近動いていないから鈍ってるわね。なら」

 

撃ちながら近づいてくる兵士達を横目に確認したセナは距離感を測る。息を整えながら髪をほどき伊達メガネを外し、変装を解く。

 

「本気でやってやる!」

 

セナのSEEDが発動する

勢いよく壁から飛び出したセナは相手の射撃を走り抜けながら拳銃で撃ち倒していく。動きが変わったセナに驚く兵士達の銃撃を躱しながらセナは一発も外す事なく敵兵を撃ち抜いていく。

 

「何だアイツ、急に動きが?」

「あの顔、まさか太陽の」

「そこ!」

 

セナが太陽の少女と気付き一瞬動きが固まった兵士を容赦なく撃ち抜くセナ。休む事なく走りながら打ち続けるセナと跳び回りながら撃ち倒していくアスランの活躍で兵士達は半分以上倒されており、何人かは撤退していた。

 

「セナ後少しで、おい⁉︎お前足が!」

「ゼェ、ゼェ、なんか、寒い・・・ッ!?」

「セナ⁉︎避けて!」

 

疲れが見え始めたセナに金髪の女性が手榴弾を投げてくる。キラとメイリンが横から撃ち落とそうとするが当てられずセナの頭上に降ってくる。

 

「危ない⁉︎」

「セナ!クソッ、間に合うか?」

「必要無い!全員伏せて!」

 

自分に向けられた手榴弾をセナは空中で蹴り返す。手榴弾は金髪の女性の近くに転がり爆発をする。だが爆発の影響で飛んできた瓦礫がセナの頭部に当たり、体勢を崩したセナは尻餅をつく。

 

「痛ぁ⁉︎踏んだり蹴ったりだよ・・・あれ?」

「セナ!大丈夫?」

「ってセナさん⁉︎頭から血が!」

 

立ちあがろうとするセナだったが足に力が入らず立つ事ができなかった。セナの元に駆け寄ったキラとメイリンは頭から血を流して立てなくなったセナに肩を貸して立たせると壁の裏側に連れていきセナを座らせる。

 

「ごめんね・・・血、流しすぎちゃったかな?」

「もう!無茶して」

「申し訳ありませんセナ。私のせいで」

「気にしないで、ラクスが悪いわけじゃないよ。それよりもまだ敵が」

「セナさんは動かないで。ここで大人しく」

「大丈夫か?坊主達」

 

撃ち合いのあった劇場にアカツキが着陸をする。周りに敵がもういない事を確認してからキラ達はセナに肩を貸しながら壁から出てくる。

 

「遅いですよムウさん!」

「んあ?」

「セナとラクスをお願いします!」

「っておい⁉︎大丈夫かよセナ!分かったすぐ連れてくから早く乗れ!」

「みんな大丈夫か?」

「アスラン、手伝って」

「ああ、分かった」

 

アカツキがその場に膝をつき手を差し出す。キラとアスランに肩を借りたセナはラクスと共にアカツキの手の上に乗り込む。

 

「セナ、私に掴まってください」

「・・・血で汚れたら、ごめん」

「気にしないでくださいセナ」

「・・・ほら、アンタも来なよ。ミーア」

「え?」

「一人だけ置いてくわけにもいかないでしょ?ほら」

 

セナは立ちすくんでいるミーアに手を伸ばす。ミーアは戸惑いながらキラ達の顔色を窺うと頷きながらアカツキに乗る様に促していた。恐る恐るセナの方に歩み寄るミーアはその後ろでラクスに銃を向ける金髪の女性に気づいてしまう。

 

「サラ?危ない⁉︎」

「えっ?」

 

銃声が鳴り響く。キラ達が振り向いた先には銃を撃った女性とラクスを庇って撃たれたミーアが倒れる瞬間だった。

 

「ミーアさん⁉︎」

「なっ⁉︎コノォ‼︎」

 

ミーアを抱えるラクスの前で跪きながらセナは片手で女性を撃ち抜く。キラ達もラクスの元に駆けつけるが銃弾が直撃したミーアは既に手遅れの状態だった。

 

「ミーアさん、ミーアさん!」

「あたしの・・・あたしの、歌・・・命、どうか忘れ、ないで・・・」

「ミーア!」

「もっと、ちゃんとお会いしたかった・・・ごめん、な・・・」

「ミーアさん!」

「ミーア!」

 

ラクスの腕の中でミーアは静かに息を引き取る。ラクスはミーアの亡骸を抱きながら涙を流し、アスランは地面に拳を打ち付けながら悔し涙を流していた。

 

「クソォ!また俺は・・・」

「ミーアさん・・・うぅ」

「・・・ごめん。私が先に気づくべきだった。油断、してた」

「セナは悪くないよ。早くここを離れよう」

「・・・うん。肩借りるよ」

 

セナ達を乗せてアカツキは飛び立つ。守れた筈の命を失った重さは夕日の様に心を沈めさせていた。




ここで初めてモビルスーツに乗らない状態でSEEDの発動をさせましたが、自分の解釈でSEEDは集中力が限界以上にまで高められたら発動出来ると考えているのでもっと色んな事で使用出来ても良いと思っています。いずれは戦闘じゃない場面でギャグみたいな形で使用されても面白いかもしれません。流石にふざけすぎですかね?
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