自分に自信が無い女の子を褒めまくった結果、自信を身に着けて優勝してしまう話 作:匿名で性癖露出がきもちぇ~!
突然のシリアスだけど許して。
二人の男女が床に座って抱き合っている。いや、抱き
女は男の胸に顔をうずめ、少しばかり身体を震わせながら力強く抱きしめる。
だが一方の男は、確かに彼女の背中へと腕は回し抱きしめてはいるが、その力は彼女とは比べ物にならない程弱い。もはや、胸を貸しているだけと言った方が良いのかもしれない。
「――クリス……思いっきり抱きしめてくれ……頼むよ…」
「……分かった」
しばしの思考の後、ゆっくりと女の背中に腕を回す。
そして、そうっとしめる力を強めていけば、次第に彼女との隙間がなくなっていく。
自分とは違う弾力のある身体、それは理性を失くしてしまうには十分すぎる程に官能的なモノである。それでも、男が理性を失わずにいれるのは、とてもそんなことを考えられるような余裕が、現時点では微塵も存在していないからだ。
「……クリス……離れないでくれ……」
今ここでクリスが離れれば女はいともたやすく壊れてしまうだろう。いや、もうすでに壊れているのかもしれない。
何故こんな状況になってしまったのか。
クリスは、女――ベリンダの背中をさすりながら、つい先程までの出来事を思い返す。
ベリンダはある病を患っていた。
その病とは、精神的に不安定な状態に陥ると異常なまでの寒気に襲われるという――クリスの前世で馴染み深い単語で言えば
ベリンダは過去にこの病を患っていたのだが、彼女が会社にやって来た頃には何とか立ち直ったと、彼女本人からも聞いていた。
事実としてついこの前までの彼女は、一見すれば何事もないように見えていた。
一見すれば、の話である。
結論から話すと、ベリンダは立ち直れていなかった。
立ち直った自分を演じていただけに過ぎなかったのあった。
自己暗示をするかのように演じるというのは、確かに一時的に見ればとても効果的な方法ではあったのかもしれない。だがそれは、かえって取り返しがつかなくなってしまうまでに状態が悪化することとなってしまったのである。
その事に気が付いたのは、彼女自身ではなく、彼女の古くからの友人であった。
何を隠そう、その友人というのがクリスである。
ある日、ベリンダと会話をしているとき、微かな違和感というモノを感じ取った。
互いの時間が偶然にも合わなかったということもあり、同じ会社に所属していながら、一か月程は顔を合わせることがなかった。だからこそ、その微かな違和感とやらに気づいたのかもしれない。
ソレを言葉に表すことはできないが、兎にも角にも、クリスの直感がこのまま放置していたら何かがヤバイということを感じ取った。
クリスはベリンダと会話をしながらその違和感を分析していく。
会話だけでなく、表情に身体、服装から仕草まで彼女のすべてを注視する。彼女自身にそれを悟られない様に注意しながらだ。
緊急の呼び出しということもあってベリンダが途中でその場を去ってからも、しばらくの間クリスは思考した。
ふと、クリスはある一つの可能性というのを考え付いた。
「PTSDが再発したのではないか?」ということである。
仮にそうだと考え、クリスは彼女の最近の様子をもう一度思い返す。
考えれば考えるほどに、その考えは確信へと変化していく。
クリスは居ても立っても居られなくなり、すぐさまベリンダへ連絡を送り、自分自身も彼女の居そうな場所へと向かった。
向かっている最中、突如として電話がかかってきた。
その人物とはまさにベリンダである。
「……ベリンダ?」
返事は無い。
「ベリンダ、大丈夫か?」
返事は無い。
「ベリンダ……? どこにいるんだ?」
何度問いかけても、いくら待とうとも彼女からの返事は無い。
ベリンダからの返事よりも先に、彼女がいるであろう場所へと到着する。
その場所とは、彼女のオフィスである。
オフィスの扉を軽く叩く。
すると、電話越しから息を吞む音が聞こえてきた。
クリスの予想通り、彼女はオフィスにいるのだろう。
ドアノブを捻り確認するが、幸いにも鍵は閉められていない。
クリスは一度自分を落ち着かせるためにも、深く息を吸い込み、ゆっくりと吐き出す。
「……入るぞ」
そう静かに呟いて、明かりの消えた薄暗いオフィスへと入っていく。
一見すればオフィスには誰一人としていない。
しかし、よく見ればオフィスに置かれた机の下に、誰かがいることがすぐに分かる。誰がいるのかというのは言うまでもないだろう。
クリスが机の下を覗き込めば、そこには体育座りをしたベリンダが潜んでいた。
虚ろな瞳で、両手に持ったスマホを眺めている。
「ベリンダ……?」
クリスがそう声をかけると、ベリンダはスマホからゆっくりと視線を外し、続いてクリスと視線を合わせる。
つい先程までの彼女とは別人なんじゃないかと思ってしまう程に変わり果てた様子に、思わず戦慄してしまう。
「ベリンダ――ッ!?」
突如として、彼女は勢いよくクリスに飛びかかってきた。いや、正確に言うのであれば、抱きかかってきた。
突然の出来事であったが為に、クリスは抵抗する間もなく彼女に抱きしめられ、勢いそのまま床に倒れてしまう。
「――っ!? お、おい……」
「……寒い…寒いよ………助けてくれよ……」
ようやく口を開いたかと思えば、震える声でそう呟いた。声だけではない。抱きしめられているからこそ分かったことではあるが、彼女の身体が小刻みに震えていた。
そして場面は最初へと戻る。
ベリンダは熱を求めてかクリスを力いっぱいに抱きしめる。
クリスはそんな彼女にされるがまま、強く抱きしめてと言われれば精一杯、彼女の細い体を優しく包み込むように抱きしめた。
「……あったかい……」
か細い声で、クリスの胸に顔をうずめながらそう呟く。
そうして時間が経つにつれて、彼女の荒かった呼吸も次第に落ち着きを取り戻し始めた。
呼吸も落ち着いてくれば、彼女自身も大分正気を取り戻してくれたようで、やがてクリスを抱きしめる力も少しずつ弱まっていく。
そこで、改めてクリスはベリンダに様子を尋ねてみた。
「……もう…大丈夫…だ」
「そうか。……もう少し、こうしておくか?」
クリスがそう問いかければ、ベリンダは一瞬だけ力を抜いて離れようとするが、すぐにまたクリスに抱き着いてくる。
「……ごめん……もうちょっとだけ…お願いだ」
そう言って、抱きしめる力を再び強めていく。
クリスもそれに応えるように抱きしめる。それと、なんとなく目に入ったベリンダの乱れてしまった髪を指で梳いた。
「相変わらず、綺麗な髪だな」
「……そう言われると…嬉しい…よ」
その言葉の通り、ベリンダの声のトーンが僅かに上がったのを感じ取った。
「最近は手入れが出来てなくて……」
「……忙しいのか?」
「……最近は、ちょっとだけ…」
「あんまり無理はするなよ?」
「……うん」
しばらく二人の間で沈黙の時間が続く。
その間クリスはただひたすら、彼女を抱きしめ髪を梳いていた。
青が混じった黒髪は絹糸のように滑らかであり、非常に触り心地が良い。思わず時間を忘れてしまうほどに、髪を梳くことに夢中になってしまう。
「――ねぇ、クリス」
沈黙を破ったのはベリンダからであった。
「いつから、気が付いていたんだい?」
「……ついさっきだ。ふと別れてから思い返して、どうも様子が変だと思ってな」
「そっか……」
それからは、ぽつりぽつりと、短いながらも会話が交わされる。
「君は、本当にあったかいね……」
「そうか?」
「うん……本当に……」
「まだタバコ……吸ってるのかい?」
「時々な。…臭うか? それだったらごめんな」
「ちょっと…だけ……けど、嫌ではない…よ…」
次第に彼女の震えも収まってくる。
「改めて思うけど…すっごく鍛えてるね……」
「自慢の筋肉だぞ」
「触っていいかい?」
「……くすぐらないなら」
「クリスの髪、触っていいかい?」
「面白くもない髪だけど、どうぞご自由に」
「……けっこうサラサラだね?」
「よく言われるよ」
彼女の呼吸もだんだんと落ち着いてくる。
「……クリス」
「なんだ?」
「頭を……撫でてくれるかい?」
「そんなことならいくらでも」
クリスを抱きしめる力も次第に弱まってくる。
「ねぇ……クリス」
「どうした?」
「……このまま……眠っても…いい?」
「あぁ……おやすみ、ベリンダ」
「……うん……おやすみ……」
そうしてベリンダは、ゆっくりと重い瞼を閉じていく。
「ベリンダ……今は…ゆっくり休んでくれ」
そんなクリスの呟きを最後に、ベリンダの意識は落ちた。
一瞬だけ次話が投稿されたと思いますが、タイトル詐欺だったので削除しました。(保存済みなので見たいという声があれば再投稿します)
ベリンダ
ダウナー研究者お姉さん。
青が混じった黒髪。
ワーカーホリックのきらいがある。
寒さを誤魔化すために厚着をしている。
着瘦せする(重要)
幼い頃に父を亡くす。研究者の母親のもとで育つが、ある日の事故が原因で母も無くす。その出来事がPTSDの原因の一つでもある。
クリス
観察眼が鋭い。マッチョの眼光。
ベリンダとは昔からの知り合い。
自分と同じく両親を無くしているベリンダを何かと気遣っている。
次話について
-
エレンかベリンダの一人称視点をくれ!
-
それよりも、新しいヒロインを!