風魔術だけでも異世界は楽しいです ~美少女転生からのちょうどいいスローライフ~   作:暁刀魚

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銭湯って素敵

 この世界は、異世界だがお風呂がある。

 大事なことなので二度言うけど、お風呂がある!

 とても大事なことだ。

 私はカードゲーマーだけどお風呂に入るタイプだったので、異世界でもお風呂には入りたい。

 この世界は魔術が発展しているから、比較的水と熱源の確保が容易だ。

 結果として、入浴の文化はこの世界で熟成した。

 

 少し残念なのは、天然温泉に関しては一部の温泉街以外だとほとんどないことかな。

 土魔術による温泉掘削技術はあるのだけど、水魔術と火魔術で銭湯を用意するのが楽すぎてね。

 逆に、よさげの源泉のある場所には土魔術の掘削と錬金によって作られた秘湯が結構ある。

 どちらにせよ、風属性オンリーの私は……お風呂に対して、無力!

 

 まぁ、入れるだけでもありがたい話だ。

 というわけで、今日も私は街の銭湯へ入浴に来ていた。

 宿にも個室にお風呂があるんだけど、足を伸ばして入るには狭い。

 やっぱ、足を伸ばして入れる湯船ってのは、いいよね。

 と、思っていたら。

 

「あ、フーシャ先生っ」

「リフィルちゃんじゃないか、こんばんは」

「こんばんは、先生もお風呂ですか?」

「まぁね」

 

 リフィルちゃんと顔を合わせた。

 現在、何かと私に懐いている二人の教え子の一人。

 燃えるような赤髪と、凛とした目つき。

 強い意志と、生真面目さを感じさせる少女だ。

 

「リフィルちゃんも、ここによく来るの?」

「あはは……宿にお風呂がついてなくって。故郷にいた頃から、お風呂に入ってたから入らないと落ち着かないんです」

「気持ちはわかるよ」

「ダリルは、お金が勿体ないっていうんですけど、女の子は男子みたいに適当じゃよくないんです! 今度、フーシャ先生からも言ってくれませんか!?」

 

 なんて、話をする。

 いや、まぁ。

 正直、私も女子としては失格の部類に入る程度に適当側の人間だ。

 お風呂に入って、この世界の万能洗顔剤で顔を洗い、それでおしまいだ。

 だって、本当に万能なんだもんこの洗顔剤。

 保湿もお肌の手入れも全部やってくれる魔法のアイテム。

 いや、実際錬金術で作られてる魔導具の一種ではあるんだけど。

 

「男の冒険者って、清潔感気にしない人多いからねぇ」

「そうですよ。将来兵士になるなら、絶対その辺り気をつけないと行けないのに」

「ダリルくんは兵士志望なの? 彼くらい素質があれば、出世すると思うよ」

「だからですよ……」

 

 なんていいつつ、脱衣所へ。

 中には老若問わない女性が多くおり、賑わっている。

 私達はその一角をいい感じに確保すると、服を脱ぎ始めた。

 

「いや、むしろ出世すれば問題ないさ。嫌でも周囲がお風呂に入れてくるからね。勝手に習慣付く」

「そういうものなんですか?」

「兵士になった知り合いが、皆言ってるからね。周りがうるさいって」

「あ、あはは……」

 

 私の衣服は、風神のはごろもと下着だけ。

 ただこのはごろも、ノースリーブになってたり構造が複雑なのでちょっと脱ぎにくい。

 少し苦戦している間に、リフィルちゃんはもう下着姿だ。

 慌てて脱ぎ去って、下着も脱ぎ去る。

 ところでリフィルちゃん、顔を真赤にしてチラチラこっちを見るのは女同士でもセクハラだと思うよ。

 

「そ、それでその。将来的にはいいかも、なんですが。私としてはどうしても、今気になっちゃって……うわ、おっきい」

「あー、まぁ仲良さそうだもんね。彼氏のそういうところは気になっちゃうか。あと最後なにか言った?」

「な、なんでもないです! 後彼氏じゃないです!」

 

 なんでもないを先に否定するのか。

 私はカップルの間に割って入るわるいおんなだった?

 私が誑かすのはプリンセスとルークだけでいいんだよ。

 

「ほんっと、そういうんじゃないですから! 確かに同じ街の出身だけど! 違いますから!」

「あはは、多分これからも皆からからかわれると思うから、どうするか考えときなよ?」

「な、なんでですかぁ!?」

 

 そういう反応だからじゃないかな。

 といいつつ、お風呂に。

 天然温泉なら、体の汚れだけ軽く流して直で風呂に入るなんて選択肢もあるけど。

 銭湯は完全に入浴が目的なので、先に体を洗ってからだ。

 

「理由は幾つかある。将来有望な若者っていうのは、それだけで見ていてほっこりする」

「ほ、ほっこりするんですか?」

「成長ってさ、見てて楽しいんだよね。それが目覚ましいともなれば、ひとしおだよ」

 

 めきめき成長していく若者を見ていると、なんとなく昔を思い出す。

 なにより、前世だとそういう環境って、結構限られていたけれど。

 個人主義で相互互助が基本の冒険者だと、他人の成長も自分の助けになることが多い。

 

「一緒に戦ってくれる仲間が増えるってことだからね。それだけ、やれることも増えるし助かるんだよ」

「あー、なんとなく解りました」

 

 お互いに、身体を洗いながら話をする。

 どうでもいいけど、リフィルちゃんって確か今年で13だったよね?

 なんか、背丈は私と同じくらいだし胸の大きさも私と同じくらいなんだけど。

 これ、将来的にはもっと成長すると思うんだよなぁ。

 私を見てドキドキする必要、ないんじゃない?

 

「……あの、なんだか視線がエッチなんですけど」

「お互い様だと思うよ」

「うっ……そ、それはそれとして悪びれませんね」

 

 まぁ、私はドキドキしないし。

 単純に眼福と思っているだけだ。

 とか言っている間に、身体を洗い終わって湯船へ。

 ありがとう、錬金で作られたシャンプーとボディソープ。

 前世と変わらぬ使い心地……

 

「んー、あったかぁ」

「ここのお風呂って、熱くって入ってて心地いいですよね」

「人が入るのにちょうどいい温度なんだね」

 

 具体的には、42度。

 かなり熱いけれど、湯船に入っていて人間が一番気持ちいいと思う温度だ。

 長居は禁物である。

 

「まぁでも、ダリルは熱いっていうかも」

「そうなの?」

「あいつ、猫獣人の血が入ってるんですよ。身体特徴は出てませんけど」

「そりゃ大変だ。風呂嫌いもそこからかぁ」

 

 獣人、この世界にもそういった種族は存在している。

 といっても、かつて差別されていた魔族以外は、完全に人族のくくりの中に入ってるけどね。

 寿命の違うエルフだけは、たまに神聖視する人がいるかも。

 

「そういえばダリルくんは兵士志望らしいけど、リフィルちゃんも?」

「あ、はい。私は魔術師なので、最終的には宮廷魔術師を目指したいなって」

 

 宮廷魔術師。

 魔術師において、魔術学校の教授に並んで多くの魔術師の到達点と言われる地位だ。

 宮廷魔術師が実践派で、魔術学校の教授が研究畑の最高峰って感じかな。

 

「目標が高いなぁ。私は風鳴りだし、出世するつもりもないから一生冒険者かなぁ」

「一生冒険者って、大変じゃないですか?」

「稼ぎはいいから、何れは半引退みたいになると思うけどね。それに、浮遊魔術さえ使えれば食いっぱぐれることはまずないからさ」

 

 私の適性を考えれば、本当ならどこかの商会に所属するのが一番安定するんだろう。

 でも、護衛兼荷物運びって形で商隊に所属するのは、精神的に無理。

 大きな商会に所属して荷物運びになると、どう考えてもめっちゃ働かされる。

 なので、今のところそういう商会に所属するつもりはない。

 

 それからしばらく、二人で話をしてから風呂を出る。

 いやぁ、いいお湯だった。

 そして脱衣所にて、着替えをしていると――

 

「……あの、フーシャ先生」

「どうしたの?」

「フーシャ先生って、あまり下着とか気にしないタイプですか?」

 

 ド直球なセクハラをリフィルちゃんにされた。

 

「気にしないタイプですけど……」

「な、なるほど……」

「……えっと。リフィルちゃん? なんか目が怖いよ?」

 

 なんかぶつぶつ言ってるし。

 「あの光景を私とダリルだけのものにしたい」って何!?

 何なの!? 怖いよぉ!




リフィルの成長力は無限大ィィィイイイイ!
無限に成長してほしいと思った方は、評価、お気に入り、感想等いただけますと幸いです。
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