風魔術だけでも異世界は楽しいです ~美少女転生からのちょうどいいスローライフ~   作:暁刀魚

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教える時はメガネをかけるタイプ

 今日も今日とて、新人講習のお仕事だ。

 仕事してない日の方が多いのは気のせいだからね、何もなかっただけで仕事はしてるからね。

 たまにサボるけど。

 

「はーい、それじゃあ今日の講習をやっていくよ。講師のフーシャです。よろしくね」

 

 なんて、ちょっと元気よく言ってみる。

 普段はもう少しダウナー気味な私だけれど、これはまあ仕事だからね。

 ついでに、かけてる伊達メガネをくいっとする。

 いいよねメガネ、私は普段メガネをかけてないキャラがかけるメガネが大好きなんだ。

 TSしてからこっち、講師をしている時はメガネが似合うと思ってるのでかけている。

 雰囲気を出して生徒から舐められないためでもあった。

 

「今回の内容は、身体強化について。みんなは身体強化についてどれだけ知ってるかな」

 

 しーん。

 返事がなかった。

 まぁそう言う時もある。

 時に今回はダリルもリフィルもいないからな。

 あの二人がいると、程よくいい感じに質問してくれて、進行がスムーズなんだけど。

 まぁ、やるべきことは変わらない。

 

「身体強化は、一言で言えば体内の魔力を強化して、爆発的に身体能力を上げる技術だ」

 

 この世界の人はたまに勘違いするんだけど、魔力を操る技術は全てが魔術というわけではない。

 身体強化はその典型で、詠唱も起動ワードも必要としない技術だ。

 

「魔術とそれ以外の技術の見分け方は、詠唱と起動ワード。この二つが存在しないものは全て魔術じゃないんだ。身体強化以外だと、魔力放出がわかりやすいかな」

 

 魔力放出は、魔力を魔力のまま放つ行為。

 イメージとしては、ドラゴンボールで気弾を放つみたいな感じ。

 他にも、私の風鳴りとしての感覚も魔術ではない。

 あと、私みたいな風鳴りでも身体強化はできる。

 魔術を使う際に、使える属性の偏りが発生するのが風鳴りだ。

 

「こういった魔術以外の技術は、構造がシンプルで誰でもできるのが特徴。詠唱がいらないから咄嗟に使えるってのもあるね」

 

 新人くんたちの方をみると、話を聞いているかは半々ってところだ。

 人によってはそんなのもう知ってるよって人も多いし、何よりあまりにも初歩の内容だ。

 元々、新人講習というのは人気がない。

 受けるだけで依頼達成になるし、受けたっていう証明があれば少しの間ギルドの食堂が割引になるけど、直接のお金にはならないからな。

 私の講習だけは人気があるんだけど、そのせいで私のことを知らない人も受講して。

 なんだこのチンチクリン、つまんねえ話しかしねえなみたいなことになりがちだ。

 

「で、ここまでなら知ってる人も多いと思うけど。本題はここから」

 

 なので、ここで話題を変える。

 退屈そうな新人も、チラリと視線をこちらに向けた。

 

「強くなる上で、最終的にものを言うのは身体強化の精度だ。これは前衛に限らず、後衛の魔術師や弓兵もね」

 

 強くなる。

 そのワードに結構な新人が反応した。

 何せ冒険者ってのは強さを求める存在であるからして。

 特に新人は、早く一人前になりたいって言う欲求がとても強い。

 それを満たしてあげると、興味のない新人も話を聞いてくれるのだ。

 

「前衛の剣士や盾職、斥候や魔法剣士は身体強化の精度がそのまま強さになる。勘違いしがちな人も多いけど、魔力っていうのは量はそんなに強さに関係ないんだ」

 

 その言葉に、ざわざわと新人たちが反応を見せる。

 魔力量ってのは才能だ。

 生まれつき、その総量は決まってる。

 だからこそ、それを強さの指標と勘違いする人は多いし、決して間違いではない。

 私はざわめきが収まるのを待って、話を続けた。

 

「確かに、魔力総量が多ければ多いほど、魔力を大量に使って身体強化ができる。でも、魔力を多く使用すると、それだけ強化の精度は雑になる」

 

 最終的に、雑な身体強化よりも、研ぎ澄まされた身体強化の方が効率は良くなる。

 極まった身体強化を使えれば、戦闘中に魔力が尽きることもない。

 例外はプリンセス、あの子だけは身体強化を使えば使うほど強くなるけど例外すぎて別枠。

 

「後衛に関しても同じだよ。弓兵ならそれだけ矢の威力が上がるし、魔術師なら身体強化の精度を上げれば魔術の燃費もよくなるからね」

 

 そして身体強化の練度は努力でなんとかなる。

 もちろん、その努力もまた才能のうち。

 それでも私には、その努力を重ねるための方法をこの子たちに教えることができるんだ。

 あとは、新人たち次第である。

 

「じゃあ、ここまでの話を聞いた上で、具体的にどう鍛えるかについて話そうか」

 

 ここからは、一気に内容が具体的になる。

 新人くんたちも、興味を持ってくれたみたいだ。

 

「まず一番簡単な方法は目を鍛えること。みんなは目に対してだけ身体強化はできるかな。特定の部位だけに身体強化ができるってことは、それだけ精度が高いって証拠だ」

 

 そう言いながら、私は魔術を起動する。

 偽弾魔術、決闘に使われるその魔術は、こう言う場面でも有効だ。

 

「それに目を鍛えると、こうやって飛んでくる相手の攻撃を見切ることができる」

 

 放たれた偽弾は、凄まじい速度で飛んでいった。

 多くの新人は、これを捉えることができなかっただろう。

 ちなみに、速度はルークの時と変わらない。

 彼はこの速度に対応できる身体強化が、可能だということだ。

 

「私の偽弾は速すぎたかもしれないけど、それならまずは知り合いの魔術師の偽弾や弓兵の矢を見切れるようになればいいよ。少しずつ速いのに慣れていけばいい」

 

 さて、ここまでは理論的な話。

 まずそもそも、どうやって目を鍛えるんだよって子もいるだろう。

 目の強化ができない子もね。

 

「じゃあ目を鍛えるにはどうするか。そもそも目を鍛えられない場合はどうするか。やり方としては単純で、体内の魔力を認識することが大事だよ」

 

 魔力とは、体内に宿った存在しないもう一つの器官だ。

 身体の中には存在しないけど、確かに身体に宿っている。

 そんな力を、イメージする。

 

「身体強化を使って剣を振った時と、そうでない時の違いを意識するんだ」

 

 魔力は雑に使っても、強化する部分にムラがある。

 剣をふるえば、特に強化されるのは実際に力を振るう部分になるだろう。

 腕とか、腰とか。

 そう言う場所に魔力が回って、自分が強くなっていると自覚するのだ。

 

「要するにサイクルだね。自分の得物を振るって、魔力の存在を知覚して。それを目を鍛えることで高める。限界を感じたらまた得物を振るう、みたいな感じ」

「魔術師の場合はどうすればいいんですか?」

 

 おっと、ここで初めての質問だ。

 内容は尤もである。

 

「魔術師は、魔術を使う時に魔力が消費されてるって感覚を覚えるの。ただ魔力を消費するよりもはっきりと魔力が消費されるから、魔術師以外の冒険者も、魔術での魔力消費を覚えてもいいかもね」

 

 ただし、この方法のために魔術をおぼえてもそれは杖無しの魔術師ってことになる。

 そのことは忘れないように、と付け加えておく。

 

「まあ、一番は自分に合ってるやり方を見つけることだよ。その上で、今回はこう言ういっぱい人が集まってる時にやれる方法を教えようかな」

 

 おお、と何人か声を上げる。

 退屈な講習の場に、明確なメリットが生まれたからだろう。

 

 私はそれを見てから、修練場の隅に待機させておいた木人形を呼び出す。

 その数えーと、三十体くらい?

 ありったけ用意してもらったので、多分ギルドで管理してる木人形は全部あると思う。

 

「これは木人形、使ってる人もいると思うけど、簡単な命令なら受け付けてくれるゴーレムの一種だね」

 

 木人形。

 イメージとしてはトレーニングモードで指定した通りの動きをしてくれるNPC。

 それよりは単純な動きしかできないけど。

 

「こいつに、出せる速度の全力を出させて突撃させる。反撃しなければ壊れない速度だから、それを避け続けるんだ」

 

 木人形は結構レンタル料がかかるので、こうやって講習という名目でタダで借りて来られる時か、複数人でお金を出し合ってレンタルするといい。

 そんな木人形へ、私は()()()()()()命令を出す。

 

 

「じゃあ今から、私が三十体の木人形を同時に回避するから、見ててね」

 

 

 と言ったら、ドン引きされた。

 いや、二つ名持ち目指すなら、これくらいは本当に最低限なんだけど!

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