風魔術だけでも異世界は楽しいです ~美少女転生からのちょうどいいスローライフ~ 作:暁刀魚
「と、いうわけで。今日はダリルとリフィル、二人の新しい装備を見に行こう」
「はい、先生!」
「よろしくお願いします!」
その日、冒険者ギルドで待ち合わせしていた私と、ダリル、リフィルのペア。
三人で予定を合わせて、休日に買い物へ出かけようというのだ。
目的は、既に私が言った通り。
ダリルとリフィルは、新人の中でも一番の有望株だ。
ダリルは非常に筋の良い剣士で、身体強化や魔力放出。
他にも様々な剣士向け魔術を、幼いながらに習得している。
リフィルちゃんに至っては、十三歳にして既に杖を持っている優秀な魔術師。
というか、リフィルちゃんが杖をもらったのは十歳の頃だっていうから、本当に天才だよね。
「私が提示した分の予算は、ちゃんと用意してきたんだよね?」
「はい、下調べもある程度すませてあります」
「ダリルのやつは、うっかり食費で使いすぎちゃいそうになってましたけど、何とか管理させました」
「ちょ、それは言わなくてもいいだろ!?」
二人の賑やかな会話を聞きながら、うんうんと私は満足気に頷く。
ことの発端は、今からまぁ……結構前のこと。
ミノタウロスの一件の直後くらいかな?
あれから、気がつけば一月近くが経過している。
あの時の事があってか、二人は色々と今後の事を悩んだそうだ。
で、最終的にたどり着いた結論は――
『フーシャ先生、俺達に中層で通用する装備がどういうものか、教えてくれませんか!?』
『もちろん、お金は私達が用意します。フーシャ先生には見てもらうだけで十分なので!』
とのことだった。
強くなるための方法として、装備の一新を決めたそうなのだ。
現在の二人が使用している装備は、どれも上層の新人冒険者向けのもの。
もともと二人は地力があるので、わざわざ高めの装備を購入しなくてよかったのだ。
だから装備を更新することは、優秀な二人なら自然と行き着く考えだった。
んで、私は必要な予算を提示、二人はそれを集め終えて、こうして私と買い物に出かけるというわけ。
「いやぁ、二人は今日も仲いいね」
「よくありません!」
「ぜんっぜんよくないです!」
「はいはい。それじゃあ早速武器屋に行こうか」
いやぁ、この二人のやり取りは無限に眺めてられるなぁ。
おいちゃんもう少しからかいたくなっちゃうよ。
あ、でもちゃんと最終的にはお互いの気持を確認するんだよ。
確認したうえでくっつかないのは二人の選択だけど、すれ違ったまま別れたら私の心は死ぬからね。
弱いオタク……
+
さて、目指すは先日風車剣を買った中層向け武器屋だ。
私が本来利用しない筈の店であるにもかかわらず店主と懇意なのは、今回みたいに新人冒険者をこの店に案内することがあるからだな。
決して、珍品オタク仲間だからというだけではない。
「というわけで、しばらくはこの店で装備を整えるといいよ」
「おお……名前は聞いたことあるぞ」
「あの、店の三割が変なアイテムで埋まっているっていう!」
「流石にそこまでじゃないよ!」
せいぜい一割……いや二割くらいだよ。
……そこまで埋まってたら、まぁ似たようなものか。
さて、中に入ると店主はいなかった。
店主さんに挨拶はしておきたかったんだけども、まぁそのうち帰ってくるか。
たまに店番をしている店員さんが、事務的に挨拶をしてくれる。
私もそれに軽く返すと、二人を伴って店の一角へと移動した。
「というわけで、このあたりが中層で使われる武器防具のコーナー」
「他には、珍品コーナーと消耗品コーナーがある感じですか?」
「そうだねダリル。まぁ、珍品コーナー以外は上層向けの武器屋とそんなに変わらないかな」
と言っても、上層向けの武器屋は量産品が多い。
対してこっちは、そこそこ高級な武器が飾られて展示されている。
樽の中にまとめて突っ込まれる量産品とは、少し趣が違うだろう。
「じゃあ早速、具体的に二人におすすめの武器なんだけど……」
「はい、俺はオリハルコン製の長剣が欲しいです」
「ほう、ダリル。その心は?」
私のおすすめを、幾つか話そうかと思ったんだけど。
ダリルもリフィルも、完全に下調べは済ませているようだ。
もう既に、自分がほしい装備のヴィジョンが見えているらしい。
「オリハルコン製の武器は、魔導鉱石の中でも一番頑丈だとギルドの資料にありました。俺は肉体強化を利用して、強引に相手の防御を上から叩くのが得意なんです」
「そうなんですよこいつ、普通の鉄剣とかだとすぐに武器をダメにしちゃって。ズボラだから手入れもしないし、オリハルコン製はとにかく傷がつかなくて手入れもいらないですから、買うならそれしかありません!」
「んだよすぐに壊れる武器を手入れしても意味ねぇだろ。手入れして良くなるのも切れ味だけだ。俺は剣を鈍器みたいに使うタイプだから、切れ味がよくても意味ねぇだろ!」
う、うおおお!?
すごい子どもみたいな言い争いで、理路整然とした単語がポンポンと飛び出す。
感覚派で、知識はあっても計画性は皆無な私には、全然ついていけない論理的な会話だぞ!
「ま、まぁまぁ。確かにそれならオリハルコン製の武器が一番だね。肉体強化を多用するなら、魔力の伝導効率が魔導鉱石の中だと一番平均的だから、そこもいい判断だ」
魔導鉱石ってのは、ファンタジーによく登場する鉱石のことだ。
ミスリル、オリハルコン、アダマンタイト辺りがぱっと思いつくかな?
このうち、ミスリルが一番魔力の伝導効率に優れ、アダマンタイトは切れ味に優れる。
オリハルコンは耐久性だ。
「防具もオリハルコンで固めるのかい?」
「そうですね、その方が修繕を鍛冶屋に依頼する時もいっぺんにできて楽ですし」
本当によく考えてるなぁ、私は基本その場その場で、持ってる知識から場当たり的に動く感じなのに。
優秀な冒険者には感心しかない。
「じゃあ、次はリフィルちゃん。君はどうするつもり?」
「はい、私は火属性魔術が得意なので、やっぱりサラマンダーの素材を使った杖がほしいです」
「それで火属性魔術の効率を上げる、王道だね」
一般的に、上層向けの装備は量産品。
下層向けの装備は魔導具が多い。
対して、中層向けの装備は先程のオリハルコンや今リフィルちゃんが言ったサラマンダーの素材を使った杖みたいな。
魔導具みたいな特殊効果はないけど、ファンタジー特有の素材を使った現実のそれより頑丈だったりする装備って感じ。
「オリハルコンの剣も、サラマンダーの杖も、言ってしまえばそれ自体は特定の武器って言うよりは武器の種類だ」
「作ってる工房や鍛冶師によって、特徴があるってことですよね」
「そうそう」
スマホにも、いろんな機種があるように。
この世界の武器にも、色々な種類がある。
ここで何を選ぶかが、今後の冒険者生活を左右すると言っても過言ではないのだ。
「ダリルの場合は、多少重くてもいいから頑丈なもの……というか、重さがそのまま攻撃力になるタイプだろうから、とにかく重いものが欲しいよね」
「はい。でも一番重いって有名な工房の剣は、持ってみたんですけどしっくりこなくって……」
「そこまで予習してるのか。一番重いってなるとグラビトン工房の作品か。あそこの剣は魔力の伝導効率を犠牲にして固くしてるからなぁ」
なんて話をしながら、二人にちょうどいい装備を探していく。
そんな時だった。
「おや、フーシャさんじゃないか、いらっしゃい」
「あ、店長」
店のドアが開いて、店長が何かを抱えて入ってくる。
随分とでかい木箱だな……ファンタジーっぽい。
「ちょうどよかった、以前話してたダリルとリフィル。今回、中層向けの装備に武器と防具更新したいみたいで」
「あ、よ、よろしくお願いします!」
「よろしくお願いします!」
元気な二人の挨拶に、店長は笑顔でよろしくと返してくれた。
こうして私が二人を連れてきたのは、店長と顔合わせをするためだからな。
あえて良かった。
さて、そんな店長だが――
「そうだ、そんな二人とフーシャさんに、ちょうどいい装備があるんだ。見てかない?」
「え、私にも?」
なにやら、木箱の中をごそごそと漁っている。
また、何か変なものでも手に入れてきたのだろう。
店員さんも呆れ顔だ。
そうして、出てきたのは――
……バニースーツ?
え、バニースーツ!? なんで!?
フーシャに装備を見繕ってもらいたい方は、
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