風魔術だけでも異世界は楽しいです ~美少女転生からのちょうどいいスローライフ~ 作:暁刀魚
それは私が護衛依頼でカザルマの隣町まで移動していた時のことだった。
隣町の冒険者ギルドで依頼の完了報告をしていると、見知った冒険者パーティが声をかけてきた。
「フーシャさん、お久しぶり」
「ケイマくんじゃないか、お久しぶり」
新進気鋭の冒険者パーテイ「モクゾー」のリーダー、ケイマくんだった。
隣にはキョウさん、そして遠くにこちらをチラチラと見ているルークの姿も。
「モクゾー」がカザルマの街を拠点として以来、ルークとは顔を合わせれば話をする仲だ。
対してケイマくん達は、顔を合わせれば挨拶はするけれど。
そもそも、顔を合わせる機会があまりない。
これには色々と理由があって――
「今日はルークをけしかけたりはしないんだ」
「あはは……まぁ、今日は仕事の話なので」
ケイマくんとキョウさんは、何かとルークをけしかけてくるのだ。
三人で出くわした時は、大抵ルークを置いて二人は先にどこかへ行ってしまう。
人付き合いの苦手なルークが、珍しく交流を持った相手だ。
若干の出歯亀精神と共に、ルークを私と交流させたいらしい。
「私はいつでも歓迎なんだけどね」
「そう言ってもらえると助かるよ」
「おい、別に僕は歓迎してないぞ」
なんて話をしていたら、遠くで話をしていたルークがずかずかとよってきた。
何やらキョウちゃんがニヤニヤしているぞ。
「あはは、それで、仕事のお話って?」
「ああ、実は俺達、これから護衛依頼を受けるんだよ。目的地は――モクゾー」
「里帰りだ」
話を聞くところに寄ると、護衛をモクゾーのチームに依頼してきたのは、以前私が依頼を受けた大規模キャラバンらしい。
あの、いかにもやり手って感じなおば……お姉さんのキャラバン。
「それに私も参加してほしいってこと?」
「そうです」
「過剰戦力じゃない? 『モクゾー』パーティ三人に、あのキャラバンには腕のたつ剣士も常駐してるよ」
隊長の御婦人には息子がいて、それなりに腕のたつ剣士だ。
ちょうど、ケイマくんと実力はどっこいってところだろうか。
若い分、ケイマくんに分があるかな?
それだけの戦力がいて、私まで雇うっていうのは流石に過剰すぎる。
「それには二つ理由があるんだよ。俺達の故郷、モクゾーの村は神聖樹の産地なんだ」
「神聖樹って、あの高級木材の」
「はい」
神聖樹とは、それ一本で普通の家が一軒建つという。
建材でありながら、高級すぎて建材に使えない木材だ。
つまり、その大規模キャラバンの目的は高級木材を買い取って大きな街に輸送すること。
このあたりでも特に大きなキャラバンだから、そういう仕事を請け負っていても不思議じゃない。
「それで、里帰りを兼ねて俺達に依頼が回ってきたんだけど……」
「神聖樹を自分たちと護衛の剣士だけで運ぶのは不安?」
「はい。……モクゾーの出身だからこそ、アレに万が一があった時のヤバさは身にしみてるんで」
「ははぁ」
んで、護衛を増やそうかって御婦人と相談しているところに私がやってきた。
正直、モクゾー以上に信頼できるパーティや冒険者ってなると、カザルマの街じゃ候補が限られる。
新人の街と言われる影響で、逆に新人以外の冒険者があまり寄り付かなくなってしまっているのだ。
ダンジョン下層で得られる報酬は、他の街とそう変わらないんだけどね。
私以外の有力冒険者となると、それこそプリンセスパーティくらいだ。
「渡りに船、ってことね。いいよ、元々講習の予定も入ってないし。一週間くらいならなんてことはないし」
「ホントですか? いや、ありがとうございます。フーシャさんがいれば、俺達も安心できるし」
「何より護衛キャラバンとも結構懇意なんですよね、フーシャさん」
そこで、話をケイマくんに任せていたキョウさんが聞いてくる。
私がそれに頷くと、そんなキョウさんは視線をニンマリとさせてルークに向けた。
「良かったねルーク! フーシャさん、一緒に来てくれるって!」
「なんでそこで僕に振るんだ!」
「おやおやー、ルークは私と一緒に旅がしたかったのかな?」
「したくない! 実力があるのは解ってるんだ、そっちが仕事をしてくれるならそれでいい」
ははは、と苦笑するケイマくん。
キョウさんは私に視線を向けると、同類見つけたり、の笑みを浮かべてサムズアップをしてくるのだった。
+
「いやぁほんと、まさかルークに仲の良い同性の友人どころか、異性の友人ができるなんて思わなかったんですよ」
「そうかなぁ。ルークってなかなか面白いと思うんだけど」
「それは僕を弄るのが面白いのか、それとも僕の相手をしていて面白いのかどっちなんだ!?」
「そこは想像にお任せします」
道中、私とキョウさんは楽しく話をしながら移動していた。
ドラゴン輸送の時もそうだったけど、キョウさんはルークを弟みたいに思っているようだ。
実際年もルークがケイマくんとキョウさんの一つ下だから、昔からこんな感じだったんだろうな、モクゾーパーティは。
「ルークが魔術学校に通うって言い出した時は、本当に心配したんですよ」
「友人ができるのかって?」
「それもありますけど、一人暮らしをさせて大丈夫なのかなって」
「流石にそこは心配される謂れはないぞ!?」
んで、私とキョウの話に定期的なツッコミが飛んでくる。
これを聞きたくて、わざわざ私達は二人で話をしているところがあるのだ。
まぁ、なかなか楽しい道中である。
「あれから、モクゾーパーティは順調にやってる?」
「はい、カザルマの下層ダンジョンに、だいぶ慣れてきました」
いい加減ルークイジりも飽きてきたので、話題を移す。
現在、キャラバンとモクゾーパーティ、そして私の混合チームはモクゾーにもうすぐ到着するところまで来ている。
今日中には、モクゾーの村まで到着するはずだ。
「驚いたのは……やっぱりプリンセスパーティですね。あんな大きなハンマーを振り回して戦うのは、見ていて圧巻でした」
「シェナイトさんも優秀な盾職なんだよ。あのパーティが、カザルマ最強のパーティと言っても過言じゃない」
「……君も、半ばあのパーティのメンバーみたいなものだそうだしね」
そりゃまぁ、カザルマで一番知名度のある冒険者トップ3と言っても、ぶっちゃけ過言じゃないからね。
自分で言うのもあれだけど、全員容姿にも優れているし。
「華がある、というのはああいうのを言うんだろうね」
「ちょっとルーク、それじゃまるで私達のパーティに華がないみたいじゃない?」
「まぁまぁ。三人ともこの年で下層を探索できる有望株なんだ。自然と二つ名も付くだろうし、華はこれからでも十分さ」
なんて話をしつつ。
のどかな時間が過ぎていく。
ここに至るまで、魔物の襲撃を何回か経験してきた。
とはいえ、正直そこまで強い魔物ではなかったし、そもそも行きは神聖樹を積載していない。
まぁ、何と言うか気楽なものだ。
見れば向こうで、ケイマくんとキャラバンの護衛剣士が、色々と話をしている。
内容は剣術の議論みたいで、聞き取ることはできるけど内容はいまいち理解できなかった。
隊長の御婦人は、周囲に気を配りながら時折何か指示を飛ばしている。
全体的には弛緩した空気で、特に問題は起こりそうにもなかった。
私が探知する範囲に、
「……呑気なものだな」
「呑気でいられるなら、その方がいいさ。それよりも、ルークはモクゾーの村に帰ってからの事を気にしたほうがいいんじゃない?」
「帰ってからのこと? 別に、ただの里帰りなんだから、気にすることもないだろう」
どうやらルークは気付いていないようだ。
私はキョウさんと視線を合わせて、ニヤリと笑いながら頷き合う。
不思議そうな顔をしているルークだが、君は村にいた頃から今みたいな性格だったんだろう?
そんな君が異性の友人を連れて帰ったら、村がどうなるか。
私はとっっっっても興味があるなぁ!